IS インフィニット・ストラトス 〜太陽の翼〜   作:フゥ太

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あれじゃないよ。

新婚さんのあれじゃないからね(笑)


初めての夜

 

 

 

「シャルが連れ去られた?」

 

 パリ市内でももっとも高く巨大なビルとして立てたれた『デュノア社』の最上階。社長室で書類を持った細みな長身と高級そうな白いスーツをきっちり着こなした20代後半の男性が、二人の部下からの報告にうなり声を上げる。

 

「………で?」

 

 報告に来た黒服の部下達が怯えているのを知りながら、その男は笑顔で返事を促す。

 

「も、目下、全力を挙げて捜索しているものの……服に着けておいた発信機も取り外されているもようでして……」

「ボクが聞きたいのはそういうことではないんだよ………『結果』が出せるまで後どれくらい僕は待たないといけないのかということなんだ?」

 

 笑顔の裏から凍れる感情が見え隠れし、部下の恐怖がさらに増すことになる。

 下手な返答をしようものならこの場で殺されると感じた黒服の男は、覚悟を決めて言葉を発した。

 

「い、い、一週間ほどお時間をいただければ?」

「……………」

「必ず、あの小娘を見つけ出して・」

 

 その瞬間、室内に乾いた銃声が鳴り響く。

 ゆっくりと崩れ落ちる黒服の男………そして、白いスーツの男の手には硝煙を上げる銃が握られていた。

 

「僕の花嫁に対して『小娘』なんて言い方をする失礼な者は、デュノアにはいない………そうだよね、君?」

「は、はい!!」

 

 全く変わらない笑顔のまま、顔面を引き攣らせている部下にもう一度同じ質問をする白いスーツの男。

 

「………君も僕が後一週間も待たないといけない、と言うのかい?」

「み、三日以内に、か、必ず……奥様を発見いたします!!」

「よし! 君の働きに期待してるよ!!」

 

 笑顔が終始変わることはなかったが、部下の男は理解していた。三日以内に見つけられなければ次は自分だ、と。

 慌てて室内を後にした部下をしり目に、男―――ジョセフ・デュノアは外の景色を見ながら、初めて笑顔ではなく、完全に感情を失った鉄仮面になる。

 

 

「仕方のない子だシャル………だが、彼女を誑かす悪い虫を潰すのも、夫の役目ということか……」

 

 

 

 

 

 一方その頃、ジョセフの言う『悪い虫』に誑かされている?シャルロットはというと……

 

「あ……あの……」

「ん?」

 

 ジョッキに入ったビールを一気飲みするヨレヨレのシャツを着た中年の男性。

 数人でタバコを吸いながらポーカーを始める男ども。そしてその周りで勝負を囃し立てる着飾られた娼婦らしき女性達。

 愚痴を撒き散らしながらカウンターで酔っ払い突っ伏す老人。

 料理の催促をしながらウェイトレスの尻を触り、逆に殴り飛ばされる者。

 

 ガラの悪いパリの裏通りにある店で夕食を取っていたのだった。

 店の雰囲気に反して、シャルの前に置かれた料理は美味しそうな匂いと湯気を上げていたが、今、彼女にはそれに手をつける気にはなれなかった。

 

 反して、目の前で同じメニューをかっ食らう陽太は、シャルのそんな様子を気にすることなく黙々と料理を口に入れていく。

 

「………食わないのか?」

「!?………そ、そういうことじゃないけど…」

 

 正直、今の彼女には目の前の陽太に聞きたいことが山のようにある。

 今までどこにいたのか、今は何をしているのか、自分を誘拐して本当に大丈夫なのか、というかこんなガラの悪い店に入って…

 

「誰の店がガラが悪いって?」

「!!!!?」

 

 危うく椅子からひっくり返りそうになり、慌てて椅子に座りなおすシャル。

 心の声を聞かれたのかと動揺しながら振り返ると、そこには赤いドレスの上にエプロンを纏い、頭に三角巾を被った20代後半の茶髪の女性が、お盆に新しい料理を持って立っていた。

 

「どうみてもお金持ちのお嬢様にしか見えないけど………どこから攫ってきたんだい、陽太?」

「人聞きの悪い………悪い虫に集られてるところを助けただけさ、リナ」

 

