緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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夏の山

いろいろあった旅行から一週間。

 

いや、本当にいろいろあった。

旅行中に旅館に泊まったら、遥香に媚薬を盛られて、何とかしようと流無のところに逃げ込んだら……見なかったことにしようと誓った。

 

旅行の疲れを癒した後、なぜか俺と流無は都心から外れた山にいた。

しかも、その山の雰囲気というのが観光名所のような山ではなく、山の周囲の林にはグルリと鉄線で囲まれており、立ち入り禁止の立札が無数に立ち並び、山の中は鬱蒼と茂った木々が生い茂り、昼間だというのに薄暗いという危険な感じが満載の山だ。

そんな山の中、大きく開けた川のほとりに俺達だけでなく強襲科(アサルト)所属の1、2年生が勢ぞろいしている。

 

「おおっし!全員そろったな!」

 

そんな俺たちの前に立つのは、長身のポニーテールを振り回し、右手に化け物拳銃を持った女傑、蘭豹。

言うまでもなく強襲科(アサルト)の人間バンカーバスターだ。

 

「今から強襲科(アサルト)のサバイバル演習合宿はじめんぞ!!」

 

蘭豹の大声とともに、右手の拳銃から銃弾が放たれ、山の中に轟音が響き渡る。

そう、今日から二泊三日で俺達強襲科(アサルト)のサバイバル演習合宿、通称『地獄めぐり』が始まるのだ。

この山は東京武偵高などの武偵機関が所有している山で、たまに武偵たちが訓練をしに来るのだ。

 

「さて、その前にお前らに新しく強襲科(アサルト)に入ってきたやつを紹介すんぞ」

 

蘭豹の言葉と同時に、全員の前に出てきたのは見慣れた根暗みたいな顔つきの男子。

 

「遠山キンジだ。今日からもう一度強襲科(アサルト)に入る。その、できればよろしく」

 

そう、先日退院したばかりの遠山キンジだった。

イ・ウーでの戦いから、キンジ自身思うことがあったのか、転科届を入院した初日から出しており、それが最近受理されたのだ。

で、すでに強襲科(アサルト)の一員だからと、毎年恒例のサバイバル合宿にやってきた。

そして、そんなキンジに対して、我ら強襲科(アサルト)の二年生は・・・。

 

「うおおおおおおお!!!」

 

「キンジ!!帰ってくるって信じてたぞおおお!!!」

 

「これで強襲科(アサルト)の四天王がそろったぜ!」

 

「八神、蒼神、神崎。そして、キンジがそろえば怖いもんなんてねえぜ!」

 

王者(キング)の凱旋じゃああああ!!」

 

「K・I・N・J・I!K・I・N・J・I!K・I・N・J・I!」

 

狂喜乱舞だった。

もともと仲間意識の強い連中だが、ことキンジに関してはあいつの持つカリスマ性から、普通のやつ以上の人気を持っているからな。

現に、蘭豹に蹴りだされたキンジを、俺達から話を聞いていた一年生まで混じって胴上げしている。

ああ、キンジが目を回しかけているぜ、ざまあwww

 

 

 

 

 

ひとしきり騒いだ後、蘭豹により物理的に沈静化された。

 

「よっし。まずは寝床の掃除じゃ。別れた班に振り当てられたコテージを掃除して来い。二年は一年にいろはをしっかり叩き込めよ!」

 

俺達は蘭豹たちが勝手に決めた班に分かれる。

ちなみに、この班は普段から組んでいるやつや戦兄弟姉妹で構成されている。

俺達の第十三班のメンバーはというと…。

俺、八神和麻。

蒼神流無。

遠山キンジ。

神崎・H・アリア。

柳生神楽。

間宮あかり。

火野ライカ。

いつものメンツ+戦妹(アミカ)チームだった。

 

で、いま俺達は振り当てられたコテージの前にいる。一階だけだが、俺たちが寝泊まりするのに十分な広さがあることが見てわかる。

 

「ねえ」

 

「なんだ?アリア」

 

コテージの前に立つアリアが、キンジに話しかけ、それにキンジが答える。なんの変わりのないいつものやり取り。もっとも――

 

「何で、あんたたちはそんなに離れているのよ?」

 

俺、流無、キンジがアリアたちのいるコテージの扉から数メートル離れた位置にいることを除けば。

 

「気にしないで~。早く開けちゃいなさいな~」

 

「いや、気にしますよ!」

 

流無の言葉に、間宮が突っ込む。

まあ、俺たちがこうもあからさまに距離を取っていたら不審に思うよな。

でもな。これはしょうがないんだ。

 

