緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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福音―研修の目的

翌日。

IS学園の生徒たちは少し離れた砂浜に集合していた。

周囲は崖に囲まれた入り江となっており、まるでジブリの映画に出てきたような場所だ。

 

そこで生徒たちはISの各種装備の試験運用とデータ取りを行う。

その中でも、専用機持ちは本国から送られてきた新装備の運用データもとる必要があるのだ。

 

そんな中、一人の人物が現れた。

 

ISの開発者、篠ノ之束だ。

 

世界中から指名手配され、とある武偵には極秘に捕獲の依頼が来ていると噂されている人物が現れたのは、妹である篠ノ之箒に現行ISの全てを上回る専用機『紅椿』を与えるためであった。

『紅椿』は篠ノ之束お手製のISの名前に恥じないハイスペックを持っており、それを受け取った篠ノ之箒の未熟すぎる技量でもかなり圧倒的な性能を見せつけた。

 

しかし、予想外の事態が発生。

 

アメリカとイスラエルが共同で開発していた第三世代型軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れ暴走。

 

旅館の二キロ先の空域を通過することが判明した。

それを専用機持ち達が対処することとなった。

作戦会議の結果、織斑一夏、篠ノ之箒が対処することになった。

 

結果は・・・任務失敗。

 

織斑一夏は作戦エリアに侵入していた密輸船をかばいチャンスを逃した。

その後、福音に撃墜されそうになった篠ノ之箒をかばい撃墜された。

 

福音は行方が分からず、専用機持ちたちは待機を命じられている。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「以上がさっき起こったことでござる」

 

風魔がレポートを読み終える。これは武偵高の上層部の命令を受けた諜報科(レザド)情報科(インフォルマ)が調べ上げた情報だ。

それを俺たち、武偵高の関係者は旅館の隠し部屋で聞いている。

この旅館は女将が女忍者の家系であったため、いたるところにこういう仕掛けがある。

 

「報告を聞く限り、事故じゃなくて事件の可能性があるわね」

 

流無がそう呟く。

 

「そうだな。作為的な何かを感じる」

 

策士のジャンヌもそう言う。

確かに、何かがおかしい。

突然現れた天才科学者、篠ノ之束と最新鋭機のIS.

このタイミングで起こった暴走機事件。

なぜか言い渡されたIS学園の生徒による対処命令。

特に命令の方がおかしい。

軍用ISを同じ第三世代ISがあるからと言って、競技用のリミッターがかけられた状態で対処するなんて不可能。平賀さんも断言している。

 

「暴走事件も何者かが仕組んだものかもしれない。候補としてはアメリカ。そして・・・篠ノ之束。両方とも背後は真っ黒だ」

 

続けられたジャンヌの言葉に全員が頷く。

 

「まあ、なんにせよだ」

 

綴がたばこを吸いながらいつものダルそうな、しかし眼の奥の眼光を光らせ俺たちを見る。

 

「今から、この研修の目的を言うぞぉ」

 

そして、語られる研修の目的。

その後、教師陣は紛れ込んできた密輸船の取り締まり。

俺達生徒は、研修の目的のために、それぞれ動き出した。

 

 

 

夕暮れの砂浜。

そこに篠ノ之箒はいた。

自身の未熟な精神のせいで、一夏を傷つけたと思った彼女は自身の未熟な精神のせいで、一夏を傷つけたと思った彼女は激しく後悔し何するわけでもなく、そこにいた。

 

(もう、ISは・・・使わない)

 

それは力におぼれた自信に対する戒め。

そうすることで、なんとか心の安定を図ろうとする、が。

 

「あ~、あ~、分かりやすいわね。あのさ、一夏が怪我をしたのってあんたのせいなんでしょ?」

 

やって来たのは鈴だった。

 

「・・・」

 

「で、落ち込んでいますってポーズ?・・・っざけんじゃないわよ!!」

 

鈴は激怒し、箒の胸ぐらをつかみ目を合わせる。

 

「やるべきことがあるでしょうが!今戦わなくてどうするのよ!」

 

「・・・わたしは、もう、ISは使わない」

 

「ッ!」

 

バシンッ!

 

箒のその言葉に鈴は我慢の限界とばかりに思いっきり頬をビンタする。

そして、再度、締め上げようとするかのごとく胸ぐらを掴みあげる。

 

「甘ったれてるんじゃないわよ!専用機持ちっていうのはそんなわがままが許される立場じゃないのよ!!それともあんたは・・・戦うべき時に戦えない、臆病者なわけ!?」

 

鈴の言葉に沈んでいた箒の心に火がつく。

 

「なら・・・ならどうしろと言うんだ!?もう敵の居場所もわからない!戦えるなら私も戦う!!」

 

ぶつけられた箒の気持ちに鈴はため息を吐き、掴んでいた手を放す。

 

「やっとやる気になったわね。・・・あ~あ、めんどくさかった」

 

「な、何?」

 

「居場所ならわかるわ。今ラウラが――」

 

