遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム   作:とある遊戯王プレイヤー

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堕ちた天使 ②

 

『マスター! あの女ヤバいヤバい!! ウチのミッドちゃん寝取っただけじゃないわ! 何かまだまだやりそうなオーラめっちゃ出してる!!』

 

 ソリッドビジョンとして現れたヒールマジシャンが、相手フィールドの堕天使イシュタムを指差して、ギャンギャンと捲し立てている。

 それだけでも気が滅入りそうだというのに、堕天使イシュタムもまた、挑発的にミッドソードナイトの肩を抱き、ニヤリと笑みながら

 

『貴女もこちらにいらっしゃい…一緒に堕ちましょうよ』   

 

 等と、宣ってくる始末だ。

 

『ヒィィィ私も狙われてるぅぅ!? マスター早くあの女倒して! 私までやられる頂かれる!!』

 

「静かにしてろ! 今考えてんだよ」

 

 と、つい声にだしてしまったユウに、ルシアは首を傾げた。

 

「あら、煩かったかしら?」

 

「あ、いやアンタじゃ――あ?」

 

「ウフフ…そう、アタシに言ったんじゃないって事は、やっぱりあなたはカードの精霊と会話しているのね?」

 

(……さっき、この女は精霊の囁きがどうとか言ったが、今は聞こえていないのか?)

 

「黙るのね。でもそうと分かれば余計にボウヤが欲しくなっちゃったわぁ…ね、あなた、私と一緒に来ない?」

 

 妖艶に笑み、ルシアが言った。

 その姿たるや、フィールドのモンスター、イシュタムの姿と重なる程である。

 

『ちょっ、マスターまで誘惑してる!? あの女共怖いぃぃ!』

 

「一緒にだぁ? そもそもオレらは罪人だろうが。負けた方がまた牢屋にぶち込まれちまうんだ、無理だな」

 

「いいえ。アタシならあなたを牢から出す事が出来る…声を聞くことが出来る人間なら、ずっとアタシのそばに置いておきたいのよ」

 

『いや駄目よマスター! あんな年増の言う事聞いちゃ駄目! 第一マスターにはアミちゃんが居るで――』

 

「うるせェェェェ!! 下らねえスカウトなら決闘が終わった後にするんだな! オレはデッキの一番上のカードを墓地に送り【SSエッジストーンゴーレム】を特殊召喚!」

 

 フィールドにチューナーモンスター、エッジストーンゴーレムが特殊召喚されるや、堕天使イシュタムが再び動いた。

 

「チューナーね…なら堕天使イシュタムの効果を発動するわ。1000ライフポイントを支払い、墓地の魅惑の堕天使の効果を適用。エッジストーンゴーレムのコントロールを奪う」

 

 ルシア LP4000 → 3000

 

 イシュタムに魅入られたエッジストーンゴーレムが、ユウの元を離れ、ルシアのフィールドへと移動する。

 チューナーが不在となった事で、シンクロ召喚は元よりヒールマジシャンのドロー効果も使えなくなっている。

 

『マジなのあの女ァ…ゴーレム系もイケちゃうの? 雑食過ぎないマジで』

 

 効果処理により魅惑の堕天使はデッキにもどったが…とはいえ、展開の起点を徹底的に潰されたのは痛い。

 さすがにフィールドにヒールマジシャンのみではどうする事も出来ないのだ。

 

「ぐっ…エッジストーンゴーレムの効果で墓地に落ちた【SSリクルート】の効果! コイツを除外しデッキから【SSブリーズバード】を手札に加える!」

 

「フフ、いいわねぇ…必死に藻掻くヒトは好きよ」

 

「そりゃあありがとよ! 墓地にSSカードが存在しなくなったから手札のブリーズバードは特殊召喚出来るぜ!」

 

「それも無駄よ…ブリーズバードが特殊召喚に成功したタイミングで、アタシは【I:Pマスカレーナ】の効果を発動。マスカレーナとあなたのエッジストーンゴーレムでリンク召喚を行うわ」

 

 マスカレーナというモンスターは、この様に相手ターンにリンク召喚を行うという、非常に強力な効果を持っている。

 しかもリンク素材とされたのは、コントロールを奪われたユウのモンスターだ。

 

 つまりは、ユウのモンスターを除去しつつ更なるリンクモンスターの召喚に繋げられてしまったのだ。

 

「出てきてぇ【S:Pリトルナイト】この子の効果を発動するわぁ」

 

【リンク2、闇属性、戦士族、ATK1600、リンクマーカー左、右】

 そしてその効果は、融合シンクロエクシーズ、もしくはリンクモンスターを素材としてリンク召喚した場合、自分か相手のフィールドもしくは墓地のカード1枚を除外する。

 

 今は、リンクモンスターであるマスカレーナを素材にしている。

 除外効果はアクティブとなり、ブリーズバードは突如現れた次元の穴に吸い込まれ、除外されてしまった。

 

「残念だけれど…動かれたら面倒だしねぇ、徹底的にやらせて貰うわ」

 

「チッ、クソが仕方ねー! カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

 そしたターンを終了すると同時に、奪われていたミッドソードナイトがこちらのフィールドに帰還する。

 

『ハッ!? わ、我は一体何を……?』

 

『ミッドちゃーーん! 馬鹿馬鹿! あんな女に魅了されるなんて何考えてんの!! 私に剣向けちゃってさ!!』

 

『な、わ、我が、マジシャン殿に、剣を!? な、なんたる…』

 

『ウフフ…なかなか素敵だったわよ、あなた…』

 

 と、投げキッスする堕天使イシュタム。

 

