遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム   作:とある遊戯王プレイヤー

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彼方よりの刺客 ③

 

――1年前 セキュリティ本部前

 

「こちらセキュリティ本部ビル前より中継です。先日の、元少年プロデュエリスト、ソラノ カナタさんの冤罪発表を受け、市民からは動揺の声が広がっています」

 

「ファング副長官の会見によりますと、極めて大規模な隠蔽、記録の改ざんが行われていた事件であり、あろうことかセキュリティの幹部まで関わっていた、との趣旨の発言まで飛び出しました」

 

「これを受け、セキュリティ組織の抜本的な見直し、改革が進められ、副長官以下の数名の幹部が緊急逮捕される事態となりました」

 

「また、証拠として提出されたデュエルディスクの記録の改ざんを巡り、複数名の逮捕者が出ています。今後、更に増えるとの見方もあり、動向が注目されます」

 

「ソラノさん! 今のお気持ちは如何ですか!? ソラノさーん!!」

 

 報道陣を振り切り送迎車へと乗り込んだカナタは、サングラスを外すと溜め息をついた。

 

「随分と疲れてるな」

 

 運転席に座るファングが、助手席のカナタに言う。

 

「……もう、呆れるしかない。何が悲劇の元プロデュエリストだ…あれほど私を嬉々として犯罪者呼ばわりしていたクセに!」

 

「だろう? あれが力無き市民だよ。彼らは権力者がしくじるのを舌舐めずりして待っているだけの、無責任な木偶の坊に過ぎん」

 

「何なんだ連中は? そっとしていて欲しいのに、今度は私の過去の経歴を長々と…実家まで放送しやがって…!! 善意のつもりなのかよ!」

 

「まあ、これでも飲んで落ち着け」

 

 ブルーアイズマウンテン缶を飲み干したカナタは、一際大きな、わざとらしい溜め息をついた。

 

「過熱報道もすぐにおさまる。人の関心事などひと月保てば良い方だ…その時には次の標的が生まれている事だろう」

 

「セキュリティ副長官の貴方なら、次の標的を産み出すのも容易いと?」

 

 カナタの意地悪い質問にも、ファングは飄々と

 

「それは穿った見方だ。はみ出し者など掃いて捨てる程に存在する。悪人はもっと多いぞ」

 

 と答えた。

 

「……ファングさん、貴方は何がしたい?」

 

「今は、貴様の様な力を持つ人材を確保したい」

 

「その後は?」

 

「決まっている。俺は世界を獲るのだ!」

 

 カナタは一瞬…眼前の男が何を言っているのか理解出来なかった。

 

 

 

 

 

 

――現在 トーナメント第一回戦

 

 亜空間より帰還したクラッキング・ドラゴンには、制限が何も掛かっていない。

 攻撃力は元に戻り、効果の発動と攻撃宣言は問題無く行える状態に戻っているのだ。

 

(クラッキング・ドラゴンは、相手がモンスター1体のみを召喚、特殊召喚した際に、そのモンスターのレベル×200ポイントの攻撃力をダウンさせ、ダウンさせた数値分のダメージを相手に与える)

 

(ヤベェな…ホワイト・ラミアが墓地から蘇れば、レベルは6、1200ポイントのダメージを喰らっちまう)

 

 ユウのライフポイントは残り600

 つまり、先程破壊されたラミアを蘇生すれば即死だ。

 

 それだけではない…ここから先、レベル3以上、かつ攻撃力が600ポイント以上のモンスターをフィールドに出すだけで、ライフポイントは尽きるのだ。

 導火線に火は既に付き、爆発まで刻一刻と迫っている。

 

(ぐっ…どうすりゃいい…どうすりゃアイツを…)

 

 守備表示で粘る手も考えた。

 しかしそれではカナタがモンスターを引き当てれば終わってしまう。

 ここまで闘い合い分かったことだが、カナタはチャンスをみすみす逃す様な男ではない。

 

「私はターンエンド。さあ、君のターンだよ」

 

「ああ。ホワイト・ラミアは蘇生しない。オレのターン」

 

(…せめてアレだ、アレさえ引ければ…だが…)

 

 ユウはデッキの一番上のカードに手を掛けた。

 現在、思い付く限りの戦術を思考し、唯一突破が可能な手は…デッキに3枚積まれている、あるカードを引き当てること。

 だが、このタイミングでピンポイントに引くことなど――

 

『頑張れマスター!! フレーッ、フレーッ!』

 

「あ?」

 

 その時だ…唐突に、声が聞こえた。

 それも自分の墓地からである。

 

『そうだマスター! やれぇ! 突っ込めェ! 風の如く!』

『貴様ならどうにか出来るだろう! 臆するな!』

『ワシは墓地から復活出来なんだが、お主ならば!』

『μΗπΕνμω£!』

『欲しいカードあんなら引き当てればええ! 早う引け!』

 

(クソが、ヤツらか…うっせえなぁ!)

