王下七武海総監督物語   作:グランド・オブ・ミル

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レイの過去 ロビン編 2

 

 

 

 

 

 

ここは街から少し離れた森の中。そこには木でできた小さな小屋があった。レイとロビンの家だ。

 

現在ロビンは海岸へ散歩に行き、ここにはいない。いるのはレイと玄関先でレイに怒号を浴びせる天然パーマのおばさんだけだ。

 

「またあんたかい!何もしてない子どもを殴るなんて!」

 

「殴った覚えはない。」

 

「お黙り!!子どもが泣いて帰って来たんだよ!!」

 

このオバハン、先日レイが睨んで追っ払ったロビンをいじめる子ども達の誰かの母親なんだろう。レイは度々いじめの被害を受ける度にこのように何かしら文句を言われていた。さらに悪いことに今回のように話を盛ってある場合がほとんどだ。ひどいときには子どもが転んだだけでたまたま近くにいたレイとロビンが怒鳴られたこともある。

 

レイとロビンが気味悪がられているのをいいことに、八つ当たり的な感覚なのだろう。悲しきかな、人は人を蔑むことで強くなる生き物なのだ。

 

「もうウチの子に近づかないでおくれ!!」

 

「じゃあ近づかないように教育して。」

 

「ふん!!ホント気分悪い子だね!!」

 

そう吐き捨ててオバハンは帰っていった。いや、気分悪いのはどっちだよ。そう思ったがレイはその言葉を呑み込んだ。レイは空気を読める子なのだ。

 

 

 

 

 

オバハンが帰った後、薪を伐ったり、お昼を作ったりしていると散歩に行っていたロビンが帰って来た。

 

「お姉ちゃん、ちょっと来て。」

 

「ん?どうしたの?」

 

ロビンに案内されてオハラの南の海岸へ行く。そこにはボロボロの服を着た巨人族の男が倒れていた。遭難してオハラに流れ着いたらしい。男は死んだようにピクリとも動かなかった。

 

「この人は・・・」

 

「お姉ちゃん知ってるの?」

 

レイはこの男に見覚えがあった。男の名を言おうとしたときに男の指がピクッと動いた。次に咳き込みながら海水を吐き出す。どうやらまだ生きていたようだ。

 

「ぐがぁぁ!!」

 

レイ達を驚かそうと思ったのだろうか。男はご丁寧に手までつけて怖い顔で吠える。

 

「「・・・・・・」」

 

しかし、比較的冷静な性格の二人の反応は微妙だ。ポケモンなら「こうかはいまひとつのようだ」と表示されるだろう。

 

それが最後の力だったのか男は「み、水・・・」と言ってガクッと倒れる。

 

「・・・とりあえず運ぼう。」

 

「うん。」

 

 

 

 

 

 

レイ達の小屋の近くには小さな河川が流れている。その川に巨人族の男が顔を突っ込み、ガブガブと水を飲んでいる。やがて飲み終わったのか男は川から顔を上げ、ゴロンと寝転がる。男の体が大きいので下敷きになった木がバキバキと折れてしまう。

 

「ハァ・・・ハァ・・・命あったでよ。あいつも無事だろうか。この土地にゃあ町でもあるのか?」

 

「うん。」

 

「そうか。ここがどこでも構わねぇが、いっそ無人島にでも流れ着きたかった。」

 

ロビンが男と話していると、小屋に男のためのご飯を取りに行ったレイが戻ってきた。

 

「はい、お腹空いてるでしょ。」

 

「おお!ありがてぇ・・・って!!お前!インフィニティ・D・ レイか!!?」

 

「今さら?"ハグワール・D・サウロ"中将。」

 

レイからご飯を受け取った男、サウロはレイの顔を見るとハッとなって驚く。そう、この巨人族の男は海軍本部の将校中将だったのだ。レイは海上で数える程だがサウロの軍艦に追いかけられた事があるので覚えていた。

 

