緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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式神―絶体絶命

無数に現れてくる黒い人影――式神・覇軍。

その中心にさながら将のようにたたずむのは赤き鬼――前鬼。

さらに後方、大将のように優雅な微笑みを浮かべる術者――遥香。

その遥香を守るべくそばに控える青い鬼――後鬼。

 

その異形の布陣と相対する俺達武偵高メンバーは、はっきり言って分が悪いとしか言いようがない。

流無、アリア、キンジ、理子、不知火の銃が覇軍を撃ち抜き、俺と神楽の刀が斬り裂き、白雪の炎が燃やし尽くすが、倒すことは出来ても次から次へと迫ってきて、しばらくしたら新しい奴が地面から生えてくる。

 

「この!」

 

流無が海水を操って水の矢を飛ばすが・・・

 

「無駄ですよ、後鬼!」

 

後鬼が抱えた瓢箪を構えると、そこへ水が吸い込まれていく。

 

「なっ!?」

 

その光景に流無は驚く。

そうだった。あの後鬼がいる限り、流無の異能は使えない。

まずいな。

攻撃力と応用力、持久力のバランスのいい流無は俺たちの中ではトップクラスなのにそれが封じられた。

レキが狙撃でサポートしてくれるから何とかなっているがこのままじゃジリ貧だ。いずれ銃弾も体力もなくなる。なにか突破口を――

 

『ふっふっふ。お困りの皆さんにいい知らせなのだ!』

 

耳につけていたインカムから平賀さんの声が聞こえてきた。

 

『さっき秘密兵器を投入したのだ!』

 

おお!平賀さんの秘密兵器!なんだかものすごそうだ。

 

『と言うわけで、むとーくんお願いしますなのだ!』

 

「おう!」

 

いきなり響いた武藤の声に、その声のもとを探してみると武藤は海の上、水上バイクの上に乗っていた。その手には巨大な――リモコン?

 

「昨日から徹夜で修理・改修したこいつの力を見せてやるぜ!浮上しろ!」

 

水上バイクの手前から白い気泡が現れ、何かが浮かび上がってくる。

その様子に全員が、遥香までも式神を操るのをやめて注目する。

やがて、現れたのは全長3メートルはあろうかという黒い潜水艦――

 

「俺たちの夢、『ボストーク弐号・改』!」

 

「ラジコンかよ!」

 

キンジが突っ込む。

他の面々も――心のどこかで期待していたのだろう――口には出さないが呆れていた。

あのラジコン、ボストーク号は空前絶後の巨大原子力潜水艦だったのだが1979年に行方不明になった悲劇の原潜。それを武藤と平賀さんが蘇らせて、この間のプールの時間に操縦していた。しかし、それはキンジにより真っ二つにされ、後継機である『ボストーク弐号』も昨日のビーチバレーで俺がサーブの加減を間違えて吹き飛ばしてしまったのだ。

昨日、さっさと風呂を出て、その後も帰ってこないなと思っていたらあんなの作っていたのか。

 

「ふははは!甘いぜ、キンジ。この『ボストーク弐号・改』は新兵器を搭載している!」

 

「新兵器?」

 

「ああ、いくぜ!」

 

武藤がリモコンの何かのボタンを押すと、潜水艦の上部が開き――そこには以前、ロケット花火が搭載されていた――合計二十以上もの黒い筒が現れる。

 

『あやや作、超小型ミサイルなのだ!』

 

「発射ああああ!!」

 

武藤がボタンを押すと黒い筒、超小型ミサイルは夜空に飛び上がり、覇軍に襲い掛かっていき、爆発していく。

 

爆炎が晴れたとき、覇軍はその数を三分の一まで減らしており、前鬼の鉄斧もボロボロになっていた。

 

「見たか!これこそ、男のロマン!はぁはっはっは!」

 

「後鬼」

 

