緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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基本的に今作に書き足す感じになっていますので、同じ文章がありますがご容赦ください


二弾 邂逅

IS学園の1年1組の教室。

そこではあるひとつの話題で持ちきりだった。

明日から行われる学年別タッグトーナメントの警備のために武偵高の学生来るというもので、あまりない他校とのかかわりにクラス中がどこか騒がしい雰囲気だった。

 

「一夏、みんなどうしたのかな?」

 

そんな中、金髪の中性的な顔立ちをした男子生徒、シャルル・デュノアが黒髪の男子生徒、織斑一夏に話しかける。

 

「さぁ?俺もよくわからない」

 

どうやらこの二人は武偵高からの警備の派遣のことを知らないようだった。

だが、それも仕方のないことである。

なぜなら、彼らは連日、明日からのトーナメントに向けてずっと特訓してきたのだから。

 

「仭は知っているか?」

 

「・・・」

 

「仭?」

 

「ん?ああ、悪い。なんだ?」

 

「いや、だからこの騒ぎはなんだって」

 

「それは「今日から武偵高から警備のために数人の生徒が来るんだって」

 

「その中には男子もいるっていう噂なんだ」

 

「み~んなどんな人が来るのか気になるんだよ、おりむー」

 

「・・・・・」

 

仭の言葉を遮って、相川清香、谷本癒子、布仏本音の三人が応える。

 

「へ~、武偵高からか。男子もいるのかな?」

 

「二人いるらしいよ~」

 

一夏の疑問に本音はいつもののんびりした声で答える。

それに一夏は楽しみだと思う。

なにせ、ここには自分とシャルル、そして仭しか男子生徒はいないのだから、ぜひとも仲良くしたいのだ。

 

「一年上がほとんどらしいから、態度に気をつけな」

 

「なんで知っているんだ?」

 

「風のうわさだ。・・・そろそろ時間だから戻る」

 

仭の言葉から少し経って、放課後のSHRの時間になり、担任の織斑千冬と山田真耶の二人が入ってきた。

千冬の厳しさを知っている1組の生徒たちはすぐに席に座る。

 

「今日からトーナメント終了まで、ここの警備のため数人の武装探偵が張り込むことになる。中でも、お前たちと同年代のやつらがいるから今から紹介しよう。入ってきてくれ」

 

どんな奴らなんだろう、と一夏は入ってくるだろうドアに注目する。

すると、教室のドアが開き、5人の男女が入ってきた。

 

「・・・」

 

教室中が沈黙に包まれる。なぜなら、入ってきた面々があまりにも個性的だったからだ。

 

「東京武偵高校の生徒たちだ。挨拶を」

 

 

 

昼についた後、東京武偵局から来ていた人たちに挨拶してから、荷物を運び終えて一息ついた後、俺達は各教室に挨拶をして回る。

同年代だから、俺たちのことは紹介しておいた方がいいという配慮だとか。しかし、ここで問題が発生した。平賀さんがいないのだ。

平賀さんがいないことに不安を感じながら1年1組の前で待機していた俺達は、千冬さんに促されて仕方なく教室に入り、まずはリーダーである俺から挨拶をすることにする。

 

「武偵高2年の八神和麻だ。今日からしばらくここの警備をすることになった。あまりなじみのない場所だからいろいろ迷惑をかけると思うが、よろしく頼む」

 

まあ、無難な挨拶ができただろう。

それにしても、IS学園の生徒たちはなんか想像していたのと違う印象だな。

兵器であるISを学ぶんだから、武偵高と似たようなものかと思っていたのだが、依然潜入捜査(スリップ)した普通の一般校の雰囲気とあまり変わらない。

中にはそれなりの強さを持つ奴もいるが、それも銀髪に眼帯をしている奴と袖の長い特徴的な制服を着ている奴。それとあの黒髪で長髪の男くらいだな。

 

(ラウラ・ボーデヴィッヒ、布仏本音。そして、黒崎仭か・・・)

 

黒崎以外の2人も、レイズに渡された資料にあった顔だ。

さっきバスの中で確認したから間違いない。

ほかに四組の更識簪っていう生徒もなかなかの実力者とのことだったな。

 

