王下七武海総監督物語   作:グランド・オブ・ミル

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第16話

 

 

 

 

 

 

 

 

ついにエースの目の前まで近づくことができた海賊達は勢いそのままにエースを目指して戦っていた。

 

それはルフィも同じで、エースに向かって直進している。しかし、インペルダウンからずっと戦ってきたルフィはすでに限界だった。エースまでもう少しという所で海軍中将モモンガとダルメシアンにやられ、最後は黄猿に光の速度で蹴り飛ばされた。

 

「麦わらボーイ!!」

 

「ルフィ君!こりゃいかん!船医!何とか命をつないでくれ!!」

 

ボロボロのルフィをイワンコフとジンベエが受け止めた。ルフィが瀕死状態なのは一目瞭然で二人は慌てて白ひげ海賊団の船医に手当てを依頼する。

 

「(騒ぐだけの威勢の塊……若く、そして浅はか……。でもそれでいい。それでいいんだよルフィ。それが海賊だから……。)」

 

そんなルフィをレイは空から見下ろす。ルフィにはやはりまだこの戦争はレベルが高過ぎた。この広場に辿り着けただけでも奇跡だ。しかし、そんなルフィもついに限界を迎え、戦場から脱落した。

 

しかしレイはそれでいいと思っていた。例えどんな困難にぶつかろうと自分の信念を曲げずに立ち向かう。それがレイが思う海賊の在り方だから。

 

「さて…と、待っててエース。」

 

「待ってろよい!エース!!」

 

ルフィのことはイワンコフとジンベエに任せることにしたレイはエースの元へ飛んでいく。その隣を白ひげ海賊団一番隊隊長"不死鳥"マルコも飛んでいく。海軍もこの二人を見逃すはずもなく、銃や大砲で撃ち落とそうとするが、片や不死身のレイ、片や不死鳥のマルコにそんなものが効くはずもなく何の意味も為さない。

 

「………ぬうぇい!!!」

 

二人があと一歩でエースに届く所でガープが動いた。この戦争で自分はどうするべきか悩んでいたガープだが、自分の正義に従うことを選んだようだ。

 

ガープは処刑台からジャンプして飛んでくるレイとマルコを殴って叩き落とす。叩き落とされたマルコは広場の中心辺りに、レイは白ひげのすぐ側に墜落した。

 

「…ケホッ……何だ、ガープさんちっとも衰えてないじゃないですか。」

 

墜落したレイは体勢を立て直し、立ち上がる。海賊王を何度も追い詰めた海軍の英雄ガープの拳骨で叩き落とされたレイは骨が何本か折れてしまったが、凄まじい回復力と生命力ですぐに回復した。"生命姫"の名は伊達じゃない。

 

「ウウッ………!」

ふとレイの横からうめき声が聞こえた。レイが視線を横にやれば白ひげが胸を押さえ、膝をついて吐血していた。

 

「エドさん…。」

 

「「「オヤジィ!!」」」

 

白ひげの様子に白ひげ海賊団も叫ぶ。白ひげの体調は想像以上に悪化しているようだ。

 

「寄る年波は越えられんか?白ひげ!」

 

そのスキを見逃す海軍ではない。赤犬が右腕をマグマに変化させて白ひげに襲いかかった。

 

「エドさん、少しこれ借りますね。"女神の吐息"。」

 

「………レイ。」

 

レイは白ひげから薙刀を取り、それに息を吹きかけた。すると白ひげの薙刀はレイの手を離れ、フワフワと空中に浮き始める。

 

「ぬぅ!?」

 

そしてレイが左手を赤犬に降ると薙刀は勢い良く赤犬に飛び、真っ二つに斬り裂いた。しかし、赤犬はマグマだ。薙刀で斬られたくらいでは死ぬはずもなく、すぐに身体を修復してレイに襲いかかる。

 

そんな赤犬に対してレイは左手の指二本を挑発する時のようにくいっと動かした。すると上空で制止していた薙刀が高速でレイの元に戻り、赤犬の一撃を受け止めた。

 

「そこをどかんかいレイ…!!」

 

「どくわけない。」

 

赤犬の一撃を受け止める薙刀はレイが操っているとは思えない程力が強く、赤犬が力を込めても動く気配がない。

 

「悪いな、レイ。もう大丈夫だ。」

 

レイが赤犬と戦っている間に体を落ち着かせた白ひげが赤犬の攻撃を受け止めている薙刀を手に取り、そのまま赤犬を吹き飛ばした。

 

