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「特別面会だぞエース。誰が来たと思う?この中じゃレイくらいしか面識ねぇから分かるわけないんだが。」
エースとレイが収監されているフロアにハンニャバルがやって来た。マゼランとモモンガ中将、ドミノ副看守長も一緒だ。目的はハンコックのエース面会である。エースの公開処刑で本部に招集を受けているハンコックがエースと面会したいと言い出したからだ。
もっとも、これはハンコックがルフィをこのインペルダウンに侵入させるための口実であり、ハンコック自身エースとは初対面なのだが。
「(この男がレイの息子・・・ルフィの兄か。なるほど、確かにそこらの男とは違うようじゃ。)」
ハンコックが来たというハンニャバルの言葉で沸き立つ囚人の声を聞きながらハンコックはエースを値踏みしていた。世界一の美女である自分が面会しに来ても動じることなく獣のような鋭い視線を向けてくることから間違いなくエースもレイの息子だと確信していた。やれこっち向けだの、やれ檻に入ってこいだのとうるさい周りの囚人達とは大違いだ。
「不動の女帝がこの時に限って政府に手を貸すとは・・・!七武海の称号でも惜しくなったか!?」
「・・・そなたがジンベエか。そうキバを向くな。・・・レイ。そなたまで一体どうしたのじゃ、らしくもない。」
「・・・ちょっと熱くなってジンベエと一緒に反対したらこの有り様。もう少し冷静になれば良かった。」
ジンベエに強く睨まれたハンコックは視線をレイに向ける。エースの隣で張りつけにされたレイは幾多の拷問を受けたのかいつもの白い肌が血で汚れていた。頭にも血の跡があり、ひどい有り様だ。ハンコックの胸が痛くなる。
ちなみにミクは猫状態になってレイの服の中に隠れていた。
「・・・確かにこの態度は頂けんな。」
「わっ!しょ、署長!ちょっと待って!それ私達も危ねぇ!!わ~~!!!」
面会中だというのにハンコックをよこせという囚人の声に頭来たマゼランは毒の塊を竜の形に出す。マゼランは『ドクドクの実』の毒人間で毒を自在に操ることができる。
竜の形をした毒は檻へと侵入し、囚人の一人に直撃する。この"毒竜(ヒドラ)"の毒は麻痺性の神経毒であり、身体中に尋常じゃない程の痛みが回りやがて死に至る。マゼランは署長権限によりいつでも囚人を処刑できる権利とその力を持っていた。
「・・・ハンコック、今の話本当?」
「ああ、彼は兄上に怒られると憂いておったぞ。」
「・・・まったくあの子は・・・。」
マゼランが囚人を黙らせているとハンコックの面会が終わったようだ。ハンコックは振り返り、リフトの方へと歩く。モモンガ中将を含めその場にいた者はマゼランの毒から避難していたため、誰もハンコックが話していたことは聞いていない。
「・・・おいレイ。あいつ今何て言った?」
「・・・ルフィがここに来てるって。」
「・・・!あんたやエースさんがいつも話してくれる麦わらの子かい!無茶な・・・!!」
マゼラン達が去った後、レイはハンコックから聞かされた話をエースとジンベエにも話す。それを聞いた二人の顔は歪んでいた。
「レイさん。ルフィって誰?」
「私のもう一人の息子。エースの弟よ。」
レイの胸元からひょこっと顔を出したミクがレイに尋ねる。それに答えるレイの顔もまた心配と不安で歪んでいた。
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「熱つ!熱っちゃちゃ!!何だこの通路ハデに熱ぃ!!」
「熱気で肺まで熱いガネ!!」
「早く!早くここ抜けたい!!どっち行きゃいいんだ!?」
所かわってルフィサイド。無事インペルダウンに侵入したルフィは順調に歩みを進め、LEVEL4まで降りてきていた。LEVEL1で"道化のバギー"、LEVEL2で"Mr,3"、LEVEL3で"Mr,2・ボン・クレー"も仲間に加わっている。バギーとMr,3は一刻も早く脱獄したいみたいだが。