「いいか。俺たちは蘭豹から掃除道具をもらってくるから、先に入っていてくれ!」

 

とりあえず、俺がもっともなことを言うと、四人は納得して、アリアがドアに手をかける。

そして、四人はコテージの中に入っていった。

 

「さて、今年もまた始まったな」

 

俺が神妙な声でつぶやくと、ほかの二人もうなずく。

 

「ああ。強襲科(アサルト)に入ったらこれからは逃げられないからな」

 

「私も去年はこれでひどい目にあったわ」

 

「まあ、これは一種の恒例みたいなもんだ。新入生や編入生の宿命ってやつだ」

 

「そうだな」

 

「そうね」

 

俺達三人は思い出す。

去年のサバイバル合宿で、先輩たちに背中を押されて入ったコテージの中。

しばらくはその薄暗い中でどうしたものかと悩んだものだが、すぐにやつが現れた。

カサカサと物音を立てながら、暗闇の中をうごめく、黒光りする体を持った、三億年もの太古から生き続ける、やつらの大群が……。

 

 

 

 

 

「「「「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!????????!!!!!!!!!!!??????????????!!!!」」」」

 

 

 

 

 

コテージの中からここまで響いてくる四人の悲鳴。そして、鳴り止まない銃声。ドカンドカンと何かが中で暴れまわる音。

それは他のコテージからも聞こえてくる。

 

「「「今年も出たか(わね)」」」

 

 

 

 

 

――ジョニーさんが――

 

 

 

 

 

ジョニーさんと言っているが要するにあれだ。

ゴキブリだ。

俺達の間じゃ、それをジョニーさんと呼んでいる。飲食店でも太郎とか、Gとか隠語で呼ばれているしな。

コテージの中から出てきたアリアたちはぼろぼろだった。

どれくらいボロボロだったかというと、アリアが俺たちに怒って風穴攻撃を仕掛ける元気もなかったくらいだ。

まあ、四人が暴れた成果はあったというか、コテージの中のジョニーさんはあらかた駆除されていた。

残りは俺たちが殺虫剤で片付け、死骸も処理した。

いやー、でも毎回大変だな。

なんか、毎年の通過儀礼みたいなもんで、去年なんて俺たちが中に入ってからは本当に大変だった。

流無がD・E乱射するわ、俺も風を暴走させるは、俺たちに巻き込まれてキンジがぶっ飛ばされるわ。

コテージの中にあるものは全部防弾加工されているから、ちょっとやそっとじゃ傷つかなかったのが幸いだな。

で、毎年の恒例行事を終えたころにはすっかり日も暮れていた。

 

「じゃあ夕食に行くぞ」

 

俺達の推薦で、復帰早々副班長に任命されたキンジが号令をかける。

班長?

アリアだけど今はジョニーさんとの決戦で仕切る元気もない。

一年生三人もそんな感じだ。

 

「サバイバル演習じゃ、この山の中で自給自足だ。調味料はあるが他の食材は俺達で取ってくるぞ」

 

これが地味にきついんだよな。なにせ、暗い山の中で食べられるものを探すのは骨が折れる。

しかも、この山は何気に心霊スポットで有名なのだ。

昔は墓地だったとか、戦時中に防空壕に避難した多くの住人が空襲で焼き殺された何て云う噂もある。

実際、過去の合宿で心霊体験をしたという人が何人もいるとか。

 

「三組に別れる。和麻と神楽、アリアと間宮と火野、俺と流無っていう組み合わせで行く」

 

この組み合わせは順当だ。

戦徒(アミカ)の面倒を見るのは俺たちの義務だからな。

 

「じゃあ、解散だ。二時間後に集合」

 

 

 

 

 

「どういう風の吹き回し?」

 

「何がだ?」

 

暗い山の中を流無の気配察知を頼りに進んでいると、流無がキンジに話しかける。

 

強襲科(アサルト)なんていうまともじゃない集団から出て行って、こんな普通じゃない武偵高(ところ)からも出ていくっていつもぼやいていたじゃないの」

 

「…いろいろあったんだよ。いろいろな」

 

そっけなく返すキンジ。

 

「まあ、キンジ君が前向きになってくれたのはいい傾向だと思うけれどね。前よりもいい顔してるよ」

 

「そうか?」

 

「うん。前なんて根暗が服を着て歩いているみたいな顔してたから」

 

「なんだそれ。意味が分からんぞ」

 

「そのままの意味よ。ま、そんなことより、このまま前向きにどんどん進んで、アリアちゃんに告っちゃいなよ!」

 