「いけぇ!!」

 

「白ひげの首をとれぇ!!」

 

今度は海軍の精鋭が押し寄せてきた。その全員がマントを身につけているので全員が将校以上だ。

 

「これしきのことで俺を殺せると思ってんのか……!俺は"白ひげ"だぁ!!!」

 

しかし、その将校達は白ひげが薙刀を一閃するだけで全滅してしまった。その敵を薙ぎ倒す様はまさに怪物だ。

 

「まだまだぁ!!」

 

「いけぇ!!」

 

しかし、海軍もしぶとく、今度は白ひげの後ろから襲いかかった。だがまたしても白ひげを仕留めることはなかった。

 

「レイにばっかりいい格好させてたまるか!」

 

「俺達はオヤジの"誇り"を守る!!」

 

白ひげの後ろに構えた白ひげ海賊団の隊長達がその攻撃を防いだからだ。

 

「やれ!!」

 

戦況が崩れ始めた海軍。これはまずいと判断したセンゴクは執行人に再び指示を出した。再びエースに裁きの白刃が迫る。白ひげは能力でそれを阻止しようとするも、発作がまた起きてしまってひざをついてしまう。仕方なくレイが星型の砲台を出現させ、"加粒子砲"を撃とうとした時、ルフィが叫んだ。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

その瞬間、広場にいた海賊、海軍がバタバタと倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

"覇王色の覇気"

 

それはわずか数百万人に一人、"王の資質"を持つ者しか身につけることができない力である。極めれば戦うまでもない程実力差が開いた相手を手も触れずに倒すことができる。

 

黄猿に蹴り飛ばされ、戦線離脱したルフィはイワンコフに頼み、"テンション・ホルモン"を打ってもらった。"テンション・ホルモン"とは身体の中のアドレナリンを過剰に分泌させることでダメージや疲労を1日だけ忘れることのできるイワンコフの技だ。それにより復活したルフィが見たものはエースに迫る裁きの白刃だった。距離も遠く、どうすればよいのか分からずに叫んだ結果がこれだ。周りの海兵や海賊が次々に倒れ、肝心のエースも執行人が気絶したことでなんとか無事だ。

 

「野郎共ぉ!!」

 

それを見ていた白ひげは広場内にいる自分の息子達に指示を出す。

 

「麦わらのルフィを全力で援護しろぉ!!」

 

白ひげは昔、ロジャーから"Dの一族"について聞いていた。この世界の至るところに存在する"Dの意志"を継ぐ人間、その一人であるルフィにこの先の時代を見せてほしくなったのだ。

 

白ひげの指示で白ひげ海賊団の猛者達がルフィを固めるように並走する。それによって行き詰まっていたエースへの道が開けた。

 

「悪いわね!ヴァナタの力が必要で!」

 

「お安いご用です。イワさん。」

 

イワンコフが声をかけるとそのアフロヘアーからもそっとイナズマが顔を出す。インペルダウンでマゼランにやられたイナズマだが、何とか闘えるまでに回復したようだ。

 

イワンコフの指示を受けたイナズマは能力で地面を切っていく。そして長く切った地面をベロンと処刑台に引っ掛け、橋をつくった。

 

「ルフィ君ゆけ!」

 

「おう!ありがとう!!」

 

イナズマがつくった橋をルフィは登っていく。そんなルフィを落とそうと海軍側は必死に応戦するも、完全にルフィの味方についた白ひげ海賊団に阻まれ、ルフィに攻撃が届かない。

 

エース救出は確実と思われたその時、橋の上、ルフィの真正面に誰かが降り立った。ガープだ。英雄の名にふさわしい出で立ちでルフィを待ち構える。

 

「!?じいちゃん!そこどいてくれぇ!!」

 

「どくわけにいくかぁ!わしは海軍本部中将じゃ!!ここを通りたくばわしを殺してでも通れ!!"麦わらのルフィ"!!」

 

それがガープの正義だった。ガープはルフィやエースが生まれる遥か昔から海賊達と戦ってきた。海賊に情けは無用だ。自分が"海兵"で、相手が"海賊"なのだから。

 

「できねぇよじいちゃん!!どいてくれぇ!!」

 

「できねばエースは死ぬだけだ!!」

 

「嫌だぁ!!」

 

