「あの巨人は本当になんなんだ・・・」
廊下を走りながら思う。
だが、そんなことを言っている場合じゃない。一夏たちもこのままでは全員死ぬ。
ISを装備した4人だろうが、まず太刀打ちできまい。
武偵も動いているだろうが、今頃あの巨人にIS強制解除まで追い込まれている一夏や箒を想像するのは難しくない。
ただ、俺が気にしているのは、強さを――それもISが最強だと思っているあの軍人のことが気にかかっていた。
どちらにしろ、急がねばマズイ。そう思った俺はアリーナ内への非常口の場所へと走った。
「――
ジャンヌに現在使えるアリーナ内への非常口の場所を教えてもらい、中に侵入した。
どうやらISを装備しているとはいえ、やはりというか4人はボロボロだった。
俺は、「風牙」で二人に迫っていた鉄斧を斬り、風斬と水蓮をつかって九つの風の槍を突きと共に撃ち出す。
九つの風の槍は互いに絡み合い、一つ一つは弱いかったものが最大瞬間風速を竜巻に匹敵させるほどまで強くなり、前鬼を問答無用で吹き飛ばす。
前鬼の瞬発力は高いがこれは躱せなかったようで、ゴロゴロところがる。
それにしても、どこからかこの間の恐山合宿での出来事を調べてきたレイズに提案された技を使ってみたんだが、まさかこんなに威力が出るとはな。
「――
未だ呆然としている二人を俺の跡から入ってきた教師たちに任せて、俺は風を纏い、駆ける!
一瞬で距離を詰め、二刀で前鬼を斬り裂く。
休まず、再び斬る!
体の力を全て速さに集中させる。
再び斬った瞬間、俺は空気を蹴って前鬼の上に着地する。
今、周囲には風の渦が出現しており、それはドーム状に俺と前鬼を包み込んでいる。
これは敵を閉じ込めるためのモノじゃない。
これは俺の足場だ。
この中を渦の流れに乗って、縦横無尽に駆け巡ることで何度でも敵を斬りつけ、動けなくする。
――天牢――
高速で天を駆け、敵を牢獄にいるかのごとく封じ込めるこの技に、周りの人たちはあっけにとられているだろうな。
前鬼にこの技は時間稼ぎでしかないかもしれない。
だが、
「――七風刃――」
平賀さん特製、切断用の
それらは一度に七つの傷を前鬼に与えるとともに、前鬼をゆるく縛る。
「――風牙・二式――」
二本の風の斬撃で前鬼の両足を斬る。
今度の風はかなり精神力をつぎ込んだので、前鬼の脚を深く斬りつけ地面に倒す。
その瞬間を見計らって、ワイヤーを巻き取り前鬼を地面に縫い付ける。
すぐに起き上がるだろうが、チャンスは出来た。この隙に――!
「ぬああああああああ!??!!」
いきなり上がった叫び声に振り向くと、そこではどろどろに溶けたISに飲み込まれるボーデヴィッヒの姿があった。
やがて、それはボーデヴィッヒを完全に取り込み、いびつな人型になった。
その手には日本刀を構えており、俺に斬りかかってきた!?
「ちっ!」
それを俺は二刀を交差して受け止める。
気で身体能力を強化しているから何とか受け止められたが、この太刀筋、達人クラスのものだ。
それを弾き、いったん距離を取ろうとするが、相手はすぐに接近してきて斬りかかって来る。
ただ、それは決められた型をなぞっているだけのような動きなので、冷静になれば見切ることができる。
避け続けながら、どうしたものかと悩む。
だが、時間というものは待ってくれないようなもので――
「GYAAAAAAAAAAA!!!!」
ち、斬り結んでいる間に前鬼が立ち上がりやがった。
一旦、離れると黒いISは動きを止めた。どうやら近くにいる者にしか反応しないようだ。なら、ボーデヴィッヒは・・・。
「このやろおおお!!」
突然聞こえた声に、ハッ、となるとそこには、黒いISにあろうことか素手で向かっていく織斑の姿があった。
「はぁ!?何してんだあのバカは!」
しかも、それだけじゃない。
そんな織斑に、前鬼が反応して殴りかかろうとしているぞ!黒いISも織斑を敵と定めて斬りかかろうとブレードを振り上げている!
