遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム   作:とある遊戯王プレイヤー

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神龍解放

「現れろ!【神龍ピュアリフィケーション・ドラゴン】!!」

 

【レベル12、融合、光属性、ドラゴン族】

 

 ――ATK 4500

 

『こ、攻撃力、4500……』

 

 溶け合い、混ざりあった白と黒。

 翼には闇と光が織り込まれ、混沌を示しているかの様だ。

 

 解き放たれた神龍は、そのままデュエルフィールドを超越して飛び立ち、空に立ち込める暗雲を突き抜け、光輝いた。

 

 吹き飛んだ雲間から射し込むエンジェル・フォールと共に、空に座する神聖なる存在。

 その偉容は正しく神だ。

 

 黒白の龍は、今一度ユウに問い掛けた。

 

《マナカ ユウ、礼を言う。永き眠りより私は目覚めた。お前の望みを言うがいい。その1つを、私は形にしてみせよう》

 

「へっ…なら、オレに勝ちを寄越せ。出来るんだろう、テメェならよ」

 

《ふっ、やはり決闘者たるお前は、勝利を渇望するか。よかろう、私の力を見るがいい》

 

『い、いくら攻撃力があっても、僕のライフは――』

 

「ピュアリフィケーション・ドラゴンは、次のターンのエンドフェイズまで、自身の持つ効果以外の全てを受け付けねぇ!」

 

 自身の効果以外を受けない。

 耐性としては最強クラスである。

 要は、いかなる効果であっても、この龍を倒すことはかなわない。

 

「そして、墓地に存在するSSモンスターを2体まで除外する。ミッドソードナイトと、ヒールマジシャンを除外。このターン、ピュアリフィケーション・ドラゴンは通常の攻撃に加え、除外したモンスターの数だけ追加攻撃出来る!」

 

 そして追加攻撃効果。

 2体のモンスターを除外すれば、実質3回もの攻撃が可能だった。

 

『な、なんだって!?』

 

「なるほどなぁ。すげぇじゃん」

 

《さぁユウ、私を従え攻撃せよ。相対する者に鉄槌を加えるのだ!》

 

「ああ! バトル! ピュアリフィケーションで攻撃ぃぃ!!」

 

 ピュアリフィケーションの口から白光のブレスが、翼からは無数の闇の礫が放たれ、絡み合い、光と闇の渦を生んだ。

 そして、ダ・イーザを、その後ろのライズベルトを、その只中へと沈めた。

 

『う、うわあああああああああああ!?』

 

 ライズベルト LP13000 - 4500 - 4500 - 4500 = 0

 

 ライズベルトのライフが尽きると同時に、デュエルアンカーの拘束が解かれ、ソリッドビジョンが強制Offに。

 

 直ぐ様、ユウはライズベルトと距離を取った。

 しかし、いつまで待っても彼のディスクは、敗者への罰を下すことはない。

 

 やがて、むくりと体を起こすライズベルト。彼の瞳は紅く爛々と燃えていた。

 

『お前、お前ェェ!! よくも、よくも僕を!!』

 

「敗者は終わりじゃなかったのか?」

 

『黙れよ犯罪者! 僕は君達とは違う、狩るものがどうして罰を受けなければならないんだよ! 審判はレッドカードなんて貰わないだろ、それと一緒さ!』

 

「不公平だろそんなの! ずりーぞずりーぞ!」

 

「そうだコラァ! 俺達ばっか命懸けかよ!」

 

「私もそう思うわ。卑怯で軟弱者~!」

 

 好き放題言う3人に、プレイヤーキラーはついにキレた。

 

『五月蝿いんだよクズ共! 君達は元々社会から弾き出されたろくでなしだろうが! そんな連中、見世物になる位しか価値はないだろ!』

 

「お~お~言ってくれるぜ。クズはどっちだ!」

 

『お前だけは許さないぞ、マナカ ユウ! お前は審判に文句をつけた罪だ。ディスクを爆破してやる!』

 

「なっ、テメェ……」

 

『うふふふふ! 死――』

 

 そこまで口から発した瞬間の事だった。

 突如、ライズベルトの声が途切れた。

 

 彼は居なくなった。いいや。正確には呑み込まれたと言うべきか。

 半透明の、長細く名状し難い生き物が今、もごもごと口を動かしている。

 

 ひと呑みにしたライズベルトを噛み締めているのだろうか。

 ごくんと音がし、その後に未確認生物はプッ、と何かを吐き出した。

 

 地面に墓標の如く突き立ったのは、ライズベルトのデュエルディスクであった。

 

『居なくなるのはあなたの方だよ……ライズベルトくん……』

 

 唐突に響いた声の方へと、その長細い生物は戻ってゆく。

 そこに立っていたのは、プレイヤーキラー…うさぎ、と呼ばれていた者だ。

 

 和風着物の様な服装に、伸びた白髪……生気を感じさせない目は、カード【幽鬼うさぎ】がそのまま形を得たかの様だった。

 

「ああーーっ!? こ、コイツだっ、俺を追い込んだヤツだ!」

 

『どうもオガタさん…その節はお世話になりました……』

 

 自分の周りを飛ぶ長細生物を撫でつけながら、視線だけ向けて呟くうさぎ。

 

「ねぇあなた、さっきの子はどうなったのかしら?」

 

『ライズベルトくんの事なら、彼は元の姿に戻りました……』

 

「元の? どういう意味?」

 

 その疑問に答えるかの様に、うさぎは、残されたライズベルトのディスクから、1枚のカードを抜き取った。

 それは、モンスターカード【調星師ライズベルト】

 彼女は大事そうにそれをスリーブに収めると、懐にしまった。

 

