遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム   作:とある遊戯王プレイヤー

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堕ちた天使 ①

 

 身体の倍程にも伸びた、ストームライダーの光の羽根が、すれ違いざまにクラッキング・ドラゴンを両断した。

 

 クラッキング・ドラゴンは破壊され、ダメージがカナタを襲っていく。

 ダメージの奔流に飲まれながらも…カナタはあの日、遊技の島のゲームが始まる前日の事を思い出していた。

 

 

 

 

 

――「カナタ、貴様もこのゲームに参加するのだ」

 

 副長官ファングは、カナタを執務室に呼び出すなり、こう切り出した。

 同時に分厚い資料…企画書を、テーブルへと投げ渡す様に乱雑に置いた。

 

「私がこの手の裏デュエル企画に参加すると思っているのか?」

 

「フン、貴様の過去に配慮している暇はない。これは単なるイベントではないのだ。俺が世界を獲る為の一歩である」

 

 ファングはカナタの雇い主という形である。

 どの道、カナタが表舞台に立つには、かつての悪名と憐憫同情の視線が邪魔をしていたのだ。

 

「……ハァ…分かったよ。私は何をすればいい?」

 

「勝てばいい。その敗者の中に、マナカ ユウを加えるだけだ。貴様なら容易いだろう? ただし、マナカ ユウが、とあるモンスターを召喚していなければ手を出すな」

 

「マナカ ユウ? そいつは何者なんだ? それにとあるモンスターとは――」

 

 ファングは、フン、と顎で企画書を示した。

 読め、という事なのだろう。

 

 一通り目を通したところで、カナタはふと手を止めた。

 

「ファング、君は、本気で……」

 

「俺は、嘘だと分かる冗談しか言わんよ」

 

 

 

 

 

――「ふぅ……私の負けだ。先に進むがいい、マナカ ユウ」

 

 閉ざされた扉が開く。

 勝者のみが先に進むルールである為、ユウのみが歩を進める事を許された道だ。

 

「ああ、だがなカナタさんよォ〜オレが勝ったんだ、質問に答えて貰おうか。誰に頼まれてオレを消そうとした?」

 

 しかしながら、ユウは進まずにカナタに訊ねた。

 

「残念だが私には答えられない…だが、ヒントくらいならやろう」

 

「はぁ? 答えを教えろっつってんだけど?」

 

「依頼人は裏切れないのでね。ヒントは、既に君は会っている人物だよ。そして、私みたいに君の撃破依頼を受けているのは1人ではない、とだけ伝えておく」

 

「チッ、一番嫌なヒントの出し方しやがったな」

 

「そりゃあね。ホラ、もう君の顔は出来れば見たくないから先に行ってくれないかな?」

 

「分かった分かった、敗者はゆっくり待ちぼうけ食ってな!」

 

 ユウが先に進むなり、扉は閉ざされた。

 カチリとロックのきいた音もする。後戻りは不可能の様だ。

 

 

 

(さて次は誰だろうなぁ…オガタのオッサンとかなら楽勝でいいんだが)

 

 などと失礼な想像をしつつ、更に先の扉を開いた。

 

「邪魔するぜ〜」

 

「あらぁ、いらっしゃい…よく来たわねボウヤ」

 

 扉の先に居たのは、落ち着いた雰囲気のある妖艶な美女であった。

 しかしながら顔にはマーカーが刻まれており、犯罪を犯した者であるのに違いはない。

 

「へぇ…アンタ、随分速く1回戦を突破して来たんだなァ…こりゃあ退屈させちまったか?」

 

「お気遣いなく。手札が良かったのよねぇ」

 

「そりゃあ運がいいなぁ。オレの対戦相手は、かなりの使い手でなァ、ガラになく苦戦しちまったんだ。因みに、アンタをエスコートしたのはどんなヤツだった?」

 

「フフ、気になる?」

 

「気になるねェ…イイ女の秘密ってヤツを是非、教えちゃくれねぇか?」

 

「アタシをエスコートしてくれたのは、無精髭の素敵な殿方だったわぁ…彼のデッキ、ちょっと物足りなかったけれど、年甲斐もなく一生懸命な姿が、ちょっとキュンと来ちゃったのよねぇ」

 

 恐らくは、この女が言っているのはオガタであろう。

 エクストラデッキを埋めるのに精一杯だったオガタが勝ち抜ける程、甘い戦いではなかったという事か。

 

「もしかして、ボウヤの知り合いだったのかしらぁ?」

 

「いやァ、知らねえヤツだなァ…」

 

(オッサン…安らかにな)と、心の中で呟くユウ。

 死んでねーよ!! との声が今にも聞こえてきそうだった。

 

 ともかく眼前の女はオガタを倒している。

 ここまで残っている事から、実力は推して知るべきだが…もっと、底知れぬ何かを感じた。

 

「もういいかしら? ギャラリーも退屈してしまうでしょうし、始めましょう」

 

「…そりゃそうだ。んじゃ、とっとと行くぜ!」

 

 2人はデュエルディスクを構えると、第2回戦を開始した。

 

「「デュエル!!」」

 

 ルシア LP4000

 

 ユウ LP4000

 

「アタシの先攻ね…手札から【堕天使イシュタム】の効果を使うわ。【堕天使スペルビア】と一緒に手札から捨てて2枚ドロー…」

 

(堕天使…成程、オッサンにゃあ荷が重い訳だ)

 

「ところでボウヤ、あなたは神々や堕天使を信じるかしら?」

 

 と、唐突に女…ルシアが語り掛けて来た。

 

「あ? 宗教の話か? ワリィがそーいうのは一切興味ねぇな」

 

