緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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力なき者と力ある者

(なんだあれは?)

 

攻撃を受け倒れ伏したラウラの目の前に広がっていたのはおよそ信じられない光景だった。

ISを四機相手にしても倒すことができなかった前鬼に対し、たった一人、生身で立ち向かい、圧倒する和麻。

それは、ラウラの常識を打ち壊すと同時に、とてつもなく黒いものを呼び起こした。

 

それは嫉妬。

 

ISという兵器を纏っていながら、地面を這いつくばる自分に対してあざ笑うかのような強さで敵を圧倒する和麻の強さがとてつもなく妬ましい。

その感情と共にフラッシュバックする試合前の光景。

神楽に一方的に抑え込まれ、和麻がその手を止めたとき、和麻の目には自分のことが映っていなかった。

生まれたときから軍に所属し、訓練し、一時は挫折を味わったが織斑千冬の指導でトップに返り咲いたラウラを、和麻は相手にしていなかった。

任務で守る対象である生徒とひとくくりに見られていたのだ。

 

(欲しい、あの男も超える強さが――!)

 

――願うか?汝、自らの変革を望み、完全な存在への力を望むか?――

 

何処からか聞こえる謎の声。その声に嫉妬の感情に支配されたラウラは――

 

(寄越せ!すべてをひれ伏させる、唯一無二の最強の力を!)

 

飛びついてしまった。

 

――Damage Level・・・D.

――Mind Condition・・・Uplift.

――Certification・・・Clear.

 

《Valkyrie Trase System》・・・boot

 

そしてラウラの意識は途絶えた・・・

 

 

 

ま、マジでシャレにならねえ威力だぜ。

ぶんなぐられた時にとっさに左腕を盾にしたけど、ものすごい激痛が走ってうまく動かせねえ。多分、骨が折れているか砕けているな。

硬気功術、気を使って体の強度を何倍にも高める術で左手を硬くしたのにものともしないなんて、最強の名は伊達じゃないってことか。

とにかく、なんとかしないとな。

状況はかなり悪い。

前鬼はラウラ?には構わずこっちに近づいてきている。どうやら、遥香が俺が出てきたら俺にのみ向かうように指示でもしたのだろう。

ラウラ?のほうは教師陣に任せるとして、どうしたら・・・。

そんなことを考えていた俺の目の前に一つの影が現れた。

 

「ハァ!」

 

その手に持った薙刀で前鬼に斬りかかっていく。

その太刀筋は見事なもので、前鬼の体を一閃する。

しかし、それでも前鬼はひるまず、拳を繰り出してくるがそれをひらりひらりと避け、反撃に薙刀で斬り裂く。

一進一退の攻防を続けるのは、打鉄に似ているが、防御型の打鉄とちがって、動きやすそうな見た目のIS、打鉄弐式を身に纏った少女、更識簪だ。

でも、なんでなんだ?

彼女が闘う姿が流無に重なって見える・・・。

 

『和麻さん』

 

っと、やばい。少し放心していた。通信機から聞こえたのは抑揚のない声、レキだ。

 

『ご無事ですか?』

 

「ああ、何とかな」

 

『戦えますか?』

 

「問題ない。左手は無茶苦茶痛いけど、片手でも大丈夫だ」

 

『よかったです。今から私が隙を見て敵を倒します。あなたは先ほどやろうとしていたことを実行してください』

 

見抜かれていたか。流石だな。

 

「まかせた」

 

『・・・はい』

 

俺は立ち上がり、水蓮を捨てて、風斬を右手で構えながら走り出す。

更識さんが避けた瞬間に斬りかかる。

 

「あわせろ!」

 

俺の掛け声に彼女はすぐに反応して、斬りかかっていく。

気の身体強化のおかげでISと同等の動きができる俺に、彼女は絶妙に合わせてくれる。

それからは一方的な展開になった。

俺が腕を斬ると、更識さんがもう片方の腕を斬りつけ反撃を封じ、更識さんが上から振り下ろすと、俺が下に潜り込んで胴体を斬りあげる。

ここまで俺の動きに合わせられるのは流無だけだったのに、何だろうか、この一体感は?

やがて、たまらなくなったのか前鬼は後ろに後退する。

しかし、その瞬間、その巨体が盛大に転んだ。

かすかに聞こえたレキのドラグノフの銃声、そして、この油で滑ったような転び方は、

 

潤滑弾(アンカケ)か!ナイスだ、レキ!)

