緋弾のアリア×IS 緋と蒼の協奏曲   作:竜羽

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知ってるけど知らない人たち

早朝俺達は千冬姉によってアリーナに呼び出されていた。

 

「朝から呼び出されたが、何の用事だろうな?」

 

朝の訓練が出来なかったのか、多少不機嫌そうな箒に問いかけに俺、織斑一夏は、簡潔に答える。

 

「俺は大体見当がついている」

 

昨晩あった、和麻と流無の事だと見当がついていた。

 

「そう言えばさ?昨日一夏部屋に居なかったよね?どこに行っていたのかな?かな?」

 

「それは私も気になっているわね。教えなさい、一夏」

 

「シャル、鈴……そのハイライトの消えた目で俺を見るのは止めてくれ。っていうか何で俺が部屋に居なかった事を知っているんだ?2人とも」

 

光の宿ってない目で俺を見る2人が死ぬほど恐ろしく、俺は反射的にラウラの後ろに移動した。

 

「2人とも余り一夏を苛めるのではない。恐らく一夏は教官に拉致されたのだろう?違うか?」

 

少々言動があれな時はあるが、基本常識人で俺を助けてくれるラウラの言葉に頷く。

 

「一夏を手にしたいのは判るが、力づくや暴力行為はいいとは思わんぞ?」

 

ラウラが人徳を説いている。うう……素晴らしい最近俺の周りに居る人の中で数少ない常識人であるラウラに感謝していると、

 

「やっほー♪一夏君」

 

「楯無さん、それに簪も」

 

同じ様に呼ばれたのか、楯無さんと簪、それに、

 

「朝からなんでしょう?」

 

「私……駄目……眠い」

 

「しゃんとしろ、情けない」

 

首を傾げながら歩いてくるエリスさんとふらふらと歩いてくるシェンさん。それにそんなシェンさんに怒鳴るヴィクトリアさん。これで今IS学園に居るネクロについて知っている人間は全てそろった事になる。

 

「朝から呼んでしまって申し訳ないな」

 

俺達が揃ったところで龍也が歩いてくる

 

「千冬姉は?」

 

「もうじき来る。さて朝から来てもらったのは昨晩、IS学園内にネクロが現れた。それも最高レベルのLV4が1体だ」

 

箒達が驚く気配がする。一週間ほど前にネクロに襲われ、その後龍也からネクロ、それに魔導師について聞いたが俺達の常識の範囲外の敵が現れたと言う事に思わず身構える。

 

「そのネクロは?」

 

「撤退した。どうやら標的の人間と共にこの世界に転移してきたばかりの様でな。弱っていたせいか私が行くと同時に即座に離脱した」

 

「標的の人間?お前が言っていた漂流者と言うやつか?」

 

ラウラの質問に龍也が答える。

 

「ああ、そうだ。2名この場所に強制的につれてこられたのでな。保護させて貰った。皆に来てもらったのはまぁ顔合わせの為だ」

 

龍也はそう言うと、

 

「入って来ていいぞ。和麻、流無」

 

そう声掛けすると昨晩会った2人組みと千冬姉がアリーナに入ってくる。

 

「!楯無さんと同じ顔?」

 

「驚きですね。多少違うところはありますが殆ど瓜二つですね」

 

楯無さんと流無さんを見て驚いている箒達の前に、和麻と流無さんが立つ。

 

「八神和麻だ。短い間だがよろしく頼む」

 

「蒼神流無よ、宜しくね♪」

 

自己紹介する2人に箒達が自己紹介しようとすると、

 

「箒にセシリアは俺達の知っている2人に似ているが、後の面々はどうも大分感じが違うな。特に鈴とシャルロットは……駄目だ」

 

「駄目って……ああ、なるほど。遥香ちゃんに似ているから怖いのね?」

 

「ああ、怖い。あのハイライトの無い目。凄まじい瘴気……何が如何してああなったのか俺にはさっぱりだ」

 

はああ……と溜め息を吐く和麻に、

 

「ちょっと待って。なんで私の事知ってるのよ?私はあんた達の事知らないわよ?」

 

鈴が不思議そうな顔をして和麻に尋ねると龍也が、

 

「この2人は並行世界の人間だからお前達の事を知っている。まぁ大分違うようだが……?」

 

並行世界。延々と説明されたが俺には全く理解出来なかった世界の事か……俺がそんな事を考えていると、

 

「で。流無?なぜ簪を抱き抱えている?」

 

