緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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括目せよ。もう一つのボストーク号の雄姿を。


七弾 対峙

翌日。

IS学園の生徒たちは少し離れた砂浜に集合していた。

周囲は崖に囲まれた入り江となっており、まるでジブリの映画に出てきたような場所だ。

 

そこで生徒たちはISの各種装備の試験運用とデータ取りを行う。

その中でも、専用機持ちは本国から送られてきた新装備の運用データもとる必要があるのだ。

 

そんな中、一人の人物が現れた。

 

ISの開発者、篠ノ之束だ。

 

世界中から指名手配され、とある武偵には極秘に捕獲の依頼が来ていると噂されている人物が現れたのは、妹である篠ノ之箒に現行ISの全てを上回る専用機『紅椿』を与えるためであった。

『紅椿』は篠ノ之束お手製のISの名前に恥じないハイスペックを持っており、それを受け取った篠ノ之箒の未熟すぎる技量でもかなり圧倒的な性能を見せつけた。

 

しかし、予想外の事態が発生。

 

アメリカとイスラエルが共同で開発していた第三世代型軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れ暴走。

 

旅館の二キロ先の空域を通過することが判明した。

それを専用機持ち達が対処することとなった。

作戦会議の結果、織斑一夏、篠ノ之箒が対処することになった。

 

結果は・・・任務失敗。

 

織斑一夏は作戦エリアに侵入していた密輸船をかばいチャンスを逃した。

その後、福音に撃墜されそうになった篠ノ之箒をかばい撃墜された。

そして時間稼ぎのため、福音が一夏たちを相手せずに、通過した場合のことを考えて待機していた黒崎が福音と戦闘したが此方は福音にある程度ダメージを与え、無事帰還。

 

福音は行方が分からず、専用機持ちたちは待機を命じられている。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「以上がさっき起こったことでござる」

 

風魔がレポートを読み終える。これは武偵高の上層部の命令を受けた諜報科(レザド)情報科(インフォルマ)が調べ上げた情報だ。

それを俺たち、武偵高の関係者は旅館の隠し部屋で聞いている。

この旅館は女将が女忍者の家系であったため、いたるところにこういう仕掛けがある。

 

「報告を聞く限り、事故じゃなくて事件の可能性があるわね」

 

流無がそう呟く。

 

「そうだな。作為的な何かを感じる」

 

策士のジャンヌもそう言う。

確かに、何かがおかしい。

突然現れた天才科学者、篠ノ之束と最新鋭機のIS.

このタイミングで起こった暴走機事件。

なぜか言い渡されたIS学園の生徒による対処命令。

特に命令の方がおかしい。

軍用ISを同じ第三世代ISがあるからと言って、競技用のリミッターがかけられた状態で対処するなんて不可能。平賀さんも断言している。

 

「暴走事件も何者かが仕組んだものかもしれない。候補としてはアメリカ。そして・・・篠ノ之束。両方とも背後は真っ黒だ」

 

続けられたジャンヌの言葉に全員が頷く。

 

「まあ、なんにせよだ」

 

綴がたばこを吸いながらいつものダルそうな、しかし眼の奥の眼光を光らせ俺たちを見る。

 

「今から、この研修の目的を言うぞぉ」

 

そして、語られる研修の目的。

その後、教師陣は紛れ込んできた密輸船の取り締まり。

俺達生徒は、研修の目的のために、それぞれ動き出した。

 

 

 

夕暮れの砂浜。

そこに篠ノ之箒はいた。

自身の未熟な精神のせいで、一夏を傷つけたと思った彼女は自身の未熟な精神のせいで、一夏を傷つけたと思った彼女は激しく後悔し何するわけでもなく、そこにいた。

 

(もう、ISは・・・使わない)

 

それは力におぼれた自信に対する戒め。

そうすることで、なんとか心の安定を図ろうとする、が。

 

「あ~、あ~、分かりやすいわね。あのさ、一夏が怪我をしたのってあんたのせいなんでしょ?」

 

やって来たのは鈴だった。

 

「・・・」

 

「で、落ち込んでいますってポーズ?・・・っざけんじゃないわよ!!」

 

鈴は激怒し、箒の胸ぐらをつかみ目を合わせる。

 

「やるべきことがあるでしょうが!今戦わなくてどうするのよ!」

 

「・・・わたしは、もう、ISは使わない」

 

「ッ!」

 

バシンッ!

