緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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継承

シャーロックは二つの緋弾を再び、装填(ロード)しながら話始める。

 

「緋弾――正式名称は緋緋色金。この弾丸に使われている金属だ。峰・理子・リュパン4世が持っていた十字架(ロザリオ)にも、この緋弾と同族異種の金属を含まれているのだよ。もっとも、この緋弾が純粋なイロカネに対し、あちらは極微量のイロカネを含んだイロカネ合金だけれど。……イロカネとはあらゆる超能力(ステルス)、精霊魔術さえも児戯に思えるような至大なる超常の力を人間に与える物質。いわば、『超常世界の核物質』とでもいうべき金属なのだ。その力は、完全に制御できれば和麻君のような契約者(コントラクター)に匹敵、あるいは凌駕する、と言えばその凄さが分かるかね?」

 

その言葉に、俺は戦慄する。

シャーロックの言葉が本当ならば、あの緋弾さえあれば精霊王の力に匹敵する力をただの人間が得ることができると言っているようなことだからだ。

しかし、疑問が残る。

キンジの話しでは、今のシャーロックと同じようにアリアも緋色の光、奴が言う『緋天・緋陽門』を撃ち出した。だが、アリアはそんなものを持っているように見えない。

そして、色こそ違うが流無も似たような光を…いや、待て待て待て!!

そういえば、刀奈も似たような光を大剣に纏わせて攻撃していた。

戦闘中はそこまで考えられなかったが、今にして思えばあれはまさに緋弾の輝きにそっくりだった。一体どういうことなんだ!?流無もそんなもの持っているはずないぞ!

 

「――世界は今、新たな戦いの中にある。イロカネの存在、その力が次第に明らかになり、極秘裏にその研究が進められているのだ。僕の『緋色の研究』のようにね。

イロカネを保有する結社、組織はイ・ウーだけではない。アジア大陸の北方には『ウルス』、南方には和麻君たちと因縁深い『蘭幇(ランパン)』、世界中に支部を持ち、数だけなら世界一ともいわれる『亡国機業(ファントム・タスク)』もイロカネのことを探り、僕の祖国、イギリスでは世界一有名なあの結社も動いている。イタリアの非公式機関を陰からサポート・監視するバチカンのように、国家がイロカネの研究を支援・監視するケースも枚挙に暇がないほどだ。アメリカではホワイトハウスが、日本でも宮内庁が君の学校に星伽の――いや、これは少々口が滑ったかな。

そして、最後に日本においてイロカネを守護してきたもう一つの一族――流無君。君の実家の更識家も、代々とあるイロカネを守護してきたのだよ」

 

その言葉に、俺たちは息をのむ。

とりわけ、流無は自分の生家の事ゆえに、目を見開き、瞬きすら忘れている。

 

「代々、遥か昔から君の一族が守ってきたイロカネ。その名を――

 

玄蒼色金(げんそういろかね)という」

 

玄蒼色金。

それが、流無の一族、更識が守ってきたイロカネの名前。

 

「イロカネにはそれぞれ固有の能力がある。緋緋色金にもあるのだが、今は割愛しておこう。玄蒼色金はその力故に厳重な封印を施され、影の一族である更識に守護、封印を任されたイロカネなのだ」

 

玄蒼色金の力?

 

「それは、他のイロカネの力を取り込んでしまう(・・・・・・・・・・・・・・・・・)というものなのだよ」

 

なっ、なんだよその力は!?

つまり、他のイロカネを、同等の力を持つ金属を取り込んでどんどん強くなっていくってことか!?