このLEVEL4は「焦熱地獄」であり、まるで火事のように炎に包まれたフロアである。焼けるような熱さに4人は苦しんでいた。
「お、いい匂いがする!あっちだ!行くぞ!!」
不意にルフィが走り出す。ボンちゃんの記憶ではルフィの進んだ方角には調理場があるようでボンちゃんも便乗して走り出す。
「"ゴムゴムの花火"!!」
迫りくる獄卒達をルフィはいとも容易く蹴散らしていく。それでも今のルフィは腹ペコ状態でまだ力を出しきれていないらしい。
軽快に進むルフィの目の前に突如紫色のプヨプヨした物体が落ちてくる。
「何だコレ?ゼリー?うんこ?」
「麦ちゃん!!上~!!!」
ボンちゃんに言われてルフィが上を見上げると上からドスゥンとマゼランが落ちてきた。
「マ、マゼラン!!?」
まさかの監獄署長登場にボンちゃんが目を飛び出させて驚く。ハンコックの面会が終わり、署長室に戻ったマゼランを待っていたのはインペルダウンに侵入者が出たという報告だった。顔にドロを塗られたマゼランはこうして署長自ら刑を下しに来たのだ。
「麦ちゃん!逃げるのよう!!そいつだけはヤバイのよう!!」
「"麦わらのルフィ"。この歴史ある大監獄に侵入するとは・・・。目的は分かっている。"ポートガス・D・エース"、及び"インフィニティ・D・レイ"の元へは行かせやしない。ここへ一体いつの間にどの様にして侵入したのか後でじっくり話して貰おうか。」
「それは死んでも言えねぇ!!」
「ふんっ、拷問にかけられる前の罪人は皆そう言うがな。」
マゼランと対峙するルフィにボンちゃんはマゼランと戦うなと叫ぶ。食料は諦めてLEVEL5へ逃げ込もうと提案するが、マゼランはその辺もすでに手を回しており、LEVEL5への階段はもちろん、LEVEL3への階段も固めていた。もうルフィ達に逃げ場はない。
「"毒竜(ヒドラ)"!」
「何だコレ!?毒か!?毒の塊か!?」
マゼランは体中を毒で覆い、"毒竜(ヒドラ)"で攻撃を始める。ルフィとボンちゃんは"毒竜(ヒドラ)"から走って逃げ回る。
ルフィの『ゴムゴムの実』は身体中がゴムのように伸縮自在になる能力だ。ルフィの技もそれに準じてゴムの伸縮性を活かした技であり、当然敵に触れないと攻撃することができない。そういった意味ではルフィとマゼランの相性は最悪だった。身体中が毒で触れないマゼランにルフィは一切攻撃することができない。
"毒竜(ヒドラ)"から何とか逃げ回るルフィ。そんなルフィにじれったくなったマゼランは毒を口の中でクッチャクッチャと噛み、ぷくぅと風船ガムのように膨らませルフィの方へと飛ばす。
「"毒ガス弾(クロロボール)"」
その風船は炎によって引火し、大爆発を起こす。爆発を何とかかわしたルフィだが、"毒ガス弾(クロロボール)"の真骨頂は爆発ではない。爆発で出た煙を吸ったルフィは急にくしゃみや涙が止まらなくなる。"毒ガス弾(クロロボール)"は爆発により催涙くしゃみガスを発生させることができるのだ。
「ヘッキシ!ヘッキシ!だんだよこれ!?これッキシ!こいじゃ戦えねぇ!!ヘッキシ!!」
「"毒の道(ベノムロード)"」
催涙くしゃみガスによって苦しむルフィ。そんなルフィにマゼランは"毒竜(ヒドラ)"を伸ばし、その中を移動する。そして頭についている角をはずして毒を纏わせルフィを狙う。間一髪ルフィはかわしたが、角が当たった石の壁は毒でドロドロと融解してしまった。もし当たってたらと思うとゾッとする。
その後もブンブンと毒の角を振り回すマゼラン。さすがに部が悪いと判断したルフィは地面を蹴って距離をとる。
「ゲホッ!ゲホッ!な、何だ!?霧!?」
しかし、マゼランの追撃は止まらなかった。いつの間にかルフィの周りは紫色の霧で覆われていた。マゼランの十八番生きている毒ガス"毒雲"だ。
毒ガスを吸ったルフィは目が霞んでくる。耳鳴りも聞こえ、体が言うことを聞かない。
「"銃(ピストル)"!!"スタンプ"!!」
それでもルフィは必死にマゼランに腕や足を伸ばして攻撃する。しかし、目が霞み、耳もおかしくなったルフィではただ立っているマゼランにも攻撃を当てられない。
