緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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四章 闇の海原
カナ


病院を出て、デートの相談をして、夕食を食べて、帰宅して、寝たらもう朝だった。

なんてベターな展開だろうか。

朝起きたら隣に流無が裸Yシャツで寝ていたっていう王道な展開を経験して夏服に身を包む。

今日から武偵高は衣替えだ。

夏らしい空色の防弾制服に着替えた俺達は自転車に乗って武偵高に向かう。女子はもちろん二人乗りで後ろに乗っている。

買い換えたマウンテンバイクは乗り心地も最高だった。

しかし、なぜか朝からパソコンの椅子で寝ていたキンジは様子がおかしい。

アリアを見てほっとしたり、銃の確認を入念にしたり、アリアと一緒に登校しようといったり、etcetc・・・。あれ?等ってこれでよかったけ?

ともかく、なんだか武偵らしいキンジに俺と流無は首をかしげたが、アリアはご満悦のようだ。

 

 

 

登校して、自転車を駐輪場に留めた俺達は教務科からの連絡掲示板の前を通りかかると見知った顔を見つけた。

ジャンヌだ。

キンジ達も気がついたらしくアリアがその名前を呼ぶと振り返り、キンジと俺に向かって『こいこい(フォロー・ミー)』と手招きをしたので近づく。

 

「あんたが武偵高の預かりになっていたのは知っていたけど、似合うじゃない、制服」

 

ずかずか歩いて行ったアリアがデカい態度でそう言う。身長では全然勝っていないけど。

 

「私は遠山と八神を呼んだのだ。お前たちに用はない」

 

アリアと流無を見てそっぽを向きながらそう言うジャンヌ。

 

「こっちにはあるの。――ママの裁判、あんたもちゃんと出るのよ?」

 

「・・・わかっている。それも司法取引(とりひき)の条件の一つだからな」

 

その答えにアリアはニンマリと笑う。・・・まるで悪戯を思いついた子供だな。流無もたまにあんな表情を浮かべるが、流無の場合いろいろ計算されているから手におえない。まあ、楽しいからいいんだけど。

 

「ま、いじめるのはまた今度にしてあげるわ」

 

「・・・わたしは今すぐでも一向にかまわないぞ?」

 

「正気?こっちには和麻と流無もいるのよ?」

 

「「え、なんで?」」

 

俺と流無がアリアの言葉に不思議そうに聞き返す。

 

「は?あんたたち味方でしょ?」

 

「いや・・・」

 

「でも・・・」

 

「「いじめはよくない」」

 

「うぐっ」

 

俺たちの正論にアリアは黙る。『いじめ』という言葉が少し効いたみたいだ。

 

「・・・それはそうと、遠山、八神。お前たちの名前がここにあったぞ」

 

ジャンヌが掲示板を指さしたのでそっちに目を向けると、

 

『2年A組 遠山金次 専門科目(探偵科(インケスタ)) 1.9単位不足』

 

「あらま~」

 

「・・・」

 

武偵高も日本の学校だから、当然単位がないと進級できない。

で、単位に関してだが自分の所属する専門科が民間から受けてきた依頼(クエスト)完了(コンプ)することでもらえる。

この単位が二学期の始業式まで2単位なければ、二年生は進級できないのだが、キンジはそれをすっかり忘れていたみたいだ。

 

で、その隣には

 

『生徒呼出(よびだし) 強襲科2年A組 八神和麻 放課後に教務科まで来ること』

 

しかも、その紙の下には、

 

『逃げんなよ』

 

という張り紙までしてあった。

筆跡からして蘭豹だ。嫌な予感しかしねえ。

 

「・・・不幸だ」

 

俺がうなだれ、流無に優しく慰められている横で、キンジはカジノの警備っていう依頼(クエスト)を選んでいた。

カジノは最近日本にも合法化された公営ギャンブルで、用心棒として武偵が雇われる。

もっとも実際のところはほとんどトラブルが起こらないので、武偵業界じゃ『腕が鈍る仕事』といわれ、馬鹿にされている。

・・・なんでそんな依頼(クエスト)が1.9単位もあるんだ?