――篠ノ之も、シャルルも、教師たちもあまりに予想外な織斑の行動に反応できずにいる。俺は縮地で織斑のもとに向かおうとするが
「何をしている!!」
「黒崎!」
ISを纏った黒崎が織斑の特攻を止めた。
「!――八神さん!危ない!!」
「!がはっ!?」
織斑の近くまで来ていた俺に迫ってきたブレードには圧縮した小さな空気の塊をぶつけ、ベクトルをそらして空振りさせる。
最後に、突き出された前鬼の拳を俺は―――まともに受けて吹き飛ばされた。
「八神さん!!」
マズイな。あの巨人の攻撃をもろにくらったみたいだ。
いくら武偵でも大丈夫なのか!?
「離せよっ、仭!!」
・・・ひとまず暴れているこいつを黙らすか。
「邪魔をするんじゃねぇ!邪魔をするなら「うるせぇ」――がっ!?」
「「一夏!」」
とりあえず壁に叩きつける。
軽めでも生身だから、結構くるだろうが、そんなこと言っている場合じゃない。
そして軽く胸ぐらを掴むと、おとなしくなる一夏。
「少しは頭が冷えたか?お前があんな行動取ったってのは、あの黒い奴が千冬さんの姿を模しているからだろ」
「っ!そうだ・・・」
「だからと言って生身で突っ込むバカがいるか。お前が動かんとも、教師が動く」
「・・・だから黙って見ていろと?」
「納得いかんだろうが、そうだ。そもそもお前がやらなくてはならないというわけではない」
「・・・違うぜ仭。やらなきゃならないんじゃない。俺がやりたいからやるんだ!」
「・・・」
「千冬姉の真似するISも、それに振り回されているあいつも気に入らない。どっちも一発殴らねぇと気がすまねえ!」
「・・・そうか」
俺は右膝部分のISを解除。そして
「ぐぁっ!?」
「一夏!?」
「仭、何を・・・!?」
「どうやら、言っても聞きそうにないからな」
「じ・・・」
腹に俺は膝蹴りをかます。
不意をついた一撃でもあって、一夏の意識は完全に途絶えた。
「そもそもやると言ったところで、こいつには白式を展開はできない」
「!そんなの・・・僕のリヴァイブのエネルギーを渡せば!」
「全身を展開できて、零落白夜を発動できるほど残っているのか?ないだろう。あの巨人を相手にしたのは、今のお前の状態ですぐに分かる。エネルギーもあまり残ってないこともな。よくて片腕。零落白夜も少ししか発動できまい」
「・・・」
さすがに片腕だけ展開させて特攻などやらせるわけにはいかない。
奴が千冬さんの太刀筋を知っていて、あの機械じみた動きに対応できるとしてもだ。
「俺のISから、エネルギーを送ることもできるが・・・やるわけにはいかない」
そう言って俺はあの巨人の方を見る。
どうやら簪がすでに戦っているようだ。VTシステムに飲まれたラウラも、教師陣が相手している。
「黒い奴はともかくとして、あれは放っておいたらマズイ。黒い奴を倒したとして、あれが止められなければ結局意味が無い。八神さんが止めようとしたが、こいつのせいで怪我を負ってしまった今、ひとまず時間だけでも稼がねばなるまい」
「・・・」
シャルルは俺の説明は理解しているようだが、それでも納得がいかなそうだった。
好きな奴の気持ちを優先したいとか、一夏の許せない気持ちも理解できるが、追い込まれたわけでもないのに、やらせるわけにはいかん。
「・・・そういうわけだ。あの飲まれている奴のように、敵意を向けようがかまわないが、あとにしてくれ。俺は行かねばならない」
そう言って俺はスラスターを開いて、巨人に突っ込む。
これ以上時間をムダにするわけにも行かない。
「加勢するぞ簪!!」
さて、このデカブツ相手にどうするか。傷も回復してしまうみたいだからな。
ま、マジでシャレにならねえ威力だぜ。
ぶんなぐられた時にとっさに左腕を盾にしたけど、ものすごい激痛が走ってうまく動かせねえ。多分、骨が折れているか砕けているな。
硬気功術、気を使って体の強度を何倍にも高める術で左手を硬くしたのにものともしないなんて、最強の名は伊達じゃないってことか。
とにかく、なんとかしないとな。
状況はかなり悪い。
前鬼はラウラ?には構わずこっちに近づいてきている。どうやら、遥香が俺が出てきたら俺にのみ向かうように指示でもしたのだろう。
ラウラ?のほうは教師陣に任せるとして、どうしたら・・・。
そんなことを考えていた俺の目の前に一つの影が現れた。
「ハァ!」
その手に持った薙刀で前鬼に斬りかかっていく。
その太刀筋は見事なもので、前鬼の体を一閃する。
しかし、それでも前鬼はひるまず、拳を繰り出してくるがそれをひらりひらりと避け、反撃に薙刀で斬り裂く。
一進一退の攻防を続けるのは、打鉄に似ているが、防御型の打鉄とちがって、動きやすそうな見た目のIS、打鉄弐式を身に纏った少女、更識簪だ。
でも、なんでなんだ?
