遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム   作:とある遊戯王プレイヤー

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仲直りは決闘の中で

 ――ユウのデッキの中(精霊世界)

 

『ミッドちゃん、なーんかマスターが殴られたらしいわよ?』

 

 そう言ったのは赤衣の魔術師ヒールマジシャンだった。彼女の視線の先には、素振を繰り返すミッドソードナイトの姿がある。

 

『む? マスターは無事なのか?』

 

『うん。ただまあ、割とイイのを貰っちゃったみたい』

 

『相手は誰が? あのケダモノが如きマスターの隙を突くのだ、ただ者ではないだろうな』

 

『それがさぁ~相手は、今マスターが一緒に居る女よ。ライオさんトコのマスターさんね』

 

『ああ。アミ嬢と言ったか…マスターの事だ。大方、無礼な言葉でも吐いたのだろう』

 

『さっすがマスターの相棒ね。その通りよ。なんでも、彼女の胸についてデケェだの牛だのとか言ったみたい』

 

『胸っ!? 牛!? 暴言極まる…』

 

『でもさ~、これまでデュエル以外まるで興味なかったマスターが、そこに目が行っただけでも事件よ。遂に発情期かしら!?』

 

『ば、馬鹿らしい。どうでもいいな』

 

 そう言うミッドも、ちらっ、とヒールマジシャンを横目に見て、直ぐ様視線を逸らす。

 そして雑念を振り払うべく、素振の速度を増していった。

 が、女房役にはバレバレであった。

 

『…ねぇ、今、意識したでしょ~?』

 

『ぶっ!? な、なんの事だかさっぱり! 我が意識はただ、剣の切っ先のみに宿る!』

 

『いいのよいいのよ~ミッドちゃんだって男の子だしぃ。やっぱり気になるわよねぇ』

 

 ずいっ、とマジシャンが顔を近付けた。

 正直、それだけでミッドは剣を取り落としそうになる。彼女の意地悪げな顔が覗き込んだ。

 

 素振の速度が鈍った、その時だった。

 

 

 ――マナカ ユウは純粋で高潔なる決闘者だ。

 

 

 二人の頭の中に声が響く。

 慌てて距離を取った二人は、上空を見上げた。

 

『この声は…神龍様か!』

 

 ミッドのいう通り、声の主は神龍ピュアリフィケーションドラゴンのものだった。

 この世界に於いての神であり、ユウが遂に召喚した事で永き眠りから目覚めている。

 

 恐らくは、世界のいずこから話を聞いていたのであろう。

 気恥ずかしさを払拭するかのように『神龍様は、マスターをその様に思われているのですか』と、ミッドは問い返した。

 

 純粋、高潔? まるで自分の抱くイメージとは真逆の評価に、神の見る目を疑いかけたのは内緒だ。

 

 ――そうだ。だが故に無知だ。彼奴は搦め手を知らぬ。

 

『ああ~分かります。マスターって本能で生きてますもんね!』

 

『それさえどうにかなれば良いのですが』

 

 ――うむ。今はただ見守ろう。ところでそこな二人

 

『はい~?』

 

『何でしょうか?』

 

 ――心しなさい。これから幾度も死線をくぐる事になりそうです

 

 神の不穏な言葉に、先程までの雰囲気は消し飛んでしまった。

 それでもミッドも、ヒールも『『はい!』』と頼もしい返事を返した。

 

 

 

 

 

 

 

――現実世界 遊技の島 洞穴付近

 

「ええ? ほ、本当にいいんですか〜?」

 

 ユウ一行に、新たに加わった制服姿の少女、萠莉(めりい)はわざとらしい声でそう言った。

 

「いいのいいの! 我々男衆は外で寝るからさ、君はそこで寝なさい!」

 

 とオガタは、洞穴内に枝葉やボロ切れを敷き詰めた簡易ベッドを指差して言う。

 基本的に地べたか、石壁や木にもたれ掛かって寝るのに比すれば、十分過ぎる寝床と言える。

 

「おいオッサン、勝手に――」

 

「ユウ君! レディには紳士的に対応しないとってさっき学ばなかった? いいから俺達むさ苦しい男らは見張りでもしとくよホラ!」

 

 半ばオガタに引き摺られる形で、ユウは洞穴を後にした。

 笑顔で手を振っていた萠莉だったが、二人が視界から消えた途端に表情が消え失せる。

 

(ったく、ひでー寝床! こんなんで寝ろとか馬鹿じゃねーのあのクソオヤジ! まあ勝手にナイト気取りしてるし、盾にはなってくれんだろうけどぉ〜)

 

 そう思いつつも彼女は久し振りの寝床に、直ぐ様寝息をたてていた。

 洞穴の入り口に見張りと称して立つユウは、そんな様子の彼女を尻目に、不満たっぷりに言った。

 

「ったく、オッサンよぉ…アイツもう寝てんぜ? 相当神経図太いぞありゃあ」

 

「ああ、そりゃそうだろうさ。だってあの娘は有名だぜ?」

 