 リナと呼ばれた女性は、笑顔のままテーブルに牛の内臓や、豚足、玉ねぎ、人参、セロリをトマトとともに煮込んだ物を置くのであった。

 

「本日の自信作さ! 隠し味に白ワインを入れてみたんだけどね!」

「あ、ありがとうございます……」

 

 シャルの様子に別段怒っている様子もなく、笑顔で彼女の頭をやや乱暴に撫でまわす。

 

「陽太が連れてきた娘にしては礼儀正しくて、可愛らしいわね。気に入ったわ!!」

「あ、あの………」

「陽太っ!」

 

 出された料理を黙々と食する陽太に向かってリナが何かを投げ渡す。それを振り返りもせずにキャッチした陽太は、最後に水で全てを胃袋に流し込むと席を立ちあがる。

 

「掃除はいつも通りにしておいたよ」

「頼んでないのに、毎度ご苦労様です………」

 

 心にもないお礼を言った陽太は、シャルの手を取ると店の奥にある階段を一緒に登っていく。

 

「あ、あのヨウタ………どこにいくの?」

「しばらくの寝床………俺がフランスにいるときは大概ココの二階の部屋使わせてもらってんだ」

 

 階段を上がり突き当りの部屋のドアに鍵を入れて開くと、入口に小さな靴箱があり、奥に進むとキッチンと小さなテーブルとイスとソファーがあり、さらにその奥にはドアが一つある。

全体的に年季の入った内装を感じさせるが、掃除が行き届いているためかホコリっぽさや汚さを感じさせることはない。下の店の時もそうだったが、リナという女性はその手のことには手抜きをしないようである。

 

「奥の寝室のベッドをシャルが使ってくれ。キッチンの横の部屋が浴室だからシャワー使いたい時はそっちを。ただ、便所は部屋の斜め前の部屋だから間違えないようにな……」

「う、うん……」

 

 簡単にそれだけ告げると、陽太は上着を脱いでソファーに寝転んでしまう。その様子を見て、シャルはいそいそと彼に合わせるようにイスに腰を下ろすのであった。

 

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………なんか、こうやってるのっておかしいよね!」

 

 二人の間に流れる沈黙に、先に耐え切れなくなったのはシャルの方であった。そんな彼女の様子を気にかけたのか、手で顔を隠していた陽太の口から彼女に対して謝罪の言葉が滲み出る。

 

「……悪かったなシャル……なんか大変なことに巻き込んじまったみたいで」

「!!?………そんなことないよ! というよりもヨウタの方こそ、私を助けてくれてありがとう!」

 

 シャルの方こそ巻き込んでしまったという罪悪感があるためか、先に頭を下げられるとなんだか申し訳ない気分になってしまう。

 

「私もホントはね………今の家が死ぬほど大嫌いなんだ。私の周りのひとは全員で私を見張ってる………ごはん食べる時も、庭を散歩する時も、読書をするときも、毎日毎日毎日何人もの家庭教師の人がいて、私の行動を点数で付けてるんだ」

「……………」

「それで点数が足りなかったり、気に入らないことがあったら、全部直さないといけない………これじゃあまるで囚人だね」

「シャル………」

 

 自虐的に笑うシャルの声に、陽太は上半身を起こして心配そうに彼女を見つめる。

 

「ううん、囚人の人たちだってあそこまで監視されてないよ………以前手紙のやり取りをしていた友達も何年も返事が来ない。きっとデュノアの人たちが処分するなり、手紙のやり取りをさせないように仕組んだんだろうね」

「シャル………デュノアって…」

「デュノア社って………ヨウタは知ってる?」

「……世界第三位のシェアを持つISメーカーだろ?」

 

 陽太の返答に笑顔でうなづいたシャルは、天井を見上げながら話を続ける。

 

「…………お母さんが亡くなってすぐ……お父さんの家に引き取られたんだ…」

「………親父さんが、デュノアの社長さんだったとは…」

「私も引き取られるまで予想もしてなかった………それで、そこで色々検査して………ISの適正が見られてね。色々あってテストパイロットしてたんだ」

「!?………ISの操縦者なのか?」

「うん。おかげさまで代表候補生に選ばれたんだよ!………凄いでしょ?」

「あ、ああ………」

「???」

 

 途端に冷や汗が流れて視線をそらす陽太の様子を不思議そうな顔で見つめるシャル。

 よもや自分もIS操縦者です。世界中の軍事基地に喧嘩売ってますとは言えない陽太は、話の続けさせることにした。

 

