遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム   作:とある遊戯王プレイヤー

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罪人の流れ着く島 ①

 某所。

 薄暗く、必要最低限のものしか置かれていない…圧迫感さえ感じる灰色の部屋にて。

 

 一つしかない机に頬杖をつく男は、珍しく破顔していた。

  小型テレビ程のモニターに表示された青年の顔写真を確認したからだ。

 男は、そばに控える女に、こう言った。

 

「こいつを、例のショーに参加させるのだな?」

 

 と。

 

「はい。マナカ ユウ……経歴、デュエル能力、身体能力、いずれにしても満足のいく水準かと。少々性格に難アリとありますが」

 

「フ…その方が都合良いでしょう。奴らには、そういった跳ねっ返りが痛い目を見るのも、一定の需要があるだろうしね」

 

「はっ。では今回のゲームも、より良きものになるよう我々も粉骨砕身、努力致します。ファング副長官殿」

 

 ぺこり、と完璧なおじぎをし、女は退室した。

 ファング…そう呼ばれた、若きセキュリティ副長官は

未だ、画面中のユウを眺めていた。

 

(ふふ、ははは…少し痩せたか? だがより研ぎ澄まされているな。ユウ、貴様が参加するなら、この遊戯(ゲーム)、多少は有意義なものになるだろう)

 

 そして、自身のデュエルディスクにセットされたデッキを見た。

 

(私と同じく、SSを使う者として無様な負けは許さんぞ、マナカ ユウ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……ん?」

 

 ユウは、頬を打つ水滴で目を覚ました。

 開けた目に初めに映ったのは、露に濡れる草葉だった。

 

「い、てて…何だ?」

 

 頭の鈍痛に悩まされながらも体を起こすユウ。

 そして周囲を一通り眺めてから…直ぐ様、危機感を覚えた。

 

(待て…何故、オレはこんな人里離れた森の中で寝ていた? くそ、思い出せ、一体何があった!?)

 

 記憶を必死に辿るユウだったが、中々思い出すことは出来ずにいた。

 ただ、本人はまだ気付いてはいないが、顔には既に刻まれている。

 

 マーカーという、刻印が。

 頬に走る罪の証。黄色のライン。

 

「…うん?」

 

 そして彼の腕には展開状態のデュエルディスク。

 起動していたまま、放置されていた証だ。

 現在はスリープモードとなっているらしい。

 

(オレは誰かとデュエルして、中断していたのか? そうだ、ディスクの機能で対戦履歴を遡れば…)

 

 と、ユウがディスク機能を回復し、オンライン接続をした直後であった。 

 

『生体認識――No.179、マナカ ユウを確認しました。これより【プレイヤー】として参加します』

 

「なに?」

 

 ディスクから聞き慣れない音声が響くと同時に、それは草木の影から現れた。

 

 それ、とは人間の形をしていた。

 目は白目を剥き、口からはヨダレが垂れている中年男性…額にはマーカーが刻まれており、何らかの犯罪を犯してはいるのだろう。

 

 だが、そんなゾンビの様な異常状態中年は、右手に装着されたデュエルディスクを構えた。

 

「くっ、なんだおい、アンタもデュエリストか!?」

 

《参加デュエリスト確認。デュエルアンカー射出》

 

 中年男性のディスクから手錠の様なものが射出され、問い掛けたユウのディスクに、カチリとはまり込む。

 手錠から伸びる糸がピンと張り、彼は異形と繋がれてしまったのだ。

 

「こいつぁ…まさかデュエル強制アンカーか!?」

 

 しかも、ユウのデュエルディスクが勝手にデュエルモードに入ってしまい、自動的にデッキシャッフルを開始する。

 

《デュエル!》

 

 ゾンビ的中年は、シャッフルを終えたデッキからおもむろにカードを5枚引いた。

 そしてユウも、反射的に5枚引いていた。

 

 デュエルゾンビNo.88 LP4000

 

