遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム   作:とある遊戯王プレイヤー

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精霊世界へ ②

「おい、テメェら、デュエルサボって随分楽しそうじゃねぇか、えぇ!?」

 

 『『へっ?』』

 

 ヒールマジシャンがミッドソードナイトを説得していたタイミングで、草木を掻き分け現れたのは、彼らのマスターであった。

 

『『うわあああああああ!?』』

 

「どーでもいいからとっとと手札に来いやテメェらぁ!! このままじゃ負けちまうだろうがぁ!」

 

『ま、マスター!? なんでここにぃ?』

 

「んなこたぁいいんだよ! じゃあドローすっから、ぜってぇ来いよコラァ!」

 

『待てキサマ…では我々に、この場で言う事があるのではないか?』

 

 平静を取り戻したミッドソードナイトが言う。

 

「あぁ!? 今はんな状況じゃねぇんだよ!」

 

『ひとことだけ言えばいいのだ! その位の時間はあるだろう!』

 

「あ~ハイハイ、すまんかったね」

 

『謝罪の心がまるで無い! それで許して貰えると思っているなら、おめでたいな』

 

「一応謝ったろうが! さっさと来い!」

 

『分からんのか? そういった態度と言動が、自分自身を貶めているというのだ!』

 

 話は平行線どころか、そっぽを向き始めた。

 しかも罵り合いにまで発展しそうである。

 

 見かねたマジシャンは、二人の間に割って入る。

 

『やめて~! 私のために争わな――』

 

「やかましい! オレはコイツと話してんだよぉ!」

 

 その時だ。

 割り込んだマジシャンを押し退けるユウ。

 『あぁ~れ~!?』と、つんのめる彼女。

 

 これが果たして、堅物剣士の目にどう映ったか?

 そうだ、よくて婦女暴行。

 

 マスターだった男はこの瞬間、自分のパートナーに暴力を振るった下衆となった。

 

 『おのれ! もう我慢ならん! 我々を動かしたいなら、決闘しろ!』

 

 怒りに震えるミッドソードナイトは、腰の剣を躊躇なく抜き去ると、刃先をマスターに向けた。

 

 いつもソリッドビジョンで見慣れている得物とはいえ、今はどう見ても実物だ。

 

「ハッ、おもしれぇ! 試してみるか、攻撃力1450の分際でよぉぉ!」

 

『キサマなぞ精々500程度だろう!』

 

 その時驚くべき事が起こった。ミッドソードナイトの姿がぶれた、かと思うと消失する。

 直後、ユウの背筋をぞくりと冷やかな感触が襲う。

 

 咄嗟にその場を逃れようと脳が判断した時には、ユウの首筋を剣が捉えていた。

 

 いつの間にか、ミッドソードナイトは背後に回り込んでいたのだ。

 踏みとどまったから良かったものの、うっかり動いていれば首が飛んでいた。

 

『言いたいことは?』

 

 感情の欠片も覗かせない、冷たい言葉だった。

 これが、モンスターの戦闘能力。

 

 しかしその威力を知り得てなお、大人しくなるようなユウではなかった。

 

「そうだねぇ…ツメが甘ぇ!」

 

 ゴキッ、とでも鳴っただろうか。ユウの後頭部が鋭くミッドソードナイトの鼻を打つ!

 

 剣士がのけぞった隙に拘束を脱すると、狼狽を見せた彼に肩口からぶち当たり、思い切り体重を乗せて押し倒す。

 

 剣を取りこぼしたミッドに、ここぞとばかり馬乗りになって、顔面を何度も殴打するユウ。

 

『調子に…乗るなぁぁ!!』

 

 しかしミッドはカード精霊だ。

 

 タフさは人間の比でなく、ユウの両手を強引に掴むと、腹筋だけで起き上がり頭突きを見舞う。

 

 形勢は逆転した。

 よろめいたユウに更なるヘッドバットを喰らわすと、体を引き抜き立ち上がる。

 

 そしてユウの頬に、鋭い蹴りを叩き込む。

 ぐきり、と嫌な音。

 

 ユウはされるがまま吹き飛んだ。

 大樹に衝突し、倒れ込む。

 

 息も荒く血を拭うミッド。

 吐いた唾には血が混じっていた。

 

『お、終わったか? 全く、デタラメな――』

 

「……ひひ……」

 

 ミッドソードナイトは微かに聞こえた声に、言葉を切った。

 

(まさか、まだ?)