 

箒のその言葉に鈴は我慢の限界とばかりに思いっきり頬をビンタする。

そして、再度、締め上げようとするかのごとく胸ぐらを掴みあげる。

 

「甘ったれているんじゃないわよ!専用機持ちっていうのはそんなわがままが許される立場じゃないのよ!!それともあんたは・・・戦うべき時に戦えない、臆病者なわけ!?」

 

鈴の言葉に沈んでいた箒の心に火がつく。

 

「なら・・・ならどうしろと言うんだ!?もう敵の居場所もわからない!戦えるなら私も戦う!!」

 

ぶつけられた箒の気持ちに鈴はため息を吐き、掴んでいた手を放す。

 

「やっとやる気になったわね。・・・あ~あ、めんどくさかった」

 

「な、何?」

 

「居場所ならわかるわ。今ラウラが――」

 

鈴はそう言うと視線を後ろに向ける。そこには右腕にISを部分展開したラウラがいた。

その後ろにはセシリアとシャルロットもいる。

 

「敵の位置ならもう掴めた。ここから30キロ離れた沖合上空だ」

 

「さすがはドイツ軍の特殊部隊。仕事が早いわね」

 

「これくらいは造作もない。それはそうと、貴様の方こそ準備は出来ているか?」

 

「当然。甲龍の攻撃特化パッケージはインストール済み」

 

「こちらも完了していますわ」

 

「僕も準備OKだよ」

 

鈴に続き、セシリアも応える。

 

「ま、待ってくれ。本当に行くのか?命令違反じゃ・・・」

 

戸惑う箒に鈴は――

 

「だから?」

 

しれっと言う。

 

「あんた今言ったわよね?戦うって。命令違反だからってこのまま何もせずにいられるの?」

 

その言葉に箒は一度顔を伏せた後、上げる。その目には強い光があった。しかし、それはひどく脆い・・・。

 

「私は・・・戦う。戦って勝つ!今度こそ負けはしない!」

 

「決まりね」

 

ふふんと腕を組み、鈴は不敵に笑う。

しかし、箒は姿が見えない専用機持ち達に気が付いた。

 

「そういえば更識はどうした?」

 

「ああ、あの子?どこにもいなかったのよ。ISもステルスモードだし。で、しょうがないから私たちだけよ」

 

「そうか・・・」

 

鈴たちとしては戦力が多いのに越したことはないので簪にも声を掛けたかったのだが、見つからないのなら仕方ないとあきらめたのだ。

 

「ならば他の専用機持ちは?」

 

「他の二人はここを教員と交替で敵襲が来ないか見張っているから無理ね」

 

「なら、仭は?」

 

「仭?あんなやつが手伝うなんてもう思っちゃいないわ」

 

「?」

 

鈴がこう言ったのには、一夏と箒が撃墜され、時間稼ぎとして福音を相手して帰還した仭は、なんと帰って早々に昼寝をしたのである。

そして起きた仭は眠っている一夏の様子を見たあと、鈴たちと遭遇。(正確には鈴たちが一夏の眠っている部屋の前にいて、仭が部屋から出てきた時に遭遇)

 

それで多少一夏に対して口論になった。

一夏を心配している素振りが、仭にまったく見当たらなかったからだ。で、一夏を心配していないのでは?と口論になったのだ。

だが、それはある意味半分合っている、仭も一夏の心配はしている。ただそれを表情に出さないだけであり、今は福音のことや、あることの心配の方が、一夏のことより重要度が高かったからだ。

そして鈴たちは自分たちと福音を倒しに行くか、見定めに来たわけだが仭の『福音を倒しに行こうなんて馬鹿なこと考えるなよ』と言われたことで、完全に行く気はないと四人は判断した。

 

これが箒に鈴たちが訪れる前に起こったことである。

しかし、仭の昼寝は福音によるダメージは浅くはなかったため休息だったことはこの四人は知りもしない。

それでも帰って早々に睡眠はどうかと思うだろうが、福音に対しての任務はまだ終了しておらず、休める時には休んでおきたいと考えた仭が千冬に一夏の容態と、福音のことだけを聞くと、休息の許可を貰って睡眠の行動を取ったわけだ。

もっとも、仭本人は鈴たちが自身に対して誤解を受けていることに気付いているが、誤解を受けようが、現在はそんなどうでもいいことに対して時間を使っている場合ではないので、何も言わなかった。

ただ、一つだけ言えることは仭の忠告を聞かず、彼女たちは私情で動こうとしている。

 

「さあ、見つかる前に行きましょう」

 

「ああ、そうだn「させると思う?」

 

箒の言葉に被るように、突如この場にいない人物の声が聞こえ、その方を見ると、鈴たちは驚いた。

なぜなら、そこにいたのは――

 