「僕は彼の同級生の不知火亮。よろしくね」

 

不知火の自己紹介にクラスのあちこちからため息が聞こえる。

イケメンの不知火に見とれていたのだろう。

・・・なぜか黒崎は耳を塞いでいたが。

 

「レキです。よろしくお願いします。こっちは武偵犬のハイマキです」

 

次にレキなのだが、全員ハイマキに目が行っている、というか目を丸くしている。まあ、馬鹿でかいオオカミを連れていたらそう言う顔をするよな。

 

「同じく、2年のジャンヌだ。パリ武偵高からの留学生だ。よろしく頼む」

 

ジャンヌの自己紹介には不知火同様のため息が聞こえた。同性から見てもジャンヌは魅力的なのだろう。さすが、聖女様の末裔だ。

 

で、一番気になるのが・・・。

 

「柳生神楽だ。同じ1年なのでよろしく頼む。あと、私とそこのチビは何の関係もない」

 

神楽ああああ!!お前何いきなりケンカ売るようなこと言ってんだ!?

案の定、ボーデヴィッヒが少し睨んでいるぞ。まあ、武偵高の面々と比べたらしょぼいけどさ。それでも穏便に済ませよ!

神楽のまさかの発言に一年一組の教室がものすごい緊張感に包まれる。

資料によると、先ほど神楽がチビ呼ばわりしたのは、ドイツの国家代表操縦者候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒ。

彼女は生まれたときから軍属のため、戦闘能力が高く、それでいて『ドイツの冷氷』と呼ばれているらしい。おそらく神楽と拮抗しているだろう。

そんな相手に、いきなりケンカを売るとは・・・。

俺はとりあえず、神楽を抑えようとする。

このままではいずれ戦闘を始めるかもしれないからだ。

現にラウラなんか立ち上がっているし、神楽も戦闘態勢に入りつつある。

 

「はぁ・・・」

 

『!』

 

そしてさらに1名、雰囲気を変える者・・・黒崎仭だ。

なるほど、確かにそこそこ実力はありそうだ。ラウラを止めようとするためか、立ち上がりかけてる。

だが、この空気は唐突に終わりを告げる。

 

「遅れてしまったのだ!」

 

ガララッ!という音を立てて教室に入ってきた、身長143センチの平賀さんだった。さっきはいなかったからどこに行っていたのか気になっていたがまさかこのタイミングでやって来るとは。

IS学園の生徒たちはまた目を見張る。なにせ、どう見ても小学生にしか見えない女の子が武偵高の制服を着て現れたのだから。

この空気の中に現れた小学生くらいの平賀さんは周りに集まる視線を気にも留めずに入ってきて。

 

「平賀文なのだ!ISを見てみたくて来たのだ!しばらくお世話になるのだ!!」

 

と、無邪気な顔でそう言った。

 

「あや?」

 

「んぅ?」

 

そんな平賀さんと長い袖の生徒、布仏本音の目が合う。

二人はトコトコと近寄って、

 

「「いえ~い!」」

 

と、ハイタッチを決めた。

 

「なんだか君とは仲良くなれそうなのだ!」

 

「う~ん、私もだよ~、あややん!」

 

「あやや、あだ名をつけてもらったのだ!君にもつけてあげるのだ!」

 

「お~!本当!?私はね~、布仏本音だよ~」

 

「だったらののちゃんなのだ!」

 

「ののちゃん!?かわい~い!ありがとう!」

 

あややん!ののちゃん!などと言いながら笑いあう二人に教室にいた全員がなんともほんわかした空気に包まれ、神楽とラウラもお互いに戦闘態勢を解いたことで一触触発の事態は避けられたのだった。

 

こうして、俺たちの自己紹介は終わり、布仏さんとはしゃいでいる平賀さんを回収して俺達は次の教室に向かった。

 

ちなみになぜ遅れたのか平賀さんに聞いてみたところ、

 

「チョウチョがいたから追いかけていたのだー!」

 

と、無邪気な顔で返され、怒る気力もなくなった。

いろいろ不安になるような任務のスタートだった。

 

 

 

