緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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暴走―暗躍

ランスが量子変換され虚空に消える。

その瞬間、貫かれた流無さんの腹部から大量の血が噴き出して、流無さんは片膝をつく。

 

「な・・・なんで?」

 

私は呆然としながらつぶやく。

 

「そん・・・なの、グッ、決まっているじゃない」

 

流無さんは痛みに顔をゆがませながらも応える。

 

「私は武偵。請け負った任務はIS学園の生徒を守ること」

 

周りの水が彼女の周囲に集まり始める。その量はどんどん増していき、さっきお姉ちゃんが操った海水に迫るほどになってきた。

それに対し、お姉ちゃんも距離を取ってナノマシンの水を集め始める。

 

「・・・それになんだかあなたの事、放っておけなくてね」

 

こちらを少し向いて流無さんは微笑んでくれた。その目は蒼く輝いている。

 

・・・ああ、なんで、その微笑みは・・・

 

集まった水は巨大な翼のように展開される。

 

「――水翼(すいよく)豪羽(ごうう)――!」

 

それに対し、お姉ちゃんも二振りの槍のように水を展開する。

 

・・・あの頃の、お姉ちゃんに・・・

 

二つの水は、ぶつかり合う。

 

「――ミストルティンの双槍(そうそう)――!」

 

その衝撃は私を吹き飛ばす。

 

・・・似ているの?・・・

 

 

 

二つの水がぶつかり合った衝撃で盛大に舞いあがった土煙。

 

それが晴れたとき、簪たちの目に飛び込んできたのは力無くぐったりしている流無と、そんな流無の頭を部分収納した右腕で掴みあげる霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)の操縦者、簪の姉更識楯無の姿だった。

 

『反魂の術』

 

楯無は流無の頭を持ち上げながら、全員、特に簪と和麻に聞こえるように言う。

 

『陰陽術において死者を蘇らせる術だけれど、応用すれば人体を複製することもできる』

 

その言葉に対し、和麻は何も言わない。

和麻は陰陽術は使えなかったが、勉学、格闘術などにおいては優秀な成績を残していた。その和麻の沈黙が案に、楯無の言葉を肯定する。

 

『あの日、銃弾を受けて、転落した私は記憶を取られた。それまでの思い出の記憶をイ・ウーに』

 

つらつらと語られる楯無の過去。

それをこの場にいる全員が聞く。

 

「そ、そんなこと、私は知らないぞ!?」

 

元、イ・ウーに所属していた理子が叫ぶ。

 

『ええ。このことはイ・ウーでも上位にいる者にしか伝えられなかったのだもの。まあ、私も何でこんなことをしたのかは知らないのだけれど』

 

楯無は肩をすくめてそう言い、話を続ける。

 

『記憶を抜き取られた肉体はどこかに逃げていった。残ったのは、それまでの記憶とそこから生まれた・・・私』

 

つまり、霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)をまとっている楯無は抜きとられた記憶から生まれた人格ということだ。そして、逃げ出した肉体とは・・・。

楯無は流無に顔を近づける。

 

『ようやく手に入る。私は、この子。この子は・・・私』

 

そして、楯無はその唇を流無の唇に押し付けた。

 

その瞬間、二人は光に包まれる。

 

あまりの発光量に全員が目をつぶる中、やがて光は収まり・・・。

 

「ふふふっ、ようやく戻った。私の身体が」

 

そこにいたのは霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)を纏った流無の姿。しかし、その目は真紅に輝いている。つまりは、楯無だ。

全員が呆然とする中、楯無は瞬間加速(イグニッションブースト)でキンジ達の元に突っ込む。

キンジ達はとっさに躱すが、楯無はそれに構わず、地面に転がっていた遥香を抱え上げる。

 

「遅いですよ」

 

「ごめんなさいね。意外とあの子たちが粘るから。そろそろお暇させてもらうわ」

 

楯無は遥香を抱え上げると、飛び上がる。

 

「仮そめの肉体を捨てて本来の身体に戻っても、さっきの傷のせいでもうこれ以上は戦えないの。命拾いしたわね」

 