そんな疑問が浮かんだが、そんなことより俺の今後を想像するとそんなものどうでもよくなった。

あ~、何されるんだ?俺・・・。

 

 

 

3時限目の体育でのプールで武藤や平賀さんたち、車輪科(ロジ)装備科(アムド)の生徒たちが、超アラク級原子力潜水艦『ボストーク号』のラジコンで遊んだり、キンジが不知火と武藤にアリアのことでいじくられているのを横目に見たりしながら、時間は過ぎていき、時間は5時間目、全問科目の時間になり強襲科《アサルト》棟に俺はいる・・・わけではなかった。

 

「で、なんで俺を呼び出した?」

 

「まあ、そういきり立つな。調べ物が終わったことを伝えたいだけだ」

 

俺は情報科(インフォルマ)のレイズの部屋にいる。

相変わらず、よくわからない資料とコンピュータなどの電子機器が散乱している汚い部屋の中で、平賀さん並みとはいかないが小柄な体にくわえ、白髪病弱少女のレイズがそのクマのついた眼でこっちを不敵にみてくる。

 

「調べてみたところ、土御門は壊滅している。生存者は一人を除いて無し。政府が完全に隠ぺいしていたから調べるのが大変だったがな」

 

流石にあんな家とはいえ、実家が壊滅しているのに加え、全員が死んでいるって聞くとな・・・。

 

「唯一、死亡確認が取れていないのは土御門遥香のみだが、行方は一切不明。だったが――」

 

「ああ、遥香は生きていた」

 

「それはこの間のIS学園での映像で確認した」

 

パソコンの画面の一つが映り、そこにこの間のIS学園で俺と神楽と対峙する遥香、まあ、正確にはその姿をした式神だが、が映り、べつの画面にはジャンヌに銃を向けられ、紙袋を手に持つ遥香の姿が現れる。

 

「前鬼での騒ぎを起こし、周囲の目を集めその隙にIS学園の地下特別区画からある物を盗んでいった」

 

まんまとしてやられたということか。

まあ、とはいえ任務は要人の護衛。

盗まれたのは学園の落ち度だしな。

 

「それで、何を盗まれたんだ?」

 

特別区画と言われるのだからそれなりのモノがあるのだろうな。

 

「ISのコア」

 

さらりと言われたその言葉に俺は目を見開く。

 

「今年のクラス対抗戦で学園を襲撃してきた無人機のモノだ。未登録のコアだったので織斑千冬の独断で公表されなかったコアだ。どうやら彼女の目的はこのコアだったようだ。今の世の中、表向きはISコアが重要視されているからな」

 

そう、表向きは・・・・。

ISはその規格外の性能から国を守る兵器として、各国で研究中だ。

しかし、実際はそんなことはない。

表向き研究しているだけで、各国は裏でその性能を超える兵器を日々開発している。

そもそもISは宇宙開発を前提として開発されたもので、兵器としては未完成。

中核をなすコアは量産できず、中身はブラックボックス。乗れるのは女性のみ。

そんな安定性に欠けるものを兵器とする国などどこにもない。

しかも、ISの性能に匹敵する兵器は既にあるのだ。

先端科学(ノイエ・エンジェ)》と呼ばれる超科学による兵器がその代表だ。

超能力者(ステルス)だって戦い方次第ではISにだって勝てるし、武偵だってISの対処法を確立している。

なにより、この世界には人間以外の人外の存在だってある。

 

そもそもISはその存在を世界によって隠されるはずだった。

圧倒的な性能はともかく、それを操れるのは女性、そのなかでも適性を持つ者にしか操れないという欠陥品を世に出せば、混乱を生むだけなのだから。現に先に述べたISを凌駕する存在だって必要最低限の事しか世間には知らされていない。

故に、世界の表と裏の代表たちはISを公表しないことを取り決めた。

しかし、そんな世界の願いはかなえられなかった。

 

『白騎士事件』によってISの存在は世間に知られてしまった。

 

人々は数千ものミサイルを斬り裂き、数多の軍事兵器を無力化するISの力に驚愕するとともに恐怖した。

その混乱を抑えるために世界はやむなくISを受け入れるしかなくなってしまったのだ。

 

これがレイズに聞かされた世界のISに対する見方だ。

 