 

 彼の予想は的中していた。

 砂煙舞い上がる視界の先に、何かが動いた。

 

『き、キサマぁぁ!』

 

「ひひひハハハハハハハ!! やるじゃんよぉ! 悪かったなぁぁ、確かにオレの攻撃力は500位だわぁぁ!!」

 

 あらゆる箇所から流血し、顔面はトマトジュースをひっかぶったかの様な有様。

 だが、それでもユウは嘲笑っていた。

 

『き、キサマは狂っている!! いい加減にしないと死ぬぞ!』

 

「なら殺してみやがれぇぇ!!」

 

 地面を蹴り、不恰好な走りで迫るユウだったが、その殺意にナイトは身震いした。

 

 そして思った。

 この相手には、全力をもって向かわねばならない、と。

 

「オラアアアアアぁぁぁぁ!!」

 

『ふぅぅぅぅ――』

 

 ミッドソードナイトATK1450 → 1950

 

 いよいよ、二人の間合いがあと数歩、剣士の間合いにまで詰まった時だった。

 

「しいぃぃぃぃ!」

 

『破ぁっ!』

 

『やめてぇぇぇぇ!!』

 

 3人の叫びがシンクロした瞬間、戦いはいきなり幕を閉じた。

 

 ミッドソードナイト視点からすればユウが唐突に消え失せた。

 ユウ視点からすれば、ミッドソードナイトが唐突に消えた。

 

 それもその筈。ユウは現在、高度100メートル地点に到達していた。

 

 何故か?

 理由は簡単、二人がぶつかり合う直前、それが横切りユウを空へとさらったのだ。

 

 ユウは両肩をそれの爪でがっちり掴まれ、現在進行形で風を切り、飛行している。

 

『よぅマスター。風ってヤツはいいよなぁ。アタマ、冷えたかい?』

 

「テメェは…ストームメイカーか!?」

 

 見上げたユウの目に映るのは半鳥人、とでも表現出来るモンスター【SSストームメイカー】だった。

 

【レベル4、風属性、鳥獣族、ATK1900】とは表示されなかったが、ユウははっきり覚えている。

 彼のデッキのモンスターの1体だ。

 

「降ろせ! まだヤツとは決着ついてねぇ!」

 

『お~ろろ、まだまだ熱っぽいね。んじゃ、クールダウンの遊覧旅行と洒落込むぜ! ヒィヤッホォォォ!』

 

 急速に速度を落としたストームメイカーは、そのままほぼ垂直落下を開始した!

 いくらユウがもがこうが、爪はまるで緩まない。

 

「おわあああぁぁぁぁ!?」

 

 地面に衝突する寸前に、ぐんと高度が上がる。

 

 そして今度は空中ジグザグ飛行!

 更に宙返り…からの、きりもみ飛行!

 

『フゥゥゥゥゥ! 風はサイコーだなぁ! ってか俺が風そのものなのさ。なんでってそりゃ、俺はストームを、メ・イ・カぁぁぁぁするイカした男だからなぁうわはははは!』

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛――――」

 

 結局、重力無視のアクロバット飛行が終わったのは、実に5分も後だった。

 

 ユウは顔面蒼白。

 身体の力という力が抜け落ち、プラ~ンという表現がしっくり来るぶら下がりぶりだった。

 

『よし、遊覧旅行終わり! おいマスターどうしちまった? なんだなんだ、退屈だからって寝ちまうことはないだろ! ヘイ、ヘイ、朝だぜ!』

 

