緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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エピローグ 一つの夜

「うにゃあああ!!!!!!????」

 

地球上のとある場所、としか表現できない場所に存在する研究所。

そこの一室に奇声を上げながら、頭をかきむしる一人の女性がいた。

もし他人が見れば十中八九変人であると判断し、もし友人が見れば付き合うことを考え直してしまうであろうが、幸いここには彼女しかいない。

その女性、ISの開発者にして稀代の天才科学者である篠ノ之束は先ほどのボストーク号を襲撃したゴーレムⅡたちの悲惨な末路に、大いにプライドを傷つけられていた。

自分に並ぶ可能性を持ち、近い将来に邪魔になるであろうイ・ウーをつぶす機会を狙っていたら、リーダーであるシャーロック本人が直々に出てきたことを、秘密裏に打ち上げた監視衛星から確認。すぐさまイ・ウー殲滅のためにゴーレムⅡを向かわせた。

束はイ・ウーという集団を脅威に感じていた。

自分には及ばないが常識はずれの怪物たちを育成し、束は知らないがシャーロックの条理予知(コグニス)により、束の居場所すらも看破するならず者集団を。

そんな不確定要素を葬る絶好の機会であると思い、作成した最新型のゴーレムⅡを向かわせたのだが、一体はシャーロックにより瞬殺、もう一体は入力しておいたプログラムにのっとり、その場にいた人間を殲滅しようとしたが、人間を超えた速度での突きによりコアのエネルギーを全体に送る回路を正確に貫かれ、未知の力で氷結、分子レベルまで粉々にされた。

 

敗北。

 

完璧な敗北であった。

 

「うあああああああああああ!!!!!!!!っと、はぁ~すっきりした」

 

しかし、それでもへこたれる束ではない。

イ・ウーはばらばらに散って行った。もはや恐れる必要はない。

シャーロックという自分に匹敵しうる存在が率いていたからこそイ・ウーは脅威だったが、頭を亡くした今では有象無象に成り下がった。

そして、新しいおもちゃは見つけた。

否、新しい興味対象を。

今まで、自分にここまでの敗北を与えた人間は千冬とシャーロック以外いなかった。そんな中で現れた自分に匹敵しうるかもしれない存在。しかも、シャーロックと違い、未成熟でとても遊び甲斐がありそうだ。

知らず知らずの内に、彼女の顔には笑みが浮かんでいるのだった。

 

 

 

 

 

東京武偵病院。

今年に入ってここに来たのはもう四度目だ。

春先のIS襲撃。

IS学園警備の時の前鬼との戦い。

研修での刀奈との戦闘。

そして、今度は限界ギリギリ、いいや、限界突破の力を使いまくった反動。

まったく、こんな短期間で何度も入退院を繰り返すなんて、どこの学園都市の不幸少年だよ。まあ、あれほどひどくはないけれど。

 

あの後、空から降ってきたアリアとキンジと一緒に、救命ボートに乗った白雪たちに救出され、ちょうど飛んできた車輪科(ロジ)秘蔵の水上飛行機や更識家のヘリに拾われた俺たち四人は体が海水でべとべとであるにもかかわらず、爆睡。一日かけて東京まで運ばれたのだが目を覚まさず、眠ったまま武偵病院に放り込まれたのだった。

そして、そのあとも眠り続けて事件から三日後の今日、7月28日の夜七時にやっと目を覚ました。

 

「おにーちゃ~ん~♪」

 

今、俺は一人部屋にいる。

俺たちはいろいろありすぎたので俺、流無、キンジより先に目覚めたアリアが気を利かせて四人全員に一人部屋を割り振ってくれていた。

ベッドの上で上半身を起こしている俺はある人物に抱き着かれている。

艶やかな黒髪に闇に輝くような金色の瞳を持ち、おっとりとした雰囲気を放つ美少女。

マイシスター、土御門遥香改め、『八神』遥香さんだ。

目が覚めた俺の目に最初に飛び込んできたのは遥香だった。

で、怒涛の勢いでわが妹は俺に抱き着いてきて、その瞬間体中が悲鳴を上げてナースコールを押してしまった。

で、何とか落ち着いた遥香曰く、俺が寝ている間に司法取引を澄ましてきて、しかも戸籍まで変更。俺と同じ八神の姓にし、再び俺の妹となった。しかも、夏休み明けから東京武偵高に編入してくるとのことだ。