彼女が闘う姿が流無に重なって見える・・・。
『和麻さん』
っと、やばい。少し放心していた。通信機から聞こえたのは抑揚のない声、レキだ。
『ご無事ですか?』
「ああ、何とかな」
『戦えますか?』
「問題ない。左手は無茶苦茶痛いけど、片手でも大丈夫だ」
『よかったです。今から私が隙を見て敵を倒します。あなたは先ほどやろうとしていたことを実行してください』
見抜かれていたか。流石だな。
「まかせた」
『・・・はい』
俺は立ち上がって、前鬼の方を見ると黒崎の方も戦闘に加わっていた。
「簪!俺があの巨人の身体の一部を爆発させる!そこを薙刀でぶった斬れ!」
「りょ、了解!」
そう黒崎が言うなり、前鬼のパンチをかわし、後ろへと回って
「そら!」
前鬼の右膝を蹴る。だが、少しよろめいただけだ。
「想定内だ!」
そして今度は両手にナイフを展開。
それが光り始めたと思ったら、それらを投げた。それらは回転しながら、黒崎を薙ぎ払おうとしている左腕に当たって、爆発した。
「よし今だ!回復される前に、腕・・・いや肘をぶった斬れ!」
そう黒崎が言うと簪は突っ込んで、指示通り左腕に目掛けて斬りかかろうとする。
当然それを許す前鬼でなく、右腕で殴りかかろうとするが
「そうは問屋が降ろさない・・・ってな」
黒崎が投げたであろうナイフが前鬼の腹の口目掛けて飛んで来て、そして爆発。
「GOOOOOOO!!」
叫ぶ前鬼。
その間に更識さんは、今もなお黒崎がマシンガンで痛めつけているらしい左腕・・いや正確には左肘を薙刀で斬り落とした。そしてそこから血が吹き出す。
「GYAAAAAAAAAA!!!」
「そら、おかわりだ」
そして前鬼の前に移動していた黒崎は、追撃とばかりに、左肘から先の部分。ようするに血が吹き出しているところへ光っているナイフを数本ばかり投げつけ、爆発。前鬼の左腕が肩辺りまでしか残らなかった。
「さすがに内側からには弱いらしっと!」
黒崎へと狙いを定めた前鬼は残った右腕で攻撃していく。それを黒崎は当たらず、避けていく。
「ま、だろうな。だが、さすがに再生は・・・!?」
「なっ!?」
二人は驚愕する。前鬼の左肩から先が少しずつだが再生していっているからだ。そしてある程度再生すると、前鬼の斬られた左腕が塵になって、前鬼の斬られた部分へと纏わりついて再生していく。
「そんな・・・!」
「おいおい、嘘だろ。これが駄目だってなるなら、こいつをどうすればいい。心臓を破壊すれば止まるか・・・いや、脳か?」
そんな中、再び前鬼が攻撃し、二人が避けた瞬間に、風斬を右手で構えながら走り出していた俺は斬りかかる。
「あわせろ!」
俺の掛け声に二人はすぐに反応して、攻撃していく。
気の身体強化のおかげでISと同等の動きができる俺に、特に彼女は絶妙に合わせてくれる。
それからは一方的な展開になった。
