遊戯王デュエルモンスターズ 遊技島のサバイバルデスゲーム 作:とある遊戯王プレイヤー
『はああぁぁ~~……ふぅ~~』
響いた長い溜め息に、ユウは思わず自身のデッキを二度見した。
アミをちらっ、と見ればうんうん、と頷いている。
何を肯定したのかは分からないが。
「いいわ。そのままデッキに語り掛けてみなさい。きっとデッキは答えてくれるわ」
「語り掛ける? オレが?」
「他に誰が?」
阿呆らしい。そんなのは、ガキのやることだ。
そう思うが、どうやら彼女は真剣な様子。
「それにデッキと絆を深めておけば、強くなれるかもしれないわよ?」
「強く…だと? 本当だろうなぁ?」
「さぁね。それはアナタ次第よ」
「……なあおい。誰だ今、溜め息つきやがったのは?」
『『『『『…………えっ!?』』』』』
途端に、複数の返事があった。
そして沈黙。
『…………』
「…………」
『あ、ま、マスターはもしや、我々に話し掛けてきたのか?』
『い、いやいや有り得ないでしょ〜マスター、超リアリストだしぃ』
『どうせいつもの決闘発狂だよ……狂ってんだ』
「バッチリ聞こえてんぞコラァ! オレがいつ発狂したよ!!」
『『『『『……キャアアアアアーー!! マスターが話し掛けてキタァァァァァ!!!?』』』』』
「やかましいッつってんだろ! おい、代表はどいつだ。ツラァ貸せや」
『うわぁ~マスターがキレてるぅ。ミッドちゃん行ってきてよぉ〜』
『えっ我が!?』
『応、其方が相応しい』
『ワシも異論ナシじゃ』
『早く行けよ斬り込み隊長! よっ、デッキのエース様!』
『待ってくれ、ならばせめて壁役でゴーレム殿を……』
『βεπχωνΙμΗΕρ』
『ゴーレムは“イヤだ”、って言ってるみたいじゃ。ホレ、マスターがしびれを切らしかかっておる。早よう行かんか!』
『はぁぁ~~、いつもいつもこんな損な役回り。我はきっと、その様な星の下に生まれたのだな…』
デッキの中の、政治的やり取りをリアルタイム試聴したユウ。
そして溜め息犯人も分かった。今愚痴ってるコイツだ。
『あ、あの、マスター、本日はお日柄も良く、ご機嫌麗しゅう――』
そう言いながらデッキからニュルンと現れたのは、【SSミッドソードナイト】だった。
青衣の剣士は、ソリッドビジョンで見る凛々しい姿とは違い、どこかおどおどしていて自信無さげだった。
「お前マジでミッドソードナイトなのか?」
『はっ! 左様ですマスター! 我らに話し掛けて頂き、ありがとうござ――』
「んなこたぁいい! なんださっきの溜め息はよぉ!」
『えっ、は、はて? 私には何の事かさっぱりです』
「全部聞こえてたから。な? 正直に言ってみ?」
『は、はぁ、では失礼ながら。マスターのデュエルマナーが少々悪い様に思われまして』
「あ?」
――遊技の島、南部
「どうして!? どうして死なないのよぉー! 攻撃力はこっちが上でしょう!?」
女は、半狂乱になりながら叫ぶ。
腕にはデュエルディスク。そして繋がっているデュエルアンカー。
相手はデュエルゾンビだ。
「アンタも攻撃しなさいよー! 早く、アイツを倒しなさいよぉぉ!」
女のフィールドのモンスター、【デーモン・ソルジャー】が、攻撃を仕掛ける。
その攻撃力は1900
だが、いくら相手フィールドのモンスターに切りかかっても、その武器は空を切っていた。
それもその筈で、相手のモンスターは【魂を削る死霊】
守備力は僅か200であるが、モンスターの効果は、戦闘で破壊されない、というものだった。
つまり、女がいくらモンスターに攻撃を指示しようが、戦闘での突破は不可能なのだ。
「なんで、なんでよぉぉー!!」
更に、【フレムベル・ヘルドッグ】が戦闘。
結果は同じだった。
なぜ、女はこんな基本的な事さえ知らないのか?
