遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム   作:とある遊戯王プレイヤー

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外の世界へ

 

「はぁ…はぁ…はッ…あああ…ようやく呑み込んだわ勝利おめでとうユウ」

 

 アミが落ち着きを取り戻し、ようやく口にした言葉だ。

 どこか口調がAI音声じみてぎこちない。

 相当の言葉と衝動を押し殺して、屈辱に塗れながらもようやく絞り出した単語の様だ。

 

「あ、ああ」

 

『ったく、ようやく落ち着いたかアミ。ま、気持ちは分かるぜ…まさかアタイ達が負けちまうなんてなぁ…アタイもちょっと感情整理してくるわ』

 

 そう言い、ライオもまた、アミのデッキへと戻ってゆく。

 先に進む扉のロックは外れていた。

 進めるのはユウのみだ。

 

「どうしたの早く行きなさい勝者は貴方なんだから」

 

「分かってるよ……なあ、フォローする訳じゃねえが、オレが勝てたのはマジで運が良かったからだ」

 

「運も実力の内というでしょう今回は私にそれが足りなかっただけのことよ」

 

「そういじけんなよ、らしくねぇな。ま、テメェはタフだし、食って寝りゃ明日にゃケロっとしてんだろ」

 

「……うるさい、馬鹿」

 

「あ?」

 

「相変わらず貴方はデリカシーが無さすぎるわ。学生じゃないのよ、もっと言葉遣いとか態度に気を付けなさいよ。そんなんじゃ……外に出ても、苦労するばっかりよ」

 

 反論の言葉も、アミの弱まる語気に、呑み込んだユウ。

 

「ワリィなぁ、こんな態度でもねぇと、クソッタレ共に舐められっからよォ」

 

 とだけ、彼は返した。

 

「……ねえ、ユウは、外に出て何をするつもり?」

 

「あー…考えてなかったなそういや。まずは…テキトーに賭けデュエルでもして稼いで、住む場所探して…だろうな」

 

「また捕まりたいの? 正規の大会に出て賞金を稼ぎなさいよ」

 

「冗談キツイぜ、オレみてーなマーカー付きの小悪党が、デカい大会に出られる訳ねーだろ。お前だってマーカー持ちなんだ、世間からの扱いは分かんだろ」

 

 そう言い、アミの右腕のマーカーを示した。

 

「ああ、そうね…まあでも、心配しなくても貴方の実力なら出られると思うわよ。相応の反発はあるでしょうけどね」

 

「ハッ…そうかよ。なら気が向いたらやってみるかね」

 

 それは困難どころか、ほぼ不可能である事もユウは知っている。

 だがどうせ時間もないし、会話もこれが最期だろう。

 わざわざそんな議論をする必要もない。

 

「んじゃあな。オレは行くぜ」

 

「ええ。気を付けて」

 

「まあ、なんだ。もし外で会えたら、連絡くれぇ寄越しな。デュエルならいつでも付き合うからよ」

 

「…! フフ、当たり前よ、私から勝ち逃げなんて許さないわ」

 

 扉が、閉ざされた。

 後に残されたアミは、右腕の犯罪者の烙印、マーカーを見た。

 

「ユウ、貴方なら出来るわ。頑張って」

 

 そして、マーカーをペリペリと剥がした。

 犯罪者となった者は、一目で分かる箇所、主に顔面にマーカーを刻まれるのだ。

 アミのそれは、精巧な偽装だった。

 

(……ファング、いずれは貴方にも、私の全てを叩き込んでやるわ)

 

 

 

 

 

 

――扉の先、長い通路を抜けると、そこに待っていたのはプレイヤーキラー【アルレキーノ】と【幽鬼うさぎ】、そしてソラノ カナタと…

 

「テメェは…!」

 

 中心に立つセキュリティ現副長官、ファングである。

 

「おめでとう、これで貴方は晴れて自由の身です……ほぅ、貴様か。負け犬がよくぞここまで来たものだ」

 

 この物言い、纏う雰囲気は、副長官としてのそれではない。

 敢えて表現するなら狡猾な獣であった。

 