武藤が自慢げに笑っていたら、突如海水が間欠泉のように吹き出し、『ボストーク弐号・改』を打ち上げる。

そのまま、『ボストーク弐号・改』は岩場の奥に消えていき――

 

グシャッ、ドオオン

 

爆発した。

 

「俺の『ボストーク弐号・改』いぃぃ!!!??!!」

 

そして、武藤はあまりのショックに水上バイクの上でがっくりとうなだれてしまった。

 

なんだこれ・・・。

 

 

 

「とりあえず、一時撤退だ!武藤は自力で逃げろ!」

 

キンジの言葉に全員が従う。水上バイクに乗っていた武藤も何とか逃げる。

『ボストーク弐号・改』の尊い犠牲で俺たちは撤退のチャンスを得ることができた。

 

「待ちなさい!」

 

「ばいばいき~ん」

 

理子が置き土産にと、予備の閃光手榴弾(フラッシュグレネード)を放り投げて遥香の目をくらませる。

その隙に、俺たちは旅館とは反対にある林の中に逃げ込む。

 

「・・・全員いるか?」

 

「ええ、何とか」

 

俺の声に流無が返事をする。

周りを見れば確かに全員そろっていて、全員が俺の方を見てくる。

まあ、気になるよな・・・

 

「まずは話すよ。俺と遥香の事」

 

そして、俺は話した。

土御門の事。

遥香の事。

何があったのか。

 

「・・・以上だ。ん?」

 

なんかみんなの雰囲気が暗いな。唯一変わらないのはこの話を昔、簡単に話したことのある流無位だな。この間遥香と遭遇した神楽も暗くなっているし。

確かにものすごく暗いというかヘビーな話の内容かもしれないけど軽く流そうぜ?

 

「いや、それ無理だと思うから。実際あらかじめ聞いていた私でも改めて聞くとかなり重いと思うから。それに新しく発覚したことも聞くと余計に重いから」

 

実家が潰されていたとか?

いや、でもまあ本人同士の問題だし、俺の中じゃ何とかケリがつきそうだし・・・。

 

「とにかく、今からあの式神について話すぞ。全員注目!」

 

小声で注目を集めるという器用な技を使う。

 

「まず、あの赤くてデカい鬼。名前は前鬼(ぜんき)。タッグマッチトーナメントを見ていたメンバーは見たことがあるな?

見た目通りのパワーファイター。瞬発力もかなり高い。

次に、遥香のそばに控えていた青い細い鬼。名前は後鬼(ごき)。

前鬼と違いパワーは全くないが、陰陽術を使う。特に水の術だ。流無の水がとられたのはこのせいだろうな。その気になれば水を完全に支配できる。

最後にあの無数にわいてきた「名探偵コ○ン」の犯人みたいな黒い影の式神、覇軍。

一体一体の力は弱いが数が多い。しかも再生能力もある。ある意味、前鬼・後鬼よりも厄介かもしれない」

 

ふう、一気にしゃべると疲れるな。

 

「ちょっと質問いいですか?」

 

白雪が控えめに手を上げる。

俺が頷くとおずおずとしゃべり始める。

 

「あれだけの数の式神を使うなんてちょっと不可能だと思うんだけど」

 

「どういうこと?」

 

白雪の言葉にアリアが聞き返す。

 

「式神を使うと術者は精神力を消費するの。強力な式神を使うほど消費する精神力も比例して多くなる。あの三体?の式神は一体だけでもかなりの力を持っている。そんな式神を同時に三体使うなんて無理だと思うの」

 

ふむ。もっともな意見だな。

 

「前鬼・後鬼に関しては術者の精神力は関係ないんだ」

 

「どういうこと?」

 

首を傾げる白雪だけじゃなく、全員に聞こえるように言う。

 

「二体は土御門の血統の術者が最初に命令をすれば、術者が停止命令をするまで動き続ける。そして、その動力源は千年以上にわたって蓄積された歴代土御門家当主の力なんだ。つまり、あらかじめ充電しておいた電子機器みたいなものだな」

