遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム   作:とある遊戯王プレイヤー

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カードの精霊

――10日前、地下デュエル場

 

「オレはぁ、ミッドソードナイトでダイレクトアタックぅぅ!」

 

「ぐわあああああー!!」

 

 セキュリティのLPが0となる。

 犯罪者拘束用のデュエルアンカーが機能を失い、千切れた。

 

 その隙に拘束を脱したユウは、眼前のセキュリティにボディーブローを叩き込む。

 崩れ倒れるセキュリティ。

 

 一体何人を相手にし事だろう。

 既に幾百のドローを繰り返した指は痺れ、喉は渇れかけている。

 だが、彼の目は疲労の色どころか、獣じみた本能を滲ませ爛々と輝いていた。

 

「こいつ、化け物か……」

 

「もう終わりかぁセキュリティさんよぉ……まだたったの20人抜きだぜ? ま、オレを倒したけりゃテメェらのボスでも連れて来るんだなぁ!」

 

「おのれ、いい気になりおって!」

 

「お待ちなさい警備隊長」

 

 デュエルディスクを起動しかけたセキュリティ警備隊長は、その声を聞くや否や、弾かれた様に飛び退きひざまづいた。

 

 彼の後ろから、革靴を鳴らし現れた長身の男。

 男は胸のゴールドバッジを威圧的に示すと、穏やかにこう言った。

 

「私はセキュリティ副長官、ファングと申します。制圧に手間取っていたから何事かと思えば……貴様の様な血気盛んな方がいらっしゃったのですな」

 

 まるで、VIPに対する様なうやうやしい一礼。

 

「なんだテメェは? コイツらのボスかよ?」

 

「ええ、その通り。マナカ ユウ、貴様がここから脱出するには、私を倒す他無い。もしそれが出来たなら、誰にも手出しさせない事を誓います」

 

「へぇ…オレの名前を知ってやがんのな。上等だ坊っちゃん、デュエルでぶちのめしてやんよ!」

 

「クックック、それで良い。さあ…来い小僧。全てを出し切れ、その悉くをへし折ってやろう」

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――現在 

 

「ぐああああああ!?」

 

 デュエルに敗北した刹那、彼は直ぐ様デュエルディスクをチェックした。

 

 が、懸念していた事態は起こることは無かった。

 ディスクは普通にデュエルモードを解除する。

 

(くっ…どうなってやがる!? 負けたらディスクが破損するんじゃねえのか?)

 

「フフ、どうしたの? このデュエルはお遊びよ…拘束用アンカーを使っていないから何も起きないわ」

 

 狼狽するユウに、タスク アミは言った。

 しかしユウは、彼女睨み付けると、警戒を顕にしたのだ。

 まるで、ウ~ウ~唸る番犬の様だなと、アミは思った。

 

「あらどうしたの、そんなに睨んで」

 

「オレをどうするつもりか知らねぇが目的は何だ!?」

 

「ああ…そういうこと? フフッ、心配しないで。獲って食うつもりはないわ」

 

『しっかしマスターに負けた癖してカンジの悪いヤツだな』

 

「おい女ァ!」

 

「アミでいいわよ。というか、アナタは出会ったばかりの相手を【女】呼ばわりするのかしら?」

 

「チッ…アミ、ソイツは何なんださっきから!」

 

 そう言うと、ユウはアミの隣を指差した。

 そこに立っていたのは…二メートル近い大女、いやモンスターの【月光舞獅子姫(ムーンライトライオダンサー)】そのものの姿をした何かだった。

 

『ンあ? あ、アタイの事か!? な、なあ、マスター、もしかしてコイツ見えてんじゃ……』

 

「そうだよお前だよお前! ソリッドビジョンのクセに何で消えてねぇんだ! しかもデュエル中、普通に口きいてたよな!」

 

「ああ、だから警戒してたのね。この子は知っての通り【月光舞獅子姫】アタシの最高の切り札であり、アタシのパートナーでもある、カードの精霊よ」

 

 そう説明されても、返す言葉のないユウ。

 

『いやぁ~そう誉めんなよ〜照れるぜマスター』

 

「まあ今の私のカードプールでは召喚しにくいのがたまに傷だけど?」

 

『う、ぐぐ…そ、そりゃあ彩雛(アイツ)とか(コイツ)がまだ居ねえからであってアタイの責任じゃないし…』

 

「フフ、カードデータの更新を気長に待ってて頂戴。そしたら沢山出番はあるから」

 

『トホホ……久々に暴れたけど、どーせアタイはまたながーいお留守番ですよ~だ』

 

 等と普通に会話しているアミと舞獅子姫。

 

「……しっかしよぉ、言うに事欠いてカードの精霊だぁ? ハッ、そんなモン、ソリッドビジョンに細工すりゃいくらでも出来ちまうんじゃねーか、あぁん!?」

 