無理もあるまい。何故なら女は、これまでデュエルに携わった事など1度もないのだ。
この島に連行され、初めてデュエルディスクを装着した。
つまり、全くの素人。
「もうイヤ! 誰か助けてよー!!」
自動でターンを、終了される女。
《ワタシのターン、ドロー》
デュエルゾンビがカードを引く。
《ワタシは、【ピラミッドタートル】を攻撃表示で召喚。カードを2枚伏せてターンエンド》
何を考えたのか、ゾンビが出したのは、ピラミッドを甲羅の代わりに背負った亀であった。
【ATK1200】と表示。
そのちょっと間の抜けたビジュアルと、低い攻撃力に、女は僅かだが平静を取り戻す。
「わ、私のターン!!」
デッキからカードをドロー。いま引いたのは、【ブラッド・ヴォルス】。
(あっちの亀だったら……)
女は一縷の望みを託し、ブラッドヴォルスを攻撃表示で召喚した。
【ATK1900】と表示。
(確か、このワンちゃんは…)
一応カードテキストを読んでいた女は、奇しくも最善の手を選んでいた。
ワンちゃん、フレムベル・ヘルドッグは、戦闘でモンスターを破壊した時、デッキから新たなモンスターを呼ぶ効果を持っている。
「私は、フレムベル・ヘルドッグで、ピラミッドタートルを攻撃! 」
《罠カード【デモンズチェーン】を発動。効果モンスター1体の攻撃と効果を封じる。対象はフレムベル・ヘルドッグ》
悪魔の鎖がカードから伸びて、ヘルドッグをぐるぐる巻きにした。
ヘルドッグは効果モンスターであったからこそ、唯一この罠を受けてしまったのだ。
「な、なんなのよぉソレェ! だったら、ブラッドヴォルスで攻撃!!」
ブラッドヴォルスの斧が、ピラミッドタートルを両断し打ち倒す。
ATK1900 - ATK1200 = 700
ゾンビのライフポイントが700減少し、3300となる。
だが、女は知らなさすぎたのだ。
《ワタシは、ピラミッドタートルの効果発動。このカードが戦闘で破壊され墓地に送られた時、デッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する》
そう、ピラミッドタートルは新たなモンスターを、呼ぶ為の囮。
守備力2000以下のアンデットモンスターであれば、例えそれが上級モンスターであってもフィールドに降臨させる。
《ワタシは、【
出現したのは、肉体を無数の戦士の人骨で構成された、正真正銘の化け物だった。
長く伸びた骨の胴は、龍というよりも蛇を思わせる。
【レベル6、アンデット族、ATK2400】と表示。
女のフィールドのモンスターならば、一呑みに出来るであろう大口を開く龍骨鬼。
当然、それは恐怖の対象でしかない。
モンスターの咆哮と女の悲鳴が重なった。
「どうしてよぉぉぉ!! いきなりそんなのが出てくるなんてインチキじゃないのぉぉ!!」
恐慌にかられ、一行にプレイしない女に、ディスクは再び自動でターンを終了した。
《ワタシのターン。ドロー。メインフェイズ、ワタシはリバースカードオープン。永続罠【死霊の誘い】を発動》
死霊の誘い……ひと度発動すれば、カードが墓地に送られる度に、持ち主に300ポイントのダメージを与える恐るべきカードだった。
《装備魔法【巨大化】を龍骨鬼に装備。自分のライフポイントが相手より少ない場合、このカードが装備されたモンスターの攻撃力を倍にする》
巨大化の効果を受けた龍骨鬼のビジョンが、更に大きくなってゆく。
龍骨鬼 ATK2400 → 4800
《更に、ワタシはピラミッドタートルを召喚する》
「あ、ああ……ま、また……」
もはやそれは、どこか間抜けな亀ではない。
敵のデッキの中核を成すモンスターだった。
《バトルフェイズ。ピラミッドタートルで、ブラッドヴォルスに攻撃》
ピラミッドタートルが、ブラッドヴォルスに突撃する。
「いや、いやぁぁー! 来ないでぇ!!」
だが攻撃力の差は明らか。ブラッドヴォルスは迎撃で斧を振りかざし、返り討ちにした。
デュエルゾンビNo.5 LP3300 → 2600
直後、またしてもピラミッドタートル効果が発動。
デッキから、もう1体の龍骨鬼が呼び出された。
《ワタシは、死霊の誘いにより、300ポイントのダメージを受ける》
LP2600 - 300 = 2300
《バトルを続行。巨大化を装備した龍骨鬼で、ブラッドヴォルスを攻撃》
ATK4800 - ATK1900 = 2900
メオ LP4000 → 1100
「キャアアアアアーー!!」
《死霊の誘いの効果。ブラッドヴォルスが墓地に行ったので300ダメージ》
女のライフポイントは、一気に削り取られ、残りは僅か800。
倒れ伏す女を、笑みを浮かべ見下ろす龍骨鬼。
「ひっ、あ、お、お願い……止め……」
《ワタシは、龍骨鬼で、デーモンソルジャーを、攻撃する》
ATK2400 - ATK1900 = 500
死霊の誘い 300
500 + 300 = 800
よって女が受けるのは800のダメージ。
女のライフは、尽きた。
《デュエル終了。プレイヤーNo.33、ノーマ メオに処置を行います》
「あっ!?」
その瞬間、デュエルアンカーから電流が流れ、一瞬にして女の意識を刈り取った。
そしてデュエルディスクが、ゾンビプレイヤーモード…オートへと切り替わる。
《プレイヤーNo.33、ゾンビプレイヤーモードへの移行、完了しました》
【SS(シャイニーソルジャー)バリア】
通常罠
①:フィールド上に「SS」カードが存在する場合、相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。このターン「SS」カードは破壊されず、戦闘ダメージを全て0にする
魔法、罠を含む表側表示SSカードが存在すれば発動できる防御札。発動タイミングが限定的だが、モンスターの破壊は勿論、魔法、罠の破壊をも防ぎつつ戦闘ダメージを0にする強力なカードだ。