放課後のIS学園食堂。

タッグトーナメントを明日に控えたそこでは、多くの生徒たちが明日への英気を養っていた。

そんな中で俺はチームメンバーの五人と一緒に夕食を食べていた。

制服が違うから目立っているが気にしていたらキリがない。

ちなみに、俺は焼き魚定食、不知火はたぬきうどん、レキはいつも通り持参したカロリーメイトチーズ味(足元ではハイマキがドッグフードを食べている)、ジャンヌはフランス料理のポトフ、神楽はいか飯、平賀さんはお子様ランチを食べている。

というか、まさかお子様ランチがあるって何気に凄いなIS学園。そして、それをキラキラした目で頼む平賀さんもそれでいいのだろうか?

 

「それにしても、なんだかここは肌に合わないね」

 

不知火がそう言う。

 

「ここは世界中からのエリートが集まっている。偏差値の低い武偵高(うち)とは雰囲気が違う」

 

俺がそう返すと不知火は苦笑しながら「確かにね」と言いながら、再びうどんをすする。

 

「ジャンヌ先輩。警備の計画は出来たのですか?」

 

神楽がいか飯をつつきながらポトフのウインナーを食べているジャンヌに言う。その声がどこか沈んでいるのは、俺が一年一組でのことをじっくり絞ったからだ。

 

「とりあえず、大まかな作戦は出来た。まず不知火」

 

「はい」

 

「お前はVIPの近くだ。お前ならどんな事態でも柔軟に対応できる」

 

確かに不知火の器用さがあれば大丈夫だろう。

 

「次に八神は生徒たちの近くだ。お前の超能力での探査範囲の広さなら生徒たちに何があってもすぐに対応できる。柳生はそんな八神の補佐だ」

 

「了解」

 

「承知した」

 

「レキは狙撃ポイントを見つけ、そこから『鷹の目』だ。何かあれば私たちをサポートしてくれ」

 

「分かりました」

 

『鷹の目』とは、狙撃手(スナイパー)の優れた視力を活かして遠距離から対象者を見張る監視任務(ライドハード)のことだ。

今回は対象者が多いが、他の武偵の狙撃手(スナイパー)もいるから大丈夫だろう。

 

「今のところはこんな感じだな」

 

ちなみに、平賀さんは非戦闘要員のため当日はトーナメントを観戦するとか。

そのかわり、夜には俺達の武器の点検をしてくれる。

一応俺も平賀さんから武器を調達してもらっているからな。

 

「あの、ちょっといいですか?」

 

そんな俺達に話しかけてくるやつがいた。

 

織斑一夏

 

この学園唯一の男子生徒であり、世界で初めて確認されたISを動かせる男だった。

後ろには四人の女子を連れている。

 

 

「なんだい。織斑君」

 

不知火が応える。こういうとき、社交性のあるこいつがいてよかったと思う。

 

「一緒に食べてもいいですか?」

 

「もちろんいいよ」

 

不知火が応え俺達も無言で同意する。

織斑たちは俺達のすわっている長机の隣のところに座る。

 

「ええっと、自己紹介した方がいいですかね」

 

礼儀正しいな。最近の高校生じゃあんまりいないぞ。ましてや武偵高(うち)にはほぼ皆無だ。

 

「うん、できればお願いしたいかな」

 

「はい。えっと織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

「篠ノ之箒です。よろしくお願いします」

 

一夏に続いて、黒い髪をポニーテールにした女子が自己紹介をする。

確か、ISの開発者、篠ノ之束博士の妹だったな。

クラス対抗戦の襲撃の際に、放送室に無断で侵入

。襲撃者と戦っていた織斑に激励をして、襲撃者のビームに狙われたって資料であった。

よくもまあ、そんな馬鹿なマネができたものだ。ISも持っていない無力な学生なのにそんなことをしたら死ぬぜ。しかも、それでもしかしたら助けるために動いた織斑が危険にさらされるって言うことが理解できなかったのかね。

 

「イギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ。よろしくお願いします」

 

