和麻がIS学園に出発した6月13日の朝。
私、蒼神流無にキンジ君、アリアちゃんは理子ちゃんとの待ち合わせのモノレール駅にいた。
いよいよこれから私たちは『大泥棒大作戦』のために紅鳴館に潜入する。
この期間の間はしばらく学校を欠席するから、理子ちゃんに言われた通り『民間の委託業務を通じたチームワーク訓練』の書類を
潜入フォーメーションは、私、キンジ君、アリアちゃんが潜入チーム。理子ちゃんがそのバックアップね。
ミッションは理子ちゃんの大切な十字架の奪取。
和麻がいないのが残念だけど、友達の頼みだから頑張りましょ。朝にちょっとしたサービスでメイド服で起こしてあげたし。
しばらく待っていたら、
「キーくん、アリア、ルーちゃん!ちょりーっす!」
理子ちゃんの声がした。そこに目を向けるとそこには、見知らぬ、でも思わず見とれてしまいそうな女の子がいた。
でも、彼女のしぐさやさっき聞こえた声から理子ちゃんの変装だろう、と私は見当をつけたのだけれど、
「・・・り、理子・・・なんで、その顔なんだよ!」
「くふっ、理子、ブラドに顔が割れちゃってるからさぁ。その対策だよ」
「だったらほかの顔になれ!なんで・・・よりにもよってカナなんだ!」
キンジ君がものすごく動揺していた。
「カナちゃんは理子が知ってる世界一の美人だから。それにキーくんの大切な人だもんね。理子、キーくんの好きな人のお顔で応援しようと思ったの。怒った?」
「・・・いちいち、ガキの悪戯に腹を立てるほど俺もガキじゃない。行くぞ」
「ちょ、ちょっと!ねえ、キンジ誰なのよそれ!」
アリアちゃんはキンジ君に焦ったように問いかけるけどキンジ君は何も答えない。
それでもしつこく聞くアリアちゃんを、
「・・・アリアちゃん」
「何よ!」
私は抑える。
「気になるのは分かるけど、キンジ君が何も答えないっていうことはそれなりの理由があるの。だから、あまりしつこく聞くのはやめなさい」
私の言葉に一応大人しくなったアリアちゃんを連れて自動改札へ向かう。
結局、何で動揺していたのかキンジ君は言わなかったけど、深くは追及しなかった。
そして、目的の『紅鳴館』についたんだけど、
「の、呪いの館っていう雰囲気ね」
「ここ本当に横浜か?」
見事にホラーゲームに出てきそうな洋館そのものだった。アリアちゃんなんか不安いっぱいっていう顔をしているわね。
そのことにも驚いたけど、さらに驚いたのが、
「い、いやー。意外なことになりましたねぇー・・・あははー・・・」
この『紅鳴館』の管理人が武偵高の
顔、性格ともによく、女子生徒たちからも人気が高い先生なのだが、私はどうも好きになれないのよね。
何かを隠しているみたいな雰囲気で。
いろいろ先が思いやられるなぁ~、と思いながら先生に案内され、私たちは『紅鳴館』に入って行ったき、私たちの任務が始まった。
不安だらけだけどね!
「やっぱりカロリーメイトはチョコ味だろ?チーズ味とか無理だ」
「何を言っているのですか。カロリーメイトはチーズ味こそ一番なのです」
IS学園に向かうバスの中で俺は隣に座ったレキとカロリーメイトの味について議論していた。
足もとにはハイマキが丸くなっている。
ハイマキの毛って結構ふさふさだから触ると気持ちいいんだよな。
撫でたくなるし、現に今も撫でている。
なんか、流無がいろいろ苦労していそうな気配がするが、今の俺にはどうすることもできない。すまない、許せ。
「みなさーん。もうすぐIS学園ですよ」
高天原先生の声に俺達は降りる準備をする。
「レキ、議論の結論は今夜つけよう」
「いいですよ。チーズ味の素晴らしさを教えて差し上げます」
それにしても、レキも結構変わったよな。
あったときはこんなに議論したりすることはなかったのに。やっぱり流無のおかげか?