 

「その強大な力を恐れた当時の人々は、玄蒼色金に厳重な封印を施した。他のイロカネを玄蒼色金がとり込めば、どんな事態になるか予想が付かなかったからね。その後、玄蒼色金に適合することのできる更識が守護する事となり、初代更識楯無の手でその存在を隠された」

 

確かに、それなら封印された理由も納得がいく。

そんなことになれば、それこそ手が付けられなくなってしまいかねない。

大きな力は、存在するだけで人を惑わしてしまうのだから。

 

「だが、それは間違いだと僕は研究していくうちに気が付いた」

 

シャーロックの言葉に、再び俺たちは驚く。

 

「玄蒼色金にある能力は他者の能力に干渉、同調し増幅、潜在能力を引き出したり、その力を写し取り行使できるようになることだと判明したのだよ。当時の人たちには、それが異能やイロカネの吸収に見えたのだろうね。流無君の異能強化(ステルスブースト)。あれも気を媒介にして、他者の潜在能力を一時的に開放しているのだよ。やがて、その力を受け続けた者はその異能を大きく開花させる。和麻君。君が風術を完全に習得し、神風を発現させたようにね」

 

その言葉に、俺は刀奈との戦闘を思い出す。

彼女は俺の風牙を放ってきた。

あれも玄蒼色金の力で、俺の風術を写し取った物だったんだ。

普通に考えれば、そんなことがあり得るわけがない。だが、もしもイロカネがシャーロックの話しの通りの物質なら、あるいはと思ってしまう。

 

「僕がこの玄蒼色金のことを知ったのは、秘密裏に更識と接触していたからだよ。イ・ウーと更識は互いにイロカネを保有するもの同士だからね。少し秘密の会合をしたり、情報交換をしていたのさ。

もっとも、互いにことを交えなかったのは、互いにそのあまりに甚大な超常の力に手出しができなかったからなのだがね。これは他の高純度で質量の大きいイロカネを持つ者たちにも言えるが。

さて、そろそろ話をするだけでは飽きてきただろうから、一つお見せしよう」

 

そう言うとシャーロックは、右手の人差し指をこちらに向けて、突き出してきた。

 

「これだろう?キンジ君が見た現象は」

 

シャーロックの体を覆っていた緋色の光が、今度は指先に集まっていく。

まるで、燃え盛る太陽のようだ。

あれが、『緋天・緋陽門』!

俺が生唾を飲み込んだとき――

 

「……?」

 

濃い蒼色と緋色、二色の光が視界に入る。

二つの光に振り替えると、そこにいたのは――

 

「流無……?」

 

「アリア……!」

 

蒼、どちらかといえば黒色を含んだ、深海のような蒼い光をぼんやりと放つ流無と、シャーロックよりも弱いが、それでもはっきりとした燃え盛る太陽の様な緋色の光を放つアリア。

俺とキンジの目の前で、二人の光は右手の指先に集まっていく。

その様子に二人はもとより、俺とキンジも何が何だか分からなくなる。

 

「それは『共鳴現象(コンソナ)』だ。質量の多いイロカネ同士は、片方が覚醒すると共鳴する音叉のように、もう片方も目を覚ます性質がある。その際は、イロカネを用いた現象も共鳴するのだ。今、僕と君達二人の人差し指が光っているようにね」

 

シャーロックは、言いながらその緋色の光が集まった指を俺たちの方に向け、狙いを定める。

 

「アリア君、流無君。僕は今からこの光弾、『緋天』を君たちに撃つ。僕が知る限り、止めるには同じ『緋天』を衝突させることのみだ。目覚めたばかりの君の緋天では無理かもしれないが、流無君の光弾、そうだね『蒼天』とでも呼べばいいかな。蒼天により増幅されれば、きっと拮抗できるだろう。そして、二つの緋天がぶつかり合った後、日本の古文書には二つは静止し、その後に『暦鏡(こよみかがみ)』なる物が発生するとある」

 

「曾…おじい様……?」

 

「……」

 

アリアは何が何だかわからないという顔をしているが、流無は何をすればいいのか見当がついたのか人差し指に『蒼天』を宿したまま、アリアの横に立つ。

 

「さっき君は……『あなたに命じられない限り』、僕を撃たないと言ったね。ならばここで命じよう。僕を、撃ちなさい。その光で」

 

「…曾お爺さま、を」

 

「そうだ。イロカネに心を奪われないように、静かに、落ち着いて――指先に力を集め、保つようにイメージをするのだよ。キンジ君と和麻君は二人を支えてあげなさい」

 

「お前…!ふざけるのも「よせ、キンジ」っ!?」

 