「貴方が信じようが信じまいが、私は物心ついた頃から、このデッキと…舞獅子姫と一緒なのは事実よ」

 

『逆になーんでお前みてーな悪い奴に見えちまうんだ? 今までも何人かアタイが見えてたヤツは居たが、どいつもこいつもデュエル好きの良い連中だったぞ』

 

「簡単よ。ユウがデュエル好きの良いヤツだからでしょ」

 

「テメェらうるせぇぞ!! オレはこんな訳分からん状況にブチ込まれて、デスゲームみてえなデュエルさせられてんだ…アミは今の状況を理解してんだろ? 知ってる事があンなら教えろ!」

 

 そうユウが言ったのには確信があったからだ。

 拘束用アンカーを使わなければ問題ない、という事実を彼女は知っていた。

 

 そしてデュエルに勝てば、エクストラデッキやカードデータが更新されるのもだ。

 

「それが敗者の態度? 貴方も決闘者なら、デュエルの勝敗がどれ程の重みを持つか理解している筈」

 

「チッ……一回だけだ。知っている事を教えて欲しい。お願いします」

 

 大方の予想を裏切り、ユウは素直に頭を下げた。

 

「……まさか頭まで下げてくるなんて、意地悪する訳にもいかないわね…分かった。教えてアゲル」

 

「おいっ!!」

 

『話し合いだな? そんじゃアタイは休むわ〜お疲れ様〜』

 

 そう言うと、舞獅子姫はアミのデュエルディスクに吸い込まれるように消えていった。

 

(んな簡単に出入り出来んだな)

 

「まずはこの島についてだけど…ここは地図にさえ載っていない人工無人島…にある娯楽施設なのよ。通称は【遊技の島】。で、私や貴方みたいな、色々と問題を起こした人間が連れて来られる」

 

 彼女はそう言い、右腕を見せた。そこには黒に縁取られた黄色のイレズミ。

 マーカー、罪人に刻まれる刻印である。

 

 これはユウの頬にも刻まれている。 

 

「そして私達は、プレイヤーとして尊厳や刑期を掛けて殺し合う。デュエルゾンビや他の犯罪者といった悪趣味な連中とね。素敵でしょう? どうしようもない犯罪者を再利用して、シティの富裕層や観客に娯楽を提供する。一石二鳥って訳ね」

 

「よく知ってやがんなぁお前」

 

「まあね。そうして…蠱毒の虫の様に淘汰されていき、最後の一人となった時、遊技は終わりを告げる。生き残りの一人は島から脱出を許され、晴れて娑婆で生活出来るっていう、よくある話よ」

 

(一人って事は、いずれはこの女とも…)

 

「多分、私と同じ事を考えたと思うけれど……そうじゃないのよね。貴方の人となりを見せて貰った上で、提案なんだけど、協力しない? 貴方の腕なら不足は無いわ」

 

「…………」

 

 成る程、アミの話が事実なら…協力した方が何かと有利なのはそうだろう。

 それに、ユウは思っている。

 

(本来であるなら自分は敗北していて、あのゾンビみたいになっていた…オレはコイツに負けたのだ、勝者にこそ決定権がある)

 

 腹は決まっていたが、答えあぐねているユウを、アミの獣じみた光宿る目が、ジィっと見ていた。

 

 彼は渋々…本当に渋々ながら、首を縦に振った。

 

「だが、テメェの行動に疑念があれば決闘で始末してやる」

 

「まあ、よろしい。これから短い間だろうけど、仲良くしましょう……あぁ、それとユウ、貴方は舞獅子姫の姿が見えるなら、自分のカードの声が聞こえる筈だけど…聞いた事ないのかしら?」

 

「あぁ? んな事出来る訳ねぇだろ」

 

「実はユウのデッキ、ブツブツと声が聞こえてるのよね。だから貴方も聞いてみなさいよ。大丈夫、私の精霊が見られたんだもの、ね?」

 

「チッ……」

 

 そこまで言われては、敗者である手前、やむを得ない。

 ユウは、アミに言われるがまま瞳を閉じて、デッキに手を乗せた。

 

 その時だった…

 

『はああぁぁ~~……』

 

 盛大な溜め息が、デッキから響いた。

 




【SS(シャイニーソルジャー)エッジストーンゴーレム】
 レベル2、光属性、岩石族、チューナー/効果モンスター
 ATK400 DEF700

 このカード名の①、②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:フィールドに「SS」モンスターが存在する場合、自分のデッキの1番上のカードを墓地へ送り、このカードを手札から特殊召喚できる。②:表側表示のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの表示形式を変更する。この効果は相手ターンでも使用できる。



 岩石族のチューナー。特殊召喚のコストは軽く、メリットにもなりうる効果。さらに②の効果はノーコストで使用でき、汎用性が高い。
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