遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム 作:とある遊戯王プレイヤー
「おい、テメェら、デュエルサボって随分楽しそうじゃねぇか、えぇ!?」
『『へっ?』』
ヒールマジシャンがミッドソードナイトを説得していたタイミングで、草木を掻き分け現れたのは、彼らのマスターであった。
『『うわあああああああ!?』』
「どーでもいいからとっとと手札に来いやテメェらぁ!! このままじゃ負けちまうだろうがぁ!」
『ま、マスター!? なんでここにぃ?』
「んなこたぁいいんだよ! じゃあドローすっから、ぜってぇ来いよコラァ!」
『待てキサマ…では我々に、この場で言う事があるのではないか?』
平静を取り戻したミッドソードナイトが言う。
「あぁ!? 今はんな状況じゃねぇんだよ!」
『ひとことだけ言えばいいのだ! その位の時間はあるだろう!』
「あ~ハイハイ、すまんかったね」
『謝罪の心がまるで無い! それで許して貰えると思っているなら、おめでたいな』
「一応謝ったろうが! さっさと来い!」
『分からんのか? そういった態度と言動が、自分自身を貶めているというのだ!』
話は平行線どころか、そっぽを向き始めた。
しかも罵り合いにまで発展しそうである。
見かねたマジシャンは、二人の間に割って入る。
『やめて~! 私のために争わな――』
「やかましい! オレはコイツと話してんだよぉ!」
その時だ。
割り込んだマジシャンを押し退けるユウ。
『あぁ~れ~!?』と、つんのめる彼女。
これが果たして、堅物剣士の目にどう映ったか?
そうだ、よくて婦女暴行。
マスターだった男はこの瞬間、自分のパートナーに暴力を振るった下衆となった。
『おのれ! もう我慢ならん! 我々を動かしたいなら、決闘しろ!』
怒りに震えるミッドソードナイトは、腰の剣を躊躇なく抜き去ると、刃先をマスターに向けた。
いつもソリッドビジョンで見慣れている得物とはいえ、今はどう見ても実物だ。
「ハッ、おもしれぇ! 試してみるか、攻撃力1450の分際でよぉぉ!」
『キサマなぞ精々500程度だろう!』
その時驚くべき事が起こった。ミッドソードナイトの姿がぶれた、かと思うと消失する。
直後、ユウの背筋をぞくりと冷やかな感触が襲う。
咄嗟にその場を逃れようと脳が判断した時には、ユウの首筋を剣が捉えていた。
いつの間にか、ミッドソードナイトは背後に回り込んでいたのだ。
踏みとどまったから良かったものの、うっかり動いていれば首が飛んでいた。
『言いたいことは?』
感情の欠片も覗かせない、冷たい言葉だった。
これが、モンスターの戦闘能力。
しかしその威力を知り得てなお、大人しくなるようなユウではなかった。
「そうだねぇ…ツメが甘ぇ!」
ゴキッ、とでも鳴っただろうか。ユウの後頭部が鋭くミッドソードナイトの鼻を打つ!
剣士がのけぞった隙に拘束を脱すると、狼狽を見せた彼に肩口からぶち当たり、思い切り体重を乗せて押し倒す。
剣を取りこぼしたミッドに、ここぞとばかり馬乗りになって、顔面を何度も殴打するユウ。
『調子に…乗るなぁぁ!!』
しかしミッドはカード精霊だ。
タフさは人間の比でなく、ユウの両手を強引に掴むと、腹筋だけで起き上がり頭突きを見舞う。
形勢は逆転した。
よろめいたユウに更なるヘッドバットを喰らわすと、体を引き抜き立ち上がる。
そしてユウの頬に、鋭い蹴りを叩き込む。
ぐきり、と嫌な音。
ユウはされるがまま吹き飛んだ。
大樹に衝突し、倒れ込む。
息も荒く血を拭うミッド。
吐いた唾には血が混じっていた。
『お、終わったか? 全く、デタラメな――』
「……ひひ……」
ミッドソードナイトは微かに聞こえた声に、言葉を切った。
(まさか、まだ?)
彼の予想は的中していた。
砂煙舞い上がる視界の先に、何かが動いた。
『き、キサマぁぁ!』
「ひひひハハハハハハハ!! やるじゃんよぉ! 悪かったなぁぁ、確かにオレの攻撃力は500位だわぁぁ!!」
あらゆる箇所から流血し、顔面はトマトジュースをひっかぶったかの様な有様。
だが、それでもユウは嘲笑っていた。
『き、キサマは狂っている!! いい加減にしないと死ぬぞ!』
「なら殺してみやがれぇぇ!!」
地面を蹴り、不恰好な走りで迫るユウだったが、その殺意にナイトは身震いした。
そして思った。
この相手には、全力をもって向かわねばならない、と。
「オラアアアアアぁぁぁぁ!!」
『ふぅぅぅぅ――』
ミッドソードナイトATK1450 → 1950
いよいよ、二人の間合いがあと数歩、剣士の間合いにまで詰まった時だった。
「しいぃぃぃぃ!」
『破ぁっ!』
『やめてぇぇぇぇ!!』
3人の叫びがシンクロした瞬間、戦いはいきなり幕を閉じた。
ミッドソードナイト視点からすればユウが唐突に消え失せた。
ユウ視点からすれば、ミッドソードナイトが唐突に消えた。
それもその筈。ユウは現在、高度100メートル地点に到達していた。
何故か?