長い金髪のお嬢様っていう雰囲気だな。

彼女は以前、レイズがイギリスを脅す材料にしようとした映像に映っていた。

何があったのかというと、一組のクラス代表(簡単に言えば雑用係)をきめるときに、織斑が推薦されたことに気を悪くしたセシリアは、反論。その内容は最初に織斑の非難から、男性全体への悪口、さらには日本という国を見下した発言までしたというのだ。今の世界情勢で日本はかなり上の立場にいる。世界最強のIS操縦者と名高い織斑千冬は日本人だし、開発者の篠ノ之束も日本人。さらには今のところ世界で唯一の男性操縦者の織斑も日本人なのだから。あと、黒崎もか。こんな発言をイギリスの代表候補が言ったとなれば、日本とイギリスの仲は悪くなり、セシリアは専用機のISと候補生の資格のはく奪。悪ければ、国外追放をされていてもおかしくないのに、何でここに無事でいるんだろう?不思議だ。

 

「凰鈴音よ。中国の代表候補生。よろしくね」

 

さばさばした感じのツインテール。アリアにどこか似ているな。合わせてみたらなんか面白そうだ。

確か、こいつは入学するときに一度断ったのだが、その後軍の上官をISで脅し入学したんだっけ。・・・普通に軍法会議ものだろ?何で通ったんだ?

しかも、入学してからすでに決まっていた二組のクラス代表を無理やり変えてもらったらしいし、そんなこと認めていいのだろうか、IS学園。

少し、武偵高に似ているんじゃないか?

 

「僕はシャルル・デュノア。フランスの代表候補生です。よろしくお願いします」

 

金髪の中性的な顔立ちのシャルルがそう挨拶する。

 

(『転装生(チェンジ)』か・・・)

 

転装生(チェンジ)』とは、極々まれな話だが男子が女子のふりをして、または女子が男子のふりをして武偵高に通うことだ。

特殊条件下の犯罪捜査・・・例えば、女子高での潜入捜査などに備えて、強襲科(マスターズ)に許可をもらい、異性のふりをして学校に通う生徒が武偵高(うち)にはいる。一学年に二人くらい。

で、今、織斑一夏の後ろで男子のふりをしている生徒、資料ではシャルル・デュノアはまさにその『転装生(チェンジ)』だ。

骨格が男子にしては細いし、声も高い。極めつけは呼吸をするとき、男は腹でする物だが、こいつは胸でしている。空気に関しては敏感だからな風術師(おれ)は。

まあ、他のやつは気づいていないみたいだし、わざわざ言う必要もないか。

武偵高(うち)の面々はなんとなく怪しいと思っているだろうが、

 

「おいしいのだー!」

 

平賀さん以外。

 

「あややん!私にもそのプリンちょ~だ~い」

 

「いいのだ、ののちゃん!あ~ん」

 

「あ~ん。ん~~~おいし~」

 

そして、いつの間にかそこにいた布仏本音さんといっしょに固有結界『無限の癒し(アンリミテッド・セラピー)』を展開していた。

まあ、この二人はともかく、なぜ誰も疑わないのだろうか?

普通、男性IS操縦者が見つかったのに全く報道されていない。

しかも、もし最近見つかったのならいきなり代表候補生、しかも専用機持ちになれるわけないのに。

他にもいろいろ不審な点が出て来るのになぜ誰にも気づかれない。いや、

 

(知っていて、入学(いれ)たのか?)

 

まあ、どっちにしろ俺達が気にすることじゃない。

 

「あともう1人いるんですけど・・・あっ、仭!」

 

『!』

 

「ん?一夏+専用機持ち・・・の他に武偵のそうそうたる面子もいらっしゃいますか。軽く戦争が起こせる面子だ」

 

織斑が周りを見渡すと、目当ての人物が見つかったか、そっちに声をかける。

そこには、この学園にもう1人いるISを動かした男、黒崎仭の姿があった。

俺達を見て、苦笑しながら言う。というか最後のは洒落にならんぞ。

 

 

 

「ん?・・・一夏+専用機持ち・・・の他に武偵のそうそうたる面子もいらっしゃいますか。軽く戦争が起こせる面子だ」

 