「はあ!?なんでそうなるんだ!」

 

「いや、だってあなたたちって最近デキてるって噂よ。病院でも毎日顔を合わせていたって聞いているし、実際私も何度も見ているし」

 

「っ!?」

 

流無の言葉にキンジはビクリッと肩を震わせる。

明らかに動揺していた。

 

「あらあら♪その御様子では?」

 

「さっさと行くぞ!」

 

面白そうに笑う流無に対し、キンジは照れ隠しのように歩いていく。

それを笑みを浮かべたまま追いかける流無。

二人の間に嫌な空気は流れない。

なぜなら和麻ほどじゃないが、流無に対しキンジはある程度の好意を信頼と一緒に持っているからである。

まあ、それ以上の愛情を別の人間に持っていることにキンジ本人は気づいていないが。

 

 

 

 

 

「こうして師匠と話をするのは久しぶりだな」

 

「そういえばそうだな」

 

暗い闇の川の中に入り、魚を取りながら神楽に話しかけられ、そういえばそうだなと思う。

最近はいろいろあってかまってやれなかった。

 

「どうだ?間宮たちとのチームは」

 

「結構楽しいな。この間は名古屋武偵女子校のやつらと知り合いになった」

 

名古屋女子(ナゴジョ)か。タカ派の学校じゃない、か!」

 

川の中で動いた気配を頼りに、腕を振りぬく。

鉤爪みたいに構えた手に魚の体が当たる感覚を感じ、それを逃さないように上に上げる。

魚は川を飛び出し、岸にボトリと落ちる。

それを急いで取りに行く。

放っておいたらほかの班のやつに横取りされかねない。

 

「確かにタカ派の学校らしく、『強気は美なり(ストロング・イズ・ビューティー)』という校訓を強固に体現するような奴らだったが、そこまで嫌な奴らではなかったぞ。自分たちに非があったことを素直に謝る潔さもあった」

 

「そうか。なんにしてもよかったじゃないか。友達が増えて」

 

「…そうだな」

 

 

 

 

 

「アリア先輩。遠山先輩と何かあったのですか?」

 

「ぶっ!い、いきなりなににょ!?」

 

山のふもとでアリアとあかりのAA(ダブルエー)コンビが山菜を積んでいた。

 

「いえ、最近お二人がよく一緒にいるという情報を聞いたので」

 

「わ、私とキンジが一緒にいるのは当然にょ!ぱ、パートナーなんだから」

 

顔を真っ赤にしてアリアは答えるが、あかりはじとっとした目でアリアに目を向ける。

 

「いやいや、最近の先輩たちはどこからどう見ても付き合っているっていう噂でもちきりですよ?」

 

近くで自然薯を掘っていたライカも穴に首を突っ込みながら話に参加する。

 

「以前よりも親しげですよね~。なんていうか間に壁がなくなった感じですかね?」

 

「確かに。でも、アリア先輩を助けに行く時の遠山先輩を見ている感じ、絶対愛されてますよ。それを見ている私たちの間じゃ、もう決まったって言われていますよ」

 

それからしばらく、アリアは後輩二人から周りから見た自分たちの様子を聞かされ続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

暗闇に閉ざされた山の中。

そこに一つの影がうごめいていた。

ガシャガシャと、金属同士がこすれる音を鳴らしながら、それは歩いていく。

そして、見つけた。

対象を。

遥か先で、夜の月の光に照らされた美しい髪をなびかせながら歩く少女を。

その少女に向けて、影は……駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

流無がその攻撃をかわすことができたのは、ほとんど直感による危機回避能力だ。

ただ、いきなり襲いかかってきた悪寒から、その場から弾かれたように駆け出した。

そのコンマ一秒後に、自分の頭のあった部分を何かが掠めたのだ。

 

「くっ!」

 

「流無!」

 

流無より、少し前を歩いていたキンジはいきなりの流無の行動に驚くも、すぐさま襲撃されたのだと判断し、銃を抜く。

流無も起き上がりながら、D・Eを抜き、襲撃者に構える。

襲撃者は異様な姿をしていた。

顔はすっぽり覆うようなフルフェイスの頭部装甲(ヘッドギア)で隠され、その両腕は黒い巨大な機械の小手で覆われており、そのまま下げれば地面につきそうな長さだ。

背中には、推進機(スラスター)のようなものまでも背負っている。

 

先端科学兵装(ノイエ・エンジェ)?」

 