理由は簡単、二人がぶつかり合う直前、それが横切りユウを空へとさらったのだ。
ユウは両肩をそれの爪でがっちり掴まれ、現在進行形で風を切り、飛行している。
『よぅマスター。風ってヤツはいいよなぁ。アタマ、冷えたかい?』
「テメェは…ストームメイカーか!?」
見上げたユウの目に映るのは半鳥人、とでも表現出来るモンスター【SSストームメイカー】だった。
【レベル4、風属性、鳥獣族、ATK1900】とは表示されなかったが、ユウははっきり覚えている。
彼のデッキのモンスターの1体だ。
「降ろせ! まだヤツとは決着ついてねぇ!」
『お~ろろ、まだまだ熱っぽいね。んじゃ、クールダウンの遊覧旅行と洒落込むぜ! ヒィヤッホォォォ!』
急速に速度を落としたストームメイカーは、そのままほぼ垂直落下を開始した!
いくらユウがもがこうが、爪はまるで緩まない。
「おわあああぁぁぁぁ!?」
地面に衝突する寸前に、ぐんと高度が上がる。
そして今度は空中ジグザグ飛行!
更に宙返り…からの、きりもみ飛行!
『フゥゥゥゥゥ! 風はサイコーだなぁ! ってか俺が風そのものなのさ。なんでってそりゃ、俺はストームを、メ・イ・カぁぁぁぁするイカした男だからなぁうわはははは!』
「あ゛あ゛あ゛あ゛――――」
結局、重力無視のアクロバット飛行が終わったのは、実に5分も後だった。
ユウは顔面蒼白。
身体の力という力が抜け落ち、プラ~ンという表現がしっくり来るぶら下がりぶりだった。
『よし、遊覧旅行終わり! おいマスターどうしちまった? なんだなんだ、退屈だからって寝ちまうことはないだろ! ヘイ、ヘイ、朝だぜ!』
羽毛でバシバシとはたいた所で、ようやくユウは意識を取り戻した。
だが最早、そのテンションは病床のおじいさんだ。
「――う、うぷっ…」
『ハーハハハハハ、んじゃあ後は若い者同士、よろしくぅ!』
『ストームメイカー殿! 貴方は…』
『いいっていいって、礼はいらないぜ。それよりナイト君、今こそアレだ。ホラ、いつぞやのアレだよ、俺が手本見せたろ? 先に折れたが勝ちなのさ』
『し、しかし…』
『そりゃ我らがマスターはどーしょーもねえクソッタレだって思う気持ちは分かるぜ?』
『本人の前で言っちゃうのね……』
『でも俺達、カードは大事にする男だよ。それにな、いつも飛んでりゃ見えるのさ。マスターは負けたら命を失うデュエルをやってる』
『な、なんですって?』
『ホラ、だから行きな切り込み隊長。損な役回りは伊達じゃないって皆に見せてやれ!』
そう言われ、振り返るミッドソードナイト。
すると、森の木陰から見守る仲間たちが居た。というか見てたなら――と少しは思うミッド。
リザードマンにゴーレム、サイキッカーにタートル、更にはフェニックスまでもが居た。
『はいはい…そうですよね。我はいつもいつも……ですが、分かりました。切り込み役を務めましょう!』
『ミッドちゃん…』
仲間たちからも、ナイト~ナイト~のコールだ。
『ではマスター。この度は、申し訳ありませんでした。また、共に戦いましょう。ただしマスターも少しは改善して頂ければ幸いです!』
「う、わ、わかっ、い、いひから、おへ、ぐっ」
『は? なんですかマスター?』
耳を近付けたナイトに、真の恐怖が襲い掛かる!
「うぉええええええ!!」
辺りは静寂に包まれた。
――現実。遊技の島
「はぁ、はっ……お、オレのターンだ……」
ユウの意識は、現実へと引き戻されていた。
しかしながら何故かフラフラとしていて、顔面などは蒼白で死人の様だ。
突然の彼の豹変に、相手の特A級犯罪者、ペインも思わず首を傾げた。
(あ、あで? なんでアイツ、あんなボロボロだど?)
「ど、ドロぉぉ~……」
引いたカード。
それを見た彼は、口端を吊り上げた。
「へっ……オレは、【SSミッドソードナイト】を召喚!!」
ユウのフィールドに、今回初のモンスターが現れる。
青衣の剣士が、洗濯を終えた衣装を翻し、雄叫びをあげた。
「バトル! ミッドソードナイトで、ドリル・バーニカルを攻撃!」
ミッドソードナイト ATK1450 - 1300 = 150
「ど、どぉぉ!?」
ペイン LP3500 - 150 = 3350
ようやく、ユウの手によってダメージを与えた。
彼は相手を睨み付けると、こう宣言した。
「さぁ、遊戯の時間だ!」
【SS(シャイニーソルジャー)ストームメイカー】
レベル4、光属性、鳥獣族、効果モンスター
ATK1900 DEF100
このカード名の①、②、③の効果はいずれも1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが召喚に成功した時、手札から戦士族「SS」モンスター1体を特殊召喚できる。②:このカードが「SS」と名のついたカードの効果によって特殊召喚された場合、デッキから魔法使い族「SS」モンスター1体を手札に加えることができる。③:自分フィールドにこのカード以外の「SS」モンスターが存在する場合、フィールドの魔法・罠カード1枚を選択し破壊する。
下級SSモンスター共通の効果に加え、下級では最も攻撃力の高いモンスター。フィールドの魔法・罠カードを破壊する効果も汎用性が高く、様々な場面で活躍してくれるだろう。