バスを降りた俺達は、学園の門のところに集合する。時間はちょうど昼あたりだ。
そこには一人の黒いスーツを着こなした黒髪に鋭い目の女性と、眼鏡をかけた高天原先生に近い雰囲気の女性がいた。おそらく、
スーツのほうはかなりの戦闘力を持っている。武偵高の規格外教師に匹敵するかもしれないが、蘭豹よりはましだと思う。
「あなた達が武偵高からの警備の武偵学生ですか?」
「はい。そうです」
高天原先生と眼鏡の先生が互いに確認をする。
いや、ほんとこの二人って雰囲気が似ているよな。
「はい。では確認できました。ようこそ、IS学園へ」
IS学園の1年1組の教室。
そこではあるひとつの話題で持ちきりだった。
明日から行われる学年別タッグトーナメントの警備のために武偵高の学生来るというもので、あまりない他校とのかかわりにクラス中がどこか騒がしい雰囲気だった。
「一夏、みんなどうしたのかな?」
そんな中、金髪の中性的な顔立ちをした男子生徒、シャルル・デュノアが黒髪の男子生徒、織斑一夏に話しかける。
「さぁ?俺もよくわからない」
どうやらこの二人は武偵高からの警備の派遣のことを知らないようだった。
だが、それも仕方のないことである。
なぜなら、彼らは連日、明日からのトーナメントに向けてずっと特訓してきたのだから。
「今日から武偵高から警備のために数人の生徒が来るんだって」
「その中には男子もいるっていう噂なんだ」
「み~んなどんな人が来るのか気になるんだよ、おりむー」
そんな彼らに、相川清香、谷本癒子、布仏本音の三人が応える。
「へ~、武偵高からか。男子もいるのかな?」
「二人いるらしいよ~」
一夏の疑問に本音はいつもののんびりした声で答える。
それを聞いた一夏は楽しみだと思う。
なにせ、ここには自分とシャルルしか男子生徒はいないのだから、ぜひとも仲良くしたいのだ。
ほどなくして、放課後のSHRの時間になり、担任の織斑千冬と山田真耶の二人が入ってきた。
千冬の厳しさを知っている1組の生徒たちはすぐに席に座る。
「今日からトーナメント終了まで、ここの警備のため数人の武装探偵が張り込むことになる。中でも、お前たちと同年代のやつらがいるから今から紹介しよう。入ってきてくれ」
どんな奴らなんだろう、と一夏は入ってくるだろうドアに注目する。
すると、教室のドアが開き、5人の男女が入ってきた。
「・・・」
教室中が沈黙に包まれる。なぜなら、入ってきた面々があまりにも個性的だったからだ。
「東京武偵高校の生徒たちだ。挨拶を」
昼についた後、東京武偵局から来ていた人たちに挨拶してから、荷物を運び終えて一息ついた後、俺達は各教室に挨拶をして回る。
同年代だから、俺たちのことは紹介しておいた方がいいという配慮だとか。しかし、ここで問題が発生した。平賀さんがいないのだ。
平賀さんがいないことに不安を感じながら1年1組の前で待機していた俺達は、千冬さんに促されて仕方なく教室に入り、まずはリーダーである俺から挨拶をすることにする。
「武偵高2年の八神和麻だ。今日からしばらくここの警備をすることになった。あまりなじみのない場所だからいろいろ迷惑をかけると思うが、よろしく頼む」
まあ、無難な挨拶ができただろう。
それにしても、IS学園の生徒たちはなんか想像していたのと違う印象だな。
兵器であるISを学ぶんだから、武偵高と似たようなものかと思っていたのだが、依然
中にはそれなりの強さを持つ奴もいるが、それも銀髪に眼帯をしている奴と袖の長い特徴的な制服を着ている奴くらいだな。
(ラウラ・ボーデヴィッヒ、布仏本音か・・・)
レイズに渡された資料にあった顔だ。
さっきバスの中で確認したから間違いない。
ほかに四組の更識簪っていう生徒もなかなかの実力者とのことだったな
「僕は彼の同級生の不知火亮。よろしくね」
不知火の自己紹介にクラスのあちこちからため息が聞こえる。
イケメンの不知火に見とれていたのだろう。
「レキです。よろしくお願いします。こっちは武偵犬のハイマキです」
次にレキなのだが、全員ハイマキに目が行っている、というか目を丸くしている。まあ、馬鹿でかいオオカミを連れていたらそう言う顔をするよな。
「同じく、2年のジャンヌだ。パリ武偵高からの留学生だ。よろしく頼む」
ジャンヌの自己紹介には不知火同様のため息が聞こえた。同性から見てもジャンヌは魅力的なのだろう。さすが、聖女様の末裔だ。
で、一番気になるのが・・・。
「柳生神楽だ。同じ1年なのでよろしく頼む。あと、私とそこのチビは何の関係もない」
神楽ああああ!!お前何いきなりケンカ売るようなこと言ってんだ!?