「あなた達、すぐに戻りなさい」

 

海の上に立ちながらDEをこちらに向け、夕日に水色の髪をなびかせる流無の姿だったのだ。

その隣には、風斬を右手に持った和麻も空中にたたずんでいた。

 

 

 

さて、予想通りこいつらは命令違反をしようとしていたな。

黒崎にも『忠告はしたが、不安なため』と、連絡が来たが、こうも当たるとは。

 

「何の用よ!」

 

鈴がそう言う。はあ、さっきも言ったはずだぞ。

 

「さっさと旅館に戻りなさい。待機を言い渡されていたはずよ」

 

流無がそう言うが・・・

 

「あなた達には関係ありませんわ!」

 

「そうだ。我々の邪魔をするな」

 

ちっ、この・・・。

 

「武偵憲章二条。依頼人との契約は必ず守れ」

 

俺がそう言うと、何を言っているのかと言う顔をする。

 

「俺たちがここに研修に来たのが偶然だと思っているのか?それは違う。今回の俺たちの目的、それはお前たちの護衛だ」

 

「今年のIS学園は襲撃を受けすぎているわ。この臨海学校もその対策のために、秘密裏に武偵高の精鋭を護衛につける必要があった。だから、私たちが来た」

 

もっともそれを知らされたのはさっきだけどな。まったく、情報漏えいを防ぐためとか、世間体だとか面倒なことを。

ISを守るためにわざわざ武偵を雇うなんて、とかいう世間体を守るために偶然を装うなんて本当に面倒だ。

更識さんと、黒崎は知っていたみたいだが。

 

「お前らの行動は死ににいくようなものだ。護衛対象が死ぬのを黙って見過ごすわけにはいかない」

 

俺がそう言い終わると、

 

「そう言うわけだから」

 

「速く戻れ」

 

アリアとキンジが拳銃を構えながら、

 

「今ならまだ咎めません」

 

白雪が巫女装束にイロカネアヤメを構えながら、

 

「くふふっ、早くしないとリッコリコにしてやんよ~。チュ♡」

 

理子が二丁拳銃にキスをして笑いながら、

 

「ごめんね。でも、僕たちも仕事だから」

 

不知火は申し訳なさそうに、拳銃を突きつけながら、

 

「今ならまだ遅くはないぞ」

 

神楽が傘に仕込んだ刀を抜きながら、

 

そして、流無と俺も各々の武器を抜いて五人を包囲する。

 

「正気か?そんなもので専用機を持つ我々を抑えられるとでも」

 

ラウラが俺たちの拳銃や刃物を見ながらそう言う。明らかに逆らう気満々だな。

というか、俺が前鬼を相手した時のこと覚えてないのか?

仕方ない、作戦通りするか。

 

「くふっ」

 

五人が笑い声の主、理子の方を向く。

 

「くふっ、くふふっ、あっはははははは!!!!本気ィ?それ本気で言ってんのお?あはははっ!!」

 

いきなり人が変わったかのように笑い始めた理子に五人が気圧される。流石は裏理子。

 

「―――――ぶわぁーか――――」

 

そして、理子から莫大な光が放たれ、五人はたまらず目をふさぐ。

俺たちはあらかじめ打ち合わせていたから問題ない。

 

理子は閃光手榴弾(フラッシュ・グレネード)をばれないように超能力で髪を動かして爆発させたのだ。

 

その隙に俺たちは動く。

アリアは鈴、理子はシャルロット、神楽はラウラ、白雪は篠ノ之、流無はセシリアを抑え、俺とキンジ、不知火はそれぞれのISの待機状態をかすめ取る。

 

「ぐっ、貴様!」

 

「動くな」

 

ラウラの首に刀を添える神楽。

 

「あ、アリアさん」

 

「悪いけど、あんたたちの行動は無謀すぎるわ」

 

鈴をバリツの技で抑え込むアリア。

 

「ぐっ、離せ!」

 

「ごめんなさい。でも、これもあなた達のためなの」

 

箒を合気道の要領で抑え込む白雪。なまじ思い人がいるからこそ箒たちの思いは理解できるが、以前自分もしてしまった失敗を箒たちにはしてほしくないという優しさも垣間見える。

 

「ぐぅ・・・」

 

「言ったでしょ~。リッコリコにするって。ISごときで私たちがひるむと思ったか?」

 

表理子と裏理子を同時に出しながら、シャルロットを抑え込む。

 

「う、動けない」

 

「ごめんね。おねーさんも伊達にSランクを名乗っている訳じゃないのよ」

 