「はっきり言うわねぇ…益々気に入ったわ。安心して、デュエル相手には必ず訊いているのだけれど、実はアタシも無神論者なの。この世界には神も悪魔も居ない」

 

「……」

 

「でもカードの中には、居ると思っているのよ」

 

「なに?」

 

「ふふ、手札より【堕天使ユコバック】を通常召喚、効果を発動しデッキから【神属の堕天使】を墓地に送るわ…ボウヤは聞いたことがあるかしら? カードの精霊の囁きを」

 

 カードの精霊の囁き。

 それは一般人であるなら、笑い飛ばす単語であろう。

 

 しかしながら…ユウは間近に精霊を連れていた人間を知っている。

 自身もまた、度々デッキのモンスターらの声を聞く。しかも殴り合いまで経験済みだ。

 

 ルシアの言葉を、戯言と言い捨てられる立場に無い。

 

「……聞いたことねーな」

 

「あら、あなたなら笑い飛ばしてアタシの正気を疑るくらいはしてきそうなものだけれど…随分と大人しいのねぇ?」

 

 まるで全てを見透かされているかの様だった。

 こちらを試したとも取れる物言いに、真意を測りかねるユウは沈黙を選択する。

 

「【堕天使の戒壇】を発動。墓地の堕天使スペルビアを守備表示で特殊召喚するわ。さらにスペルビアの効果により、堕天使イシュタムを墓地より特殊召喚する」

 

 堕天使スペルビア

【レベル8、闇属性、天使族、DEF2400】

 

 堕天使イシュタム

【レベル10、闇属性、天使族、DEF2900】

 

「アタシはね、この堕天使達の声が聞こえたの…昔々の話だけれど…彼等の声はいつでも、導いてくれた。そうしたらいつの間にかアタシは、沢山の人が周りに居た…さあ、ユコバックとスペルビアの2体のモンスターでリンク召喚する…現れなさぁい【失楽の堕天使】」

 

 失楽の堕天使

【リンク2、闇属性、天使族、ATK1600、リンクマーカー:左下、右下】

 

 リンクモンスター。

 シンクロモンスターやエクシーズモンスターと違い、素材となるモンスターにチューナーや同レベルである必要がない、極めて縛りの緩い召喚法である。

 

 例えばこの失楽の堕天使などは、素材条件として天使族モンスターを指定しているが、天使族であるなら何でも良い。

 何なら、トークンを素材として使用もできる。

 

 欠点としては守備表示が存在しないこと。

 常に攻撃表示であるから、相手に高攻撃力モンスターが居た場合は的になりがちである。

 とはいえ一部の、守備に変更する類の妨害を受けないのは強みであるが。

 

「堕天使イシュタムの効果発動。1000ライフポイントを支払い、墓地の戒壇の効果を適用するわぁ…再び復活しなさいスペルビア」

 

 ルシア LP4000 → 3000

 

「そしてスペルビアの効果により、ユコバックを復活する…」

 

 気が付けばルシアのフィールドにはまた、4体ものモンスターが現れている。

 

「その戦術も堕天使様の導きとやらかい?」

 

「いいえ…これはアタシの戦い方よ。スペルビアとユコバックで再びリンク召喚【I:Pマスカレーナ】をフィールドに」

 

 I:Pマスカレーナ

【リンク2、闇属性、サイバース族、ATK800、リンクマーカー左下、右下】

 

(またリンク召喚か…)

 

「カードを1枚セット。ターンを終えるわぁ…この時、失楽の堕天使の効果により、天使族の数×500のライフポイントを回復する。失楽とイシュタムのお陰で1000回復ね」

 

 ルシア LP3000 → 4000

 

「オレのターン、ドロー!」

 

「フフ…あなたのお手並みは如何程かしらぁ?」

 

「これまでの野郎共たぁ一味違うだろうぜェ! 手札から【SSミッドソードナイト】を召喚! 効果発動! 手札の【SSヒールマジシャン】を特殊召喚するぜ!」

 

 ユウの手札から現れたのは、切り込み隊長のミッドソードナイトとそのパートナーのヒールマジシャンである。

 

「ヒールマジシャンの効果発動! SSカードの効果で特殊召喚されたので、デッキから爬虫類族のSSリザードマンを手札に加える!」

 

 このまま、いつも通りヒールマジシャンの起動効果で1枚ドロー、からの更なる展開を描いていたユウだったが…

 ルシアが直後に宣言した。

 

「罠カード【魅惑の堕天使】を発動…手札の【堕天使ネルガル】を墓地に送り…あなたのフィールドのミッドソードナイトはアタシのもの」

 

 と、ルシアが言った。

 堕天使イシュタムの視線を受けたミッドソードナイトは…彼女の宣言通り、イシュタムの傍ら…相手フィールドへと向かいそして、ヒールマジシャンに向けて剣を構えた。

 

「なっ…コントロールを奪われたのか…!?」

 

『イャアアアアアダメよミッドちゃーんん! NTR(寝取り)よこんなのぉぉ!!』

 

 パートナーを奪われたヒールマジシャンの悲鳴が、フィールドにこだました。

 

 




【SSF(シャイニーソルジャー・フライング)ストームライダー】

 ランク4、エクシーズ、光属性、鳥獣族
 レベル4「SS」モンスター × 2
 ATK? DEF700

 ①:このカードが戦闘を行うダメージ計算前にX素材を1つ取り除いて発動できる。このモンスターの攻撃力は戦闘する相手モンスターの元々の攻撃力の倍になる②:自分・相手のターン終了時に、墓地に存在する「SS」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをこのカードの下に重ねX素材とする。

 戦闘では無類の強さを誇るエクシーズモンスター。ターン終了時にX素材を補充もできるので継戦能力は高い。ただし場持ちはあまり良くないので対策が必要。
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