 

敵の逃走を妨害するために使われる潤滑弾(アンカケ)。普通は狙撃(スナイプ)に使うような弾じゃないのだが、今回のために平賀さんに特別に用意してもらったのだろう。

 

「そいつを思いっきり踏みつけてくれ!」

 

俺が更識さんにそう言うと、彼女はコクリと頷いて、一度少し上昇。一気に加速して前鬼を踏みつけた。

それにより起き上がろうとしていた前鬼は再び倒れ込み、今度は少し地面に埋まる。

 

その隙に俺は風斬の刀身を握り、自分の血でぬらす。

赤くなった風斬を手に、風で飛び上がり、前鬼の額に深々と突き刺す。

そして、二度と名乗らないと誓ったその名前を力いっぱい叫ぶ。

 

「我、土御門和麻の名のもとに命ずる!式神、前鬼よ。その御魂を沈めたまえ!」

 

すると、前鬼は動きを止め光に包まれる。

後には、一枚の人型紙が残され、それも塵となって消えて行った。

 

土御門の血を持つ者にのみ使える、前鬼の強制停止。

才能の有無に関係なく行える、いざという時の安全装置だ。

昔、土御門の歴史を学んだ時に万が一に事態の対応として教えられた。

まさか、これに救われる日が来るなんてな。

ただし、これには少し厄介な代償がある。発動している式神を強制的に止めるんだ。その反動が術者を襲う。

そう、式神を使役した術者じゃなくて・・・。

 

(動きを止めた術者を、な・・・)

 

通信機から聞こえるレキや、更識さんの声を最後に俺は意識を失った。

 

 

 

「ふっふ~、流石おにーちゃん♪前鬼を倒しちゃった。あの変な人形と屑男が出てこなかったらもっと速く倒していたし、怪我も追わなかったのにな~」

 

アリーナから少し離れた場所を遥香は歩いていた。その手には少し大きめの紙袋が握られていた。

その顔はとても楽しげだ。

何せ、四年前にいきなり勘当され引き離された最愛の兄に会うことができたのだ。映像なんかでは何度も見たけど、生で見た瞬間胸の奥からこみあげてきたうれしさに悶えそうになったほどだったのだ。

しかも、その強さは昔以上だった。あのころにはなかったとても強い力を持っていたし、それに

 

「かっこよかったな~、刀を構えているおにーちゃ~ん~・・・あぁん」

 

思わず立ち止まって体を抱きしめて悶えてしまう遥香。

兄である和麻を思う心は、もはや兄妹の壁すらも天元突破してしまいそうだった。

だからこそ、

 

「許せないな~、おにーちゃんの邪魔をしたあの二人。いつか殺そうかな♪」

 

笑顔でさらりとぶち殺し発言。

それほどに和麻の戦い、遥香にとっては聖戦を邪魔した一夏とラウラは許せないようだ。

 

「まあ、今日はお仕事終わったし殺すのはまた今度にしよ♪」

 

「ほう?仕事とは何のことだ?」

 

軽い呟きに反応があった。振り向くとこちらに向けて拳銃、チェスカー・ズブロヨフカ国営会社のCz100を構えるジャンヌがいた。

 

「お久しぶりです☆ジャンヌさん。武偵高の制服も似合いますね」

 

二人はもともと同じ組織に所属していた者同士で互いに切磋琢磨する間柄だった。

 

「お前が前鬼を囮に何か動いていたのは分かっている。その手に持った紙袋には何が入っている?」

 

「ふふっ、いくらジャンヌさんでも教えられませんよ~。教授(プロフェシオン)直々のお使いなんですから。個人的にはどうでもいいですけど。それではこのあたりで」

 

ピンッという音を立てて遥香が何かを投げると、それが閃光を放ちジャンヌの視界を白く染め上げた。

 

「くっ、閃光手榴弾(フラッシュ・グレネード)か!」

 

アルミ、チタン、マグネシウムの合金粉末を瞬時に燃焼させて強烈な光を放つ、目くらまし兵器。強襲科(アサルト)ではよく使われるものだ。

 

ジャンヌの視界が元に戻ったときにはすでに遥香の姿はなかった。

 

「やられた。レキ、そっちはどうだ?」

 

通信機に手を当てて、狙撃の狙いを定めていたレキに連絡を入れる。

 

『すみません。逃がしました。いきなり十人くらいに分裂しましたので』

 

遥香はジャンヌの視界を遮った瞬間、離脱するだけじゃなく囮の式神を瞬時に呼び出したのだ。

 

「そうか。なら、もう探さなくていい。そうなったアイツは見つけられない」

 

『わかりました』

 

通信を切ったジャンヌは事後処理のため、アリーナに戻って行った。

 

その後、観客や来賓の人的被害はゼロだったので事なきを得た。

トーナメントはもう十分なデータがそろっていたので、中止ということになった。

これにて、今回の和麻たちの依頼(クエスト)は終わりを告げた。

 

 

 

ガンッ。

騒動の後、夕暮れのIS学園の廊下。そこに響く打撃音。

窓から差し込む夕日を受けて美しく輝く銀髪をもつ神楽が、目の前の男、織斑一夏を殴った音だ。

 