セシリアも流無の関節技で動きを封じられる。

 

「さて、キンジ、不知火」

 

「はぁ~、気がのらない」

 

「気持ちはわかるけど、やらないと怒られるよ」

 

二人はぼやきながらも銃を五人に向ける。

 

「安心しなさい。銃弾は麻酔弾よ。意識を失うだけ」

 

流無がそう言う。

五人は何とか抵抗しようとするが、抜け出せない。シャルロットにいたっては理子の髪が絡みついてなんか変なことになっているが。

 

そして、銃弾が放たれようとした瞬間――

 

 

 

「女の子に乱暴しちゃだめだよ?おにーちゃん♪」

 

っ!?

 

鈴のような声と共に、地面から無数の影が出現し、拘束していたアリアたちに襲い掛かってきた。

 

アリアたちはとっさに拘束を解き、離れる。

五人も突然現れた影に戸惑っている。

だが、俺はさっきの声にその声の主を探す。

 

「うふふ、式神・覇軍。前鬼・後鬼に並ぶ土御門の最強式神。一人一人の力は小さいかもしれませんが、その数は実に300。数はある意味最強の力ですよ?そして――」

 

ドシンッ!

 

スゥー。

 

空中から現れ、地鳴りを轟かせる赤い鬼――前鬼。

海中から音もなく現れる青い鬼――後鬼。

前鬼は以前タッグマッチトーナメントで現れたときと同じく、ずんぐりした体に鉄斧を手に持ち、後鬼は細い体に、ひょうたんを抱えている。

 

その二体の鬼と無数の影の軍勢を従えるのは、最高峰の陰陽師。

 

「お久しぶりです、おにーちゃん。今度は正真正銘の私、遥香です」

 

土御門遥香。俺の妹だ。

 

「お、おにーちゃん?え?和麻の妹さん!?」

 

流無が驚く。まあ、そりゃな。

 

「はい。初めまして蒼神流無さん。わたくしが和麻さんの妹です」

 

「あ、どうもご丁寧に。和麻と結婚を前提におつきあいしています。蒼神流無です」

 

おい、なんだこの会話。もうギャグは終わってシリアス一直線じゃなかったのか?

ほら、他のみんななんか呆然としていたり、顔を赤くしていたり、妄想していたりしているぞ。

 

「そうそう。福音ですが・・・」

 

遥香が言った言葉に地面に倒れていた五人は反応する。

 

「もうすぐ動き始めますよ。急いだほうがよろしいかと」

 

すると、影の内の数体が俺とキンジ、不知火に襲い掛かる。

俺たちは応戦するが、接近を許してしまい、懐に入れていたISを奪われる。援護しようにも他の影が邪魔だ!

 

「さあ、お行きなさい。私はあなた達に興味はございませんから」

 

影から渡されたISを五人はしばらく呆然と見ていたが、すぐに展開し、飛び立った。

 

「待て!」

 

俺も風を纏って追いかけようとするが――

 

「どこへ向かうのです?おにーちゃん」

 

前鬼が斧を振りかぶって来るのでそれを避ける。

 

「さあ、始めましょう?久しぶりの兄妹のふれあいです」

 

夕日は完全に沈みきった。訪れるのは闇夜。

 

 

 

無数に現れてくる黒い人影――式神・覇軍。

その中心にさながら将のようにたたずむのは赤き鬼――前鬼。

さらに後方、大将のように優雅な微笑みを浮かべる術者――遥香。

その遥香を守るべくそばに控える青い鬼――後鬼。

 

その異形の布陣と相対する俺達武偵高メンバーは、はっきり言って分が悪いとしか言いようがない。

流無、アリア、キンジ、理子、不知火の銃が覇軍を撃ち抜き、俺と神楽の刀が斬り裂き、白雪の炎が燃やし尽くすが、倒すことは出来ても次から次へと迫ってきて、しばらくしたら新しい奴が地面から生えてくる。

 

「この!」

 

流無が海水を操って水の矢を飛ばすが・・・

 

「無駄ですよ、後鬼!」

 

後鬼が抱えた瓢箪を構えると、そこへ水が吸い込まれていく。

 

「なっ!?」

 

その光景に流無は驚く。

そうだった。あの後鬼がいる限り、流無の異能は使えない。

まずいな。

攻撃力と応用力、持久力のバランスのいい流無は俺たちの中ではトップクラスなのにそれが封じられた。

レキが狙撃でサポートしてくれるから何とかなっているがこのままじゃジリ貧だ。いずれ銃弾も体力もなくなる。なにか突破口を――

 

『ふっふっふ。お困りの皆さんにいい知らせなのだ!』

 

耳につけていたインカムから平賀さんの声が聞こえてきた。

 

『さっき秘密兵器を投入したのだ!』

 

おお!平賀さんの秘密兵器!なんだかものすごそうだ。

 

『と言うわけで、むとーくんお願いしますなのだ!』

 

「おう!」

 

いきなり響いた武藤の声に、その声のもとを探してみると武藤は海の上、水上バイクの上に乗っていた。その手には巨大な――リモコン?