「うーん、昔の可愛い簪ちゃんを思い出してねー♪」

 

「は、放して」

 

「ちょっと!簪ちゃんは私の妹よ!!」

 

簪を抱き抱える流無さんとその腕の中から簪さんを奪取しようとする楯無さん。なんと言うか混沌としていた。

 

「兄ちゃーん!!!」

 

「ごふうっ!!!」

 

俺達が困惑していると楽しそうなはやてさんの声がして、龍也の体がくの字に折れる。

 

「んーやっぱ1日の始まりは兄ちゃんに抱きつかんと始まった気がせぇへんなあ♪」

 

「ぐ。肋骨が軋んでるッ!?!?どんな力で締め上げてるんだお前は!!!」

 

「嫌やな~兄ちゃんの肋骨をへし折って監禁しようなんて考えてへんで♪」

 

ミシッ!!ミシッ!!!!

 

龍也の骨が軋んでいる音がする。あれは本気でへし折るつもりだ。

 

「……ぐっ!?なんでここは遥香と同類の人間ばかりいるんだ!!!ここは魔窟か!?」

 

和麻が青い顔で滝のような汗を流している……きっと彼にも魔王が居るのだろう。

 

「はやて!貴女は何を考えているのです!早く龍也さんを放しなさい!!」

 

「黙れ、兄ちゃんは私の何や、誰にも渡さへん。なのはちゃんとフェイトちゃんは始末した。後はあんたやけど……いっぺん死ぬか?」

 

ああ、どうりではやてさんに制服の赤い何かがついていると思った。それが何かは理解したくないけど……。あとエリスさん。はやてさんに喧嘩を売るのは止めた方がいい。命を落とす事になる。俺がそんな事を考えていると、

 

「一夏、つーかまえた♪」

 

「ふぐうッ!!!肋骨が!?」

 

可愛らしい感じで言っているがそんなのを微塵も感じさせない握力で背後から抱きしめられる。

 

「千冬姉!肋骨!肋骨が軋んでる!!!」

 

「大丈夫、直ぐにへし折って意識を絶ってやる。その後は私の部屋でお楽し……ごほん!治療を施してやろう」

 

「緊急事態だ!助け……はっ!?」

 

箒達に助けを求めようとして気付いた。既に何らかの攻撃を受けたのか昏倒している箒達の姿に。

 

「ふっふ、一撃で意識を刈り取る事など容易い」

 

「あんたはそれでも教師か!!!」

 

生徒に暴力を振るう事に何の罪悪感も無いのか!!誰だこの人を教師にしたの!!致命的な人選ミスだろ!!!

 

「さてと。では……」

 

ミシッ!!ミシミシッ!!!!

 

「ふぐうっ!!!!万力のような力が!!肋骨がマジで軋んでる!!!!」

 

やばいマジで折られて意識を失うぞ!?

 

「このブラコンがアアアッ!!!」

 

「シッ!!!」

 

「ちいッ!!!」

 

鈴の強烈な八極拳の一撃。たしか立地通天砲だったか?それと目にも止まらぬ速さの4連撃のジャブを繰り出すシャル。流石にそれを裁ききれないと判断したのか俺を抱き抱えたまま後退する千冬姉。

 

「貴様らはそんなにも私から一夏を奪いたいのか?」

 

「当然!」

 

「僕は何が何でも一夏が欲しい」

 

その返答を聞いた千冬姉は俺の首筋を一突きする。

 

「うっ……し、痺れ……」

 

身体が痺れて動けない俺を安全圏に運んだ千冬姉はスーツの上着を脱ぎ、拳を鳴らしながら、二人に威圧感を放ち始める。

 

「いいだろう……ならば貴様らはここで死ねッ!!!」

 

「「上等ッ!!!」」

 

何故か始まってしまった乱戦。俺は、いるかどうかも分からない神様に切実に願う。

 

(もうどうでもいいから、平和な時を俺に下さい神様)

 

ドンッ!!!バキッ!!!