その言葉に、キンジは反発しようとしたが俺は手で制する。

何か言いたそうなキンジを無視して、俺は流無の右手を握る。

キンジの言いたいこともわかる。

アリアに、尊敬するシャーロックを撃たせるなんてもってのほかだ。

だが、このまま何もしなければ俺たちはあの光で木端微塵にされる。

躱そうにも、俺たちは満身創痍。唯一まともに動けそうなのはアリアだけ。だが、あのアリアが俺たちを見捨てることは絶対にない。

ならば、ここで俺たちに選択肢はない。

まさに、俺たちは王手(チェック)をかけられたような状態なのだから。

どうにもできない悔しさを噛みしめながら、俺は自分の無力を呪いながら、流無の手を握り締めてしまい、そんな俺の手を流無はそっと優しく包んでくれた。

そんな俺たちの様子を見ながら、キンジもどうしようもないことをわかったのか、アリアの隣に立って俺と同じようにアリアの手を握る。

 

「キンジ?」

 

「俺も、お前と撃つ。ここまで来たら一蓮托生みたいなもんだからな。一緒にいてやるよ。どんなことがあっても。お前だけに背負わせねえ」

 

アリアの不安を和らげるように、キンジも隣に寄り添う。そして、二人もシャーロックと同じように狙いを定める。

 

「アリア、キンジ。覚悟はいいか?」

 

俺の言葉に、二人は頷く。

 

「流無」

 

「うん。分かっているわ」

 

俺と流無はその指の蒼天をアリアの指先の緋天に近づける。

二人の光はまじりあい、大きくなっていく。

蒼色の光は緋天と一つになり、更なる輝きを放つ。蒼天の光を身に纏いながら、緋天はより大きく、強大な光へと。

その大きな光を、キンジとアリアは二人で支え合うように構える。

 

「良いパートナーを見つけたね。アリア君」

 

二人の姿を見たシャーロックは、緋色の光の向こうで微笑んでいた。

 

「かつて僕にワトソン君がいたように、ホームズ家の人間には相棒が必要だ。いや、それはホームズ家だけじゃない。和麻君と流無君のように、人にはともに人生を歩む大切な相棒が必要なのだ。時に支え合い、時に争いながらも愛し合う、かけがえのない存在がね」

 

シャーロックはさらに人差し指を突き出し――

 

「人生の最後に…君たちのようなに互いを信頼する二人の象徴的な姿を見ることが出来て、僕は――とても幸せだ」

 

そして、シャーロックの緋天が放たれ、アリアの緋天も同時に指を離れた。

 

二つの緋色の太陽は俺たちとシャーロックの間でぶつかり合い、互いに静止、溶け合い始め、融合していく。

 

「僕には自分の死期が推理できていた。どんなに引き延ばしても、2009年の――今日、この日までしか、僕は生きられないと。だから、それまでに緋弾を子孫の誰かに『継承』する必要があったのだ。もともと、緋弾は『ホームズ家で研究するように』と女王陛下から仰せつかった物だからね」

 

二つの光はすぐに、まるで打ち消し合うように収まっていく。

 

「その後の研究でわかったことなのだが、緋弾を継承するにはいくつかの難しい条件が必要だと分かった。

1つは、緋弾を覚醒させられるのは、情熱的でプライドが高く、どこか子供っぽい性格をしていなくてはいけないらしい。ホームズ家の一族には、この条件に合う人間がなかなか現れなくてね。僕はずっと待ち続けた。そして現れたのが――アリア君。君だ。

このことは玄蒼色金にも言える。玄蒼色金を覚醒させることができる人格は優しいことだ(・・・・・・)。他者の幸せのために自分をどこまでも犠牲にできるような、優しい女性が玄蒼色金に選ばれるのだよ。

その点、流無君はまさにぴったりだと思ったよ。君はかつて自分の妹に、命の危険がある裏の、僕たちの世界に関わらせたくない、幸せになってほしい一心で、過酷な修練に身を投じ、自分の幸せもないがしろにして更識家の最年少当主となったのだから。少し不器用だとは思うけれど、それは立派な優しさだと僕は思うよ。

二つ目の条件に関してだが、君たちの今後の関係のために詳細は伏せるのだが、緋弾を覚醒させるためにアリア君が女性として心理的に成長する必要があったのだ。これは僕の苦手分野だから苦労したがね」

