緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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異能

翌朝、食堂で朝食を流無、白雪と共に採り、朝の訓練のために恐山のふもとの演習場に向かう。

この時間は各々の能力を使った訓練を行う。

俺が行うのは戦闘訓練で、俺以外に流無と白雪もいる。

 

俺の目の前には数人の生徒がそれぞれの能力を使って攻撃する準備をしている。

俺もそれに対して、腰の左右のベルトに差した二本の日本刀に手を添え、鯉口を斬り、構えながら全身の気を高める。

しばらくして、向こうから仕掛けてきた。

宙に浮いた岩や、よくわからない光の球が俺に向かって複数とんでくる。

 

「風斬、水蓮、抜刀」

 

それに向かって高めていた気を開放。二刀、右の『風斬』と左の『水蓮』を交差するように抜き放ちながら勢いよく飛び出す。

『風斬』の翡翠色の刃と『水蓮』の水色の刃が煌き、高速で岩や光球とすれ違う。

俺が通り過ぎた瞬間、それらは真っ二つになる。

俺はそのまま勢いを落とさず、相手に向かって疾走する。

今度は砂の槍が三本くらい向かってくる。

いや、恐らくさっき岩を飛ばした念動力の力が砂を巻き込みながら直接向かってきているのだろう。

それを横に躱して、さらに加速、相手に向かう。

 

「風牙!」

 

右手の風斬を横に一閃。そこから風が刃のように飛び出す。

相手は屈んでやり過ごすが、

 

「ほい。終わり」

 

瞬時に近づいた俺のかかと落としでダウン。他の相手も体勢を立て直される前にかかと落としや踏み付けで無力化していった。

 

 

 

俺の異能、それは風を操る魔術で『風術』といい、俺は『風術師』と呼ばれている。

風術は、精霊魔術の一つで、この世界を構成する四つの精霊、地水風火の四大精霊を使役し、超常的な現象を起こすという魔術だ。

そして、今はもう廃れてしまった魔術でもある。

理由は不明だが、精霊魔術を使える術者はここ数十年現れておらず、実質的に俺が世界唯一の使い手だ。

『風術』はその名の通り、風の精霊を使う。

風の精霊は空気があればそこに存在し、数も多いのですぐに召喚し、術を使えるのだが、空気には重みとエネルギーが全くないので威力は四大精霊のなかで最弱だ。ちなみに一番強いのが火で、水と土が同じくらい。

ただ、さっきも言ったように最速の召喚速度と応用性の多さから俺は戦闘の補助として重宝している。

 

そして、異能を補助にする俺の主な戦闘方法が二本の刀、『風斬』と『水蓮』を武器に、気で身体能力を強化して戦うという近接戦闘だ。

 

 

よく格闘漫画やラノベで出てくる人間やそれ以外の物に宿るエネルギーの事。

俺は上海武偵校に留学していたときに、うさん臭い謎のおっさん、八神刀夜の弟子にされ、気を扱う『気功術』を教わった。その成果がさっきの高速移動『縮地』、気を使って脚力を強化、目にも止まらない高速移動だ。他にもいろいろなことができ、自身の気を増幅して相手に打ち込めば、普通より多くのダメージを与えられるし、相手の気を乱して動きや能力を阻害することもできるし、気を活性化させればけがの治療もできる。

気功術に加えて、剣術と風術の手ほどきも受けた。

風術は上海に留学する前から使えていたんだが、どんな力なのかよくわからずに感覚で風を起こしていたから正直ありがたかった。ただ、精霊と感覚を同調させる必要があるんだが、これが結構難しかった。まあ、なんとかなったけど、その習得のために泰山に置き去りにされた。・・・あの時は本気で恨んだぜ。

で、一通り指南が終わったらこの二本の刀、風斬と水蓮を渡して送り出してくれたんだ。

 

「さて、こんなところか」

 