「嫌な事などいくらでも起きる!!それがお前達の選んだ道じゃぁ!!」

 

ガープは右の拳を握り、大きく振りかぶる。中将のマントの「正義」の文字がたなびく。そして"ギア2"で向かってくるルフィに思いきり拳を打った。

 

「ルフィお前を!!敵とみなす!!」

 

拳が当たる瞬間、ガープの頭にある記憶が甦った。

 

『じいちゃん!この肉どこでとってきたんだ?』

 

肉を食べながら笑うルフィ……

 

『…なんだジジィ、また来たのか。』

 

澄まし顔のエース……

 

『ガープさん、これ食べてみてください。今度は自信作です。』

 

無表情ながらも下手くそな料理を気さくに振る舞うレイ……

 

それは大切な"家族"の記憶、思い出だった。それらが甦ったことでガープの拳は反れ、ルフィのパンチがガープの顔を的確に捉え、ガープは橋の下へ落下してしまった。いくら正義を掲げても、ガープも人の親だったのだ。

 

「ルフィ。」

 

「あ!レイ!エースの手錠、海楼石なんだ!何とかならねぇか!?」

 

「大丈夫、安心して。ハンコックから鍵をもらった。」

 

ついにエースの元へ辿り着いたルフィだが、そこでエースの手錠を外す術がない事に気づく。慌てるルフィの元へレイがふわっと降り立った。

 

「あっ!!鍵が!!」

 

レイがルフィに鍵を渡していると、レーザーが二人の間を通過し、鍵を破壊してしまった。黄猿が遠距離から狙撃したようだ。

 

「…私が逃がすと思うなぁ!!」

 

片や隣ではセンゴクが能力を使い、巨大な大仏の姿に変身していた。センゴクはレイと同じ動物系幻獣種の『ヒトヒトの実 モデル"大仏"』の能力者だったのだ。

 

「ルフィ、3、エースを守りなさい。」

 

センゴクが変身した姿を見たレイはルフィと執行人に成りすましていたMr,3に指示を出す。そしてレイは自身の右腕を紫色で緑のラインが入った巨大な腕に変化させる。

 

「"ブレイブインパクト"。」

 

そしてその腕でセンゴクのパンチにパンチを打って対抗した。二つの巨大な腕が激突したことで周囲に衝撃波が発生する。エースはMr,3の蝋の壁とルフィの"ゴムゴムの風船"でガードされ、無事だ。

 

しかし、センゴクの一撃が強烈すぎたせいで処刑台が耐えられず、バキバキと音を立てて崩れ始めた。処刑台が崩れたことでルフィ達三人とセンゴクとの打ち合いに負けたレイが落下する。

 

「鍵を作る!すぐに錠を外すのだガネ!!」

 

落下中にMr,3は能力で鍵をつくった。その間、海軍が何もしないわけもなく、空中に放り出されたエースとルフィを殺そうと大砲を撃ってくる。

 

「私がここにいる理由が亡き同胞への弔いのためだとしたら!貴様私を笑うカネ!!」

 

「笑うわけねぇ!!」

 

亡き同胞への弔い、それがMr,3が執行人に成りすましてまで処刑台にいた理由だった。Mr,3は命をかけてルフィをこの戦場に送ったボンちゃんの気持ちを無駄にしたくなかったのだ。

 

Mr,3がつくった鍵をルフィに投げ渡す。鍵を投げ渡されたルフィはそれを受けとるが、そのすぐあとに大砲の砲弾が直撃してしまう。

 

「やったぞ!!」

 

「"火拳"は生身だ!生きちゃいない!!」

 

「"生命姫"もセンゴク元帥との衝突後でフィールドを張れないはずだ!!」

 

海軍は大砲が命中したことに歓喜し、勝利を確信する。そこに崩れた処刑台の部品がガラガラと落ちてくる。

 

そこには外された海楼石の手錠も混じっていた。

 

「え?あれは……」

 

海兵達が歓喜する中、一人の海兵がその手錠に気づいた。その直後、砲弾の爆炎の中に炎のトンネルが開いた。

 

「お前は、昔からそうさ!ルフィ!俺やレイの言う事もろくに聞かねぇで、無茶ばっかりしやがって!!」

 

その爆炎の中には炎を纏ったエースがルフィを抱えていた。その表情は嬉しそうに口角が上がっている。

 

「エ~~ス~~~!!!」

 

戦場にルフィの安堵した嬉しそうな声が木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

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