そう言うと、海の方にむかおうとする楯無は言葉を続ける。

反魂の術で得た肉体には限界があり、もって一、二年。そのタイムリミットが近づいてきたため、今回の作戦に出たと楯無は語る。

そして、霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)を纏って福音、そして専用機持ちと戦ったのは――

 

「私の戦闘訓練みたいなものよ。この霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)が完成したのはつい先日。さすがに慣れていない機体ですぐに武偵高の精鋭、そして簪ちゃんと戦うわけにはいかなかったしねぇ。その点、未熟なIS学園の身の程知らずな生徒たちはいいウォーミングアップ相手だったわ」

 

そこまで言い終えると、海に向かって飛んで行こうとする。

 

「ま・・待って!」

 

そんな楯無に簪は声を掛けるが、もはや興味はないとばかりに楯無は無視して飛んでいく。

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!!!!!!」

 

 

その瞬間、空気を震わせる咆哮と共に蒼い風と蒼い雷が迸った。

 

 

 

流無が刺された。

別段その程度のことで取り乱したりはしない。

武偵の任務では、撃たれた、刺されたは日常茶飯事だからだ。

だが、その後の話しは別だ。

流無は楯無(あいつ)の肉体?

 

ふざけるな。

 

それじゃあ、流無は何だったんだ?

俺と一緒に過ごしてきた流無は?

俺のことを必要と言ってくれた流無は?

俺のために涙を流し、藍幇(ランパン)の構成員が銃を放つ中、俺を助けに来てくれた流無は?

 

楯無(あいつ)が戻ってくるまでの間の、代わりの人格だとでもいうのか?

 

そんなこと、認められない。認めてたまるか。

 

目の前が鮮明になる。

 

周りの雑音が消えていく。

 

自分のやるべきことが頭の中にどんどん湧いてくる。

 

逃がすな・・・奪え。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!!!!!!」

 

吹き荒れる蒼之神風は今までの、合宿でISを落としたときよりも強く激しく吹き荒れる。

やがて、蒼く輝く暴風はすさまじい空気摩擦を巻き起こし、蒼い稲妻を纏う雷の嵐(サンダー・ストーム)となる。

吹き荒れる嵐の中心で稲妻を纏いながら俺は飛び出した。

 

 

 

海上を行く楯無は霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)のハイパーセンサーが背後から自分を追いかけてくる存在を感知した。和麻である。

 

「来たわね。まあ、予想通りだけれど」

 

「おにーちゃんですか?」

 

楯無の呟きに遥香が聞き返す。

 

「ええ。よっぽど、この子が好きなのね」

 

自分の体を指さし悪戯っぽく笑う楯無に対し、遥香は少し不機嫌になる。

 

「流石の私もこの傷で、しかもあなたを抱えたまま戦うのはつらいけれど」

 

背後から迫る和麻の目の前に海水を突き破って、何かが立ちはだかる。

 

「兎さんのおかげで問題ないわね」

 

それは楯無に落とされたはずの銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)だった。

 

「邪魔だああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

立ちはだかる福音を和麻は雷の嵐(サンダー・ストーム)で巻き込み、風斬・水蓮で斬りつける。そこに普段の彼の鋭く研ぎ澄まされた技術はなく、ただただ相手をぶちのめすという戦い方だった。つまり、今の彼は暴走しているに等しい。

斬撃の嵐は福音の装甲を斬り裂くだけにとどまらず、蒼雷の放電にもてあそばれ、どんどん傷ついていく。

福音も反撃にエネルギー翼から無数のエネルギー弾を放つが、雷の嵐(サンダー・ストーム)の影響で中心にいる和麻には届かず、得意の高速機動も荒れ狂う暴風に邪魔されて思うように動けない。

今の和麻を突き動かすのは、ただ、ただ、流無への思い。

何もなかった自分、誰にも頼りにされなかった自分に、初めて持っている物を気づかせてくれた、頼りにしてくれた。そして、泣いてくれた流無を取り戻すという思いだけだった。