夕食を一緒に取らないか?と一夏達に誘われ、たまにはいいかと乗って、用があったのでそれを終わらしてきてみると、一夏の声。そっちを向くと、一夏たちだけでなく、武偵の面子もいた。

・・・冗談抜きで戦争が起こせるな。

とりあえず、返答するか。何を言いたいか大体察するが。

 

「で、なんだ?」

 

「一緒に夕食取らないか?」

 

やはりか。

 

「・・・構わんが、そちらは?」

 

「いいですか?」

 

「もちろん」

 

「では、同席させてもらいましょう」

 

イケメンで、現在進行形でおそらく女子の視線が1,2番に多いであろう不知火さんが応え、他も同意してくれた。

それを聞き、俺は持っていたミートドリアを運んで、一夏達の席の空いているところに座る。

 

「さて、知っているというか、知られていると思いますが、黒崎仭です。少しの間ですが、よろしくお願いします。武偵の皆様」

 

ここに座ってから、武偵高の面々の、(本音と何か固有結界を展開している彼女以外)の視線が少し変わっている。

 

すでにこういうのは慣れているが。

 

「じゃあ、昼間もしたけど、今度は僕たちから。

東京武偵高校二年。強襲科(アサルト)の不知火亮だよ。よろしくね」

 

礼儀正しく真面目な性格の常識人らしいな。来てくれて本当に感謝。

 

強襲科(アサルト)?」

 

強襲科(アサルト)の意味が分からなかったのか、一夏が聞き返す。

 

武偵高(うち)の学科の事だ。武偵高(うち)の生徒は将来進む武偵の仕事によって履修する専門科目をきめて、それを受けられる学科の所属となる」

 

説明に一夏は納得する。

そして軽く、強襲科(アサルト)や他の学科の説明も入るが、表面上聴いていることにする。失礼だが、すでに組織からのデータで知っているからだ。

 

「へ~、え~っとあなたは?」

 

「このチームのリーダー、二年の八神和麻だ。専攻は不知火と同じ強襲科(アサルト)

 

学園に来る武偵メンバーのデータの中で一番興味があったな。

傍から見て、かなりの実力者であるとわかる。

確か、ISを半壊させたみたいだが、一部信用出来ないことがある。いや、だって・・・いくらなんでもダウンバーストを起こしたってのは・・・。

けど、デマじゃないんだよな。

 

「八神君は強襲科(アサルト)騎士(ナイト)って呼ばれているくらい強いんだよ」

 

「不知火ぃぃ!お前どうでもいいこと言うな!」

 

「そんなにすごいんですか!?」

 

一夏も聞き返す。ついでに言うと専用機持ち面子も笑っている。

・・・やばい、俺も笑いそうだ。

 

「ほう・・・軍で聞きましたが、やはりその噂は本当だったんですね」

 

「そうなんだよ。知れ渡っていたのかい?」

 

嘘だがな(笑)。データで知ったのは本当だが、組織の方では風使いの超能力者(ステルス)だ。

 

「いや、失礼。・・・さすがは、Sランク武偵」

 

あんまり怒らすのもあれなので謝罪、そして小声でそう呟いておく。一夏たちには聞こえてないようだが。

 

「私はジャンヌ。学年は二年で専攻は情報科(インフォルマ)だ。もとはパリの武偵高だったのだが、東京武偵高校に留学してきた」

 

データでは、超人的人材を擁する戦闘集団『イ・ウー』の元メンバー。『銀氷(ダイヤモンドダスト)の魔女』と通称されているらしいな。

政府との司法取引で、日本の武偵高に来たらしいが、特に警戒する必要もないだろう。

 

「あの~」

 

そんなジャンヌさんに、シャルルが手を上げて質問。

 

「なんだ?」

 

「ジャンヌさんって名字は何なんですか?いえ、言い難いことだったらいいんですけど、ちょっと気になっちゃって」

 

名前がジャンヌだからな。

 

「ああ、私のフルネームはジャンヌ・ダルクだ」

 

「「「「「ええええええ!!?」」」」」

 

「・・・・・」

 

「といっても、あのジャンヌ・ダルクじゃないし、関係もないぞ。たまたま同姓同名になっただけだ。ただ、あまり騒がれてもなんだからな。あまり人前ではいわないことにしているんだ」