「ぐわあぁぁぁぁぁ!!!」
攻撃の一発が偶然マゼランに当たる。しかしマゼランの身体は毒で覆われていて、触ったルフィの方がダメージを受けてしまう。
「・・・もういいだろう?」
やがてマゼランは"毒竜(ヒドラ)"を出す。そしてルフィの体は毒の塊へと吸い込まれていった。
◇
LEVEL5は死ぬ程熱かったLEVEL4とは対称的に極寒地獄だ。あまりの寒さに吹き荒れる冷気で肌から血が滴り、時に全身が凍りついて未来へと冷凍保存される。
そんなLEVEL5の一角の檻に新入りが入ってきた。その新入りは左目の下に傷があり、麦わら帽子を被っている。檻の中の囚人達も一度は聞いたことのある超新星(スーパールーキー)"麦わらのルフィ"だ。
だが、重要なのはそこではない。ルフィはすでに助からないレベルにまで重複された毒をくらっており、呻き声をあげながらのたうち回っている。さすがの囚人達も目の前で人間が死ぬのを見るのは堪える。
「ハァ!・・・ハァ!・・・くそ・・・!!」
それでもなおルフィは檻に突進する。これだけ毒を喰らってもまだエースとレイの救出を諦めていないようだ。
しかし、ルフィも一人の人間だ。毒を喰らった挙げ句極寒地獄に叩き込まれては体力が持たず、ガクガクと体を痙攣させながら倒れてしまう。
もうこのまま死ぬしかないと思われたルフィ。しかし、天は彼を見捨てなかった。ルフィが入れられた檻の前に人影が現れた。その姿は看守でもなければ職員でもない。
「麦ちゃんっ!!助けに来たっ!!友情の名の下に!!あん時あちし逃げてごめんねい!!」
ボンちゃんだった。ルフィがマゼランと戦っている時ボンちゃんはそのスキをついて逃げていた。ここで二人とも捕まるのはマズイと判断したためだ。そして『マネマネの実』の能力で副署長ハンニャバルに変装し、ルフィとボンちゃんを見捨てて逃げて本物のハンニャバルに取り押さえられたバギーとMr,3をダシに使ってLEVEL5へ侵入し、こうしてルフィを救出しに来たのだ。
ボンちゃんは毒でもはや虫の息のルフィを引きずりLEVEL5内をさまよっていた。実はボンちゃんはここに来る前にもハンニャバルに変装し、インペルダウン医療班にルフィの解毒剤を作るように指示してみた。が、重複された毒に対する解毒剤はなく、下手に薬を打てばかえって死を早めるだけという結果だった。
こうなったらボンちゃんの頼りはオカマ界の神とも呼ばれるオカマ王"エンポリオ・イワンコフ"しかいなかった。彼(彼女?)は"奇跡の人"とも言われる人であり、医者が匙を投げた患者も枯れた国も救ってみせたという。
現在ボンちゃんはそんなイワさんを探し回っている状態だった。イワさんはこのLEVEL5のどこかに捕まっているはずなのだが囚人のリストからは名前が消されていた。聞けば"鬼の袖引き"という怪奇現象で忽然と姿を消したらしい。
ボンちゃんはそんな話は信じていなかった。心からイワさんを敬愛しているのだ。
「ガルルルルル・・・!」
「"軍隊・・・ウルフ"・・・。」
LEVEL5をさまようボンちゃんの前に凶暴なオオカミ"軍隊ウルフ"の群れが現れる。LEVEL2に解き放たれた猛獣達も食べてしまう"軍隊ウルフ"を相手にボンちゃんは必死で戦うも数が多く、腕、足、頭と噛みつかれていく。
「ギャウゥゥン!!!」
「・・・麦ちゃん!!」
「お前らボンちゃんに・・・何してんだ・・・!!」
ボンちゃんにまとわりつく軍隊ウルフの一匹をルフィが噛みついて追い払う。毒まみれで満身創痍のルフィに睨まれた軍隊ウルフ達は一斉に怯えはじめる。
「離れろぉぉぉぉ!!!!」
そしてルフィが最後の力を振り絞って叫ぶと軍隊ウルフ達が一匹残らず気絶してしまった。
「え・・・?何・・・今・・・の・・・。」
力を使い果たしたルフィと共に頭から血を流すボンちゃんも倒れる。
「・・・・・・・」
そんな二人をクローバーのような髪型をしたサングラスの男が無言で見つめていた。
エース公開処刑まであと26時間・・・
いつもご愛読ありがとうございます。