 

やがて、蒼之神風の限界時間を迎えたのか雷の嵐(サンダー・ストーム)は収まり、福音もエネルギーを失い、地面にゆっくりと落下していった。

 

それを横目に和麻は飛ぼうとする。

 

楯無のとんでいった方角へ。

 

しかし、そこにはもう誰もいない。

 

それでも・・・。

 

そんな思いも虚しく、和麻の意識は闇に沈んでいった。

 

 

 

海は深く、暗く、底知れなく。

二人の思いを闇に飲み込む。

残された者たちの心に深い傷跡を残し、事件は一時的な収束を向かえた。

 

 

 

 

 

 

「紅椿の稼働率は42%かぁ。まあ、こんなものかな」

 

その夜、誰もいない岬の柵の上に腰掛け空間ディスプレイを楽しそうに眺めるのはウサミミのついたカチューシャにエプロンドレスを着た女性。名前を篠ノ之束。

インフィニット・ストラトスと呼ばれるパワードスーツの開発者だ。

 

「それにしても白式には驚かされるなあ。まさか操縦者の生態再生まで可能だなんて」

 

そう、重傷であったはずの一夏が福音と戦う箒たちのもとに駆けつけられたのは、形態移行(フォームシフト)した白式が、同時に一夏の肉体再生を行い、傷を治したからである。

 

「まるで・・・」

 

「まるで、白騎士のようだな。コアナンバー001にして、お前が心血を注いだ最初の機体」

 

束の呟きに言葉をかぶせたのは、背後から現れた千冬だ。

 

「やあ、ちーちゃん」

 

「ああ」

 

束は振り返らず、千冬も腕を組み束の方は見ない。

それでも、二人の間には確かな絆があるような雰囲気である。

 

「いきなりだけどちーちゃんに問題です。白騎士はどこに行ったのでしょうか?」

 

「白式(びゃくしき)を白式(しろしき)と呼べば、それが答えなのだろう?」

 

「ぴんぽーん。流石はちーちゃん。白騎士を乗りこなしただけあるね」

 

白騎士と呼ばれた機体はコア以外を解体され、第一世代ISの作成に大きく貢献し、そのコアは行方が分からなくなった。そして、いつしかそのコアは白式と呼ばれる機体に組み込まれた。

 

その後も、二人は問答を続け、やがて千冬は最後の問いを口にする。

 

「それで、あの霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)もお前が作ったのか?そして、一夏たちを襲わせたのか?」

 

その声には少なからず怒気が含まれていた。

しかし、束はそれに匹敵する怒気を含んだ声で答える。

 

「ううん。全然違うよ。あの機体のことは私にもわからない。そもそもあの機体に使われているコアを私は知らないよ。それに私が箒ちゃんといっくんにあんなひどいことするわけないじゃん」

 

その答えに千冬は驚く。束以外にコアを作れるものがいるとは思えなかったのだ。

それに、確かに妹の箒と一夏を気に入っている束が二人にあのような怪我をさせるとは考えにくい。

二人は今、ドクターヘリで都内の大病院に搬送されている。他の四人も二人同様の大けがを負っており、同じ病院に運び込まれた。

 

「ふむ、その答えには僕がお答えしようか」

 

唐突に聞こえた第三者の声。

その声に千冬だけでなく、束も驚愕する。

 

「はははっ、今この時代でおそらくもっとも有名だろう二人が取り乱すとは。思わず笑ってしまい、失礼した」

 

「何者だ!」

 

千冬の鋭い声が響き、カツンッ、カツンッという足音と共に一人の男が現れる。

しかし、その姿は闇夜に紛れはっきりとは見えない。

 

「私の名前は故あって名乗れない。そうだね、教授(プロフェシオン)とでも名乗ろうか。現イ・ウーのリーダーをしている」

 

「ふ~ん、秘密結社イ・ウーのリーダーかあ。何しに来たの?」

 

「少し、お借りしたものをお返しに」

 

そう言うと教授(プロフェシオン)は一つの物体を千冬に放り投げる。

 