 

「昨日から徹夜で修理・改修したこいつの力を見せてやるぜ!浮上しろ!」

 

水上バイクの手前から白い気泡が現れ、何かが浮かび上がってくる。

その様子に全員が、遥香までも式神を操るのをやめて注目する。

やがて、現れたのは全長3メートルはあろうかという黒い潜水艦――

 

「俺たちの夢、『ボストーク弐号・改』!」

 

「ラジコンかよ!」

 

キンジが突っ込む。

他の面々も――心のどこかで期待していたのだろう――口には出さないが呆れていた。

あのラジコン、ボストーク号は空前絶後の巨大原子力潜水艦だったのだが1979年に行方不明になった悲劇の原潜。それを武藤と平賀さんが蘇らせて、この間のプールの時間に操縦していた。しかし、それはキンジにより真っ二つにされ、後継機である『ボストーク弐号』も昨日のビーチバレーで俺がサーブの加減を間違えて吹き飛ばしてしまったのだ。

昨日、さっさと風呂を出て、その後も帰ってこないなと思っていたらあんなの作っていたのか。

 

「ふははは!甘いぜ、キンジ。この『ボストーク弐号・改』は新兵器を搭載している!」

 

「新兵器?」

 

「ああ、いくぜ!」

 

武藤がリモコンの何かのボタンを押すと、潜水艦の上部が開き――そこには以前、ロケット花火が搭載されていた――合計二十以上もの黒い筒が現れる。

 

『あやや作、超小型ミサイルなのだ!』

 

「発射ああああ!!」

 

武藤がボタンを押すと黒い筒、超小型ミサイルは夜空に飛び上がり、覇軍に襲い掛かっていき、爆発していく。

 

爆炎が晴れたとき、覇軍はその数を三分の一まで減らしており、前鬼の鉄斧もボロボロになっていた。

 

「見たか!これこそ、男のロマン!はぁはっはっは!」

 

「後鬼」

 

武藤が自慢げに笑っていたら、突如海水が間欠泉のように吹き出し、『ボストーク弐号・改』を打ち上げる。

そのまま、『ボストーク弐号・改』は岩場の奥に消えていく――と思いきや

 

「ふ、甘いぜ!『ボストーク弐号・改』は、黒崎による提案で空をも飛べる!飛翔せよ!俺たちの夢!!宇宙潜水艦ボストーク弐号・改」

 

『あややと、黒崎君で、翼を作ったのだ!』

 

突如、『ボストーク弐号・改』から翼が出てきて、空を飛ぶ。

てか黒崎、お前この二人に協力していたのかよ。

しかも、宇宙潜水艦って、もはや潜水艦じゃない・・・。

 

「そしてそしてぇ!黒崎からの提案でもう一つ新兵器が搭載されている!」

 

「まだあるのか?」

 

「おうよ!ちょっと離れろよ!」

 

言われたとおり、俺達は離れる。

遥香は『宇宙潜水艦ボストーク弐号・改』を見ていて動かなかった。どう対処すればいいのかわからないのだろう。

俺たちも今度は何が出てくるのかと思って、確認すると前の装甲部分が二つにわかれ、そこから砲台が出現してくる。

 

「ふはは!これぞ真の男のロマン!」

 

『黒崎君は途中までだったけど、そこからあややが引き継いで完成させた波動砲なのだ!』

 

「宇宙戦艦ヤ○トか!?」

 

「行くぜ、俺たちの、否!男たちの永遠の夢!ターゲットスコープオープン。波動砲――発射ぁぁぁ!!」

 

武藤がリモコンに現れたトリガーを引くと、エネルギーが充填された砲台から光線が発射され、覇軍を飲み込んでいく。

 

光が晴れたとき、覇軍は幾分か再生もしていたその数を四分の一弱程度まで減らしており、前鬼たちにも衝撃があったか少々怯んでいる。

 

「ふははははは!どうだ!!『宇宙潜水艦ボストーク弐号・改』は不滅なのだ!!」

 

