第一話~始まり
三人の少年と少女が海が見える岬に向かって走っていた。先頭を走る少女が岬明乃。明乃の後ろを走る少女が知名もえか。そして、それに続いて走る少年が山城俊輔の三人である。
「もう少しで通るよ‼」
「待ってよ、みけちゃん‼」
「待てよ、明乃‼」
三人が岬に来ると汽笛が聞こえ、目を向けると二隻の軍艦が港に入ろうとしていた。
一隻は超弩級大和型戦艦一番艦大和。そして、もう一隻は超弩級信濃型航空母艦二番艦信州。二隻は海を護る為に設立されたブルーマーメイドとブルーシーバードである。
ブルーマーメイドは女子のみが配属される部隊であり、ブルーシーバードは男女混合の部隊である。基本的には女子が操艦し、男子が戦闘機に搭乗。これが男女混合型の部隊の運用方法である。
「すごいね……おーい‼ おーい‼」
明乃は大和と信州に向けて手を振る。そして、大和の艦首に立っている女性が明乃を見付けたのか、帽子を片手にゆっくりと手を振り返した。
「見て、俊君、もかちゃん‼」
「すごいね」
「うん、そうだな」
「絶対にブルーマーメイドになろうね‼」
「うん‼」
「僕はブルーシーバードなんだけどね」
明乃の言葉に俊輔は違う部隊に行く事を言う。
「海に生き」
「海を護り」
「「海に行く‼ それがブルーマーメイド‼」」
もえかと明乃が同時に言うと俊輔は一人でブルーシーバードの合言葉を言う。
「空を生き、空を護り、空に生きる。それがブルーシーバード」
「やっぱり俊君はそっちに行くんだね」
「うん、僕のお父さんもブルーシーバード所属だからね」
「そっか……絶対になろうね‼」
「うん‼」
「ああ‼」
三人は共通の夢に向かって行く。
そして、それから九年の月日が経った。
俊輔は幼き頃からの夢であったブルーシーバードになる為の専属学校、北横須賀男女混合海洋学校の入学式に来ていた。
「あいつらは無事に学校に行けたのか? 特に明乃は………心配だな。まぁ、あいつは大丈夫だろ……多分」
俊輔が言う通り、明乃は入学前に問題が発生していた。しかし、それを知るのは後々に知る事になるが、それは先の話である。
『これより、入学式を開始します。各自は指定場所に集まってください』
「おっと、そろそろ行かねぇと遅れてまうな」
そう言って俊輔は入学式に向かって行くのであった。
「これより入学式を開始する。まず始めに学園長からの挨拶。山城提督。お願いします」
司会者がそう言うと壇上に一人の男性がマイクの前に立つ。
「あ~、私がこの北横須賀男女混合海洋学校の学園長の山城悠馬だ。長く話すと皆に飽きられてしまうのでな、手短に言う。各自は困難な試験を乗り越えこの学校に入学して来た‼ それを誇って良い事である。しかし‼ 女子諸君は航空母艦を操艦し、男子諸君は戦闘機を操る事となる。各自の奮闘を期待している。そして、諸君がこの学校を卒業する頃にはブルーシーバードの一員となっているであろう‼ 最後に、君たちを心から歓迎しよう‼ 以上」
そう言って悠馬は壇上から降りる。
「ありがとうございました。学園長。では、次に配属艦について説明する」
司会者は長々と話していた為、俊輔は余り話を聞いていなかった。
「では、これにて入学式を終了する。各自は配属艦に乗艦後、教師の指示を待つように。解散‼」
司会者の言葉が終わると同時に生徒たちが一斉に動き出す。俊輔も同様に配属艦が記載されたボードを見に行く。
「………やっぱり俺は信濃だったな。まぁ、当然と言えば当然か………親父。見ていてくれ」
俊輔の目の前には配属される航空母艦。超弩級信濃型航空母艦一番艦信濃がその雄姿を海に浮かばせていたのだった。
俊輔は信濃の教室に足を踏み入れた。そこには、男女それぞれが仲の良い友人と話をしていた。
「(まっ、俺にはこの学校に仲の良い友人なんていないんだけどな)」
俊輔は内心でそう呟くと教室の端にある席に座った。
それと同時に教室内がざわつき始める。俊輔が座った場所は本来、艦長となる女子が座る場所だからである。しかし、俊輔は信濃の艦長である為、其処に座る事が義務付けられていた。
「(まぁ、判り切っていた事だけど、いざ対面すると堪えるな)」
俊輔を見る目は敵対視する目線が多かったからである。俊輔は判っていたが、やはり堪える物があるのだろうか、疲れた表情を顕にしていた。
「アナタが艦長ですか?」
「そうだと言えばどうなる?」
俊輔の前に一人の少女が立ち、俊輔を睨め付けていた。
「私は決してあなたを艦長だと認めません‼」
「………それだけか? 俺はこれからの事を考えたいんだ。言う事がそれだけであったら退いてくれ。邪魔で仕方が無い」
「なっ⁉ 良いですわ。絶対にあなたに艦長を譲ってもらいますから‼」
そう言って睨め付けていた少女は俊輔から離れて行く。
「(また、やっちまったな………これじゃ、艦長失格だわ。でもあの子……)」
俊輔は睨め付けていた少女を見て、頭に引っ掛かる物を感じていた。
「まっいっか」
俊輔がそう呟くと同時に教室に教官が入ってくると全員が席に座った。
「艦長」
「起立‼」
教官の呼び声に俊輔は号令を出す。それに習い教室の生徒が立ち上がる。
「今日から君たちの教官となる桜井空だ。これからは君たちは家族だ。まぁ、嫌な奴もいるかも知れん。だが、それが人間である。君たちはそれを乗り越えてこそ、ブルーシーバードの一員となれる。これからよろしく頼むぞ‼」
「総員、敬礼‼」
俊輔の号令で空に敬礼する。空も全員が敬礼しているのを確認してから返礼をする。
「では、後は頼んだぞ。艦長」
そう言って空は教室から出て行く。
「各自、持ち場に就け‼ これより出港準備に入る‼」
『了解』
俊輔の言葉にほとんどが返事をするが、中には返事をしない者がいたが、俊輔は敢て無視する。
「(やっていけるかな、俺………憂鬱だわ)」
俊輔は内心で呟きながらも艦長帽を被り艦橋に向かうのであった。
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