 ユウはこの男、ファングに敗れセキュリティに拘束されて、この島に放り込まれている。

 つまりは仇敵だ。

 

「負け犬ねぇ…丁度いい、その負け犬が飼い主に噛み付くところを見せてやろうかボンボン坊や?」

 

 デュエルディスクを構えるユウ。

 アルレキーノとうさぎが、ファングの前に出る。

 

 しかしファングは「下がれ」と、プレイヤーキラーらを退かせた。

 カナタは身動ぎさえしていない。

 

「確かに貴様はプレイヤーキラーを退け、カナタを下し、俺の妹までもを倒した。だが、俺と戦うには足りぬ」

 

「……待て、妹だぁ? まさか…!?」

 

「なんだ本人から聞いていなかったのか。アミは我が妹だよ…血こそ繋がっていないがな」

 

 つまりは、自分をデュエルで始末する為に送り込まれた刺客の1人が、アミだったという事になるのでは、と思い至るが

 

「…そうかよ。妹までデスゲームに参加させるたぁ、血も涙もねー兄貴だな」

 

 と、返した。

 

「生憎、ヤツの実力は知っているのでな…安心して任せられたよ」

 

 背中を伝う汗が、酷く不快だった。

 

「そりゃそうだ。アミはマジもんのプライドを持った決闘者だよ。少なくともテメェとは違ってな」

 

「ふむ…目的も忘れて決闘にのめり込み過ぎるのが、アレの悪癖だ。下らぬプライドとやらで、貴様を仕損じたのだろうな…実に愚かな」

 

 ぴちゃり、と水漏れでも起こしているのか、天井から水滴が垂れている。

 換気装置の唸りが、耳障りな程に聞こえた。

 

「さて、マナカ ユウ。俺も暇ではないのでな、さっさと輸送船に乗って娑婆に帰るといい。プレイヤーキラーに案内させよう」

 

 今度はお辞儀をし、にこやかにユウに話し掛けて来るアルレキーノ。

 だが…ユウは地を蹴り、駆け出した。

 ファングを目掛けてだ。

 

『ダメ……です!』

 

 立ちはだかったうさぎと、放たれた彼女の使い魔を潜り抜け、デュエルディスクを叩き付けんばかりに振り被るユウ。

 

 そこにカナタが割り込み、放たれたディスクを白刃取りした。

 そこへ帰ってきたうさぎの使い魔が、ユウをはむっ、と咥える。

 

 デュエルディスクが、ユウの腕から外れて床に落ちた。

 

「クックックッ…教育のなっていない駄犬だ」

 

「ファング! オレとデュエルしやがれェ!! ぶちのめしてやんぜェェ!!」

 

「足らぬと言ったろう! 俺と戦いたければせめて、貴様のデッキを完全なものにするのだな」

 

「なんだと!?」 

 

「最高に仕上がった物を叩かねば意味は無い。未完成で挑まれては屈辱なのだよ…失せろ」

 

 ユウを咥えた使い魔が、高度を上げてゆく。

 

「ファングぅぅぅぅぅ!!!!」

 

「クックックッ、ハーッハッハッハッ! 負け犬の遠吠えとはこの事だなァ!!」

 

「クソがァァァ!!」

 

 こうしてユウは、使い魔に全身を拘束されたまま、輸送船の待つ船着場へと運ばれる事となる。

 とはいえ罵声を吐き、全身全霊もがき続けるユウに、使い魔の背に乗ったうさぎは言った。

 

『ユウさん…困り、ます…暴れないで下さい…』

 

「うっせェ! このままおめおめ帰れっかよ!」

 

『お怒りなのは分かります…でも…ユウさんがうっかり、この高さから落ちて…地面に叩き付けられでもしたら…私、どうしたらいいか…』

 

 そこでようやく、自分が島のほぼ全域を見渡せる程の高さに居る事に気付くユウ。

 以前、精霊世界でストームメイカーに、空の旅へと連れ回された悪夢が蘇る。

 

「……落とすんじゃねーぞコラ」

 

『ユウさんが…暴れなければ…大丈夫ですよ』

 

(クソが、割としたたかなヤツだな)

 

