一弾 前夜
六月十二日の夜十時。東京武偵高校の男子寮の一室。
つまり自分の部屋で、俺は読み物にふけっていた。
「和麻ー、お風呂出たわよ?」
そんな俺のところに、風呂上りなのだろう、濡れた髪を拭きながら水色のパジャマ姿の流無が入ってきた。
「お~。これ読んだら入るわ」
それに対し、俺は軽く返事をする。
本来、男子寮の一室であるここに女子の流無が居てはいけないのだが、同室の遠山キンジのパートナーである神埼・H・アリアもここに居座っているので気にしてはいけない。
「何よんでいるの?」
流無がひょいっと顔を俺の横から覗かせ、俺の読んでいる物、紙束の資料を覗き込んでくる。
濡れた髪にほのかに香るシャンプーの匂いに少しどきりとする。
「これってIS学園の生徒の資料?」
「ああ、この間レイズにもらったやつを見返していたんだ」
「明日からだもんね、警備の任務」
そう。俺は明日からIS学園の警備のために数人の生徒たちで組んだチームのリーダーとして向かう。
正直、はずれくじの任務なんか投げ出したいのだが、武偵高最恐の教師陣直々の
「どう?面白そうな子はいた?」
「数人な。特に面白そうなのがこいつだ」
俺は一人の少年の資料を流無に渡す。
「黒崎仭。十五歳。数週間前に編入してきた二人目の男性IS操縦者ね。・・・へ~、なかなか面白い経歴じゃない。最初の男性操縦者の織斑一夏の幼馴染で、織斑千冬、篠ノ之束とも交流があり、今では独立組織『影の軍隊(シャドー・フォース)』に所属。コードネームは『ベルセルク』。凄いわね」
「ああ。正直、こんな任務より流無との
俺がそう言うと流無はわざとらしく頬を膨らませ、
「え~?私との任務より、この坊やとの語らいの方がいいの?」
と、すねたような声で言ってきた。
それに対し、俺は笑いながら流無の顔を抱き寄せる。
「そんなわけあるか。お前とこうしている方が何万倍も楽しくて幸せさ」
「ふふっ、知っているわよ」
そうして、俺たちはしばらく抱き合っていた。
ちなみに、その様子をこっそりのぞいていたピンク色のツインテールがいたことには気が付いていたけど何も言わなかった。
「・・・ええ、あれ以来ラウラ・ボーディヴィッヒに動きはありません。どうやら大人しくはしてくれたようで」
最近、男でありながら動かした2人目…学園の中では3人目?ともなっている俺、黒崎仭は所属している組織の指揮官に連絡をとっている。呼び出されたのだが、用件は十中八九わかっている。
「で、武偵の件でしょう?ええ、わかっています。・・・失礼のないように?舐めているんですか?そもそも、俺なんかより一夏がかけないか心配ですよ。男子も来るようですから絶対に気安く話かけてくるでしょうね」
明日から行われる学年別タッグトーナメントの警備のために武偵高の学生が、来ることになっている。確か・・・5,6人だったかな?
「・・・はい・・・はい。了解です。それでは」
さて、終わったな。
しかし、武偵にとっては、この学園に来るのはさぞかし嫌な奴もいるだろうな・・・。
IS学園のほとんどの生徒は、ISを世界最強の兵器という認識を持っているため、武力のみで戦う武偵が馬鹿みたいなことだと思われているらしい。
例外は、自分で言うのもなんだが、俺とかだ。
俺はISを動かす前に、任務等で武偵に数回遭遇したことがあり、その強さを知っているのだ。
故に、組織も馬鹿にしたりなどしない。むしろ、彼らはISに匹敵するとも思っている。
ISに数人の武偵で挑めば、匹敵するだろうとも俺は思う。(武偵でいうランクとかにもよるが)
実際、最近武偵高校の合宿で起きたISの襲撃を退けたらしいからな。あれはファントムの仕業と見て、ほぼ間違いない。確か風の噂では、武偵にやられた操縦者が生きてはいたが、かなり無残であったらしい。
話を戻すが、それにISがいくら世界最強の兵器だからといって、それに乗ってなければただの無防備な弱い人間だ。そうなれば武偵に敵うはずがない。
だから、この世界の今の常識も正直、おかしいと思うのだが・・・いや、おかしいけれども、それが常識になってしまっている。
「やれやれ、生徒が馬鹿にしたようなこと言って、面倒事にならなきゃいいが・・・」
それ以前に、男も来るのならここでの視線は耐え難いだろう。
事実、俺もISを動かした人物とはいえ、好奇心と見下す視線しか女子から感じない。一夏は千冬さんの弟という時点でほぼ好奇心だが…。
俺でさえ、そうなのだから、武偵の男子に対しての見下す視線等はもっと酷いというのは考えるまでもない。(女子も多少こたえるかもしれないが)
・・・無知というのは本当に恐ろしい。
喧嘩を売ったところで、ISも装備してないそいつらは権力というものにしか守られていない。(絶対にないだろうが)本気で武偵がそれに乗ったらただじゃすまないというのに・・・。
そんなことを考えながら、俺は部屋に戻る。
帰って、やってくる予定の武偵のデータを確認するとするか。
更識家・・・いや更識簪とは、最近顔を合わせたが、武偵とはどうなるか・・・。ただ、常識人が来てほしい・・・。
翌日、本来会うことのない者達が出会う。
Sランク武偵の風術師の剣士と、2人目の男性IS操縦者の軍人。
これは、会うことのない者達との、もしもの物語である。
次回から、本格的にクロスしていきます。
それと仭の設定です
黒崎仭
十五歳
肩まで伸ばした長髪で黒髪、前にも少し髪がかかっている少年。
「IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 」で、男でありながらISを動かしたイレギュラー。
織斑一夏の幼馴染で、織斑千冬、篠ノ之束とも交流があり、独立組織『影の軍隊(シャドー・フォース)』に所属。コードネームは『ベルセルク』。
ある軍に所属しているときに両親が殺された経験がある。いつから所属したか等の経緯は不明。
軍人であり、一応組織での訓練により生身や、ISでの実力もそれなりには高い。(当然武偵には劣る)
今作では武偵と遭遇した経験があって、武偵がISを装備した者に匹敵するのも知っている。
武偵相手には礼儀正しくもする。
IS専用機
剣闘士(グラディエイタ-)
機体カラーは黒
ブレードや、短剣、拳を主にして戦う。
単一仕様能力もあり、相手の攻撃を受ければ受けるほどその攻撃の際に生じるパワーをエネルギーに変え、機体に蓄える能力を持つ。
『影の軍隊(シャドー・フォース)』
「IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 」に存在する独立組織。
IS委員会の許可を得て、活動しているがどこにも属していない、ISを主に兵器として扱っている裏組織。(このコラボ編でもこれは変わらない)武偵の存在を低くは見ていない。
なお、この組織に関して深くは出てこないので、気にする必要はない。