 

俺の説明に全員が納得するが、

 

「では、あの覇軍とやらはどうなのだ?」

 

神楽が疑問をぶつける。それに対し、俺は自身たっぷりに答える。

 

「それは・・・」

 

『それは?』

 

沈黙が場を支配する。そして、俺は満を持して・・・

 

「知らん」

 

言い切ったぜ。

全員がずっこけているが気にはしない。だって本当に知らない。

 

「自信たっぷりにためるな!」

 

「この雰囲気をぶち壊さないでよ!」

 

キンジとアリアが声をそろえて怒鳴った後、目を合わせて「あっ・・・」とか言って顔を赤くして恥ずかしそうに眼をそらす。

お前らが一番空気を読め。なにラブコメの空気出しているんだよ。

それを見て黒くなっている白雪と理子も。

 

「うんうん。昨日のアドバイスは間違っていなかったわ」

 

ほう、流無も何か言ったのか。俺もキンジにいろいろ言ったしな。

 

「コホンッ、とりあえず話を戻そうか」

 

不知火が場の空気を元に戻す。

 

「それで、知らないってどうゆうことなんだい?」

 

「覇軍は伝聞でしか知らないんだ。それにもただ無限の軍団を操るとしか書いていなかった」

 

「なるほど」

 

本当に厄介なんだよな。こっちだけが疲弊していくし。しかもさっきの様子を見る限り遥香の精神力もそんなに使っていなかったし。

 

「仕方ない。流無、理子、ちょっとこっちにこい」

 

俺は二人を手招きしてある指示を出す。

それを受けた二人はにっこりと笑うと――

 

「キーくん、ちょ~とこっちに来てね」

 

「アリアちゃんもおねーさんと一緒に来て♪」

 

キンジとアリアを確保し茂みの奥に連れて行った。

 

 

 

――ここからは音声のみでお楽しみください――

 

『ちょ、いきなり何するの!?』

 

『理子!?お前何して!』

 

『キンジ君は動かないでね』

 

『おおう、ルーちゃんいやらしい指使い~、これは理子も負けていられませんな』

 

『ひゃう!?り、りりり理子!あんた何処さわ、ってひゃん!そこは、ダメぇ』

 

『キンジく~ん、目をそらしちゃだめだゾ』

 

『うわあああああ!!??』

 

――お待たせいたしました――

 

茂みの中から出てきた四人。そのなかでもキンジの雰囲気はまるで別の物になっていた。

これこそが遠山一族がもつ力、名奉行遠山の金さんも持っていたとされるヒステリアモードだ。

こうなったキンジは一味もふた味も違う。

キンジは白雪に近寄り小声でいくつか話をした後、振り返り全員に聞こえるように言い放つ。

 

「――全員、俺の言うことに従ってほしい。援軍も到着したことだし鬼退治と行こうか」

 

援軍?と俺以外のやつが首をかしげる中、べつの茂みから四人の人影が現れた。

 

もしもの時のために待機していたジャンヌ、風魔。

 

 

そして流無と同じ水色の髪の更識簪さんと、袖の長い制服を着た布仏本音さんだった。

 

 

反撃の時は今だ。

 

 

 

一方、和麻たちが反撃の準備を進めていたころ。

福音と専用機持ち五人の戦いは熾烈を極めていた。

箒たちは最新型の特化型パッケージで福音を追いつめ、その武装『銀の鐘(シルバー・ベル)』を翼もろとも切り離し、海に沈めた。

ボロボロになりながらも収めた勝利に五人が安堵した瞬間、海が割れ、その中から福音が二次移行(セカンドシフト)をして復活した。

そこからの戦いは圧倒的だった。

機動速度が段違いにアップし、全身から生えてきたエネルギーのような翼からそれ自体を撃ちだし、箒たちを一人、また一人と沈めていく。

そして、最後に残った箒が何とか食らいついていくも紅椿のエネルギーが底を尽きてしまう。

 