 

鈴の踏み込みの音や復活したであろうなのはさん達とはやてさんの戦闘の音を聞きながら平和が欲しいと心の底から願った。

 

 

 

 

 

「お前も苦労しているようだな。龍也、一夏」

 

「判ってくれるかね?和麻」

 

「お前も俺達の同類だろう?」

 

乱戦終了後、人気の少ないIS学園の食堂で俺と龍也それに一夏はそんな話をしていた。乱戦をしていたメンバーは服が汚れたとか入ってシャワーに行っている。

 

「あはは、大変だったね。和麻」

 

「そうね、大変だったわね和麻君」

 

俺の両隣に座っている楯無と流無に言われる。目の色と髪の長さ以外殆ど違いの無い2人がダブって聞こえ正直辛い。

 

「……ほんとうにお姉ちゃんとそっくりなんですね……流無さん」

 

「流無で良いわよ?簪ちゃん。私はまぁうーんなんていうのかな?うーん……色々有って記憶を失った更識楯無で、同一人物……なんだよね?龍也」

 

「ああ、魂の波長が全く同じだからな。姿こそ違えど、お前と楯無は全くの同一人物だ。まぁお前は魔力があるから同一人物とは完全にはいえないがな」

 

龍也が平然とそう言うが……

 

「普通はそう言うのは良く判らない物じゃないのか?」

 

風の精霊が教えてくれるから俺は流無と楯無の違いが判るが、普通はそう簡単には判らないのでは?

 

「ふむ。普通はそう簡単にはわからないだろうが。私はこれでも神の名を冠する魔導師だからな。それくらいは判る」

 

「神?……そういえばバルバドスが神王陛下とか言っていたが……まさか本当に神の王とか言わないよな?」

 

(「いやーそれがそのまさかっぽいのよね」)

 

頭の中でシャーリーの声がする。いやいや神の王とかありえんだろ?

 

「ふむ、神王と言うのは一種の称号だ。これを見てくれるかね」

 

龍也が手の平に力を集中させると虹色の魔力の球体が現れた。

 

「これは聖王の魔力と言って。私の住む世界の王族の証とも言える魔力何だが、私の場合は他の魔導師の魔力を上乗せさせたり、技能を自分にトレースできる。歴代のベルカの王で私と同じ者は1人しか居らずその人物が名乗っていた称号を引き継いでるだけだ」

 

契約者(コントラクター)と同じ様なものだろうか?いや、契約者(コントラクター)は精霊王などの超越存在(オーバーロード)に認められ、契約を交わした者の称号だから、違うな。

 

「さて、では本題なのだがね。君達はまずバルバドスに狙われている。これはとても不味い」

 

「そんなに強いのか?アイツは」

 

「ああ、強い。遠近万能の上にタイムラグ無しの連続転移。真っ向から戦うのは正直難しいだろう」

 

連続転移……ピンと来ないが超能力(ステルス)でいうところの短瞬間移動(イマジナリ・ジャンプ)の様なものだと思えば良いか。

 

「で、そんな奴のターゲットになっている和麻と流無には対ネクロ用の戦闘を覚えてもらう必要がある」

 

対ネクロ。

確かに奴らと戦うにはそれなりの戦闘方法を知らないと駄目そうだ。切り札を残していたとはいえ、俺と流無の全力で戦って漸く殲滅できたがあれ以上の数でこられると正直きつい物がある。

 

「それに見たところ君達は自分の力を御し切れてない。違うか?」

 

その問いかけに流無が、頷く。

 

「ええ、私と和麻が今の力に目覚めたのはつい最近の事で、正直扱い切れてないわ」

 

「そこでだ、昨日話したとおり魔術の指導に合わせて稽古をつけようと思う。朝食の後早速始めたいと思うのだが、良いかね?」

 

願っても無い申し出に俺と流無は即座に頷いた。

 

「では朝食後に訓練を始めよう。織斑先生にアリーナの使用許可は貰っている」

 

「ねえ!ねえ!見学とかあり?私見て見たいんだけど?魔導師とかの修行方法とか!」

 

「私も見てみたい」

 

「俺もだな」

 

楯無たちがそう言うと龍也は、

 

「構わんよ。興味を持つのは当然の事だからな」

 

「「ふいーすっきり」」

 

シャワーを終えた面々が食堂に入ってくる。

 

「では朝食を作ろう」

 

「お前が作るのか?」

 

俺が思わずそう尋ねると龍也は、

 

「そうだが?今のご時世、男といえ料理の一つは必須技能だ。まぁ楽しみにしていたまえ」

 

その自信満々の表情を見るとさぞ美味しい朝食にありつけるだろう。

 

「はーい!私甘い玉子焼きを希望します」

 

「私は……野菜の多い味噌汁」

 

「了解した、では今日の朝食は和食だな。では行って来る」

 

龍也はそう言うとキッチンに向かっていった。俺は、一夏戸口の言い合いを再開する。

 

「俺の妹ははやてに良く似ている」

 

「そうか、ではとても危険なんだな。俺の千冬姉と同じだ」

 

「だが、俺の世界の織斑教諭はとても真面目でブラコンではない。抑えているだけかもしれないが」

 

「……おれ、そっちの千冬姉がいい……」

 

ボロボロと涙を流す一夏。きっとこいつはこいつで苦労してるんだな。俺は始めて自分と同じ悩みを共有できる男子に出会ったことに感動を覚えていた。

 

(そういえばこの世界のアリアとかってどうなってるんだろう?)