俺は二刀を納刀して、流無の方に目を向ける。

そっちではちょうど、流無が三叉槍を構えて俺と同じように数人の生徒と向かい合っていた。

一人の生徒が電撃を放つ。・・・ほんと、ああいうのどういう原理なんだ?風術を使う俺が言うのもなんだけど。

それに対して、流無は一度三叉槍を下におろすと勢いよく上にあげる。

すると、槍の先端から水が現れて流無の前に水の壁ができる。

それが電撃を防ぎ、爆発を起こす。

その爆炎の中から流無が勢いよく飛び出し、槍を構えながら突撃する。その槍の三本の先端には水が渦巻いている。

先ほど電撃をしかけたのとは違う生徒が、今度は黒い犬の様な影を流無に向かわせるが、それを流無はサイドステップで避け、槍を突き刺す。

槍の先端で渦巻いていた水がドリルのように影をえぐり、貫通させると、影は消滅。影を操っていた生徒は力尽きたかのようにへたり込む。

その隙に、電撃を放った生徒に流無は俺と同じ縮地で近づき、掌底を撃ちこむ。すると、撃ちこまれた生徒は吹き飛ばされる。

これは打撃よりも衝撃をダイレクトに相手に撃ちこむことを目的とした一撃。たとえ、鎧を着ていても相手にダメージを与える。さらに今の一撃はねりあげられた気が込められていた。さっきも言ったと思うが、あれを受けたら自身も気の使い手でない限り、全身の気の流れが乱されて、しばらくは動くこともままならないだろうな。

 

流無の異能は水を自由自在に操る。ただし、詳細は不明だ。

俺の風術みたいに水の精霊を使役している訳でもないし、念動力で水を動かしているわけでもない。まさに正体不明の力。

しかも、この力は流無が息切れしにくいという特徴もある。

超能力者(ステルス)はその能力の強さに応じて、G(グレード)で表記される数字でランク分けされ、大きいほど強い能力者なのだが、その分精神力の消耗も激しく長時間の使用には耐えられない。

俺も風術の全開使用は七分くらいが限界だが、流無はそれがあまりない。能力を使いながら一時間戦ってもケロッとしている。

加えて、流無にはこの異能以外にも能力がある。

まさに女王(クイーン)の名にふさわしい実力と能力を持っている。

 

その後も、他の生徒を次々とノックダウンしていく流無を見ながら俺は二刀を構えなおす。

 

「さて、じゃあ俺も次に行こうか」

 

その後、俺と流無は他の生徒と模擬戦を繰り返して、一日目は終わった。

 

 

 

夕食を食堂で取り、昨日は入れなかった温泉に入り、談話室で風呂上りの牛乳を飲む。

何も考えずにぼーっと、備え付けてあったテレビを流無と見ていると、武偵校の生徒の乗ったバスがバスジャックされたというニュースが映った。

 

「・・・流無」

 

「・・・何かしら」

 

「お前はいつ予知能力を習得した!?」

 

「知らないわよ!昨日のただのでまかせよ!?」

 

「でまかせでこんなドンピシャで当てたのかよ!?流石は俺の彼女だな!」

 

「どういたしまして!」

 

大声で騒いだおかげでなんとか落ち着き、周りのほかの生徒に二人で頭を下げた後、部屋に戻り、キンジに電話をする。スピーカーモードにして流無も話せるようにする。

 

『和麻か。なんだよ』

 

聞こえてきたのはいつもよりさらに暗い、キンジの声。

これを聞いただけで何かあったと分かる。

 

「さっきニュースを見た。武偵校のバスがジャックされたんだって?」

 

『・・・ああ。俺とアリアが解決に行った。もっとも最終的に爆弾を何とかしたのはレキだけどな』

 

それからキンジに事件の詳細を聞いた。

今朝の7時58分の武偵校行きのバスが例の武偵殺しの模倣犯にジャックされ、キンジ、アリア、レキが対処したこと。

その過程でキンジはアリアに助けられて、アリアは額に消えることの無い傷を負ったこと。

 

「キンジ君。アリアちゃんと何かあったの?」

 

『何のことだ?』

 

「なんとなくだけど、あなた元気ないわよ」

 

流無はどういうわけか人の感情とかに鋭い。

まあ、今のキンジは俺でもわかるくらい声が沈んでいたがな。

 

『別に。ただ、あいつと喧嘩しただけだ』

 

「喧嘩?」

 

『ああ。あいつ、勝手に俺を振り回しておきながら、今回の件が終わったらあっさりパートナーは解消とか言いやがった。それだけじゃねえ!あいつ、俺が武偵をやめる理由を大したことじゃないって言いやがったんだ!何にも知らないくせに、勝手なことばっかり言いやがって!』

 

あ~、それは・・・。

 

「キンジ君が怒るのも無理ないわね」

 

流無はキンジに聞こえないように小声でそう言い、俺も首を振る。

 

去年の冬。

浦賀沖で海難事故が起きた。

日本船籍のクルージング船・アンベリール号が沈没、キンジの実の兄である遠山金一武偵が犠牲になった。

彼は乗客全員を助けるために犠牲になったのだが、乗客からの訴訟を恐れたクルージング・イベント会社は一部の乗客をたきつけ、彼を事件を未然に防げなかった無能な武偵と非難し、それは遺族であるキンジにも向けられた。