鈴はそう言うと視線を後ろに向ける。そこには右腕にISを部分展開したラウラがいた。

その後ろにはセシリアとシャルロットもいる。

 

「敵の位置ならもう掴めた。ここから30キロ離れた沖合上空だ」

 

「さすがはドイツ軍の特殊部隊。仕事が早いわね」

 

「これくらいは造作もない。それはそうと、貴様の方こそ準備は出来ているか?」

 

「当然。甲龍の攻撃特化パッケージはインストール済み」

 

「こちらも完了していますわ」

 

「僕も準備OKだよ」

 

鈴に続き、セシリアも応える。

 

「ま、待ってくれ。本当に行くのか?命令違反じゃ・・・」

 

戸惑う箒に鈴は――

 

「だから?」

 

しれっと言う。

 

「あんた今言ったわよね?戦うって。命令違反だからってこのまま何もせずにいられるの?」

 

その言葉に箒は一度顔を伏せた後、上げる。その目には強い光があった。しかし、それはひどく脆い・・・。

 

「私は・・・戦う。戦って勝つ・今度こそ負けはしない!」

 

「決まりね」

 

ふふんと腕を組み、鈴は不敵に笑う。

しかし、箒は一人姿が見えない専用機持ちに気が付いた。

 

「そういえば更識はどうした?」

 

「ああ、あの子?どこにもいなかったのよ。ISもステルスモードだし。で、しょうがないから私たちだけよ」

 

「そうか」

 

鈴たちとしては戦力が多いのに越したことはないので簪にも声を掛けたかったのだが、見つからないのなら仕方ないとあきらめたのだ。

 

「さあ、見つかる前に行きましょう」

 

「ああ、そうだn「させると思う?」

 

箒の言葉に被るように、突如この場にいない人物の声が聞こえ、その方を見ると、鈴たちは驚いた。

なぜなら、そこにいたのは――

 

「あなた達、すぐに戻りなさい」

 

海の上に立ちながらDEをこちらに向け、夕日に水色の髪をなびかせる流無の姿だったのだ。

その隣には、風斬を右手に持った和麻も空中にたたずんでいた。

 

 

 

さて、予想通りこいつらは命令違反をしようとしていたな。

 

「何の用よ!」

 

鈴がそう言う。はあ、さっきも言ったはずだぞ。

 

「さっさと旅館に戻りなさい。待機を言い渡されていたはずよ」

 

流無がそう言うが・・・

 

「あなた達には関係ありませんわ!」

 

「そうだ。我々の邪魔をするな」

 

ちっ、この・・・。

 

「武偵憲章二条。依頼人との契約は必ず守れ」

 

俺がそう言うと、何を言っているのかと言う顔をする。

 

「俺たちがここに研修に来たのが偶然だと思っているのか?それは違う。今回の俺たちの目的、それはお前たちの護衛だ」

 

「今年のIS学園は襲撃を受けすぎているわ。この臨海学校もその対策のために、秘密裏に武偵高の精鋭を護衛につける必要があった。だから、私たちが来た」

 

もっともそれを知らされたのはさっきだけどな。まったく、情報漏えいを防ぐためとか、世間体だとか面倒なことを。

ISを守るためにわざわざ武偵を雇うなんて、とかいう世間体を守るために偶然を装うなんて本当に面倒だ。

 

「お前らの行動は死ににいくようなものだ。護衛対象が死ぬのを黙って見過ごすわけにはいかない」

 

俺がそう言い終わると、

 

「そう言うわけだから」

 

「速く戻れ」

 

アリアとキンジが拳銃を構えながら、

 

「今ならまだ咎めません」

 

白雪が巫女装束にイロカネアヤメを構えながら、

 

「くふふっ、早くしないとリッコリコにしてやんよ~。チュ♡」

 

理子が二丁拳銃にキスをして笑いながら、

 

「ごめんね。でも、僕たちも仕事だから」

 

不知火は申し訳なさそうに、拳銃を突きつけながら、

 

「今ならまだ遅くはないぞ」

 

神楽が傘に仕込んだ刀を抜きながら、

 

そして、流無と俺も各々の武器を抜いて五人を包囲する。

 

「正気か?そんなもので専用機を持つ我々を抑えられるとでも」

 

ラウラが俺たちの拳銃や刃物を見ながらそう言う。明らかに逆らう気満々だな。

仕方ない、作戦通りするか。

 

「くふっ」

 

五人が笑い声の主、理子の方を向く。

 

「くふっ、くふふっ、あっはははははは!!!!本気ィ?それ本気で言ってんのお?あはははっ!!」

 

いきなり人が変わったかのように笑い始めた理子に五人が気圧される。流石は裏理子。

 

「―――――ぶわぁーか――――」

 

そして、理子から莫大な光が放たれ、五人はたまらず目をふさぐ。

俺たちはあらかじめ打ち合わせていたから問題ない。

 

理子は閃光手榴弾(フラッシュ・グレネード)をばれないように超能力で髪を動かして爆発させたのだ。

 