 

ふと気になりダメもとで携帯で検索してみる(何で携帯が使えるんだとかは突っ込まないでもらいたい)と、

 

(おいおい!!遠山・H・アリアって!?あいつら結婚してるのかよ!?しかも歳は28歳!?)

 

この世界にもアリアとキンジはいたが歳が違い、更には結婚していた。

 

「流無、これ見てみろよ」

 

「何々?嘘!?……アリアとキンジが結婚してる!しかも……駆け落ち!?」

 

何でもホームズ家の面々にキンジとの結婚を反対されたアリアとキンジは駆け落ち同然にイギリスから逃亡、その後日本で式を挙げ、いまでは子宝にも恵まれているそうだ。

何でこんなことが載っているのかはつくづく疑問だが。

 

「信じられねえ。あの2人が……」

 

驚きながら携帯を操作する、すると更に信じられないものを見つけた。

 

「遠山キンジと遠山・H・アリアの両名が新たな教育団体の発足を発表、独自の法によって保護された武装探偵を養育する学園。武偵高を設立……この世界ではキンジとアリアが武偵高を作ったのか……」

 

教務員の一部が乗っていたのでそれを見る。どうやら俺が見ていたのはこの世界の武偵高のホームページみたいだ。

 

「レキに理子……それに白雪にジャンヌ……なんだよ。この世界にも皆居るのかよ」

 

皆俺が知るより年上だが確かに存在していた。特にレキには驚かされた背が凄く延びとんでもない美人になっていた。

 

「世界は違えど仲間がいるのはいいなあ」

 

「そうね。和麻」

 

この世界ではキンジ達は居ないと思っていたが確かにいたのだ、そう思うと少し嬉しかった。少し感慨深い気持ちになり携帯を弄っていると、

 

「出来たぞ」

 

「随分早いな」

 

作り始めて20分ほど……あまりに早い。

 

「いや。まあ魔法を使ったしな……」

 

「良いのかそれは?」

 

魔法を使ったって。随分庶民的な魔法使いだな。

 

「良いさ、それに私は良い言葉を知っている。ばれなければ犯罪ではないのだよ?」

 

「お前のこと常識人だと思っていたんだけどなあ」

 

どうやら龍也も龍也で少々変わり者のようだ。

 

「まぁ味は保障する」

 

運ばれてくる朝食を見る。野菜のたっぷり入った豚汁に鮭の塩焼きにキュウリの浅漬けに玉子焼き。典型的な日本の朝ごはんと言った感じだ。

 

「では頂きます」

 

「「「「頂きます」」」」

 

皆で手を合わせてから俺はまず目の前に豚汁に手を伸ばした。

 

「!美味いな」

 

何時かどこかで食べたような……そんな懐かしい気分になる味噌汁に思わず賞賛の言葉が出る。まあ、母親の味なんて無縁だったがな。あれを母親とは呼びたくない。もし呼んでしまったら、日本全国の母親に土下座しなければいけなくなる。

 

「本当凄く美味しい、お母さんが作ってくれたような……そんな味」

 

流無も美味しいと言う。龍也は、

 

「そう言ってもらえるとありがたい。お分かりもあるドンドン食べてくれ」

 

俺はその言葉に頷き朝食を再開した。どれもこれも簡単なメニューな筈なのにとても美味しかった。

 

「あのこれのレシピとか教えてもらえないかしら?」

 

「構わない、今度私が書きとめてあるレシピのメモをやろう。流無」

 

「ありがとう!」

 

俺と流無は朝食後の訓練に備えて少し多めに朝食を食べた。魔術を扱うのはそれだけ体力を消費する。しっかり食べておかないと動けなくなる。

 

(それに、異世界の魔術師にも興味がある)

 

俺はそんな事を考えながら朝食を食べ終えた……だが俺は八神龍也と言う男の実力をあまりに低く見すぎていた事を知るのは訓練の後の話だ。

 

 

 




次回は戦闘です。果たして二人は勝てるのでしょうか?
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