『キィぃぃぃー!! 黙りなさいこの✕✕✕!! ウチのミッドちゃんはもう渡さないわよ!!』

 

『我が…マジシャン殿に…剣を……』

 

(うるせぇ…静かにデュエルさせてくれ…)

 

 しゃべくり倒す賑やかなフィールドから目を逸らし、げんなりするユウ。

 

「ねぇ、ボウヤ。アタシのイシュタムは何を言っているのかしら?」

 

「さあな。オレには何も聞こえねーぜ!」

 

「……そう。アタシのターン、ドロー」

 

 彼女が表情を曇らせたのは、その一瞬だけであった。

 

「アタシは手札から【堕天使の追放】を発動…デッキから堕天使カード1枚を手札に。【堕天使ルシフェル】を加える」

 

 彼女の手札に加えられたのは、堕天使におけるリーダーのルシフェル。

 

「ルシフェルは特殊召喚出来ないから、2体のモンスターをリリースしてアドバンス召喚する必要があるのだけれど…失楽の堕天使の効果により、墓地の堕天使ユコバックとマスカレーナを除外してアドバンス召喚出来る…現れて【堕天使ルシフェル】!」

 

 堕天使ルシフェル

【レベル11、闇属性、天使族、ATK3000】

 

 3対6枚の翼をはためかせ、フィールドに降り立った、いや降臨した堕天使ルシフェルは、刃の如く鋭い眼光をユウへと向けた。

 その威圧、その威光はソリッドビジョンの作り出したものとは思えない。

 

 圧倒的存在感を持った堕天使に、イシュタムはひざまずいた。

 

『ルシフェル様…』

 

『イシュタムか。よくぞ我の降臨まで保たせてくれた。大儀である』

 

『もったいないお言葉ですわぁ…』

 

『うわ…今度は物凄いイケメンが出てきちゃった…』

 

 ヒールマジシャンの緊張感の無い言葉を無視し、ユウはルシフェルを睨み返した。

 

『ほぅ…小僧、お前は我等が視えているな? 面白い…』

 

「…おいネェちゃん、どうした? さっさとデュエルを続けな」

 

「ふふ、ルシアよ。ルシア・イヴ…そう名乗っているわ。堕天使ルシフェルの効果発動、アドバンス召喚された場合、あなたのフィールドの効果モンスター数まで、手札・デッキから堕天使モンスターを特殊召喚するわ…あなたのフィールドには2体、よって2体の堕天使がフィールドに降り立つ」

 

「そいつぁダメだなァ! 罠カード【列王詩篇(れつおうしへん)】を発動! ルシフェルのモンスター効果の発動を無効にする!」

 

 ルシフェルの掲げた右手に発生した召喚陣を、列王詩篇から発せられた波動が粉々に砕く。

 

『ぬぅ、小賢しい小僧よ。ならば――』

 

「仕方ないわねぇ…堕天使イシュタムの効果を発動。1000ライフポイントを支払い、墓地の堕天使の追放の効果を適用して…堕天使の戒壇を手札に」

 

 ルシア LP3000 → 2000

 

「堕天使の戒壇を発動…堕天使スペルビアを守備で特殊召喚。スペルビアの効果により、堕天使ネルガルを特殊召喚するわ」

 

 堕天使スペルビア

【レベル8、闇属性、天使族、DEF2400】

 

 堕天使ネルガル

【レベル8、闇属性、天使族、ATK2700】

 

 遂にルシアのモンスターゾーンが全て埋まった。

 堕天使ネルガルはフィールド上の堕天使モンスター全てに貫通効果…すなわち、守備力を攻撃力が上回った時、上回った数値分だけ戦闘ダメージを与える効果を付与する。

 

 ルシフェルとイシュタム、ネルガルにリトルナイト、失楽の堕天使の総攻撃を受けては、ライフポイントなど簡単に消し飛ぶ。

 

「これで…充分かしら。イシュタムを攻撃表示に変更し、バトルよ…堕天使ルシフェルでミッドソードナイトに攻撃」

 

 剣を構えた堕天使が、宙を駆け刹那でミッドソードナイトを間合いに捉えた。

 振り抜かれた一撃は、彼が反応を示す間もなくその肉体を両断する…かに思えた。

 

「罠カード発動【SSバリア】! このターンSSモンスターは破壊されねぇ! ついでに戦闘ダメージも0だ!」

 

 だが、ミッドソードナイトを半透明の防壁が覆い、ルシフェルの斬撃を弾いた。

 ルシフェルは口惜しそうにルシアのフィールドに舞い戻る。

 

「しぶといボウヤね…まあ、いいわ。メイン2、ルシフェルの効果を発動…フィールド上の堕天使モンスターの数だけデッキの上からカードを墓地に送るわぁ。堕天使モンスターは5体、よって5枚のカードを墓地へ」

 

 墓地に送られたのは【禁じられた一滴】【闇の誘惑】【叛逆の堕天使】【堕天使マスティマ】【トレードイン】の5枚。

 

「この効果により、2枚の堕天使カードが墓地に送られた…アタシのライフを1000ポイント回復…これでターンエンドよぉ。失楽の堕天使の効果により、更にライフを回復するわぁ」

 

 ルシア LP2000 → 3000 →(失楽の堕天使効果)5500

 

「オレの、ターン! ドロー!!」

 

「フフフ…さぁボウヤ、アタシの堕天使達に、どう対抗してくれるのかしらねぇ?」

 

 確かに状況は絶望的と言っていい。

 だが…ユウは、笑っていた。

 

「そりゃあ勿論、ぶっ倒す! 行くぜオラァ!」

 

 

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