「それで………どうなったんだ?」

「………でもね、その後………決まったんだ」

「?………なにが?」

「………私の結婚相手が」

 

 その瞬間、陽太がソファーからひっくり返り後頭部を強打させる。

 

「ヨ、ヨウタ!?」

「あ………相手は誰だぁっ!?」

 

 ガバッと起き上がると、猛然と彼女の肩を掴み上下に揺らしながら詰め寄る。

 そのあまりの剣幕にびっくりしながら、シャルは何とか答えるのであった。

 

「お、おおおお落ち着いて~!」

「あ、ああ………すまない…」

「ケホッ、ケホッ………それでね、相手は親戚の人で今デュノア社の副社長をしてる…」

「歳は!?」

「確か25歳のはずだけど……」

「完全にロリコンじゃねぇーか………」

 

 『爆撃するか?』『むしろ核兵器でキレイにするのが世界のためか?』『てか面倒くさいから燃やし尽くすか?』などとブツブツ言う陽太の様子を見ていたシャルが、途端に悪戯を考え付いた小さな子のような表情になり、陽太の耳元で囁いてみる。

 

「ひょっとして………ヤキモチ焼いてくれたの?」

「!!」

「………そうなんだ~~?」

 

 眼と眼で見つめあう二人。

 しばらくすると、根負けしたのか陽太がシャルに背を向け再びソファーに寝転がってしまう。ご丁寧に耳を両手で塞ぎながら。

 

「オヤスミナサイ」

「フフフ~ン♪」

 

 そんな陽太の様子が嬉しいのか楽しいのか、シャルはソファーに持たれながら身の上話を続ける。

 

「……………それでね、父と会話したのは二回ぐらい……それも大したことを話してないんだ。義理の母………あ、父の今の奥さんには………毛嫌い………されちゃった」

「……………」

 

 背中で自分の言葉を聞いてくれている陽太が、なんとなく察してくれたのを感じ、若干気分が和らぎ、苦い笑みがこぼれ出たシャル。

 

「『泥棒猫の娘』って殴られちゃった。母さんもちょっとは教えてくれてたらよかったのに………」

「…………シャル」

「………お母さんね……陽太のこと……最後まで気にしてたんだよ」

「……………」

 

 いつの間にか起き上がった陽太の眼がシャルと絡み合い、彼が心配しているような眼で自分を見てきてくれたことに一気に涙腺が緩んでくるのをシャルは感じ取っていた。

 

「………病気か?」

「………うん……気がついたときには、もう手遅れだった」

「なんで………あんなに元気だったのに……」

「………それはね………ヨウタ…」

「?」

「私のせいなんだ………」

 

 熱がこもらないシャルが吐き出した言葉に、陽太は違うと叫ぼうとするが、一度堰を切った想いは感情とともに目の前の幼馴染に向かって流れ出るのを止めることはできなかった。

 

「私のことを育てるために……いっぱい………いっぱいムリしてたんだ! なのに私は全然気が付かなかった!! お母さんのそばに誰よりもいたのに!! お母さんに誰よりも守ってもらってたのに!!!」

「違う………シャル、それは……」

「違わないさ!! わたしなんてさっさとお父さんに引き取られるべきだったんだ!! お母さんを早く自由にしてあげるべきだったんだ!! それなのに………わたしに少しでもいい学校行かせたいって、朝昼晩問わずに働いて!」

 

 いつの間にか嗚咽も混じり始める。止められない、陽太にぶつけるなんて自分はなんて醜いんだろうと自信を責めながらも、彼女自身言葉を止めることができないでいた。

 

「病気のことだってそうだよ!? わたしのことなんて構わずに入院すれば助かったかもしれないのに………ギリギリまで無理して! 薬もロクに貰わないで……食費も削って、自分の洋服代も、遊ぶお金も、全部わたしのために貯金して……」

「やめろ……」

「わたしの誕生日を毎年祝ってたくせに、自分の誕生日は仕事でいつもいなかった。私にお小遣い渡したいっていって………その次の日から、三日間『ダイエットするから食事はシャルだけで』なんて言って……お母さんのご飯を無くしてまで、お小遣いなんて欲しくなかったのに!」