俺が腕を斬ると、更識さんがもう片方の腕を斬りつけ反撃を封じ、更識さんが上から振り下ろすと、俺が下に潜り込んで胴体を斬りあげる。黒崎は危なかったところなどを、サポートしてくれる。
ここまで俺の動きに合わせられるのは流無だけだったのに、何だろうか、この一体感は?黒崎も合わせるといえば、合わせてくれるが、それを俺と更識さんの動きに対してサポートだ。
やがて、たまらなくなったのか前鬼は後ろに後退。
しかし、その瞬間、その巨体が盛大に転んだ。
かすかに聞こえたレキのドラグノフの銃声、そして、この油で滑ったような転び方は、
(
敵の逃走を妨害するために使われる
「そいつを思いっきり踏みつけてくれ!」
俺が更識さんにそう言うと、コクリと頷き、一度少し上昇。一気に加速して前鬼を踏みつけた。
それにより起き上がろうとしていた前鬼は再び倒れ込み、今度は少し地面に埋まる。
しかし前鬼は更識さんへと、両手で潰そうとしてくるが、それを黒崎が更識さんを抱えて、離れたことで回避する。
その隙に俺は風斬の刀身を握り、自分の血でぬらす。
赤くなった風斬を手に、風で飛び上がり、前鬼の額に深々と突き刺す。
そして、二度と名乗らないと誓ったその名前を力いっぱい叫ぶ。
「我、土御門和麻の名のもとに命ずる!式神、前鬼よ。その御魂を沈めたまえ!」
すると、前鬼は動きを止め光に包まれる。
後には、一枚の人型紙が残され、それも塵となって消えて行った。
土御門の血を持つ者にのみ使える、前鬼の強制停止。
才能の有無に関係なく行える、いざという時の安全装置だ。
昔、土御門の歴史を学んだ時に万が一に事態の対応として教えられた。
まさか、これに救われる日が来るなんてな。
ただし、これには少し厄介な代償がある。発動している式神を強制的に止めるんだ。その反動が術者を襲う。
そう、式神を使役した術者じゃなくて・・・。
(動きを止めた術者を、な・・・)
通信機から聞こえるレキや、更識さんの声を最後に俺は意識を失った。
「『和麻(八神)さん!』」
「あー、大丈夫だから」
うるせぇ・・・。
こういうときこそ落ち着けっての。で、現在俺はISを解除して八神さんの様子を見ている。
どうやらあっちの方も決着ついているみたいだな。いつの間にか目を覚ました一夏の手で。
・・・仕方ないか。この状態では、俺達も相手するの厳しかったし、教師陣がすべてダウンしてやがるし。
ん?何か今一夏が震えたような。今更自分がどんな恐ろしいことしたか気付いたとか?いや、それはないか。
で、八神さんだが・・・
「左腕の損傷が激しいが、ちゃんと脈はある。多分あの巨人を封じたのに、何らかのリスクがあったために、意識を手放したのだろう。命に別状はなさそうだ」
「・・・よかった」
『・・・・・・・・そうですか』
簪と、間が空いたあと、レキさんから少しだが、安堵する声。
しかし、何の目的であんな巨人を?専用機持ちを捕まえるわけではなかっただろう。では、武偵狙い?ならばその目的の人物に直接放てばいい。となれば・・・もしや囮か!?