あまりに迅速な行動にもう絶句したね。

こいつは俺が絡むとスペックが振り切れる。

依存しすぎだとは思うのだが、それは俺が感動されて黙って出て行ってしまったからであり、兄としては今だけはこいつに甘えさせてやろうと思う。

ただ、ね。

 

「カズマ。私もいいかしら?」

 

蒼色の羽が舞い、遥香が抱き着いているのと反対側に一人の少女が現れる。

蒼穹のごとく澄み渡った蒼い髪に瞳を持つ、蒼翼の精霊少女。

俺の魂と風の神器、蒼穹覇王が一体となった時に生まれた神器そのものである風の上位精霊、シャーリーだ。

彼女は、まるで遥香に対抗するかのように俺の腕に抱き着く。

 

「出ましたね、鳥女!」

 

「毎度毎度失礼ね。私は高位の精霊なのだからいい加減崇めなさい。そしてカズマから離れなさい」

 

「あなたこそおにーちゃんから離れなさい!」

 

俺を間に挟んで言い争いを始める二人。

この二人は波長が合わないのか、俺が目覚めてから一時間くらいしかたっていないのだが、顔を合わせるたびにこうしている。しかも俺が目覚める前もこんな感じだったとか。

二人の喧騒を聞きながら、俺は隣の病室……蒼神流無の病室はどうなっているのだろうと窓から見える東京の夜景を見ながら現実逃避をすることにした。

 

 

 

 

 

目が覚めて、最初に見たのは誰もいない病室の天井だった。

起き上がって事件のことを思い出していた私は、ドアが開いた物音に気が付いてそっちに目を向けると、絶句した。

 

だって、まさか女の子が飛び込んでくるなんて思わなかったから。

 

飛び込んできたのは更識簪。

私の愛しい妹。

最後にあった私の記憶では二年前の、あの任務に出かける前のおとなしい感じのあの子からは考えられない行為にもうびっくりしたわよ。

で、そのまま泣き付かれて、そのあとから幼馴染で従者でもある虚ちゃんも入ってきて泣き付かれ、本音ちゃんに祐人君に結華ちゃんまで入ってきて全員涙ぐみ、さらに更識の関係者である黒服の人たちもいっぱい入ってきてお見舞いの品を置いて行ってくれた。その量は……少し引いたわね。中身に関しても。なんで黒毛和牛?ここ病院よ。どうやって食べろと?

で、ひとしきり泣いたりあやしたりした後に、ボストーク号の中で何があったのかかいつまんで説明をした。流石に更識でも一部の者しか知らないだろう玄蒼色金のことはごまかしたかったけれど、色金のことを話さないとちゃんと説明できなかったから、そこのところはまた後日、みんなが知りたいだろう私と刀奈のことを主に話した。みんな私の話を最後まで真剣に聞いてくれた。

すべてを語り終えた私は一息つく。

 

「でも、よかったですよ。お嬢様がご無事で」

 

虚ちゃんがそう声をかけてくれる。でも……

 

「無事、ね。ねえ、虚ちゃん」

 

「はい?」

 

「私は誰なんだろうね?」

 

今まではいろいろあってあまり深く考えないようにしてきたけれど、改めて考えてみると自分は誰なのだろうかと思ってしまう。

 

「私は刀奈だったころの記憶も持っているし、流無である記憶も持っている。でも、二つはまるで別の人の記憶みたいで、正直どっちが本当の私なのかなって思っちゃうのよ。和麻は私を流無として必要としてくれるし、それにうれしく思うのだけれど記憶の整理がついてくるとどうにも不安なのよね」

 

私は流無であることを選んだけれど、今の私には刀奈だったころの記憶もあるわけで。確固たる自分っていうものが少しわからない。

虚ちゃんもどう答えたらいいのか困惑している。

ほかのみんなも同様だ。

こんなことを聞くなんて、普段の私なら絶対にしないだろう。だって答えを出すべきは自分だから。そして、私はあの時、もう答えは出しているはずだ。でも、今の私は少し怖いのかもしれない。