「これで勘弁してやる。だがな、お前の身勝手でふざけた行動のせいで危うく人が死にかけ、大怪我を負った」

 

「・・・」

 

神楽の言葉に一夏は殴られて吹き飛ばされたまま、顔をうつむかせて何も言わない。

 

「しかも、その理由が姉の姿を模倣されたからキレただと?やりたいからやった?ふざけるな!そんなくだらない理由で師匠を危険にさらしたというのか!お前は一体何様のつもりだ!!」

 

「・・・ッ」

 

一夏は神楽の「くだらない理由」という言葉に思わず言い返そうとしたが、神楽の怒り一色に染まった目と溢れる怒気に黙ってしまう。

ラウラが暴走した時に使っていた技は彼の姉、織斑千冬の模倣だった。

それが許せなくて、そんなわけのわからない強さに振り回されているラウラも許せなくてあの時飛び出した。

結果的に、シャルルの協力のおかげでなんとか暴走したラウラを止めることができたのだが、その前に和麻に左腕の粉砕骨折という大けがを負わせてしまい、危うく命の危険にさらしてしまった。

 

「力のない無力な身ででしゃばるな。オレたちの良い迷惑だ」

 

そう言い捨てると、神楽は去って行った。

 

 

 

数日後、世界のどこかにあるイ・ウーの本拠地。

そこのとある一室に遥香はいた。

 

教授(プロフェシオン)~。ただ今戻りました!頼まれていたもの、持ってきましたよ!」

 

遥香が元気よく言うと部屋の奥の暗がりから、若い男の声がした。

 

「お帰り、遥香君。うまくいってよかったよ」

 

「はい。結構楽でした♪IS学園って結構警備がざるなんですね~。ちょっと工夫するだけで、地下に隠されていたこれを手に入れられました」

 

そう言って、遥香が取り出したのは丸い金属の塊・・・ISのコアだ。

 

クラス対抗戦。

IS学園の各クラス代表でトーナメントを行い、強さを競うというもの。

それに乱入してきた無人IS。

撃墜され、回収されたそれには未登録のISコアが使用されていた。

ISの核となるコアは世界に限られた個数しか存在せず、すべてIS委員会に登録されている。

未登録のコアというものは本来なら存在しないはずなのだが、無人機にはそれが搭載されていた。

世界に混乱を生むと考えた織斑千冬の独断で秘匿されたものだが、それを遥香が盗み出したのだ。前鬼を囮にして。

 

「ロシアの第三世代IS『モスクワの深い霧(グストーイ・トゥマン・モスクヴェ)』の機体データも手に入れたことだし、完成を急がせねばならない。早速そのコアを解析しよう。イ・ウーのみんなにかかれば、IS程度何の問題もないのだからね」

 

そう言うと教授(プロフェシオン)は立ち上がり、コアを手に持ち、部屋を出ていった。

 

残された遥香はポツリとつぶやく。

 

「蒼神流無・・・おにーちゃんにふさわしいか、見定めてあげましょう。そして、教えてあげます。妹こそが最強だとね。ふふふっ」

 

 

 

目を覚ます。病院のベッドの上みたいだ。

 

「起きた?」

 

聞こえたのはいつも聞いている声。

 

隣のベッドに腰掛けている流無の声だ。

 

まあ、ここの所は電話越しだったけど。

 

「・・・今、何日?」

 

「6月27日。和麻が気を失って大体一週間かな?昨日、全部終わったわ」

 

「そうか」

 

「また無茶をしたのね?」

 

「面目有りません」

 

「まあ、今回は私も結構無茶したけどね」

 

そう言えば、よく見れば流無の体には所々包帯が巻いてあった。

 

「お見舞いにみんながいろいろおいて行ってくれたわよ」

 

言われてみれば、周りにお菓子やら華やらが置いてあるな。神楽に、風魔、不知火、ジャンヌ、レキ、平賀さんなんかの名前もある。

 

「そっちで何があったのかは大体聞かせてもらったわ、お疲れ様」

 

「おう。にしても今回は静かだな。合宿の時は泣いて飛びついて来たのに」

 

「・・・もう慣れたわよ。あなたは何度言っても無茶しそうだし」

 

言い返せない・・・。

 

「でも、無茶やっても必ず帰ってきてくれるからね。それは絶対だからもう泣かないわよ」

 

「そ、そうか」

 

やっべ、超うれしい。

 

「そ、それで?そっちはどうだったんだ?全部終わったんだろ?」

 

にやけた顔を見せるのはなんか癪だったから、話題を変える。

 

「そうね。じゃあ、簡単に話すわよ――」

 




以上でIS学園編は終了です。なんかいろいろ伏線がありますね~、はっはっは。
他にも箒とかの視点も入れようかと思ったのですが、別にいいかと思いまして。
次回は紅鳴館での出来事です
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