 羽毛でバシバシとはたいた所で、ようやくユウは意識を取り戻した。

 だが最早、そのテンションは病床のおじいさんだ。

 

「――う、うぷっ…」

 

『ハーハハハハハ、んじゃあ後は若い者同士、よろしくぅ!』

 

『ストームメイカー殿! 貴方は…』

 

『いいっていいって、礼はいらないぜ。それよりナイト君、今こそアレだ。ホラ、いつぞやのアレだよ、俺が手本見せたろ? 先に折れたが勝ちなのさ』

 

『し、しかし…』

 

『そりゃ我らがマスターはどーしょーもねえクソッタレだって思う気持ちは分かるぜ?』

 

『本人の前で言っちゃうのね……』

 

『でも俺達、カードは大事にする男だよ。それにな、いつも飛んでりゃ見えるのさ。マスターは負けたら命を失うデュエルをやってる』

 

『な、なんですって?』

 

『ホラ、だから行きな切り込み隊長。損な役回りは伊達じゃないって皆に見せてやれ!』

 

 そう言われ、振り返るミッドソードナイト。

 

 すると、森の木陰から見守る仲間たちが居た。というか見てたなら――と少しは思うミッド。

 

 リザードマンにゴーレム、サイキッカーにタートル、更にはフェニックスまでもが居た。

 

『はいはい…そうですよね。我はいつもいつも……ですが、分かりました。切り込み役を務めましょう!』

 

『ミッドちゃん…』

 

 仲間たちからも、ナイト~ナイト~のコールだ。

 

『ではマスター。この度は、申し訳ありませんでした。また、共に戦いましょう。ただしマスターも少しは改善して頂ければ幸いです!』

 

「う、わ、わかっ、い、いひから、おへ、ぐっ」

 

『は? なんですかマスター?』

 

 耳を近付けたナイトに、真の恐怖が襲い掛かる!

 

「うぉええええええ!!」

 

 辺りは静寂に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――現実。遊技の島

 

 

「はぁ、はっ……お、オレのターンだ……」

 

 ユウの意識は、現実へと引き戻されていた。

 しかしながら何故かフラフラとしていて、顔面などは蒼白で死人の様だ。

 

 突然の彼の豹変に、相手の特A級犯罪者、ペインも思わず首を傾げた。

 

(あ、あで? なんでアイツ、あんなボロボロだど?)

 

「ど、ドロぉぉ~……」

 

 引いたカード。

 それを見た彼は、口端を吊り上げた。

 

「へっ……オレは、【SSミッドソードナイト】を召喚!!」

 

 ユウのフィールドに、今回初のモンスターが現れる。

 青衣の剣士が、洗濯を終えた衣装を翻し、雄叫びをあげた。

 

「バトル!  ミッドソードナイトで、ドリル・バーニカルを攻撃!」

 

 ミッドソードナイト ATK1450 - 1300 = 150

 

「ど、どぉぉ!?」

 

 ペイン LP3500 - 150 = 3350

 

 ようやく、ユウの手によってダメージを与えた。

 彼は相手を睨み付けると、こう宣言した。

 

「さぁ、遊戯の時間だ!」

 




 【SS(シャイニーソルジャー)ストームメイカー】
 レベル4、光属性、鳥獣族、効果モンスター
 ATK1900 DEF100

 このカード名の①、②、③の効果はいずれも1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが召喚に成功した時、手札から戦士族「SS」モンスター1体を特殊召喚できる。②:このカードが「SS」と名のついたカードの効果によって特殊召喚された場合、デッキから魔法使い族「SS」モンスター1体を手札に加えることができる。③:自分フィールドにこのカード以外の「SS」モンスターが存在する場合、フィールドの魔法・罠カード1枚を選択し破壊する。



 下級SSモンスター共通の効果に加え、下級では最も攻撃力の高いモンスター。フィールドの魔法・罠カードを破壊する効果も汎用性が高く、様々な場面で活躍してくれるだろう。
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