 

「な、なんだこの…声は? マナカ ユウ、君が何かしているのか!?」

 

 と、狼狽した様子で、カナタは言った。

 もしかしたら彼にも、この賑やか過ぎる声援が聞こえてしまっているのかもしれない。

 

――『逆になーんでお前みてーな悪い奴に見えちまうんだ? 今までも何人かアタイが見えてたヤツは居たが、どいつもこいつもデュエル好きの良い連中だったぞ』

「簡単よ。ユウがデュエル好きの良いヤツだからでしょ」――

 

 脳裏に、アミとライオのやり取りが再生された。

 

「答えろ! 下らない小細工なら許さないぞ!」

 

「ったく…オレにはなーんも聞こえねぇぜ? 気のせいじゃね?」

 

 ユウはほんの少し、ニヤけながら答えた。

 それが気に障ったらしく、カナタは尚もキョロキョロと忙しなく目線を彷徨わせては、こちらを睨み付けている。

 

「カナタさんよ、どうやらアンタはデュエル好きの良い奴らしいな。ドロー!」

 

 ユウの引いたカード、それは…

 

「オレは手札から【SSリターン】を発動! 墓地のミッドソードナイト、ヒールマジシャン、リザードマン、ストームメイカー、ミディエイト・サイキッカーをデッキに戻し、2枚をドローする! さぁ、どうなるか、なァァ!!」

 

 再び、彼はカードを引く。

 口元が僅かに吊り上がった。

 カナタもまた、ユウのリアクションを見逃さなかった。

 

「……なんだ、何を引いた?」

 

「手札から、【SSショートダガー】を通常召喚する」

 

【レベル2、光属性、戦士族、ATK1150】と表示。

 すかさず、クラッキング・ドラゴンの効果が飛ぶ!

 レベル2だから、攻撃力は400ダウン、ユウに400のダメージが発生する…筈だった。

 

「おっと、待ちな! 速攻魔法【SSサモンリピート】を発動するぜ! ショートダガーをリリースし、デッキからミディエイト・サイキッカーとリザードマンを特殊召喚するぜ!」

 

(そうか! クラッキング・ドラゴンの効果は、1体のみのモンスターが召喚、特殊召喚された際に適用されるもの…2体同時に出てきたコイツらには使えない)

 

「特殊召喚に成功したサイキッカーと、リザードマンの効果により、ミッドソードナイトとストームメイカーを手札に加えるぜ!」

 

(しかし、サモンリピートでデッキから呼んだモンスターは攻撃出来ない様だ…リザードマンの効果でクラッキング・ドラゴンを破壊されても、私のライフポイントは3000ある…まだ勝負は分からない)

 

 そう思っていた。

 だが…ユウは既に勝利を確信していたのだ。

 

「オレは、ミディエイト・サイキッカーとリザードマンでエクシーズ召喚!! 現れろランク4【SSF(シャイニーソルジャー・フライング)ストーム・ライダー】!」

 

【ランク4、光属性、鳥獣族、ATK?】

 

 現れたのは、エクシーズモンスターだった。

 

「くっ…そういう事か!」

 

 エクシーズモンスターはレベルを持たず、代わりにランクを持っている。

 すなわち、レベルを参照にするクラッキング・ドラゴンの効果の対象外であるのだ。

 

「このままバトルに入るぜ! ストームライダーでクラッキング・ドラゴンを攻撃する!」

 

「馬鹿な…何を考えている!?」

 

 クラッキング・ドラゴンの攻撃力は3000。

 対するストームライダーの攻撃力は?。

 ?表示は、基本的には0という事になる。

 

「そりゃあコイツだ! ストームライダーの効果発動ォ! 戦闘を行うダメージステップ開始時エクシーズ素材を1つ取り除き、相手モンスターの攻撃力の倍の数値になるぜ!」

 

 ストームライダー ATK? → 6000

 クラッキング・ドラゴン ATK3000

 

 6000 − 3000 = 3000

 

 カナタ LP3000 − 3000 = 0

 

「そんな…ぐああああああああ!!」

 

 1回戦 勝者ユウ




 

【SS(シャイニーソルジャー)リターン】通常魔法

 このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。①:自分の墓地に存在する通常召喚できる「SS」モンスター5体を対象として発動できる。そのモンスターをデッキに戻してシャッフルする。その後自分は2枚ドローする。

  SSモンスター専用のリソース回復札。モンスターを次々と展開するSSデッキにとって、条件を満たすことは難しくなく、更に2枚ドロー出来る強力なカード。
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