「中将なんて呼んでくれるな。ワシはもう海軍を抜けたんだで。」

 

「・・・ワケありね。」

 

「デレシシシ!まあそういうことだで!しかし、お前こんな所におったとはな。本部はお前が突然姿を消したもんで不審がってたで。」

 

「今"生命姫"インフィニティ・D・レイは育児休業中。」

 

元とはいえ海兵と海賊がまるで友人のように親しげに話す。とても珍しい光景だろう。しかしロビンはそれよりも気になることがあったようだ。

 

「デレシシ?何ていう意味?」

 

それはサウロの笑い方だった。

 

「何ってお前!笑ってんだで!」

 

「笑ってるの?」

 

「うん。この人笑い方下手なの。」

 

「・・・ふふっ!あははははは!変な笑い方!」

 

「デレシシシ!デレシシシシシ!!」

 

「ふふふ♪」

 

今日の森には三人の笑い声がよく響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

サウロが漂着して三日が過ぎた。三人はあれから毎日サウロのためのイカダを造っていた。

 

「"ベルトアーム"。」

 

まずレイが手頃な大きさの木を伐り、

 

「よいしょっ!」

 

ロビンが手足を花のように咲かせる「ハナハナの実」の能力で無駄な枝をとり、

 

「どっこらせ!!」

 

それをサウロが巨人族特有の怪力でイカダの形に組み上げる。

 

「よし、一休みにしよう。飲み物持ってくる。」

 

「おう!デレシシシ!お前らのおかげでだいぶできてきたで!」

 

「ふふっ!やっぱり変な笑い方!」

 

「変でも何でもお前あのな!笑ってると幸せになれんだでよ!」

 

「どうして?」

 

「どうしてって、楽しかったら笑うでよ。という事は笑ってたら楽しくなってくるわけだ!」

 

「苦しいのに笑ったらバカみたい。」

 

「んな事ねぇよ!デレシシシ!!」

 

「はい。とりあえず紅茶。」

 

三人は充実した日々を送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、"西の海(ウエストブルー)"のある海域に一隻の軍艦が浮かんでいた。その帆には五つの丸を十字型に結んだ"世界政府"のマークが描かれている。その軍艦には世界政府からある指令を受けたCP9の面々が乗っていた。

 

『海軍本部よりスパンダイン長官へ・・・』

 

「呼んでますけど、長官。」

 

「シカトしろ!状況確認だろうが!岸が見えたらこっちから連絡するってんだよ!!」

 

本部からの着信を受けた電伝虫の受話器を持った部下の声を長官のスパンダインは一蹴りする。

 

「オハラだかオペラだか知らねぇが何で俺様がこんな"西の海(ウエストブルー)"のくんだりまで来なきゃならねぇんだ!!」

 

どうやらこの軍艦はオハラへと進行中のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくしてオハラ図書館では学者の一人が慌てた様子で図書館内に駆け込む。

 

「博士!クローバー博士!!」

 

「どうしたのじゃ?」

 

「ハァ、ハァ、いやまさかとは思うんだが海軍の船が海岸に一隻停泊してるんだ!調査かも知れねぇ!念のため警戒を!!」

 

「うむ!学者達に知らせろ!!」

 

歯車はゆっくり、ゆっくりと破滅へと進みだしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「出来たでよー!イカダ!!デレシシシシシ!!」

 

しばらくしてサウロのイカダが完成した。レイとロビンが手伝ったおかげでとても立派なものができていた。ごく普通のイカダを造っていたはずが、改良に改良を重ねてもはやボートになってしまっている。安定性も抜群だ。

 

ボートに乗っているサウロを海岸から眺めているのはロビンだけだ。レイは先ほど慌ててレイを呼びに来た学者に連れられて図書館に行ってしまった。

 

「・・・・・・」

 

サウロを見つめるロビンの顔はそこはかとなく淋しそうだ。

 

「何だで~、あからさまに淋しそうな顔して。そうだ!このイカダに旗でもつけるで!という事でも少しここにおるでよ!デレシシシ!!」

 