その隙に俺たちは動く。

アリアは鈴、理子はシャルロット、神楽はラウラ、白雪は篠ノ之、流無はセシリアを抑え、俺とキンジ、不知火はそれぞれのISの待機状態をかすめ取る。

 

「ぐっ、貴様!」

 

「動くな」

 

ラウラの首に刀を添える神楽。

 

「あ、アリアさん」

 

「悪いけど、あんたたちの行動は無謀すぎるわ」

 

鈴をバリツの技で抑え込むアリア。

 

「ぐっ、離せ!」

 

「ごめんなさい。でも、これもあなた達のためなの」

 

箒を合気道の要領で抑え込む白雪。なまじ思い人がいるからこそ箒たちの思いは理解できるが、以前自分もしてしまった失敗を箒たちにはしてほしくないという優しさも垣間見える。

 

「ぐぅ・・・」

 

「言ったでしょ~。リッコリコにするって。ISごときで私たちがひるむと思ったか?」

 

表理子と裏理子を同時に出しながら、シャルロットを抑え込む。

 

「う、動けない」

 

「ごめんね。おねーさんも伊達にSランクを名乗っている訳じゃないのよ」

 

セシリアも流無の関節技で動きを封じられる。

 

「お前たちにまだいうことがある」

 

俺は五人を見下ろしながら言葉をつづける。

 

「武偵憲章三条。『強くあれ。但し、その前に正しくあれ』。強くなければ意思を通してはならない。だが、正しくなくては意思を通してはいけない。お前たちの今の行動が本当に正しいのか?命令違反をして、勝ち目のない戦いに向かうことが、自分の立場も考えない無謀な行動の先に、多くの人に迷惑をかけるかもしれないことが本当に正しいのか?」

 

五人は沈黙する。

 

「さて、キンジ、不知火」

 

「はぁ~、気がのらない」

 

「気持ちはわかるけど、やらないと怒られるよ」

 

二人はぼやきながらも銃を五人に向ける。

 

「安心しなさい。銃弾は麻酔弾よ。意識を失うだけ」

 

流無がそう言う。

五人は何とか抵抗しようとするが、俺抜け出せない。シャルロットにいたっては理子の髪が絡みついてなんか変なことになっているが。

 

そして、銃弾が放たれようとした瞬間――

 

 

 

「女の子に乱暴しちゃだめだよ?おにーちゃん♪」

 

っ!?

 

鈴のような声と共に、地面から無数の影が出現し、拘束していたアリアたちに襲い掛かってきた。

 

アリアたちはとっさに拘束を解き、離れる。

五人も突然現れた影に戸惑っている。

だが、俺はさっきの声にその声の主を探す。

 

「うふふ、式神・覇軍。前鬼・後鬼に並ぶ土御門の最強式神。一人一人の力は小さいかもしれませんが、その数は実に300。数はある意味最強の力ですよ?そして――」

 

ドシンッ!

 

スゥー。

 

空中から現れ、地鳴りを轟かせる赤い鬼――前鬼。

海中から音もなく現れる青い鬼――後鬼。

前鬼は以前タッグマッチトーナメントで現れたときと同じく、ずんぐりした体に鉄斧を手に持ち、後鬼は細い体に、ひょうたんを抱えている。

 

その二体の鬼と無数の影の軍勢を従えるのは、最高峰の陰陽師。

 

「お久しぶりです、おにーちゃん。今度は正真正銘の私、遥香です」

 

土御門遥香。俺の妹だ。

 

「お、おにーちゃん?え?和麻の妹さん!?」

 

流無が驚く。まあ、そりゃな。

 

「はい。初めまして蒼神流無さん。わたくしが和麻さんの妹です」

 

「あ、どうもご丁寧に。和麻と結婚を前提におつきあいしています。蒼神流無です」

 

おい、なんだこの会話。もうギャグは終わってシリアス一直線じゃなかったのか?

ほら、他のみんななんか呆然としていたり、顔を赤くしていたり、妄想していたりしているぞ。

 

「そうそう。福音ですが・・・」

 

遥香が言った言葉に地面に倒れていた五人は反応する。

 

「もうすぐ動き始めますよ。急いだほうがよろしいかと」

 

すると、影の内の数体が俺とキンジ、不知火に襲い掛かる。

二人は何とか応戦するが、接近を許してしまい、懐に入れていたISを奪われる。援護しようにも他の影が邪魔だ!

 

「さあ、お行きなさい。私はあなた達に興味はございませんから」

 

影から渡されたISを五人はしばらく呆然と見ていたが、すぐに展開し、飛び立った。

 

「待て!」

 

俺も風を纏って追いかけようとするが――

 

「どこへ向かうのです?おにーちゃん」

 

前鬼が斧を振りかぶって来るのでそれを避ける。

 

「さあ、始めましょう?久しぶりの兄妹のふれあいです」

 

夕日は完全に沈みきった。訪れるのは闇夜。

 

 

 




シリアス突入!どうなる武偵高の精鋭チーム。
研修の目的はIS学園生の護衛。しかし、世間体のために生徒にも秘密で偶然を装う必要があったという何ともめんどくさい事情が。


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