「後鬼」

 

武藤が再び笑っていたら、また海水が今度は二つ、間欠泉のように吹き出す。そして『ボストーク弐号・改』の二つの翼をそれぞれふっ飛ばした。つまり翼は本体と離れて打ち上げられている。

 

「は?」

 

そして追い打ちとばかりに、海へと落下していく『宇宙潜水艦ボストーク弐号・改』に海水を使って打ち上げ、それはまた岩場の奥に消えていき――

 

 

グシャッ、ドオオン

 

 

今度こそ落下したらしく、爆発した。

 

「俺たちの『宇宙潜水艦ボストーク弐号・改』いぃぃ!!!??!!」

 

そして、武藤はあまりのショックに水上バイクの上でがっくりとうなだれてしまった。

 

なんだこれ・・・。

 

 

 

「とりあえず、一時撤退だ!武藤は自力で逃げろ!」

 

キンジの言葉に全員が従う。水上バイクに乗っていた武藤も何とか逃げる。

『宇宙潜水艦ボストーク弐号・改』の尊い犠牲で俺たちは撤退のチャンスを得ることができた。

さらに言うとありがとう黒崎。翼をつけるというお前のガ・・・いや、すばらしい提案で、撤退がかなり楽になった。

 

「待ちなさい!」

 

「ばいばいき~ん」

 

理子が置き土産にと、予備の閃光手榴弾(フラッシュグレネード)を放り投げて遥香の目をくらませる。

その隙に、俺たちは旅館とは反対にある林の中に逃げ込む。

 

「・・・全員いるか?」

 

「ええ、何とか」

 

俺の声に流無が返事をする。

周りを見れば確かに全員そろっていて、全員が俺の方を見てくる。

まあ、気になるよな・・・

 

「まずは話すよ。俺と遥香の事」

 

そして、俺は話した。

土御門の事。

遥香の事。

何があったのか。

 

「・・・以上だ。ん?」

 

なんかみんなの雰囲気が暗いな。唯一変わらないのはこの話を昔、簡単に話したことのある流無位だな。この間遥香と遭遇した神楽も暗くなっているし。

確かにものすごく暗いというかヘビーな話の内容かもしれないけど軽く流そうぜ?

 

「いや、それ無理だと思うから。実際あらかじめ聞いていた私でも改めて聞くとかなり重いと思うから。それに新しく発覚したことも聞くと余計に重いから」

 

実家が潰されていたとか?

いや、でもまあ本人同士の問題だし、俺の中じゃ何とかケリがつきそうだし・・・。

 

「とにかく、今からあの式神について話すぞ。全員注目!」

 

小声で注目を集めるという器用な技を使う。

 

「まず、あの赤くてデカい鬼。名前は前鬼(ぜんき)。タッグマッチトーナメントを見ていたメンバーは見たことがあるな?

見た目通りのパワーファイター。瞬発力もかなり高い。しかもISを使った奴らが少し相手していたが、腕をぶった斬っても再生してくるというようなやつだ。

次に、遥香のそばに控えていた青い細い鬼。名前は後鬼(ごき)。

前鬼と違いパワーは全くないが、陰陽術を使う。特に水の術だ。流無の水がとられたのはこのせいだろうな。その気になれば水を完全に支配できる。

最後にあの無数にわいてきた「名探偵コ○ン」の犯人みたいな黒い影の式神、覇軍。

一体一体の力は弱いが数が多い。しかも再生能力もある。ある意味、前鬼・後鬼よりも厄介かもしれない」

 

ふう、一気にしゃべると疲れるな。

 

「ちょっと質問いいですか?」

 

白雪が控えめに手を上げる。

俺が頷くとおずおずとしゃべり始める。

 

「あれだけの数の式神を使うなんてちょっと不可能だと思うんだけど」

 

「どういうこと?」

 

白雪の言葉にアリアが聞き返す。

 

「式神を使うと術者は精神力を消費するの。強力な式神を使うほど消費する精神力も比例して多くなる。あの三体?の式神は一体だけでもかなりの力を持っている。そんな式神を同時に三体使うなんて無理だと思うの」

 

ふむ。もっともな意見だな。

 

「前鬼・後鬼に関しては術者の精神力は関係ないんだ」

 

「どういうこと?」

 

首を傾げる白雪だけじゃなく、全員に聞こえるように言う。

 

「二体は土御門の決闘の術者が最初に命令をすれば、術者が停止命令をするまで動き続ける。そして、その動力源は千年以上にわたって蓄積された歴代土御門家当主の力なんだ。つまり、あらかじめ充電しておいた電子機器みたいなものだな」