 ユウ LP4000

 

《ワタシの先行。先行は最初のドローフェイズ時、デッキからカードをドロー出来ない。よってスタンバイフェイズから、メインフェイズへと移行する》

 

 意外と流暢に喋り出した中年。

 5枚の手札より1枚のカードをつまみ、デュエルディスクにセッティングした。

 

《ワタシは、手札よりマーダーサーカスゾンビを攻撃表示で通常召喚する》

 

 すると中年の前に、モンスターカードの映像…禍々しいピエロが現れた。

 名前の通り、腐った死体の様な道化師で、手にしている鎌がギラリと光る。

 

 ソリッドビジョン。プレイされたカードを、映像で投影し、あたかもそこにモンスターが居るかの様に表現するディスクの機能だ。

 

 【ATK 1350】とモンスターの下に表示。

 

 あれは、このモンスターの攻撃力。所謂、戦闘能力である。

 

《先行はバトルを行えない。よってワタシはターンエンド》

 

「チッ、やるしかねぇか! オレのターン!」

 

 明らかに現状は普通じゃない。

 

 だがデュエルを挑まれた以上、相手が何であれ倒すしかない。

 しかもデュエル強制アンカーは、もしユウが知っているものだとするならば、敗者のデュエルディスクは…

 

「ドロー!」

 

 後攻からは自分のターンの最初に、デッキからカードを1枚引く事が出来る。

 ユウは直ぐ様、引いたカードを確認。

 

(よし、コイツなら!)

 

「オレは手札から【SS(シャイニーソルジャー)ミッドソードナイト】を召喚する!」

 

 ユウもまた、カードをモンスターゾーンにセットする。

 すると青衣を纏った剣士が飛び出し、剣を構え、勇猛な雄叫びをあげる。

 

 【ATK1450】と表示。

 

「バトルだ! ミッドソードナイトで、マーダーサーカスゾンビを攻撃!!」

 

 青衣の剣士は、指示に従い突撃。剣を振るう。

 道化師ゾンビはなすすべもなく両断され、光の粒子になって消えた。

 

 攻撃力1450のモンスターで、攻撃力1350のモンスターを戦闘破壊。

 よって、その差分の100ポイントのダメージを、プレイヤーである中年は受ける。

 

 デュエルゾンビNo.88 LP4000 → 3900

 

「俺はこれでターンエンド」

 

 中年は《ワタシのターン》と宣言し、デッキからカードを1枚ドロー。

 

《ワタシは、魔法・罠ゾーンにカードを1枚セット。ターンエンド》

 

(っしゃ! これなら、一気にライフを削れる!)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 しかし、ユウは目覚めたばかりで万全ではなかった。

 更に未知の状況に焦りもあり、引いたカードを確認もせず、バトルに突入してしまったのだ。

 

「バトル! 俺はミッドソードナイトで、直接攻撃!」

 

 直接攻撃、ダイレクトアタック…モンスターが、プレイヤーに直接、攻撃する行為。

 これが決まれば中年はモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。

 

 即ち、LP3900が、1450減り、2450となる。

 が、それは罠だった。

 

《ワタシは、魔法・罠ゾーンのカードを発動! 永続罠カード、闇の呪縛》

 

 トラップカード。闇の鎖が伸び、ミッドソードナイトを雁字搦めにしてしまう。

 

「しまった!」

 

《ミッドソードナイトは、闇の呪縛の効果により攻撃出来ず、その攻撃力は700ポイントダウンする》

 

 青衣の剣士が苦悶の声をあげる。ATKの値が、750に減少していた。

 

「くっ、ターンエンドだ!」

 

《ワタシのターン、ドロー》

 

 中年がカードを引く。

 

《ワタシは、手札からドラゴンゾンビを通常召喚する》

 

 かつては立派な龍だったのだろうが、腐れ墜ちたゾンビと化した龍が、呪いの咆哮をあげ出現する。

 