 

「そ、そうなんですか。確かにあのジャンヌ・ダルクじゃありませんよね」

 

「そうですわ。ジャンヌ・ダルクは十代で死んだといいますし、子孫なんておりませんわよね」

 

シャルルとセシリアが笑いながら言う。

 

「当たり前だ。ジャンヌ・ダルクが生きていて、その子孫がいるわけがないだろう?はははっ」

 

さて、周りは納得したが、俺は本当に同姓同名の他人なのか、少々気になるな。

ジャンヌ・ダルクは確かに十代で死んだとされているが、実はあれは影武者では?という記述も少ないがでているらしい。(というのもそういう本で知ったからだ)

そういう歴史の裏系?の本は昔から好きで、読んでいたが、だからと言ってそれを完全に信用したわけでも当然ない。

・・・ま、たとえ本当に彼女が子孫だったとしても、歴史が覆るぐらいだ。そんなことはあったところで、不思議でもなんでもない。

 

「レキです。みなさんと同じ二年生で狙撃科(スナイプ)に所属しています。こっちが武偵犬のハイマキです」

 

レキさんが淡々と答え、武偵犬らしいハイマキが小さく吠える。

 

「そ、それって犬ですか?」

 

鈴が少し躊躇いながら質問する。

うん、お前のその反応は間違ってないよ鈴。だってそれ犬じゃなく、オオカミだから。確か、コーカサスハクギンオオカミだっけ?

まあ、襲う奴だったらさすがに連れてくるわけないから、大丈夫なはずだ。

 

「はい。犬です」

 

「そ、そうですか・・・」

 

感情の見えない視線で、鈴は気圧される。

彼女については狙撃が得意ということや、そのオオカミを手懐けたとかあったな。だが、彼女の目は裏の職業柄見たことがある。狙撃者(スナイパー)の目だ。いや、当然といえば、当然なのだが・・・。

 

「柳生神楽。強襲科(アサルト)の一年だ。お前たちとは同い年だから気楽に話しかけてくれ」

 

神楽は頭を下げる。

ラウラに(結果的に)喧嘩を売った奴だな。

 

「ああ、よろしく」

 

一夏に続いて俺達も応える。

 

「それにしてもよく似ているわね、あいつに」

 

鈴がそう言うと、神楽は表情を変える。

鈴は立場を理解していないらしいあの馬鹿に、ボコボコにされたからな。

 

「はっきり言うが私はあんなチビとなんの関係もない」

 

「でしたら、喧嘩を売らないでいただきたい」

 

『!』

 

やはり、言っておいたほうがいいだろう。

 

「それについては多少言い方が悪かったと思っている。しかし喧嘩を売る気もなかったし、関係もないと言ったつもりだけだったが、あのように行動を取るとは思わなかったのだ」

 

「まあ、そうでしょうね。しかし、あのように彼女は沸点が低いので、できれば相手をしないでやってください。多少、問題を起こす馬鹿なので」

 

「・・・了解した」

 

あっちから吹っ掛けて、乱闘というのも十分考えられる。しかも平気でISを展開するような奴だ。言っておいて、問題はないだろう。

 

「最後に、そこで無邪気にプリンを食べているのが平賀文さん。二年生で装備科(アムド)を専攻している。平賀さん、挨拶」

 

八神さんがそう言うと、平賀さんはプリンの欠片をほっぺたにつけたまま無邪気な顔で俺たちの方を向き、「よろしくなのだ!」と言って再び、本音と一緒に固有結界・・・『無限の癒し(アンリミテッド・セラピー)(そう命名)』を再び展開し始めた。

 

 

その後は、軽い雑談なんかをして一夏たちは先に食堂を後にした。俺?残されたよ。

あとは平賀さんが、本音と一緒にどこかへ行ってしまったことぐらいか。

 

「・・・さて、俺1人を残すとは、何の要件ですか?」

 

特に突っ掛かるようなことはしていないはずだ。

 

「いや、別に君に忠告とかそういうことじゃないんだ。ちょっと聞きたいことがあってね」

 