 

どこか、恥ずかしげに笑うシャーロックの手前で、緋色の光が収まった光球は透明になっていく。

 

「三つ目の条件。継承者は能力を覚醒させるまで、最低でも3年は緋弾と共にいる必要がある。片時も、離すことが無いように。

これが一番の難関だった。何せ、緋弾は他のイロカネ保有者から狙われていて、覚醒したものや、それに匹敵する力を持つ者が守る必要があった。だが、無論そんなことはできない。

玄蒼色金に関しては、この方法を保有者の身体に幼少期に埋め込むという方法で解決していたが、緋弾はそうはいかなかった。

だから、今日まで覚醒した僕が、緋弾を保有し――今日からは、覚醒したアリア君が緋弾を保有する。

これはとてつもなく難しい難問だ。成立させるためには、僕は今日までこの緋弾を保有し続け、3年前のアリア君に渡さなければならない。だが、解決してくれたのも――また、緋弾だったよ」

 

宙に浮かぶ光球は、形を変えていき、直径2メートルほどのレンズのような形になった。

そして、そのレンズの中に、何かが浮かび上がってくる。

あれは、映像?

いや、違う。

映像に見えるけれど、あれは実体だ。2つの異なる光景が、このレンズの向こうに映し出されているんだ。

だんだんはっきりしてきたレンズ越しの光景を見て、俺たちは絶句した。

 

「これだよ!これこそが、『暦鏡』――時空のレンズだ。実際に目にするのは僕も初めてだよ」

 

一つは、どこかのパーティー会場。

そこにいる人物は――!

 

「アリア――!」

 

「私――!」

 

髪の色はピンクブロンドじゃなく、亜麻色の金髪をツインテールにしている。

レンズの向こう、誰かと談笑しているのだろうアリアは、今ここにいるアリアよりどこか幼い感じがする。つまり、あれは過去のアリアだ。

そして、もう一つの光景。

そこは、過去のアリアのいるパーティー会場とは似ても似つかない、殺風景な、どこかの海の切り立った崖。そのふちに海を眺めながらたたずむのは――

 

「流無……」

 

「私だ……」

 

今と違い、髪はセミロングにしており、背丈も少し低い流無の後ろ姿だ。つまり、あれも過去の流無……多分あれは更識楯無の頃の流無だ。

 

「アリア君。君は13歳の時、母親の誕生日パーティーで銃撃されたことがあるね」

 

「は、はい。う…撃たれました。でも、それが、今何だと…」

 

「そして、流無君。2年ほど前に、君が記憶を失ったきっかけは、任務の最中に背後から銃弾を受けて、海に転落したからだったね」

 

「…そうよ」

 

レンズの向こうでシャーロックの声のする方に、二人は応える。

 

「君たちを撃ったのは僕だ」

 

俺たちはその言葉に、驚きに体を強張らせる。

 

「正確にはこれから撃つのだ」

 

シャーロックは左手に構えた拳銃の撃鉄を起こし、過去の二人に狙いを定める。

 

「緋弾の力を以てすれば、過去への扉を開くことができる。僕は今から、3年前のアリア君に緋弾を継承し、2年前の流無君の記憶を奪う」

 

「や、やめろォォォッ!!!!」

 

「よせ!!シャーロォォォッック!!!!!!!」

 

俺とキンジは駆けだす。シャーロックを、止めるために!

 

「なに、心配する必要はないよ。僕は銃の名手であるのだからね」

 

シャーロックは、その指を引き金にかける。

レンズの中の二人は全く気が付かない。

 

「アリア!」

 

「流無!」

 

もう遅い。間に合わないと分かっていても、俺たちは叫んだ。力の限り。

 

「アリア!避けろッ!――避けてくれ!!」

 

「流無!!速くそこから――逃げろッ!!」

 

そして、二人がこちらを向く。

アリアはキンジを、流無は――俺を見る。

 

『あなたは』

 

レンズの中の過去の流無が口を開き、俺の耳に今より少し声の高く幼い流無の声が届く。

 

『――誰?』

 

 

 

 

 

パァンパァ――ン……!