「おい、まさかアイツもカードの妖精だとかいうんじゃねえだろうな?」

 

『言いますよ…が、違うとも言えます……尤も彼の場合は過激な性格が災いしただけですケド…』

 

「ならお前も、精霊の類だと思っていいんだな!?」

 

『ええ、差し支えありません……ですがご安心を、私は彼の様に分別無い真似は致しませんので……』

 

「待って。精霊だとしたらどうして貴女達は、主催者に従っているの? 拒否出来るんじゃないかしら?」

 

『その質問はナンセンスと言いざるを得ません、タスク アミさん……さっきも言ったでしょう、私達はカードの精霊の様なものだと……本来の私というものがあるのであれば、望んでこんな事をしているとは思えません……自画自賛かもですが……』

 

 彼女の発言、取りようによっては本人の意思ではないみたいな意味に思えた。

 

『いずれにせよこの度の皆様方に落ち度はありません……彼に代わり謝罪致します……ごめんなさい。では私は職務に戻りますので……』

 

「おい、待てよテメェ」

 

 去ろうとするうさぎを呼び止めたのは、ユウだった。

 

『まだ何か……?』

 

「別に。一応礼は言っとく。お勤めご苦労さん。だがなぁ、どうにもテメェの物言いは好かねえなぁ」

 

 お、おいおい、とオガタはユウをつついた。

 体験者は語るというヤツだろう。プレイヤーキラーを敵に回したくないのだ。

 そもそもユウは救われた側だというのに。

 

『そ、そんな……ならどう言えば……私、分かりません……』

 

 と、うさぎは目をこするリアクション。

 無論、涙など流してはいないし、表情1つ変えてはいないが。

 

 だが当人の背格好のせいもあってか、妙な罪悪感に苛まれる。

 

「い、一応アイツは仲間だろ? 消えたヤツを厄介者みてぇに扱う態度が気に入らねえのさ。第一テメェの言葉にゃあウソしか感じられねぇんだよ!」

 

『彼は同業者です…』

 

 表情は変わらず、淀んだままの目で口にした言葉だったが、これまでの何より説得力があるのも事実だった。

 

『ただの、ね……』

 

 音もなく、幽鬼の如く背景へと溶け込むうさぎ。

 だんだん透けてきた所で、彼女はあっ、と呟いた。

 

『そうだオガタさん……もう島の内部に潜まないで下さいよ……あそこは監視衛星から捉えられませんし、半日以上ロストしますと私が出向かなければならなくなりますから……』

 

 そうして彼女は、その場からスッと消えた。

 亡霊じみた退場に、狐にでもばかされた心持ちの一同だった。

 

「……チッ、お節介なヤツだ」

 

「そうね。案外、悪ぶりたいだけの子なのかも」

 

「へっ? ナニナニ、何の話?」

 

「あのなぁオッサン。お前、元イカサマ師のクセにそりゃあ致命的だぜ? ヤツの最後の言葉なんて、こちらが有利になるだけの情報じゃねえか」

 

「う、うるせぇ! 俺は三流だったんだ。よくバレてこわ~い兄ちゃんにボコられてたんだよ!」

 

「ふふ、まあまあ。今回はオガタさんが三流のお陰で助かったんだしいいじゃない。服にカード縫い込むなんて、普通のイカサマ師はやらないわ」

 

「おお、こんなおっちゃん褒めてくれんのアミちゃんだけよー」

 

「――アミは褒めてねえよな、あれ?」

 

『おう。割りと馬鹿にしてるな』

 

 いつの間にか現れた精霊ライオと、珍しく意見の合うユウ。

 

 しかしその時だった。ぐぅ~と一同の腹の虫が堪えきれずに悲鳴をあげたのは。

 

 

 

 

 

 

 

――使い魔に跨がり空を移動するうさぎは、懐から1枚のカードを取り出した。

 

 かつての【調星師ライズベルト】のカードは、今では【召喚師ライズベルト】カードに変わり果てていた。

 

 カードイラストは、良い兄として妹と笑って暮らしているライズベルトの姿である。

 まるで笑い声がここまで聞こえて来そうだった。

 

『ライズベルトくん、あなたの呪いは私が食べたよ…そっちはどう? 楽しい……?』

 

 カードが答える筈もない。

 ただカードがこの姿に変化した時点で、彼はあらゆる呪縛から解放されたのだろう。

 

『ありがとう。妹さんと仲良くね……私も、もう少ししたらそっちに戻れるから……覚えててくれると嬉しいな……そうしたらまた……』

 

 プレイヤーキラーの独白を聴く者は誰もない。

 彼女は再び、デュエルディスクのサーチ機能を起動すると、赤く明滅するデュエリストを捉えた。

 

 使い魔に方角を示すと、それは頷き軌道を変える。

 雲1つ無い夕焼け空に、銀色の粒子が舞った。

 

『違反者確認……』

 

 孤独な彼女は、カードを懐にしまうと誰に言うでもなく呟いた。




【SSC(シャイニーソルジャー・クライシス)フォーチュン・テラー】
 ランク4、エクシーズ、光属性、魔法使い族
 レベル4「SS」モンスター × 2
 ATK2000 DEF2200

 このカード名の①、②の効果は1ターンに1度しか発動できない。①:このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。デッキからレベル4以下の「SS」モンスター1体を特殊召喚する。②:自分・相手のドローフェイズ時、ターンプレイヤーのデッキの一番上のカードを確認し、その後デッキの一番上か一番下に戻す。


 エクシーズ素材を1つ取り除き、任意のSSモンスターをフィールドに呼び出す効果を持つ、強力な中継ぎ役である。②の効果は地味ながら、妨害と手札の質を高める役割を果たすだろう。
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