遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム 作:とある遊戯王プレイヤー
――遊技の島 北端部
『それでは私に出動を命じられる、と? 確か私のやり方は観光客様の不評を買い、プレイヤーキラーとしての役割は剥奪された筈、ですが?』
と、ハットを被った赤服の男は、よく通る声で言った。
「それは一時的に取り消す。【アルレキーノ】…貴様は再び、プレイヤーキラーとして召喚されたのだ。存分に働いて貰う。」
『私を召喚するということは、イベントの進行に遅延が生じていると見ましたが…』
「そうだ。現在、生存しているプレイヤーらは寄り集まり、次々と小規模のクランを形成している。クランの存在は、デスデュエルを鈍らせているし、デュエルゾンビも対策され減りつつある。スケジュールに遅延はまだ発生していないが、何分人手が足りないのだ」
『人手…残念ながら、私はモンスターでありますからその表現は正確ではありませんね。しかし、しかし成る程、そういった状況でしたら、私の手を欲するのも理解出来る…本当に好きにやって良いのですね?』
「ああ。構わん。存分にやれ」
『承知致しました。この【
ハットを取っておじぎをすると、アルレキーノは出撃していった。
――少し前、洞穴前
(はぁ…ユウのヤツ、上手くやってっかなぁ…)
オガタは、洞穴前で見張りをしながら、そんな事を思い過ごしていた。
ユウの背中を押して送り出しはしたものの、正直不安でしかない。
まさか二十歳にもなって、ああも物言いを知らないヤツが居るなんて、最近の若者は怖いね〜と。
(頼むぜマジで…ギスギスしたのは性に合わんのよ)
その願いが届いてくれれば…
そしてまた、物思いにふけようとした時だった。
背後、つまり洞穴内から『ミスターオガタ、ですね?』と、声がした。
「は、はいぃ!? だ、誰だ!?」
有り得ない。洞穴内には寝ている萠莉が居るだけで、自分が見張っているのだから、中に侵入など出来るはずが無いのだ。
ではこの、男の声は?
『そしてこちらはミスメリイ…おやおや、いけませんね。お二人共、どうやら当アトラクションをお楽しみ頂いていないご様子だ』
振り向きざまに、デュエルディスクのライト機能を使用した。
そこに浮かび上がったのは…ハットを被った赤服の男!
「う、うああああ!?」
『はじめまして、ミスターオガタ。私、この島の死配人を自称しております、プレイヤーキラー【アルレキーノ】と申します。唐突ではありますが、あなた方にはデュエルをして頂こうかと思いまして…勿論命を掛けた、刺激と興奮のデュエルをね』
プレイヤーキラー。
その単語はオガタに、その場からの逃亡を選ばせようとするには充分過ぎた。
『ああ、遠慮なさらないで。私どもはお客様にお楽しみいただけるよう、努力を惜しみません。プレイヤーキラー権限を発動致しましょう』
が、そんな考え、アルレキーノにはお見通しだった。
オガタのデュエルディスクが、強制的にデュエルモードとなり、拘束用デュエルアンカーを射出した。
そして、そのアンカーは…萠莉のデュエルディスクを捉えていた。
「あっ!?」
強制デュエル、開始。
未だ眠っている萠莉のディスクも強制起動、お互い自動的にデッキシャッフルを開始してしまった。
『さあ、これより同一クラン内での悲劇のデュエルが開始されます…お嬢さん! ミスメリイ! さあ起きて! 貴女も踊りましょう、さあ!』
「ぎぃやあ゛あ゛あ゛あ゛うるせーー!! 騒いでんぢゃ、ねえー!!」
跳ね起きた萠莉。
寝起きにまで猫はかぶれないらしく、これまで築いたイメージを一撃で粉々に破壊する声量で絶叫した。
(うわぁ…やっぱこれが本性かよ、噂の通りじゃんか佐野 萠莉…いや、女帝メリィ)
『これはこれは、大変元気の良いお嬢さんだ』
「あ゛〜? おまえ誰よマジキモ――」
続けてメンチを切ろうとまでする萠莉だったが、視界の端のオガタの存在に気が付いたらしく、即座に
「き、きゃー!? あなた、誰!?」
と、声色を3オクターブくらい引き上げて、恐怖に歪んだ表情を作った。
「萠莉ちゃん、コイツはプレイヤーキラーだ! デュエルゾンビの親玉みてーなヤツらだよ! 俺らのデュエルディスクを操って無理矢理デュエルに持ち込まれた!」
「え、そ、な、何で!?」
『ゾンビの親玉とは心外ですね。私達プレイヤーキラーは運営側ですから、アトラクションで本来の遊び方をしない者を警告するのは当然の権限でしょう? 貴方たちの異常に少ないデュエル回数が執行理由ですよ』
と、アルレキーノが宣言した。