 

 

 

 

 

響く、2発の銃声。

俺の視界の中で、流無は背中を撃たれ、崖から落ちていく。

その顔は、驚愕に染まり、俺の方に手を伸ばしているように見えて――

俺も手を伸ばすが、当然つかめる筈もなかった。

そして、レンズは空気中に溶けるように、消えた。

 

「流無君に撃った『疑似・緋弾』。あれは玄蒼色金を封印している『蒼殻八星(そうかくはちせい)』と呼ばれる外殻を1枚破壊する効果がある。この外殻が玄蒼色金の力を封じ、人に超能力を与えることすらも封じていた」

 

消えたレンズの前で呆然とする俺は、同じく呆然としているキンジと一緒にシャーロックの言葉を黙って聞く。

 

「玄蒼色金は数世代に一人、色金を守る姫となる者を更識の血筋の中から選び、その時に目覚める。その時の力は『蒼殻八星(そうかくはちせい)』でも抑えきれなくなるため更識家の者は、幼い姫に玄蒼色金を体に移植することでその力を封印してきた。そして、今代の姫が、流無君。君なのだよ。

僕は玄蒼色金の力の正体を突き止めてから、君に玄蒼色金の力を覚醒してもらい、アリア君のよき友となってほしいと思うようになった。いつの時代も、超常の力を持つ者は孤独なのだからね。そして、今、2年前の君の中にあった玄蒼色金の外殻を破壊したことで、君は超能力(ステルス)となった」

 

流無の水を操る超能力は、イロカネによるもの…それは、とても納得のいく話だ。

イロカネが力の源なら、いくら使っても疲れる筈はないのだろう。

でもな、やっぱり納得できない!そんな理由で流無の記憶を奪ったことを、許せるか!

 

「そんな、そんな理由で記憶を奪ったのか!?そんなことをしなくても、流無はアリアと出会えば友達になった!」

 

 

俺は思ったことを力の限り叫ぶ。だが、それでもシャーロックの表情は変わらず、話し続ける。

 

「無論、それだけが理由じゃない。流無君が姫として目覚めなければ、いずれ起きるだろうイロカネを巡る世界規模の戦いに、更識は、流無君の大切な家族は生き残ることはできない。近年、玄蒼色金は世界中の組織にその存在を知られ始めていた。このまま流無君が玄蒼色金の所有者として目覚めなければ更識はイロカネを狙う者達に滅ぼされてしまうかもしれない。このことを僕は刀奈君に話した」

 

ここで、刀奈の名前が出てくるのかよ。

 

「彼女にはすべてを話した。僕の『緋色の研究』や玄蒼色金に関することを全て。すべてを知った彼女は協力してくれたよ。愛する者達を護るため、汚れ役を自ら引き受けてくれた。すべては流無君を目覚めさせて、更識を、家族を守るために。君たちが強さを手に入れることができるように」

 

「そんな……そんなのって…」

 

振り返ると、流無はその場に崩れ落ちていた。その顔には涙があふれている。

 

「君たちには2つ謝っておこうと思う。イロカネには延命の作用があり、共に在る者の成長を遅らせる。アリア君は13歳からあまり体格も変わらなくなっただろう。流無君も、2年前のあの日から成長が緩慢になったはずだ。それと、文献によれば成長期の人体にイロカネを埋め込むと――体の色が変化するらしいのだ。皮膚の色までは変わらないのだが、髪と瞳が徐々に変わっていくらしい。アリア君は緋色。流無君は蒼色に」

 

確かに、流無の瞳は…刀奈の真紅のルビーレッドじゃなくて、深い蒼だ。その違いも、イロカネのせいだったのか。

 

「以上で、『緋色の研究』に関する講義は終わりだよ」

 

シャーロックのその言葉を、俺はただただ、何もできなかった自分の無力さをかみしめながら、聞いていただけだった。

 

 

 

 




全てを語り終え、真実を知ったキンジと和麻はシャーロックに一矢報いるべく、限界を超える。しかし、その時、ボストーク号に衝撃が走る。現れたのは……予想外の襲撃者だった。

次回「緋炎桜花・玄蒼月風」
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