「な!?これは、ISのコア!」

 

学園別タッグマッチにおいて、遥香によりIS学園から盗まれた未登録のコアだった。

 

「もはや我々には必要のないものだからね。元の持ち主に返しにきたのだよ」

 

それを思わず受け取った千冬は、教授(プロフェシオン)を睨む。

 

「では、まさか――!」

 

「ああ。そのコアを元に、我々オリジナルのコアを三つ作り、今回の事件を企てたのは僕たちイ・ウーだ」

 

教授(プロフェシオン)の答えに千冬はさらに視線を鋭くして、殺気を放つ。

それも仕方のないことだ。自分が弟と教え子たちに重傷を負わせたといったようなものなのだから。

 

「へえ、じゃあ、あの霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)以外にも二つのISを作ったんだ?」

 

束は千冬よりも冷静な声で尋ねた。そう、先ほどの教授(プロフェシオン)はオリジナルのコアを三つ作ったといった。

つまり、霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)以外にもう二機、ISが存在するということになる。

 

「さて、どうかな。しかし、お礼だけは言おう、篠ノ之束君。君のおかげで私の『緋色の研究』がさらに進んだ。もう君たちに僕たちイ・ウーが干渉することはないと約束しよう」

 

その言葉が終わるか、終わらないかの刹那に千冬は教授(プロフェシオン)に接近し、殴り掛かるが、教授(プロフェシオン)は千冬の拳を受けた瞬間、砂となって姿を消した。

 

「な!?」

 

「無駄だよ、ちーちゃん」

 

呆然とする千冬に束が言う。

 

「・・・もう私も行くね。それからちーちゃん、イ・ウーには手出しはしない方がいいよ。彼らは正真正銘の怪物なんだから」

 

そう言い残すと束も姿を消した。

 

 

 

この日、IS学園の専用機持ちのISはすべて破損。比較的被害の小さかった簪の『打鉄弐式』ですらも、ダメージレベルB~Cであり、操縦者の簪も二、三日の入院を余儀なくされ、また精神的なダメージも大きかった。

八神和麻は福音の操縦者、ナターシャ・ファイリスと共に付近の砂浜で発見され、病院に搬送。意識不明のままである。

遠山キンジをはじめとする武偵高の生徒たちも傷だらけであったが命に別状はなかった。

そして、強襲科(アサルト)二年の蒼神流無の行方は依然として不明。

 

武偵高としては依頼されていたIS学園の生徒の護衛と言う任務を、代表候補生を含む専用機持ち七人が負傷したことでその責任を問われたが、問題行動をした専用機もちたちを止めたことが記録に残っていたので責任を取ることはなかったが、マスコミは非常時に役に立てなかった武偵たちを非難した。

もっともそれはすぐに何者かにより鎮静化され、多くのマスコミが問題報道行為をしたことで逆に避難され、報道会社は倒産していった。

 

 

 

『目覚めよ、ゲン・・とリ・の・・者よ』

 

誰だ?

 

『我・・この・・界に吹き・・・・全・・・風を司・・・・者』

 

俺はどうなったんだ?それよりもここは

 

『名を・・・・精霊王』

 

「なんだって!?」

 

朦朧とする意識の中、聞こえた言葉に一気に覚醒する。

 

『ようやく目覚めたか。我が祝福を受け入れるに足る器を持つ者よ』

 

そこはすべてが彼の者に満たされた空間。

無限に広がる広く、蒼い蒼穹のごとき場所に俺はいた。

その中心で圧倒的な存在感を放ち、なおかつ全てを清めるかのごとく清浄な風を纏うのは――

 

「風の・・・精霊王!?」

 

全ての風を統べる王。

 

 

 




これにて四章は終了です。
次回から主人公たちの反撃の第五章・・・と行きたいのですが特別章です。
なんと、狂戦士さんとのコラボです。
内容は『緋と蒼の協奏曲』と『~白き騎士と黒き暴君~』の世界観クロスです。
三章と四章の内容をまとめていきます。
お楽しみに。
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