遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム 作:とある遊戯王プレイヤー
「遅い」
扉に入った瞬間に、ユウが浴びせられた言葉である。
「あぁ? オレはテメェみてぇな脳筋じゃねぇんだよアミ!」
扉の向こう側で待っていたのはタスク アミ。
最初から最後まで、ほぼユウと共に島を巡っていた女だった。
「まあいいわ。早く始めましょう」
と、いきなりデュエルを開始しようとする彼女を、ユウはさすがになだめた。
「待てって…最後のデュエルだろうが! せめてヒトコトねーのかね? やはり貴方が勝ち抜いて来たのね、とかよ〜」
「何を言っているの? 貴方が勝ち抜いてくるなんて確定事項にいちいちリアクションしないわ。それに…私達の間に無駄話は必要ない」
「あのよォ、一応オレでも色々考えてんだが…」
「私達は決闘者よ。ゴチャゴチャ考える暇があるなら、デュエルしなさい。それとも貴方は、負けっぱなしのままで良いのかしら?」
「あ? 誰が負けっぱなしだとコラ?」
「事実でしょう? 今日まで3戦3敗が貴方の戦績よ。まあ…それがこれから4敗になるのだけれど」
あからさまな挑発。
当然ながら、こんな見え見えの挑発に乗るユウではないが…
それでもここで引く選択肢などはない。
「いいぜ…ならここでテメェをぶちのめしてやるよ!」
「その意気よ。さぁ、私を燃えさせて!」
デュエルディスクがアクティブに。
お互いにカードを5枚引く。
「「デュエル!!」」
「オレの先攻! 手札からミッドソードナイトを召喚! 手札からヒールマジシャンを特殊召喚!」
(ユウ、私達は互いに三度もデュエルをしている…互いの手の内を理解しているも同然よ。つまり…)
「ヒールマジシャンの効果でリザードマンを手札に。更にヒールマジシャンの効果で1枚ドロー」
(私達は丸裸で決闘しているに等しい。次に貴方が何をしようが…私の想定から外れる事はない)
――そうして次は…デッキトップを墓地に送りエッジストーンゴーレムね? そうなるとユウは私のワンターンキルを警戒するからここはスフィアストーンゴーレムを守備表示で特殊召喚し更にチューナーをもう一体引っ張って来てシンクロ、ホワイト・ラミア辺りを守備表示で出して守りを固める、といった所かしら? これであるなら対象に取る効果と破壊効果に対しての対策を取れる。基本的にSSデッキにおけるエクシーズモンスターは攻撃寄りの効果をしているから、先攻で出てくるにしてもリクルート効果を持つフォーチュン・テラーが精々かしらね。でもユウは私の戦術をある程度は把握しているのだから、ソウコに対する対応はしてくる筈。ならそこに魔法・罠による防御をプラスしてターンを凌ぐのがまだ理解出来る選択肢よね。そういえば彼は彩雛の効果を知っているのだからSSバリアは無意味である事を理解し、フリーチェーンによる妨害を仕掛ける可能性が高い。でもね、その程度の防御しか敷けないのであれば……粉砕できる。
「エッジストーンゴーレムを特殊召喚!」
――ふむ。
「スフィアストーンゴーレムをシンクロ召喚!」
――やはり。
「墓地のエッジストーンゴーレムを除外し、グリーン・ウィッチを特殊召喚! ヒールマジシャンとグリーン・ウィッチでシンクロ召喚! 現れろホワイト・ラミア!」
――そうね、それしかない。
「カードを2枚伏せてターン終了だ! テメェのターンだぜアミ!」
――予想の範疇の戦術。こんなものなのユウ?
「私のターン、ドロー」
(分かってるぜ、テメェは今こう考えている。無防備なサンドバッグが立っている、ってなァ!)
「ユウ…分かっているのかしら? 私はこのターンで貴方を抹殺する」
「ハッ、出来るかなァ!?」
「なら何処まで耐えられるのか見せてみなさい! 【
――デッキから黄鼬を加えて墓地、そして舞踏会をサーチってトコか?
「デッキから【月光紫蝶】を加え、【月光黄鼬】を墓地に送る。黄鼬の効果により【
――既に黄鼬は手札に居たか。なら舞踏会で銀狗墓地の彩雛…その先だ!