襲撃者の姿を見て、流無が真っ先に思い浮かべたのは先端科学兵装(ノイエ・エンジェ)と呼ばれる兵器だ。

各国が秘密裏に開発している其れは、ISの技術の流用により格段に性能を向上させている。

表向きではISが最強の兵器だが、実際は男女関係なく、コアの絶対数という限界が全くない先端科学兵装(ノイエ・エンジェ)こそが国の兵器として重宝されている。

 

「いいや」

 

流無の言葉にこたえる襲撃者。

 

「惜しいけれど、これは先端科学兵装(ノイエ・エンジェ)ではない。やはり部分展開などではなく、完全展開して臨むべきだったわね。そうすればすぐにでも終わったのに」

 

襲撃者の体が光に包まれる。

やがて、その光が収まると襲撃者が真の姿を現した。

不釣り合いに大きいと思われた両腕の装甲だが、同じく両足に現れた装甲でちょうどいいバランスになっており、体にも機械の鎧が現れた。

その色は黒銀。

闇の中において、なお黒く輝く黒銀の鎧をまとう襲撃者。

 

「IS《黑鐵(くろがね)》。少し、相手をしてもらうわよ」

 

まさかのISの登場にキンジと流無は驚きながらも、警戒を続ける。

いかに、裏の世界では兵器として落第という烙印を押されたISといえど、圧倒的な性能を持っていることに変わりはない。

シールドエネルギーにより生まれる防壁の前には拳銃の弾丸などほとんど無意味であり、唯一効きそうな武偵弾も二人は持っていない。

ゆえに流無はさっさとD・Eをしまい、自身の最強の槍、蒼霞閃を組み立て構える。

キンジも後ろに下がる。

ISとの近接戦闘など、キンジには無理なので判断はいい。これで応援を呼ぶことができる。

 

「「……」」

 

無言で対峙する流無と襲撃者、黑鐵。

流無は蒼霞閃を構え、黑鐵は両手で格闘戦の構えを取る。

 

「―――っ!」

 

「はっ!」

 

先に動いたのは流無だった。

突き出した蒼霞閃の切っ先が水を纏い、通常の長さよりも長くなり、黑鐵に襲い掛かる。

しかし、それを体を横にすることでかわした黑鐵はそのままスラスターによる加速で接近するとその拳をぶつける。

人が反応できる速度を超えて振るわれるその拳を、流無は蒼霞閃を構えた時から発動させていた右目の『バーミリオンの瞳』に表示されていた攻撃起動予測から、事前に回避する。

そのまま、無防備な胴体に流無は気を込めた発頸をはなつ。

鎧を通して襲い掛かる気の衝撃は、対IS戦において絶対防御などを無視して操縦者にダメージを与えられるので有効な攻撃だ。

しかし、黑鐵はその攻撃を一瞥すらせずに体をひねることで回避する。

そのまま回避した勢いを乗せた拳を放つが、流無が展開した水の防壁に阻まれる。

 

「なるほど。見事な防御力だ」

 

「おほめに頂き、ありがとうね!」

 

黑鐵の称賛に、流無は蒼霞閃の一突きで答える。

防壁を通して放たれた突きは、防壁の水を纏い、鋭さと威力を増しながら迫る。

しかし、それすらも黑鐵は回避し、逆に左手で水の槍をつかむ。

 

「!?」

 

まるで、あらかじめそこに槍が来ることが分かっていたかのような動作だった。

其れゆえに、バーミリオンの瞳の表示(ガイド)も予測できないようなタイミングでつかまってしまった。

 

「終わりだ」

 

黑鐵は右手にU字磁石のような機械を取り出すと、それを蒼霞閃の柄に着ける。

すると、バチバチと電流が流れるような音が鳴った。

流無は黑鐵の行動に疑問を覚えるが、それはすぐに驚きに変わった。

蒼霞閃がまばゆい光を放ち始めたのだ。

流無が自身の武器を呆然と見る中、槍から光るクリスタルが現れる。

ひし形をしたそれを黑鐵は掴み取る。

 

「それ…は?」

 

流無の口から洩れたつぶやきに、黑鐵は淡々と答える。

 

「お前の蒼霞閃の内部に眠っていたもの……霧纏の姫君(ミステリアス・プリンセス)の―――コアだ」

 

 

 




合宿編始まりです。
ジョニーさんはアスラクラインのネタです。一度やってみたかった。
そして、強襲科(アサルト)に戻ってきたキンジ。彼には今後の突っ込み役になってもらいます。
最後に襲撃してきたIS《黑鐵》。これもアスラクラインのやつがモデルです。
黑鐵以外にも、今後にもう一体出す予定ですのでお楽しみに。
それでは!
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