やられたな。・・・あとは、武偵が捕まえてくれているかどうかだ。
しかし、ラウラのVTシステムは本当に偶然そうだな。巨人がそっちに向かいそうになったのを含めると。
まったく、本当にタイミングが悪すぎる。
しかしあの巨人は相当手強かったな。人型の紙が現れたってことは、あれは式神。そして土御門と言ったこと。・・・どうやら、八神さんのあの情報は本当だったらしい。
「・・・黒崎君?」
「!おっと、悪い。急いで医療室に運ばねばな」
しばらく考えていた俺だったが、簪に話しかけられ、意識を戻し、俺は八神さんをおぶって医療室に向かう。重いな・・・。
「あと簪。まだ敵がいないとは限らないから、お前もついてきてくれ。何かあった時のために」
「わかった」
「それと・・・やっぱトーナメント中止だろうな」
「当たり前」
「だよなぁ」
正直、簪とは戦ってみたかったのだが、こいつの専用機が完成したときに決着をつけるとしよう。
それに、組織としての目的は大体はたしたし。けど、やっぱ専用機持ちと戦っとかないと駄目だろうか・・・。
するとアリーナ内に武偵が集まってきて、此方が連れて行くと言ってきた。
まあ、断る理由もないので引き渡し、俺たちもアリーナから出た。
とりあえずやはりトーナメントはデータも集まったことで中止。
被害もゼロだったようだ。
ガンッ。
騒動の後、夕暮れのIS学園の廊下。そこに響く打撃音。
窓から差し込む夕日を受けて美しく輝く銀髪をもつ神楽が、目の前の男、織斑一夏を殴った音だ。
「これで勘弁してやる。だがな、お前の身勝手でふざけた行動のせいで危うく人が死にかけ、大怪我を負った」
「・・・」
神楽の言葉に一夏は殴られて吹き飛ばされたまま、顔をうつむかせて何も言わない。
「しかも、その理由が姉の姿を模倣されたからキレただと?やりたいからやった?ふざけるな!そんなくだらない理由で師匠を危険にさらしたというのか!お前は一体何様のつもりだ!!」
「・・・ッ」
一夏は神楽の「くだらない理由」という言葉に思わず言い返そうとしたが、神楽の怒り一色に染まった目と溢れる怒気に黙ってしまう。
ラウラが暴走した時に使っていた技は彼の姉、織斑千冬の模倣だった。
それが許せなくて、そんなわけのわからない強さに振り回されているラウラも許せなくてあの時飛び出した。
結果的に、シャルルの協力のおかげでなんとか暴走したラウラを止めることができたのだが、その前に和麻に左腕の粉砕骨折という大怪我を負わせてしまい、危うく命の危険にさらしてしまった。
「力のない無力な身ででしゃばるな。良い迷惑だ」
そう言い捨てると、神楽は去って行った。
「・・・何か用か?」
「いや、特に何も。通りかかったら聞いてしまったわけで」
「そうか」
廊下の角。そこには黒崎仭が腕を組んで立っていた。
「スマンな」
「なぜお前が謝る?」
「いや、もう少し俺が早くアリーナに出て、一夏を止めていればこうはならなかっただろうからな」
「・・・庇っているのか?」
「まさか。いくらなんでも生身で突っ込んだことを庇えるはずがなかろう。それに関しては俺も呆れているわけなのだから」
仭は、一夏の怒った気持ちを理解している。しかしだからといって、一夏の取った行動は許されるはずもない。仮に和麻が怪我を負わなかったとしても、一夏を助けるために動いていたであろうし、危険な目に合うことは変わらなかったのだから。
「・・・あいつの世話はしっかりしておけ」
「あいにくだが、俺の任務は護衛だけ。世話をする義理は友だからといってない。説教はするが、それで変わるかは奴しだいだ」
そう言って仭は、その場を去る。神楽も何も言わず、そのまま去っていった。
その夜。
「・・・ええ、どうやらあの巨人・・・いや、前鬼でしたっけ?それを囮にした輩は、あの無人機襲撃の際、秘密裏に回収していたコアを奪ったそうですね。・・・まったく、どうせ使わないならば、壊してしまえばよかったの。未登録ならなおさら」
仭は自分が属している組織の指揮官へと、チャネルを使って会話している。
ちなみに最後の発言に関しては、当然すべて理解の上である。
クラス対抗戦。
IS学園の各クラス代表でトーナメントを行い、強さを競うというもの。