自分の存在を誰かに、流無である私しか知らない和麻以外に決めてほしい、証明してほしいんだ。じゃないと、不安になるから。

きっと和麻の言葉だけじゃ足りないんだ。

刀奈と流無。

どっちの私も知っている誰かに、決めてもらわないと。ちゃんと自分を決めることができない。決心ができない。

ああ、なんて、なんて私は弱いのだろう。

 

「お姉ちゃんは、お姉ちゃんだよ」

 

「え?」

 

軽く心の中で自嘲していた私は突然返ってきた答えに驚き、その答えを発した意外な人物、簪ちゃんを見る。

 

「怖いなら、私が言ってあげる。お姉ちゃんはお姉ちゃん。例え、名前が二つあっても、記憶が二つあっても、私にとっては、たった一人だけのお姉ちゃんだよ」

 

一言ずつはっきりと告げられた言葉は、不思議と私の心の中に染み込んでいった。

 

「あ、あれ?」

 

私は目から溢れたそれに驚く。

 

「お姉ちゃん。泣いてるの?」

 

「あはは。そうみたい。でも、全然」

 

悲しくない。とても、うれしい。

まるで欠けていたパズルのピースがようやくはまったみたいな、不思議な安心感と一緒にとてもうれしい感情があふれてくる。

 

「簪ちゃん」

 

「何?」

 

――ただいま――

 

――おかえりなさい――

 

 

 

 

 

人生には思いもよらない出来事が起きる。

様々な予想外の出来事の果てに、離れ離れになっていた二組の兄妹と姉妹は、夜空の下で再び一つとなり物語はひとまずの終わりを迎えた。

しかし、終わりではない。

このイ・ウー事件を契機に、色金にかかわる彼らは新たな強敵や仲間と出会い、さらに激しい戦いの日々へと突き進んでいく。

序曲の終止線(プレリュート・フィーネ)

ここまではほんのプロローグ。

『緋弾のアリア』と『蒼の月姫ルナ』。

そして、二人のパートナーである遠山キンジと八神和麻。

四人が奏でる緋と蒼の協奏曲はさらなるステージへと向かっていく。

 

「おーい!なんか見舞いに来た武藤が鍋の用意を持ってきたから鍋食べに行こうぜ」

 

「あら、本当?ならみんなもいかない?」

 

「え?いいの?」

 

「ここは病院ですよ」

 

「いいわよ。私が許可をとったから」

 

「流石、リアル貴族だな」

 

「まあ、ちょうどお肉もあったしいいんじゃない」

 

「よーし、今夜は鍋パーティだ!」

 

「「「「「「「「「「おおおー!!」」」」」」」」」」

 

しかし、今はひと時の休息を。

それが終われば、次へ、次へ、次へ!!

物語は終わらない。

 

The End of JUST a Prologue!!!

 

 

 

 

 

「では、彼女のことを頼んだよ」

 

「任せておけ」

 

「あなたの頼みなら断れません。彼女は私たちが責任をもって預かります」

 

「そして、必ず目覚めさせる」

 

「その言葉を聞けて良かった。君たち姉妹は約束を絶対に破らないからね。僕じゃもう時間がないから。では、僕はこの辺で」

 

「ええ。お気をつけて」

 

「いい旅を」

 

「ああ」

 

Go For The Next!!!!!

 

 

 

 




次章予告(仮)
退院した和麻たちは各々の夏休みを満喫する。
家族との時間を過ごしたり、実家に帰省したり、プールに行ったり、肝試しをしたり。
しかし、そんな和麻たちに不審な影が?
やがて迎えた夏休み最後の日。
屋上に呼び出された和麻の前に、現れる一人の少女。
彼女の口から衝撃の言葉が紡がれる。

「私も和麻さんの妹です」

夏休みだというのに、あまり休まる暇がない。
賑やかすぎる彼らの夏が始まる。
次章「夏休み(サマーバケーション)


やっとエピローグまでできました。
思えば、書き始めてもう五か月です。
こんなに早くここまで書けるとは思いませんでした。もっとかかると思っていたのですが。
次章は夏休み。
あまり事件とかはなく、面白い話を中心に書いていきたいです。
それでは
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