即時万能対応機を行う机上の空論であった第四世代型ISのコンセプトを実現するために組み込まれた、全身のアーマーになっている完成型「展開装甲」。

攻撃・防御・機動のあらゆる状況に対応することができるが、エネルギーの消費が激しくすぐに限界を迎えてしまう欠点も持っていた。

 

福音に首を掴まれた箒は目をつぶり、次の瞬間に訪れるだろう痛みを覚悟するが――

 

「俺の仲間は誰一人としてやらせねえ!」

 

そこに、重傷を負い眠っているはずの一夏が現れた。

自身のIS『白式』を第二形態『白式・雪羅』へと二次移行(セカンドシフト)させて。

 

箒を、新たな武装、多機能武装腕『雪羅』による荷電粒子砲で助け出した一夏は福音に向かっていく。

福音のエネルギー弾を雪羅による零落白夜、エネルギーを消滅させるシールドで防ぎ、クローモードへ変形させ、雪片弐型とともに斬りかかる。

しかし、それでも決めきれずにエネルギーが尽きかけたとき、箒が一夏のもとへ飛んでくる。

 

「一夏!これを受け取れ!」

 

一夏と箒が手を握ると白式のエネルギーがみるみる回復していく。

 

「なんだ!?エネルギーが回復!?」

 

土壇場で紅椿の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)『絢爛舞踏』が発動したのだ。

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)とはISが操縦者と最高状態の相性になったときに自然発生する固有の特殊能力で一夏の「零落白夜」もこれに当たる。

そして、『絢爛舞踏』の能力はエネルギーの増幅と譲渡。

 

「一夏、これで奴を倒すんだ!」

 

「おう!」

 

それにセシリア、鈴、シャルロット、ラウラも頷き、全員で眼前にたたずむ福音に構える。

福音もそれに対し、戦闘態勢を取る。

 

しかし

 

それは

 

やって来た。

 

「え?」

 

誰が言ったのかわからない。もしかしたら六人全員が呟いたのかもしれない

 

福音は貫かれていた。

 

透き通るような、水色の矢に。

 

福音は背中に刺さったその矢を引き抜こうとしたが、

 

「ッッッ!!!??」

 

爆発する。

続けて二本、三本の矢が飛んできて福音に刺さり爆発していく。

 

やがて、福音は海に落下していった。

 

そこで一夏たちは福音の背後にいた、福音を沈めた存在を見た。

 

それはISだった。

 

その身に纏う装甲は操縦者の顔と体を隠すような全身装甲だが、守りに使えるような部分は少ない。

それを補うように水がまるでドレスのように展開され、、さながらお姫様の様な品格も漂っている。

それだけじゃなく左右一対と頭上の少し後ろに浮いている四枚の花弁型のクリスタル非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)も特徴的だ。

そして、その手には先ほど福音を沈めた矢を放ったと思われる巨大な弓があった。

 

警戒する一夏たちのISに文字が表示される。

 

――警告。敵機 戦闘状態に移行 警戒してください――

 

続いて、データが表示される。

 

――敵機のデータ無し。識別名のみ判明――

 

その名前は――

 

霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)――!?」

 

一夏がその名前をつぶやいた瞬間、IS『霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)』はその手に持った弓『ヘイルレイン』を収納(クローズ)して、右手にランス『クリアジャベリン』を展開する。

 

一夏たちは気づかない。自分たちが絶体絶命の危機に瀕していることを。

 

 

 

闇夜はさらに深く暗くなっていく。




おかしい。シリアス一直線のはずなのに・・・。
ボストーク弐号・改に敬礼をお願いします。
キンジのヒステリア覚醒。そして和麻たちに合流した簪と本音。さあ、反撃の狼煙を上げましょう。

一方、一夏たちの前に現れたのは!?

タイトルの「式神」とは和麻たち。
「絶体絶命」とは一夏達です。

次回「勝利―敗北」。
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