それに乱入してきた無人ISだが、撃墜され、回収されたそれには未登録のISコアが使用されていた。ISの核となるコアは世界に限られた個数しか存在せず、すべてIS委員会に登録されている。
未登録のコアというものは本来なら存在しない、それ故に世界に混乱を生むと織斑千冬が秘匿したわけである。
もっとも、仭は調べるつもりもなく、学園を危険に晒すのであればそれを壊してしまった方がいいだろうと考えていた。もしそれがバレた場合、それをめぐった争いが起こる。それはコアの貴重さを現しているわけだが、だからこそ仭は破壊した方が考えていたのだ。
「ま、その辺を武偵のせいにしようとするのがいそうですが、その辺は頼みます。ええ、学園と武偵高の交流が崩れる可能性もありそうですので。・・・武偵について等も報告を終えます。ではおやすみなさい」
そう言ってチャネルを切る。
「さて、次は数週間後か。会うのは・・・」
そう最後に呟き、大浴場で湯に浸かって、疲れを癒そうと思いながら去っていった。
目を覚ます。病院のベッドの上みたいだ。
「起きた?」
聞こえたのはいつも聞いている声。
隣のベッドに腰掛けている流無の声だ。
まあ、ここの所は電話越しだったけど。
「・・・今、何日?」
「6月27日。和麻が気を失って大体一週間かな?昨日、全部終わったわ」
「そうか」
「また無茶をしたのね?」
「面目有りません」
「まあ、今回は私も結構無茶したけどね」
そういえば、よく見れば流無の体には所々包帯が巻いてあった。
「お見舞いにみんながいろいろ置いていってくれたわよ」
言われてみれば、周りにお菓子やら華やらが置いてあるな。神楽に、風魔、不知火、ジャンヌ、レキ、平賀さんなんかの名前もある。・・・ってん?黒崎の名前もあるな。果物に、手紙・・・。
とりあえず俺は手紙を手にとって読む。
『拝啓、八神和麻様。怪我の調子はいかがですか?
おそらくこの手紙は貴方の手に渡る前に、読まれてしまうであろうことから、あまり重要なことについては記しません。
本当でしたら、手紙でなく直接見舞いに行きたかったのですが、あの一件でさすがに簡単に外に出る許可は降りるわけがないので、こうして手紙を送ったわけです。
まず、貴方様に怪我をさせてしまったことを謝らせていただきたい。本人じゃないのはわかっていますが、奴は『自分で直接謝りたい』と言ってきた次第で。まあ、奴は反省しています。
そしてあの後のIS学園ですが、一応貴方方が気にしていた問題は解決しました。そしてどうやら此方で、何かとまでは言えませんが、ある物を奪われたらしく、それがあの巨人を襲撃させた連中の目的のようです。その犯人とそちらの武偵が遭遇して、逃したらしく、それで武偵が止められなかったことを、教員の一部や学園上層部が責める寝言を言っていたようですが、すでにそのことはいろいろあって黙ったのでご心配なく。むしろあの巨人を止めてくれたことに感謝しています。
まったく、『何考えてんだこの役立たず共』とか『ISがなかったら、そんな口叩けるのかこの自己中女が』と、心の底から思いますよ。フフフフフ。
それではお大事にしてください。
追記:モンス○ーハン○ーポー○ブル3ard・NEO面白いです。たまにバグって、ジン○ウガが2匹乱入するとかありますが。(汗)最新作の完成が待ち遠しいです。
ああ、ちなみに平賀さんから購入しました。
黒崎仭』
で、終わりか・・・。
しかし
「・・・これ、誰か途中書き換えてないか?」
「え、なんで?」
後半はベルセルクの本性か?
一応筆跡は同じだが・・・。
てか、あの野郎いつの間にあの悪乗りのゲームを購入したのか。
「これ、あの坊やの手紙?」
「ああ」
「ふ~ん、それとそっちで何があったのかは大体聞かせてもらったわ、お疲れ様」
「おう。にしても今回は静かだな。合宿の時は泣いて飛びついて来たのに」
「・・・もう慣れたわよ。あなたは何度言っても無茶しそうだし」
言い返せない・・・。
「でも、無茶やっても必ず帰ってきてくれるからね。それは絶対だからもう泣かないわよ」
「そ、そうか」
やっべ、超うれしい。
「そ、それで?そっちはどうだったんだ?全部終わったんだろ?」
にやけた顔を見せるのはなんか癪だったから、話題を変える。
「そうね。じゃあ、簡単に話すわよ――」
そして俺は流無たちの方に起こっていた出来事を聴いた。