その様は、まるで達人同士の斬り合いを彷彿とさせた。
古のサムライらは、一度刀を抜けば、斬り結ぶまでの間、相手の動きを、展開を無数に読み合ったという。
なればこそ、この決闘は最早、斬り合いとも言える。
「舞踏会を発動、効果によりデッキから【
フィールドと墓地を目まぐるしく変化させ、淡々と処理をこなしてゆくアミ。
だが、ユウは知っていた。
今のフィールドの状況こそが、月光というデッキの最大のウィークポイントであることを。
「黒羊を手札より墓地に送り、【融合】を手札に加える。魔法カード【融合】を発動」
「そこだァ!! 融合に対してセットカード【
霊王の波動の効果により、モンスターを特殊召喚する効果を含むカード、すなわち融合の効果が無効となる。
「……ふふふ、狙いは悪くなかった、といったところかしら?」
「なに?」
「確かに私のフィールドには、月光銀狗で特殊召喚した月光彩雛が存在している為、エクストラデッキから月光モンスターしか出せない。融合カードを潰すのは合理的と言えるわ…私が、このカードを持っていなければ、ね」
「まさか……」
「手札から【月光融合】を発動。フィールドの彩雛と金獅子で融合召喚を行う」
月光融合の存在により、ユウの目論見は崩れ去った。
「現れなさい【
「チッ、なんつー効果だよ」
(だけど、こんなモノで諦める貴方ではない筈よ…私のワンターンキル、凌いでみなさいユウ…そして私に牙を突き立て抵抗しなさい、極限にまで藻掻いて見せなさい…貴方なら、それが出来る。出来なければ…その首、貰うわ)
「月光香を発動、墓地の月光彩雛を特殊召喚し、彩雛の効果を発動…エクストラデッキの【月光舞獅子姫】を墓地に送るわ」
(舞獅子姫を墓地に送るだと…? あいつはアミの絶対的エースカードの筈だ……おいおい、まさか!?)
最悪の想定が、ユウの脳裏をよぎる。
舞獅子姫の、更に上位存在が、あるというのか?
「墓地の月光香を除外し、手札の紫蝶を捨てて【
恐るべき展開力であった。
以前アミは、月光はパワーだけではない、と断言していた。
いまならその意味がよく分かる。
これ程の数のモンスターを出力出来ればなんだって出来てしまいそうだ。
「さぁ…行くわよ、ユウ! 【融合】を発動! フィールドの舞獅子姫扱いとなった彩雛と舞香姫、金獅子と黒羊で…融合召喚!」
「4体融合、だと…!?」
『よーーっしゃああああ! アタイの出番だなァァァ!!』
カードの精霊、ライオの声が響いた。
「現れなさい…【
4体ものモンスターが空に溶け合い、光の玉となった直後…地表目掛け、隕石の如くぶつかった。
光の玉が、内包していたエネルギーを解放し、大爆発を巻き起こし周囲を消し飛ばす。
そして、抉れた大地の…爆心地に立つ存在があった。
それを目にした時、ユウは身震いした。
月光舞獅子神姫
【星12、闇属性、獣戦士族、ATK3800】
一見し、舞獅子姫にも見えたが…そのモンスターから発せられている圧迫感は、その比ではない。
より神々しく、より強固な存在として立ちはだかっていた。
『ようユウ。どーだ、これがアタイの最終形態だぜ!』
「ライオ、いえライガーの言う通りよ。このコは月光カード以外の効果を一切受け付けないわ」
「一切受け付けないって事は…戦闘で倒すしかねぇって事か」
『そう簡単にアタイを戦闘破壊出来るかな? 言っとくがアタイがこの姿になったからには、このターンに勝負は終わるって事だぜ?』
「おもしれェ! じゃあやってみるんだなァ!」
(甘いわねユウ、私は一切出し惜しみはしない。徹底的にやらせて貰う!)
「墓地に送られた彩雛と黒羊の効果により、墓地から融合と金獅子を手札に加え、【融合】を発動! 舞踏会の効果により素材は墓地からも選べる。墓地の舞獅子姫、彩雛、紫蝶、手札の金獅子を素材に…現れろ、月光舞獅子神姫!!」
絶望とは、この事を言うのだろう。
2体目の舞獅子神姫がフィールドに現れる。
1体でも倒す手段は限られている厄介極まりない敵が、増えてしまったのだ。
『『ハーッハッハッハッ! どうだユウ、アタイが本気を出せば分身だって出来るんだぞ!!』』
「ぐっ…マジか!?」
「まだよ。素材として除外された彩雛の効果を発動! バトルフェイズ中、貴方は効果を発動出来ないわ。そして墓地の黄鼬の効果発動。月光虎を手札に戻し、黄鼬を特殊召喚。月光虎を三度Pゾーンに発動し、効果により墓地の金獅子を特殊召喚…2体のレベル4モンスターでエクシーズ召喚! No.41
泥睡魔獣バグースカ
【ランク4、地属性、悪魔族、DEF2000】
「バグースカが守備でフィールドに存在する時、フィールドのモンスターは全て守備となり、守備表示モンスターの発動した効果は無効化される。勿論、ライガーはその影響も受けず、攻撃表示のままよ」
気が付けばユウは、腹を空かせた猛獣らの潜む檻の中に、足を踏み入れてしまっていたのだ……