サウロの言葉を聞いたロビンは先ほどとは打って変わって嬉しそうな表情に変わった。

 

 

 

 

 

 

 

「海へ?ロビンも海へ出てえのか?」

 

「うん。」

 

サウロとロビンが海岸に座り、話をしている。

 

「私のお母さんは考古学の研究でずっと忙しくて、私はレイお姉ちゃんに育ててもらってるんだけど、いつかまたこの島に帰って来た時には今度は一緒に海へ連れてって貰うの!その為に勉強して私やっと考古学者になれたのよ!」

 

「考古学者・・・そんなにチビっこいのにか。」

 

「うん。知ってる?サウロ。世界には100年間ポッカリ空いた誰も知らない歴史があるの。」

 

「あぁ、"空白の100年"というやつだで?興味あるが政府はそれを調べる事を禁じとるでよ。」

 

「私のお母さんは世界中でそれを調べて回ってるんだってお姉ちゃんが言ってた。でもこれは誰にも言っちゃダメよ!本当は犯罪だから。」

 

「・・・・・え・・・!?」

 

ロビンの話を聞いていたサウロの顔が急に青ざめる。

 

「そ、それはまさか"歴史の本文(ポーネグリフ)"という石を探し回ってるという事ではねぇか!?」

 

「"歴史の本文(ポーネグリフ)"を知ってるの?」

 

「知ってるも何も!!ええかロビン!!こういう問題は人前では口にしちゃイカンでよ!!ましてやお前の母ちゃんがそれを探し回ってるなん・・・・!!」

 

血相を変えてしゃべっていたサウロが何かに気づいたのかピタッと動きを止める。

 

「どうしたの?」

 

「・・・ロビンお前、母ちゃんの名前分かるか・・・?」

 

できれば外れてほしい。そんな思いを込めてたずねたサウロだが、ロビンの口から最悪の事実が告げられる。

 

「オルビア。」

 

「!!!?」

 

オルビアの名を聞いたサウロはその場にドサッと倒れる。

 

「(ロビンはオルビアの・・・娘!!)」

 

そして更なる可能性に気づいたサウロはガバッと起き上がってロビンにたずねる。

 

「じ、じゃあここは!!まさか『オハラ』という島では!?」

 

「うん。」

 

この島がオハラだと分かったサウロは急に慌て始める。

 

「うわあ!!大変だで!!何てこった!ワシはオハラに流れついとったのか!!」

 

「?」

 

ロビンがサウロがなぜ慌てているのかを疑問に思っているとサウロはロビンに詰め寄った。

 

「こうしてる場合でねぇ!ロビン!お前驚くだろうがワシの言う事よく聞け!このオハラに今海軍の軍艦が向かって来とるはずだで!!この島の学者達を消し去る為だ!!」

 

「!!そ、そんなのウソよ!!」

 

「ホントだで!!ワシはお前にウソつかんでよ!!今すぐ町に行って異変がねぇか見てくるでよ!!もしかしたらお前の母ちゃんも帰って来とるかもしれん!!」

 

「え・・・!?お母さんが!?」

 

「そうだで!!早く行くでよ!!」

 

サウロの言葉を聞いたロビンは町の方へと走っていった。

 

「こりゃあ・・・ホントに大変だで!!」

 

海岸にはサウロの言葉だけが響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オ、オルビアさん!」

 

「オルビア!海軍の船に乗ってきたのはお前だったのか!!」

 

オハラ図書館では学者達が慌てていた例の海軍の船に乗って帰って来たニコ・オルビアの事で騒ぎになっていた。

 

「・・・オルビア、お帰り。」

 

「ええ、ただいまレイ。そしてみんなも。帰って早々凶報だけど今言ったことは事実よ。」

 