「なるべく、手短にお願いします。こちらも明日のトーナメントには参加することになっており、相方といろいろ話をしておかなくてはならないゆえ」

 

「わかったよ」

 

「では、単刀直入に聞く。お前は、俺たちのことをどこまで知っている?」

 

それか。まあ、はぐらかさなくてもいいだろう。

 

「大体知っていますよ。武偵高とはどんなところなのかも・・・あなた方が、武偵でどういう存在なのかも・・・そしてそのレキさんの横にいる武偵犬がオオカミで、さらにジャンヌさん。あなたが元「イ・ウー」のメンバーであるということも」

 

『!』

 

「ああ、別に言いふらしたりはしませんよ。特に警戒することもしません。データで知っただけなので、お気になさらず」

 

周りに人はいないから、言ってもいいだろう。

監視カメラも映像だけで、聞こえはしない。

 

「やはり、随分と知っているな」

 

「2つほど、勘違いしないで頂きたいのは、俺はあなた達とは、敵対なんざするようなことはしませんし、実力軽視なんてことはしていません」

 

「ほう・・・」

 

意外だったのだろう。八神さんが、そう声を漏らす。

 

「そもそも武偵とは遭遇したことがあります。故にISに匹敵する武偵もいるということを知っています。特にあなたは、他数人の武偵とIS操縦者を撃退するということもしているのですから」

 

「そこまで知っているか。ベルセルク」

 

「おや、そちらもやはり俺のことを知っていましたか。コードネームを知っているということは」

 

想定内だがな。

まあ、知られた所でなんだという話だ。他国は俺の存在なんざ知っているに決まっているのだから。

 

「ただ、意外だったがな。ベルセルクといわれる輩だからどんな奴かと思ったら・・・」

 

「こんな表情豊かな輩だったと?まあ、学園(こっち)の顔が大体普段なわけですから。だからと言って組織(あっち)の顔というわけでもなく、任務ですかね。手を(けが)していくうちに、いつの間にかそんな異名が通ってしまったとは、俺も驚きですよ。そして、今じゃIS動かしたイレギュラーですし」

 

「イレギュラーといえば、あのフランス代表候補生だが・・・」

 

「ああ、彼・・・いや、()()ですか?もうすでに素性はわかっているのでご心配なく。本人とも話はしました」

 

「そうか」

 

やはり気付いていたな。

というか、レキさんが少し睨んでいる気が・・・ハイマキの事か?

 

「あの、本当に知っただけであって、そちらに迷惑をかけるつもりはないんですって」

 

「レキもいいかげんにしとけ。本人に悪気はなさそうなんだから」

 

・・・やっぱ少しは疑われてはいるんだな。

はぐらかした方が良かったか?多分無理そうだから、言ったんだが。

 

「だから大丈夫ですって。大体そのこと言って、混乱させて、学園に何の得があるっていうんですか?迷惑しかないでしょう。本当にあなた達が信用ならないのなら、すでに教師たちに報告していますよ?」

 

ほかはすでにそれを理解しているようだ。

 

「・・・本当にハイマキのことをバラしませんか?」

 

「ええ、連れてきたのなら大丈夫なのでしょうからね」

 

それを聞いて、やっと納得したようだった。

 

「で、聞きたいことはこれだけですか?」

 

「あとは、この学園についてだな」

 

「おや、知っているのではないのですか?」

 

「まず聞きたいのは、あのチビの起こした問題とかだな。なぜ何のお咎めもなかった?」

 

「そんなのこっちが聞きたいですよ・・・」

 

まあ、ラウラに限らず、箒やセシリアも一夏を激励やら、日本を敵に回すような言動など、一夏に対しての暴力を除いて問題があるんだがな。

 

「本当に俺も知らないんです。・・・あいつの起こした暴挙については、さっき聞いたからわかっていると思いますが、俺や一夏たちが動き、結果的に千・・・織斑先生の仲裁で収まりました。確かにお咎めもないというのはふざけているでしょう。俺もほかも納得していません。理由としては、俺は織斑先生の圧力があったと推測しています。あの人は奴の元教官で、当の本人は一夏を消せば、本気で織斑先生が戻ってくると信じていまして・・・」