「所詮は不完全な欠陥品。だが、そのコアには謎が多い。製作者の篠ノ之束でも図ることのできない何かがあるのだろう。でなければ、イ・ウーが狙うはずがない」

 

ちなみにレイズもイ・ウーのことは知っているらしい。こいつなら知っていて当然と思うが。

 

「何はともあれ、今のところは謎っていうわけか・・・」

 

「そうだな。気長に待つしかないさ。ん?」

 

レイズは何かに気が付いたのか、パソコンを弄繰り回し、一つの映像を拡大する。

 

「これは強襲科《アサルト》か?流無と神埼・H・アリアのコンビが闘っているな。しかも、負けかけている」

 

 

 

強襲科《アサルト》に駆け込もうとすると、なぜかキンジも一緒に駆け込んできた。

 

「なんでいんだよ!?お前探偵科(インケスタ)だろ!」

 

「理子に言われたんだよ!アリアと流無がカナと戦っているってな!」

 

カナ?戦っている相手はキンジの知り合いか?

とにかく、廊下を生徒を蹴散らしながら走り、第一体育館に飛び込んだ。

強襲科《アサルト》の体育館とは、体育館とは名ばかりの戦闘訓練場だ。

闘技場(コロッセオ)と呼ばれる楕円形のフィールドに集まる生徒たちが集まっていて、防弾ガラスの向こうで誰かが闘っている。

キンジを抱えて、一気に跳び上がる。

 

「うおおっ!?」

 

着地の時に少し風が巻き起こって強襲科《アサルト》の生徒たちが倒れてしまうが構っていられるか。

 

「やれややれや!誰かが死ぬまでやれや!」

 

防弾ガラスの衝立の上に、2メートルもある斬馬刀を何本も背負った強襲科《アサルト》の教師、蘭豹がガンガン、衝立を蹴っている。

さっき俺が起こした風の風圧にも動じない蘭豹は、19歳。

俺たちと同年代だが、香港では無敵の武偵として恐れられた女傑で、以前言ったかもしれないがとあるマフィアの娘である。

噂では、ISですら生身で粉砕したという伝説だって持っている、といえばそのすさまじさがわかるだろうか。

香港で暴れまわった後、教職についたがあまりの凶暴さから各地の武偵高をクビになり転々としている。

 

「アリア!」

 

キンジが叫びながら防弾ガラスの衝立に飛びつく。

俺も中を見つめると、その中には・・・

 

片膝をついたアリアと、折れて柄だけになった三叉槍を杖のようにして荒い息を吐いている流無の姿があった。

 

そんな二人を見下ろすように、札幌武偵高(サツコウ)の制服に身を包んだ絶世の美女が立っている。

彼女がキンジのいうカナって人なのか?

 

「おいで、神埼・H・アリア、蒼神流無。もうちょっと――あなた達を見せてごらん」

 

――パァン!

 

突如、カナの手元で閃光がはじける。

 

「うぁ!」

 

そして、流無が吹き飛ばされる。

なんだ?あれは。

流無が銃で撃たれたのは分かる。だが、全く見えなかった。

銃の種類も、構えも、引き金を引く瞬間も俺の目でとらえることができなかった。

 

「うっ!」

 

つづいてアリアが撃たれる。今度も見えない。

 

「蘭豹、やめさせろ!こんなのどう考えても違法だろ!また死人が出るぞ!」

 

その光景を見て焦ったキンジが蘭豹に叫ぶ。

2度の銃撃で二人から血しぶきは出なかったことから防弾制服のどこかに当たったのだろう。

武偵高の防弾制服にはTNK繊維が使われており、銃弾を貫通させないようになっている。だが、その衝撃のダメージが無くなるというわけではない。

俺もたまに撃たれることがあるのだが、制服に被弾すると金属バットで殴られたような衝撃を受ける。

当たり所が悪ければ、内臓破裂で死ぬことだってある。

実際、去年には事件中に犯人の銃弾を受けた先輩が病院に運び込まれたこともあった。

実弾・実銃を用いた決闘形式の模擬戦は強襲科《アサルト》のカリキュラムの一つだが、専用の|C装備が義務付けられている。もっとも生徒同士の私闘や蘭豹の命令で行われることもあるが、確かに違法だ。そして、頭部に銃弾を受ければ、死ぬ。