 冷たい空気が、ユウの頬を撫でる。

 

「…取り敢えず高度を下げろ」

 

『高い…ところは、苦手…ですか?』

 

「人間なら誰でも怖えよ」

 

『分かり…ました…』

 

 ゆっくりと、高度が落ちる。

 やがては島に群生する木々より少々高い程度にまでなった。

 とはいえ落とされればまあ、運が悪ければ死ねる位ではある。

 

「ところでよォ、オレのカードはちゃんと返してくれんのか? ディスク落としてんだけど」

 

『ユウさんが着けていたのは…島で支給する、島専用のものです…輸送船で…本来のものを、返して貰えますよ』

 

「だよなァ…ありゃあカードデータのみのディスクっぽいし」

 

『詳しくは…船の黒服の皆さんに聞いて下さい…リーダーのハヤシさんは…良い人ですから…』

 

 そう言われて、渋々従うユウ。

 しかし質問は尽きない様で、

 

「そういやオガタのオッサンとかアミはどーなるんだ?」

 

『ああ…トーナメントまで来れた人達は…特別恩赦という形で、減刑が成されます…オガタさんは…詐欺罪なので…多分すぐに出られるかと…アミさんは、特別枠なので…』

 

 だとか、

 

「お前らは結局何なんだ? 精霊みてーな物とか言ってたが」

 

『……申し訳ありませんが…明確には答えられません…とっぷしーくれっと、らしいです…』

 

 だのと会話する内、輸送船へとたどり着く。

 うさぎの言った通り、甲板には過剰な数の黒服らが配置されていた。

 

『一番前に居る、スキンヘッドの…見た目凄く怖い人が…ハヤシさんです…それではさようなら』

 

 そう言い、うさぎの使い魔は口を開く。

 甲板にマグロの如く叩き落されたユウは、息つく暇無く黒服らに簡易拘束された。

 

 船が出港する。

 離れてゆく島を、ユウは黙って睨み付けていた。

 

(デッキを完全にしろ…か)

 

 彼は戻って来た自分のデッキを確認し、その言葉の意味を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

――「マナカ ユウのデュエルディスクからのデータの読み取り、完了しました」

 

 技術者…かつてはディスクデータ改ざんに手を染めていた男が、報告した。

 解析されていたのは、ユウが島で装着していたデュエルディスクだ。

 

「ご苦労。それでは私のディスクに、その神龍のデータを転送しなさい」

 

 そう言ったのはファングだ。

 

「それが、貴方の欲しかったものか?」

 

 傍らに控えるカナタが問うた。

 

「そうだ。このカードデータの解放には…特殊な細工がしてあってな。カードの精霊とかいうデータの残滓にアクセス出来る人間が召喚しなければ解放されなかった…非科学的にも程がある」

 

 ファングはカードの精霊なる存在を信じてはいない。

 カードデータを入力した際に生じるバグか、あるいはプログラマーによる遊び心くらいに思っている。

 

「厄介なロックだったよ。だが、これで俺もようやくこのデッキ…Ss(シャドウサーバント)デッキの本来の力が発揮出来る」

 

 そう言い、データ転送の終えた自分のデッキを手にするファング。

 

「さぁ…世界を獲ろうか!」

 

 




ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございました。感謝致します。

 この小説は元々、未完結のままで寝かされていた作品でした。が、つい最近、遊戯王ファイブディーズの全話配信があり、視聴する内に遊戯王に対するモチベーションが回復し、再度リメイクして投稿し直したという経緯があります。現在はゼアルも配信されていますから皆で見ましょう!

 しかしながら、近年のデュエルは説明すること、手札墓地デッキ、リソースの管理などが極めて難しく、それを小説にするとなると恐ろしく大変でありました。

 多分、小説の内容は、その半分以上がカードの名称や効果説明などに費やされたのではないかと思う程です。もしも次回作があるのなら、もっとカードを単純にし、かつキャラクターの魅力をしっかり描けたらなと思います。

 遊戯王は魅力的なコンテンツです。万が一に当作品を読んでもしも触れてみたくなりましたら、是非とも楽しんで見て下さい。それでは。
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