彼の指摘の通り、デュエルアンカーを使用したデュエルは、オガタは一回、萠莉に至っては経験無しである。
「嫌! 私そんなこと出来ないよぅ! 助けてよ運営さん!」
『一度マッチングしてしまったのですから、取り消しは効きません。しかしそうですね…ならば勝者には特権を与えましょうか。勝者には、この後に生き残りの皆様で行われるトーナメント戦の出場権を与える、という条件で如何でしょう? トーナメント戦は8名しか参加出来ませんから、その内の1人になれれば、最後まで生き延びる確率もグンと上がります』
「嘘くせぇ…特権とやらは間違いないか証拠とかあんのか?」
『私は運営側です。間違ったルールは提示致しませんよ』
「やるしかないわオガタさん、私、怖いけど精一杯戦う!」
(ぐっ…この女ッ…)
萠莉の変わり身の速さに辟易としつつも、泣こうが喚こうが、どの道プレイヤーキラーは逃がしてはくれないだろう。
オガタも腹を括るしかなかった。
「「デュエル!」」
萠莉 LP4000
オガタ LP4000
「私のターン! モンスターをセット、魔法、罠ゾーンに2枚セットしてターンエンドですぅ」
先程、アルレキーノが言っていた言葉を思い返すオガタ。
デュエルが異常に少ない…この島には、デュエルに勝利してデッキを強化出来るというルールがある以上、萠莉のデッキが充分強化されているとは考えにくい。
つまりは、さほど強力なカードが入っていないのではないか? という事だ。
現に自分がそうで、一回デュエルゾンビと戦って、エクストラデッキを一回分解放したのみ。
(伏せ2枚か…ちょいと怖いが、仕掛けるか)
「俺のターン、ドロー!」
手札をざっと眺めるオガタ。
幸い引きは悪くない。
「メインにはいるぜ! 手札から【レッド・リゾネーター】を召喚! 召喚時効果を発動する!」
【レベル2、チューナー、炎属性、悪魔族、ATK600】
そして召喚時効果は、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚出来るというものだ。
「オガタさん…お願い、手加減してね…」
「いやぁ、それはちょっとな…手札から【終末の騎士】を特殊召喚! 終末の騎士の効果により、デッキから【ヘルウェイ・パトロール】を墓地に送る。そして墓地のヘルウェイ・パトロールを除外して、手札から【クリッター】を特殊召喚!」
『ほぅ…チューナーとそれ以外のモンスターが2体ですか』
「俺は、レベル2レッド・リゾネーターと、レベル3クリッターでシンクロ召喚! 現れろ【ヘル・ツイン・コップ】」
【レベル5、闇属性、悪魔族、シンクロ、ATK2200】と表示。
「更にクリッターの効果で【魔界発現世行きデスガイド】を手札に加えておく。さて――」
自分のフィールドには、戦闘で相手モンスターを破壊した時に、攻撃力を800アップしてもう一度攻撃できるヘル・ツイン・コップが存在している。
萠莉のフィールドのセットモンスターを破壊すれば、攻撃力3000となり、直接攻撃が出来るのだ。
そして終末の騎士の攻撃力は1400。
この2体の攻撃が全て通れば自分の勝ちである。が…
(くそ、どうする…)
「お、オガタさん? まさか私を倒しちゃうとか、考えてないよね?」
「……すまんな萠莉ちゃん。バトル!」
「ふぅん、やっぱそうなんだ……このクソオヤジ! でもさぁ、いいの、攻撃して? 伏せ2枚怖くない? ってかこのあーしが、そんな簡単に負けると思えンの?」
(確かにな! だが俺のデッキはリソースが少ない、一気にカタをつけねえとジリ貧だ)
「ヘル・ツイン・コップで、セットモンスターに攻撃!」
「ああ〜あーしの忠告無視しちゃったねクソオヤジ! セットモンスターは【グレイドル・イーグル】!」
グレイドル・イーグルとやらの守備力はたったの500。
ヘル・ツイン・コップの攻撃を受けて、鳥型のモンスターは粉々に飛び散った…かに思えた。
「な、なんだぁ!?」
オガタが素っ頓狂な声をあげた。
それは、砕け散ったモンスターが再び寄り集まり…スライム状の物体となって、ヘル・ツイン・コップにへばりついたからだ。
「あははははははははは!!! グレイドル・イーグルの効果! 戦闘、またはモンスター効果で破壊された時、相手モンスター1体に取り憑き…そのモンスターをあーしのモノにしちゃうからァ! あんがとオジサン、こーーんな強いモンスターをプレゼントしてくれてさァー!」
そして、ヘル・ツイン・コップの形をした、ヘル・ツイン・コップだったものは…萠莉のフィールドに移ってしまったのである。
「オイオイ…コイツは洒落になんねーぞ!」