今でも思い出す。

葬式で憧れていた兄を失い、一番ショックを受けていたキンジに、空気も読まないで押し寄せる記者の群れを。

その場で同席していた俺は殺気を抑えるのにとてつもなく苦労した。

この騒ぎは流無がルームメイトのレイズに何とかするよう頼み込み何とか収まった。

 

レイズ・フローレン。

 

情報化(インフォルマ)に所属する彼女は常識はずれの情報操作技術を持ち、趣味はハッキングだという。そんな彼女が騒ぎを収めるために何をしたのかはわからないが、遠山金一ひいてはキンジに対する批判はピタリとやみ、クルージング・イベント会社は倒産した。

 

だが、それでもキンジの世間への失望は消えることもなく、武偵をやめる決意は消えなかった。

 

「・・・キンジ。それは確かにアリアが悪い。あいつは何でもかんでも自分勝手に進める。それが相手をどれだけ傷つけるかも知らないで」

 

「でもね、キンジ君。彼女にだって何かがあると思うのよ。周りのことが見えなくなるくらい必死になる何かが。あなただってそれを知らないでしょう?」

 

『・・・ああ』

 

「だから、それを知ってみるのもいいかもしれないわ。私から言えるのはこれだけ」

 

「俺も流無と同じ意見だ」

 

『そうか』

 

「ああ。もう俺達は寝るから、じゃあな」

 

「お休み~」

 

『・・・ありがとう』

 

こうして、合宿二日目が終わった。

 

 

 

翌日の訓練で俺は流無と向き合っていた。

 

「和麻、手加減はしないわよ」

 

三叉槍を構え、自分の両肩あたりに二つずつ、サッカーボールくらいの水の塊を浮かべそう言う。

 

「当たり前だ。お前こそ、そう言うならすぐに倒れるなよ」

 

俺も二刀を抜き放ち、構える。そして、俺の周りに風が吹き荒れる。

 

「いざ・・・」

 

「尋常に・・・」

 

「「勝負!」」

 

まずは俺から仕掛ける。

基本的に俺は先手を得意とし、流無は後手を得意としている。

 

縮地で一気に距離を詰めて右手の風斬を振るうが、流無は槍で防ぐ。

続けて左手の水蓮を振るうが、バックステップで躱される。

追撃しようとするが、水の塊が俺の顔に向かってくる。

あれに捕まったら、呼吸できなくなってしまう。

とっさに風で小型の竜巻を作って水を散らせるが、後ろからさらに二つの水が迫る。

だが、今の俺は風の精霊と同調し、それが見えている。

脚の気を爆発させて真上に飛び上がり、足の下に空気を固めて、半径二十メートルほどの球状の足場を作り、そこに乗る。

他のやつから見たら空中に浮かんでいるように見えるだろう。

 

「相変わらず、それって便利よね~。私も飛んでみたいわ」

 

「相変わらず余裕だな」

 

そんな軽口を叩きながらも、構えなおす。

 

しかし、それは中断された。

 

空から降り注いだミサイルによって。

 

それは演習場を破壊し、生徒たちは一瞬混乱したが、武偵校で鍛えられているのは伊達じゃない。

すぐに鎮静化して、状況を冷静に判断する。

俺と流無もすぐにミサイルのとんできたほうに目を向け警戒する。

 

そこには一つに影が宙に浮かんでいた。

 

「あれって・・・」

 

「ああ。どう見ても」

 

「「ISだ・・・」

 

宇宙空間での活動を想定して、開発されたマルチフォーム・スーツ、インフィニット・ストラトスが二機浮かんでいた。

一機は背中に八本の脚がついている黄色と黒の機体で見たことの無い奴だったが、もう片方は世界中で使われている量産機、ラファール・リヴァイブで、ミサイルランチャーをその手に持っていた。おそらくさっきのミサイルを撃ったのはラファールだろう。

 

ラファールの方はすぐにどっか飛んで行ったけど、八本足の方はこっちに降りてきた。

 

「なんだぁ!?ここには超能力者がいるって聞いていたのに餓鬼ばっかじゃねえかよぉ!こんなんでこのオータム様のアラクネの試運転に何のかよぉ!」

 

いきなりIS(さっきの言葉からアラクネという名前なのだろう)に乗っていた女が叫び始めた。

おそらく、流無も同じことを思ったのだろう、一瞬目を合わせて同時に言う。

 

『「「口悪!」」』

 

他の生徒たちも叫んだ。まあ、そう思うよな。あれはない。

 

「ああ!?うるせえんだよ!てめえらはおとなしく、こいつの経験値にでもなりやがれ!」

 

女がそういうと八本足の先が光り、そこから銃弾が俺たちに向かって発砲された。

 

 




和麻と流無の異能、うまく説明できたか不安です。
次回はISとのバトル。頑張ります。
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