 

俺の説明に全員が納得するが、

 

「では、あの覇軍とやらはどうなのです?」

 

神楽が疑問をぶつける。それに対し、俺は自身たっぷりに答える。

 

「それは・・・」

 

『それは?』

 

沈黙が場を支配する。そして、俺は満を持して・・・

 

「知らん」

 

言い切ったぜ。

全員がずっこけているが気にはしない。だって本当に知らない。

 

「自信たっぷりにためるな!」

 

「この雰囲気をぶち壊さないでよ!」

 

キンジとアリアが声をそろえて怒鳴った後、目を合わせて「あっ・・・」とか言って顔を赤くして恥ずかしそうに眼をそらす。

お前らが一番空気を読め。なにラブコメの空気出しているんだよ。

それを見て黒くなっている白雪と理子も。

 

「うんうん。昨日のアドバイスは間違っていなかったわ」

 

ほう、流無も何か言ったのか。俺もキンジにいろいろ言ったしな。

 

「コホンッ、とりあえず話を戻そうか」

 

不知火が場の空気を元に戻す。

 

「それで、知らないってどうゆうことなんだい?」

 

「覇軍は伝聞でしか知らないんだ。それにもただ無限の軍団を操るとしか書いていなかった」

 

「なるほど」

 

本当に厄介なんだよな。こっちだけが疲弊していくし。しかもさっきの様子を見る限り遥香の精神力もそんなに使っていなかったし。

 

「仕方ない。流無、理子、ちょっとこっちにこい」

 

俺は二人を手招きしてある指示を出す。

それを受けた二人はにっこりと笑うと――

 

「キーくん、ちょ~とこっちに来てね」

 

「アリアちゃんもおねーさんと一緒に来て♪」

 

キンジとアリアを確保し茂みの奥に連れて行った。

 

 

 

――ここからは音声のみでお楽しみください――

 

『ちょ、いきなり何するの!?』

 

『理子!?お前何して!』

 

『キンジ君は動かないでね』

 

『おおう、ルーちゃんいやらしい指使い~、これは理子も負けていられませんな』

 

『ひゃう!?り、りりり理子!あんた何処さわ、ってひゃん!そこは、ダメぇ』

 

『キンジく~ん、目をそらしちゃだめだゾ』

 

『うわあああああ!!??』

 

――お待たせいたしました――

 

 

茂みの中から出てきた四人。そのなかでもキンジの雰囲気はまるで別の物になっていた。

これこそが遠山一族がもつ力、名奉行遠山の金さんも持っていたとされるヒステリアモードだ。

こうなったキンジは一味もふた味も違う。

キンジは白雪に近寄り小声でいくつか話をした後、振り返り全員に聞こえるように言い放つ。

 

「――全員、俺の言うことに従ってほしい。援軍も到着したことだし鬼退治と行こうか」

 

援軍?と俺以外のやつが首をかしげる中、べつの茂みから四人の人影が現れた。

 

もしもの時のために待機していたジャンヌ、風魔。

 

 

そして流無と同じ水色の髪の更識簪さんと、袖の長い制服を着た布仏本音さんだった。

 

 

反撃の時は今だ。

 

 

 

「・・・むー、おにーちゃんはどこへ消えたのでしょう・・・」

 

和麻たちを見失った遥香は、覇軍を使って探していた。

 

「ああ、早く兄妹のふれあいがしたいなぁ。その前に蒼神流無をブチ殺すとして・・・」

 

さらりと言い放つ遥香。

 

「・・・ですけど、おにーちゃんを探している途中だというのに、余計なのがいる・・・」

 

「おや、それはもしや俺のことか?」

 

遥香はその声に何の疑問も持たない。

木の影からISを展開した黒崎仭が出てきた。

 

「そうですよ。まったく、あなたも福音の方に行くと思いましたのに」

 

「クク、俺はそう安々と私情に流されるような輩でないんでな。しかし、外にいたんで見えたが、あの馬鹿五人は行ってしまったか・・・。そしてそれはどうやらお前さんの・・・いや、お前さんたちの仕業と見える」

 

周囲を見回しながら言う仭。

すでに無数の影・・・覇軍が仭を取り囲んでおり、遥香の横には前鬼と後鬼もいる。

 

「だからなんなんです?まあ、彼女たちのなかで特にあのおにーちゃんを邪魔した銀髪は、私が殺したかったんですけどね♪」

 

「銀髪・・・ラウラのことか。というと、八神さんが大怪我を負ったあの時だな」

 