だから、キンジは焦っているのだろうが――

 

「おう死ね死ね!教育のため、大観衆の前で華々しく死んでみせろや!ガハハッ!ヒック」

 

デカいボニーテールを揺らしながら、ひょうたんから酒をのんだ。

酔っていやがる・・・。

 

「このっ!」

 

闘技場の中では流無が先日習得したという、水の翼『水翼』を作り出して、それをカナに向かわせるが、ひらひらと避けられてしまっている。

しかし、その隙にはね起きたアリアがカナに向かい、蹴りかかるが躱される。

 

「このぉッ!」

 

着地する前に2丁のガバメントを抜いたアリアはそれを撃とうとするが――

とん。とん。

カナに左右の手首を軽く押され、銃口をそらされる。

そのまま、トリガーを引く指を止めることができずに発砲し、アリアのガバメントは2丁ともスライドをオープンさせる。

弾切れだ。

しかし、その隙に流無が背後に回り込んでいる。

気を集中させた掌底をたたき込もうとするが、

 

「ガッ!?」

 

何かに顎をカチあげられたかのように上を向き、仰向きに倒れ込む。

今度も何をしたのかわからなかった。カナはただ、軽くその長い三つ編みの髪を揺らして振り返っただけなのに。

 

「流無っ!」

 

アリアがいきなり倒された流無に気を取られた隙に、再びカナの手元に閃光が走る。

 

「ああっ!?」

 

至近距離で銃弾を受け、大きく吹き飛ばされるアリア。

流無は脳を揺さぶられて脳震盪を起こしているのだろ、立ち上がる気配がない。

アリアは何とか立ち上がろうとしているが、息も絶え絶えだ。

これはどう見ても――

 

二人の負けだ。

 

 

 

その後、キンジが乱入して、次いで婦警に変装した理子がやってきたりして、この模擬戦は終了になり、カナはあくびを一つしたかと思うとどこかにふらりと行ってしまった。

蘭豹も殺気を出して、生徒たちを追い払う。よった蘭豹は何をしでかすかわからないからな。

俺も中に入って流無の所に向かう。

闘技場(コロッセオ)の中をよく見てみれば、折れた三叉槍以外にデザート・イーグルも転がっている。多分弾き飛ばされたんだろうな。あの見えない銃撃に。

 

「お~い、大丈夫か?」

 

「・・・大丈夫じゃないわよ」

 

俺が声をかけると、流無は地面に寝転んだまま頬をふくらまして返事をする。

 

「いや~、負けたな。完膚なきまでに」

 

「うるさい。見ていたのなら助けてくれてもいいでしょ」

 

俺がそう言うと、流無はムッっとした表情をして俺から目をそらして返事をする。顔が少し赤いのは負けて恥ずかしいからか?

 

「殺気の欠片もない相手だったのに、助けはいらないだろ?」

 

そう、さっきの模擬戦で俺が冷静だったのはカナに殺気が全くなかったからだ。

それにもし殺気があったら蘭豹が()っている。

蘭豹は武偵や犯罪者の行動を先読みする動物並みの感を持っていることで有名だ。

その鋭さはどんなに泥酔していても変わらない。

 

「何はともあれ、さっさと救護科(アンビユラス)に行くぞ」

 

とりあえず、流無を抱え上げる。

 

「きゃっ!」

 

「デザート・イーグルは神楽に持ってこさせるか」

 

「い、良いわよ!一人で歩けるわ!」

 

「あほ。まだ脳震盪と戦闘でのダメージが残っているだろ?大人しく俺に抱かれておけ」

 

俺がそう言うと、流無は大人しく、小さくなりながら俺に身をゆだねた。

まったく、普段は平気で抱きついて来たりするのに、こういうときは顔を赤くするんだ?

かわいすぎるだろ。

 

 

 

 




流無とアリア負けちゃいました。
水翼は威力が高いし、イメージがしやすいので発動が早いのですが、まだまだ流無が完全に扱いなれていないので軌道が読みやすく、大振りになりやすいのです。

次回は一気に飛ばしてデート回にしようと思います。

それでは、感想・評価お願いします。
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