 【ATK1600】と表示。

 

《ワタシは装備魔法、【デーモンの斧】をドラゴンゾンビに装備。攻撃力を1000ポイントアップする》

 

 ドラゴンゾンビのATKが、2600にアップ。 

 

《更に、【デーモンの斧】をもう1枚発動。ドラゴンゾンビに装備する》

 

 ドラゴンゾンビのATKが3600に。

 これでは、最上級モンスタークラスの攻撃力すら超えてしまっている。

 

「くっ!?」

 

《そしてもう1枚。ワタシは【愚鈍の斧】を、ドラゴンゾンビに装備。更に1000ポイントアップ》

 

 ドラゴンゾンビのATKが更に1000アップし、4600となる。

 

《バトル! ワタシはドラゴンゾンビで、ミッドソードナイトを攻撃!》

 

 腐れた龍の瘴気ブレスが、ミッドソードナイトを包み破壊する!

 

 攻撃力の差は歴然としていた。4600に対し、たったの750。

 瘴気が、凄まじい衝撃となってプレイヤーを打つ!

 

「ぐあああああああ!?」

 

 ライフポイントのカウンターが、けたたましい音をたてて減少してゆく。

 

 ダメージ、4600-750=3850

 

 ユウ LP4000 → 150

 

 一気に9割以上のライフを削り取られたユウは、衝撃に撥ね飛ばされたかのような錯覚を覚えた。

 

 残りLP150、フィールドにモンスター無し。彼のライフは風前の灯であった。

 

《バトルフェイズを終了。ターンエンド》

 

 ゾンビは淡々と、そう告げた。

 

(ぐっ……また、負けるのか? “また?”)

 

 勝負に負けた者はどうなるのか。ユウはそれをよく知っていた。

 そして今、思い出した。敗者の末路を。

 

 全てを失い、踏みにじられる。

 そこに救いなど有りはしない。

 

(そうだった。何をビビってやがる! “オレ”は全てを奪われた。だが、もう二度と奪われるものか…相手を殺す…デュエルで殺す!)

 

 ユウの双眸は敵を真っ直ぐに捉えた。

 

 そして口を開く。頭の鈍痛は、嘘の様に消え失せていた。

 

「ハッ、おかけで目が覚めたぜ、ゾンビ野郎。なぁお前、デュエルを楽しんでるか?」

 

《…………》

 

「デュエル中に無駄口は叩かない。お行儀のいいこった。だがね、デュエルってのはもっと楽しむモンだろう?」

 

《…………》

 

「残念だがオレは楽しんでるぜ…特に、勝利を確信したヤツを、ブチ破んのが格別だ! だから脳ミソフル回転で考えんのさ。どうやって、お前の命を削り取ってやろうかってなぁ!」

 

《お前のターンだ》

 

 苛立たしげにでもそう言ってくれれば、少しは親近感が沸いただろうに。そう、ユウは思った。

 

「そう急かすんじゃねえよ。オレのターンだ」

 

 デッキの上に手を置き、目を見開くとカードを1枚引く。

 

「ドロー!」

 

 そのカードをしっかりと確認したユウは、口の端を吊り上げ、宣言した。

 

 「ククッ……さぁ、遊戯の時間だ!!」




【SS(シャイニーソルジャー)リザードマン】

 レベル4、光属性、爬虫類族、効果モンスター

 ATK1600 DEF1000

 このカードの①、②、③の効果はいずれも1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが召喚に成功した時、手札からサイキック族「SS」モンスター1体を特殊召喚できる。②:このカードが「SS」と名のついたカードの効果によって特殊召喚された場合、デッキから鳥獣族「SS」モンスター1体を手札に加えることができる。③:自分フィールドにこのカード以外の「SS」モンスターが存在する場合、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊する。

 
 1ターンに1度、表側表示だけとはいえ、フィールドのモンスター1体を破壊する効果を持つ。攻撃力もそれなりにあり、汎用性も高い。
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