「ええ、そうです。ついでに言うとおにーちゃんの邪魔をしたもう一人もいつか殺すって決めていますけどね♪」

 

「・・・・・・・」

 

笑顔で言う遥香に、すでにもう一人が誰か分かっている仭は何も言わない。

 

「ああ、おにーちゃんに早く逢いたいです。そして・・・きゃっ///」

 

「・・・・・・」

 

それに若干引き気味になる仭は、間違っていない。

そしてさっき会っただろうとも、色々すっ飛ばし過ぎだろうとも言わない。

 

「・・・早く逢いたいというのに、あなたが邪魔してきそうですけどね」

 

「うん、というか質問したいが、()()。俺が『別に相手するつもりはない』と、言った所で武偵たちの方に行ってくれそうにない気がするんだが」

 

突如不機嫌な顔に変わった遥香に対し、殺気を撒き散らしながら笑顔で答える仭。

覇軍は全て集まったわけではないが、すでに大方集まっており、前鬼、後鬼も戦闘態勢になっている。

 

「ええ、おにーちゃんたちと一緒に相手するのも面倒なので、ここで死んで貰います♪」

 

そう言うなり、パチンッと遥香が指を鳴らすと、覇軍たち?が仭に襲いかかる。

 

「ふん」

 

仭は、その場で回転。近くまで来た覇軍を拳で殴り飛ばしながら、他の覇軍へとさらに飛ばしていき、近づかせない。

 

「俺を倒せるのか天才陰陽師?」

 

「ははっ、その言葉そっくり返しますけど、あなたこそ私に勝てると思っているんですか?」

 

「!」

 

遥香がそう言っている間に、覇軍はどんどん迫ってきていた。

 

「覇軍は一体一体では、弱いですが、それでも数は最大三百体。今は全部集まっているわけではないですが、それらは再生能力も持っています。そして前鬼に後鬼もいる。特に前鬼に対しては、あなたは倒せなかったんですよ?」

 

「・・・・・・」

 

「ふふ、事実を知って愕然としましたか?大丈夫です。抵抗さえしなければ、楽に死ねます」

 

再び覇軍が仭に襲いかかり、仭の姿が黒い影で埋まるも・・・。

 

「はぁっ!」

 

「!」

 

仭に襲いかかった覇軍はすべて吹っ飛ぶ。

再び姿を現した仭は、ISと共に全身が音を立てながら、発光していた。

 

「・・・長ったらしい説明どうも。語るに落ちた天才陰陽師。敵に情報をやるとは、なかなかありがたいことをしてくれる。なるほど、数の暴力か」

 

「む・・・!」

 

相手を絶望させるために言ったことが、役立ててしまったことに気付いた遥香は、思わず唸る。

 

「あいにくだが、すでにお前と戦う前からISのエネルギーを貯めていてな。それが今満タンになったところだ」

 

仭のISの単一使用能力によるもので、増幅させていたのである。

なお、それは攻撃を受ければそれをエネルギーに変えて、蓄える能力だが、増幅することもできる。つまり、仭は予めISに何らかの攻撃をわざと?受けていて、今の今まで増幅させていたわけである。

 

「じゃあ、あなた。私との会話も時間稼ぎに・・・」

 

「おいおい。知っていたんじゃないのか?となるとやはり、人間なにかに夢中になっていると、他が疎かになるようだな」

 

この場合、和麻たちのことに(特に和麻)頭がいっていたということである。

 

「けど、この式神たちを相手にあなたは勝てると思っているんですか?」

 

「クク、心配せんでも巨人共についてはすでに対策が練ってある。そしてこの雑魚共を相手取る必要はない。そこの巨人共は別だろうが、式神っていうのは所有者がいるもの。ならばおそらく貴様をどうにかすれば済む話だ」

 

「へぇ・・・」

 

仭の作戦を知った遥香は、面白いとばかりに微笑む。

覇軍に対しては無視して、自身を狙うということだ。

 

「なら、やってみてくださいよ、ベルセルクさん。まあ、数の暴力にはいくらあなたといえども敵わないでしょうけど」

 

「ならばそいつらで、俺の攻撃が通る前に殺してみろ(やってみろ)気狂い(ブラコン)が」

 

 

 




もう一度、「宇宙潜水艦ボストーク弐号・改」に敬礼を。

次回、暴君VSブラコン陰陽師です。

活動報告のアンケートも受付中で~す。何でもいいのですが、個人的には今のIS学園生徒会の役員みたいなキャラがほしいです。会長はダリルを予定していますが、ほかにだれか入れようかなと。
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