 

「馬鹿を通り越しているな」

 

はっきり言うなぁ。ほかもまんざらではない。

俺もそうなんだが。

肉親の大切さがわからないのは、奴の出生に関わっているかもしれないが、あそこまで暴動を起こすのは千冬さんのせいでもあるだろう。

 

「話を戻します。圧力かけたのはおそらく彼女。理由は・・・情とかではないでしょうかね。ここまでの問題起こして何もないというのは」

 

「ふざけているな」

 

「あくまで推測ですので」

 

おそらく、これが知れたらドイツの代表候補生という立場がなくなり、奴の軍隊も問答無用で解散に追い込まれる。一夏に対しても敵対したのだからな。

そうなれば奴の居場所がなくなってしまうとでも考えたのだか知らんが・・・これは問題があるだろう。

 

「ま、そういうわけで、一夏がやばいということになり、旧友でもある俺もちょうど良かったので護衛をしているわけです・・・と、失礼」

 

携帯の着信音が鳴り、俺は席を立って、出る。

 

「はい、もしもし」

 

『黒崎君?あのさ・・・』

 

「あー、わかっている。練習だろ?うん、場所は・・・第3アリーナ。了解した。すぐ向かう」

 

どうやら時間切れらしい。

 

「すいません。明日のトーナメントからの相方から、呼び出されました。他に聞く事はありませんか?」

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

「お前も学生の身だからな」

 

「ええ、すいません。ああ、それと念のため・・・」

 

俺はメモ用紙をテーブルの上に置く。

 

「俺の携帯番号が書かれています。何か用があったら連絡を。まあ、ないでしょうが」

 

「わかった」

 

「では」

 

そして俺は第3アリーナへと急いだ。

 

 

 

翌日から始まった学年別タッグマッチトーナメント。

発表された対戦組み合わせでは、織斑とシャルルペアとボーデヴィッヒ・篠ノ之ペアはかなり離れていて、戦うことになるのは準決勝戦でということになった。

恐らく順調に勝ち進んでいくだろう。

この二つは、残っている専用機持ち、更識簪・布仏本音ペアと、黒崎・鷹月静寐ペアとは当たらない組み合わせになっているからな。

更識さんのペア、一回戦を無傷で勝利している。

更識簪の専用機『打鉄弐式』は未完成(平賀さんが布仏さんから聞き、少し意見を出し合っていたらしい)なのだが、それでも操縦者である更識さんの技量が高いのか、武器の薙刀で相手を倒していた。

加えて布仏さんの柔軟な戦い方も、相手のペースを乱して終始有利に試合を運んでいる。

ちなみに黒崎の方はというと、黒崎が相手に接近。そして武術で相手を圧倒していた。

一回戦では柔道の背負投をくらわし、相手が受け身もできずに背中から落ちたところを、もう片方の鷹月さんが銃で容赦なく撃つとかして決着をつけたりしてる。基本黒崎が主要で、それをもう1人がサポートという感じだな。

中でも少々衝撃的だったのが、相手が瞬時加速(ISの説明で知った)で黒崎に突っ込んできたところを、奴は巴投の要領で後ろの壁にそのまま相手を突っ込ませるという技量をやってみせた。

 

予想だが、更識さんのペアか、黒崎のペアのどちらかだな。

どちらも強いが、黒崎の実力によって優勝ペアは決まるな。

奴はISの性能をまったく見せてないようだから。

 

『八神、何か異常はあったか?』

 

おっと、ジャンヌからの通信だ。

今、俺たち全員は通信用のインカムを付けている。

平賀さんが作ったこれは目立ちにくく、それでいて高音質という優れものだ。

 

「特にない。怪しい動きをする奴もいない。静かなもんだ」

 

『そうか。鷹の目のレキも何も異常はないといっている。かと言って警戒を怠らないでくれ』

 

「了解」

 

そう。今は異常はない。

だが、何かの前触れのように静かすぎる。

 

「何も起きなければいいけどな」

 

そんな俺の呟きは今日の最後の試合の終了を告げるアナウンスの中に消えて行った。

 

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