オルビアが持ち帰った情報は、彼らが待ち望んだ"歴史の本文(ポーネグリフ)"の情報ではなかった。オルビア以外の総勢33名の探索チームが全滅し、オルビア自身も一時海軍に捕まったというものだった。政府はチームの遺品を細かに鑑定し、オルビア達がオハラから来たことを割り出し、今この島に向かっているのだという。

 

「申し訳も立たない・・・!私達が原因でこの土地に危機が及ぶなんて・・・!!」

 

「やめて。海に出た学者もここにいる学者もみんなチームのはず。」

 

「レイの言う通りじゃ!キツイ目にあったのはお前達のほうではないか!苦労かけたのう。」

 

「レイ・・・博士・・・」

 

両手で顔を覆い隠し、必死で謝罪するオルビアをレイが肩を叩いて慰める。ここにいる者達は全員心は同じだ。

 

「もとより有能な学者達が世界中から集まり、歴史の探求を続けるオハラを政府はずっと脅威と見ておった・・・」

 

「『やっとしっぽを掴んだ!』そう思ってるはず。政府はこのチャンスを逃さない。」

 

「ええ・・・でもいち早くその情報を掴むことができた。最終的にはオハラで学者を名乗る者全て消されてしまうわ!!みんな早くこの島から脱出を!!」

 

オルビアは必死の形相で学者達を逃がそうとする。しかし、クローバー博士をはじめ、学者達は動かなかった。

 

「・・・じゃがオルビア。わしはこの"人類の財産"を置いて逃げ出す事はできん。わかっておろう。」

 

「俺達も同じだ。オルビア。」

 

「政府が何をするつもりか分からねえが、我々がここから逃げていたらここにある大切な歴史を守れねぇ。やるだけやってみるさ。今回も。」

 

「みんな・・・」

 

"人類の財産"。それは本、文献といった過去の偉人が遺していった大切なものだ。そういったものが世界中から集まるこの図書館を学者達は投げ出したくなかったのだ。

 

「・・・それよりも気になってる事があるでしょう?オルビア。」

 

「・・・・・・でも、会うわけには・・・いかないわ。どう?元気にしてる?」

 

「ん。あなたに似てすごく天才。私が読めない本まで引っ張り出して読んでる。」

 

「ふふっ、そう。元気なら・・・それで。」

 

オルビアの頭によぎるのはロビンだ。出航の時、レイに抱っこされて泣きながらも見送ってくれた自慢の娘。どんなに大きくなっただろうか。想像するだけで頬が緩む。しかし・・・

 

「・・・この道に一度踏み込んだからには断ち切らなきゃ。」

 

「・・・・・・・・」

 

それはオルビアなりのケジメだった。ロビンを自分という"罪人"の娘にするわけにはいかないから。

 

「クローバー博士!!今度は"世界政府"の旗を掲げた船がっ!!」

 

「「「!!」」」

 

ひどく慌てた様子の学者が扉を蹴り開け部屋へ飛び込んでくる。

 

「政府の船が・・・わざわざここに。」

 

「・・・確かにただ事ではなさそうじゃな。」

 

すると突然オルビアが銃を持って部屋を飛び出していく。

 

「いい!みんな!私とみんなは仲間でもなければ知り合いでも親友でもない!!それを頭に置いておいて!!」

 

「オルビア・・・」

 

「待て!!一体何をする!!」

 

クローバー博士の制止も聞かずにオルビアは海岸の方へ駆けていった。

 

その道中、図書館の方へひた走るロビンと海岸へ向かうオルビアがすれ違うも二人は気づかなかった。

 

 

 

 

 

破滅の時まで、あと少し・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 




技解説

『ベルトアーム』

動物系幻獣種シトシトの実モデル"リリス"の能力者であるレイが「人獣型」になって使う技。「人獣型」なると頭上に天使の輪のようなリングが浮かび上がり、背中から6対12枚の帯状の翼が生える。この翼を使って攻撃するのがベルトアーム。攻撃方法は斬り裂いたり、巻き付けたり、叩きつけたり実に多彩である。
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