 オガタから返って来た意外な返事に、ユウは訝しんだ。

 

「有名? なんだ、アイツの事知ってんのかよ」

 

「オジサン元イカサマ師よ? ああいった手合いの情報はよく回ってくるの。あの娘の本名は佐野 萠莉。知らない? 佐野って」

 

「……知らねーな」

 

 と、ユウは答えた。

 

「そっか。まあとにかく警戒するに越したことは無いよ。今はまだ害が無いし、飯の恩もあるけど、その内やらかしそうなんだよね…ま、それはいいとしてだな」

 

「ん?」

 

「ユウ君、アミちゃんに謝って来なさい。関係がもつれたままじゃイカンでしょ」

 

「あ? 何でオレが?」

 

「君達が仲違いしてたらオジサンだって困るのよ。君達強いからさ、しっかり連携取れてたら無敵だ。だからホラ、謝っておいでよ。ここは俺が見てるから」

 

 オガタの意見に、ユウは今ひとつ乗れないのだ。

 謝るといっても何を謝るのか?

 

 そりゃ、ちょっとストレート過ぎるかとも思うが…

 

「分かるよ、色々あるのは。でもな、こういう時は素直に頭下げな? おら、行きなって」

 

「…とか言ってよぉオッサン、お前…あの萠莉とかいう女に何かするつもりじゃねーよな?」

 

 その言葉に、オガタはブッ、と吹き出しこう言った。

 

「冗談じゃない、俺は命が大事なの」

 

 と。そう言われてユウも、渋々ながらアミの元へと向かった。

 

 アミは、拠点である洞穴には戻らず、波打ち際で空を見上げていた。

 空には大きな三日月が浮かび、明かり一つ無い島を微かに照らしている。

 

(はぁ…イライラし過ぎね、私)

 

 思えば今日は予想外の出来事が起こり過ぎた。

 しかし、それでも、平静を失っている自分を恥じる。

 プレイヤーキラー、デュエルゾンビに、他のプレイヤーの襲撃を受けたとて、ここまで心乱れはしなかった。

 

 特に乱したのがユウの発言…自分はそういう目で見られていた、という事実が腹立たしい。

 思い出しただけでも、ムカムカしてくる。

 

(落ち着くのよ…せっかくマナカ ユウに近付いたのだから、一時の感情に流されては……)

 

「おい、アミ」

 

「ッ!?」

 

 アミは反射的に飛び退くと、一瞬で振り向き戦闘態勢をとった。

 しかしそこに立っていたのはユウである。

 彼女は構えを解きかけるが、すぐまた拳を固く握った。

 

「あら何か用?」

 

「や、なんかオッサンに謝れって言われてよ。謝りに来たぜ」

 

「ふぅ~〜〜ん……オジサマに言われて、ようやく謝るって、一体何を、かしらねぇ?」

 

「まあ、そりゃ多分アレだよな? デケェとか牛とか…」

 

 悪びれた様子さえないユウ。

 アミは青筋を立てながらも(ダメ、イラついてはダメ…大人な対応をしなきゃ)と自分に何度も言い聞かせた。

 

「…別に何とも思ってないわただしばらく私に近寄らないでくれる?」

 

 だが思いとは裏腹に、口をついて出たのは拒絶反応。

 

「あ?」

 

「貴方が私をそんな目で見ていたのは正直ガッカリよ。襲われでもしたらたまらないでしょ?」

 

 最早、大人の対応など彼女には無かった。

 これに対し普段のユウならば「ハッ! テメェみてぇなメスゴリラを襲うバケモンが居んのかねェ!?」等と返しそうなものである。

 

 しかしながら、ユウもまた(クソッ、ぶん殴りてぇが、抑えろ…抑えろ…)等と言い聞かせていた。

 

「んなワケねェだろ!! 第一テメェみてぇなゴ――」

 

 だが思いとは裏腹に、口をついて出そうになったのは暴言。

 

「ゴ?」

 

「…………ご、豪快なデッキ使う女、襲うワケねぇだろ」

 

 あんまりにも苦しい言い換えであった。

 当然ながらアミも、絶対そんな事言う気なかったろ、みたいな目をしている。

 が、もうユウにはその路線で突き進むしかなかった。

 

「お前の戦術見てたら、どんなヤツだろうと真正面からやり合おうなんざ思わねえよ。パワーだけならとんでもねえ」

 

「パワーだけですって? 貴方は月光の本当の強さを何一つ理解していない様ね…今すぐ、その身体に叩き込んであげましょうか?」

 

 そう言い、アミはデュエルディスクを構えた。

 

「面白ぇ…リターンマッチ、ってヤツだなァ!!」

 

 ユウもまた、ノリノリでディスクを構える。

 

(まどろっこしい事はヤメだヤメ!!)

 

(結局のところ私達は、どんな言葉より――)

 

((デュエルで、語り合えばいい!))

 

 

「「デュエ――」」

 

 

 

「きゃあああああああああああーー!!」

 

 その時だった。

 拠点の洞穴の方から凄まじい悲鳴が聞こえた。

 

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