案の定、ボーデヴィッヒが少し睨んでいるぞ。まあ、武偵高の面々と比べたらしょぼいけどさ。それでも穏便に済ませよ!
神楽のまさかの発言に一年一組の教室がものすごい緊張感に包まれる。
資料によると、先ほど神楽がチビ呼ばわりしたのは、ドイツの国家代表操縦者候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒ。
彼女は生まれたときから軍属のため、戦闘能力が高く、それでいて『ドイツの冷氷』と呼ばれているらしい。おそらく神楽と拮抗しているだろう。
そんな相手に、いきなりケンカを売るとは・・・。
俺はとりあえず、神楽を抑えようとする。
このままではいずれ戦闘を始めるかもしれないからだ。
現にあっちなんか立ち上がっているし、神楽も戦闘態勢に入りつつある。
だが、この空気は唐突に終わりを告げる。
「遅れてしまったのだ!」
ガララッ!という音を立てて教室に入ってきた、身長143センチの平賀さんだった。さっきはいなかったからどこに行っていたのか気になっていたがまさかこのタイミングでやって来るとは。
IS学園の生徒たちはまた目を見張る。なにせ、どう見ても小学生にしか見えない女の子が武偵高の制服を着て現れたのだから。
この空気の中に現れた小学生くらいの平賀さんは周りに集まる視線を気にも留めずに入ってきて。
「平賀文なのだ!ISを見てみたくて来たのだ!しばらくお世話になるのだ!!」
と、無邪気な顔でそう言った。
「あや?」
「んぅ?」
そんな平賀さんと長い袖の生徒、布仏本音の目が合う。
二人はトコトコと近寄って、
「「いえ~い!」」
と、ハイタッチを決めた。
「なんだか君とは仲良くなれそうなのだ!」
「う~ん、私もだよ~、あややん!」
「あやや、あだ名をつけてもらったのだ!君にもつけてあげるのだ!」
「お~!本当!?私はね~、布仏本音だよ~」
「だったらののちゃんなのだ!」
「ののちゃん!?かわい~い!ありがとう!」
あややん!ののちゃん!などと言いながら笑いあう二人に教室にいた全員がなんともほんわかした空気に包まれ、神楽とラウラもお互いに戦闘態勢を解いたことで一触触発の事態は避けられたのだった。
こうして、俺たちの自己紹介は終わり、布仏さんとはしゃいでいる平賀さんを回収して俺達は次の教室に向かった。
ちなみになぜ遅れたのか平賀さんに聞いてみたところ、
「チョウチョがいたから追いかけていたのだー!」
と、無邪気な顔で返され、怒る気力もなくなった。
いろいろ不安になるような任務のスタートだった。
とりあえずここまでですね。次回はIS学園での武偵高チームの活動を書いてみます。