「やめろ、シャル!」

「………そうだよ。何もかも、私なんかのために捧げて!! さっさと見捨ててしまえばもっと楽に生きれたのに!!………最後の最後まで私のためにって……!! わたし……なんかのため・」

 

 陽太は有無も言わずにシャルを抱きしめる……………これ以上、自分を傷つけるのを辞めさせねばならなかったから。

 

「私のせいだ……私がいたから……」

「シャルは悪くない………悪くなんてない…」

「だって、おかあさんが……おかあさんが……」

 

 エルーが死んだ時もこんな風に泣いていたのかと考えると、なぜ自分は彼女のそばに居れなかったのかと頭が焼き切れそうになる。

 人生の恩人に対して何もできていない自分への怒りを抑えながら、陽太は静かにシャルの額に自分の額をくっつけて彼女にできる限りの優しい声色で語りかけた。

 

「………エルーさんの死に際に立ち会えなかった俺が偉そうに言う資格はないかもしれないけど………シャル……俺たちは生きてる」

「ヨウタ………」

「エルーさんが生かしてくれた命だ。それなのに自分から死のうとするなんて弱い奴のすることだ………わかるか、シャル?」

「?」

「あの人は強い人だから、本当に強い人だから………自分の想いを最後まで貫いたんだ、きっと………シャルのために。何よりも自分自身の意志で」

「ヨウタ………」

「エルーさんはきっとシャルのこと責めたりしないよ。寧ろ何もしないで諦めたらきっとそっちの方が怒ると思うぞ。だろ?」

「………うん」

「………エルーさんの心残りになっちゃいけない。シャルはシャルとして生きなきゃいけないんだ」

 

 それだけ言うと陽太はシャルの額から離れ、窓の外に映る満月の姿を見る。

 

「泣いてもいい、弱音吐いてもいい………でももし、本当に大変なら俺に言ってくれたらいい。絶対に力になって見せるから……」

「ヨウタ………」

 

 その時、彼がどんな表情でそれを言ったのかシャルには最後まで見ることができなかったが、耳たぶがほんのり赤らんでいたことを彼女は見逃さずにいた。

 

「…………ありがとう、ヨウタ」

「お安い御用だ………」

 

 短くかわされた言葉であったが、二人の間にはもう数年間のブランクは存在していなかった。

 ただそばにいるだけで相手の心が伝わってくる。そんな暖かな空気が流れる。

 

「じゃあ………私、シャワー浴びてくるね♪」

「ああ………」

「ヨウタ………」

「ん?」

「覗いちゃ駄目だよ!」

「早く入りなさい!!!」

 

 

 シャルを無理やり浴室に放り込むと、ソファーにもたれながら大きなため息を漏らす。

 

「ぷはぁ~~………昔からあんなんだったか?」

 

 突拍子もないことを言うことには定評があったが、どうもさっきから自分の苦手な方向にばかり話を持っていくもんだから調子が狂ってしまう。

 

「……………」

 

 その時、陽太の鍛え上げられた聴覚が、パサッパサッという服が地面に落ちる音を拾い上げ、脳内でだんだん生まれたままの姿になっていくシャルの姿が作り上げられていく。

 

「ぬおおおおおおおおっーーーーー!!!」

 

 それを振り払うかのように、壁際で逆立ちしながら腕立て伏せを始めるヨウタ。世界新記録を狙えるペースである。

 

「(落ち着け! 考えるな!! 今は何も考えるなーーーーー!!!!)」

 

 無心になろうと心掛けるたびに、脳内では裸のシャルロットが形成されていくために、更なるハイペースになるという悪循環が発生する。

 

 それから約数十分後………彼の汗により床に水溜りができるほどになった時、ようやく陽太は逆立ち腕立て伏せを解除し、涼しげな表情でシャルに向かって振り返った。

 

「よお、いい湯加減…………」

 

 ―――バスタオル一枚巻いた状態のシャルロットさんが現れた!!―――

 

「ご、ごめん………着替えなんて…なかったから…///」

 

 頬を赤らめたまま濡れ髪の上目使いで陽太を見上げるという複合奥義で責めてくるシャルロットさんに対して、パニックの極みに立った陽太は猛然と寝室に行き、クローゼットの中からYシャツを取り出してシャルに手渡すと、浴室に駆け込む。

 

「ぜはぁー! はぁー、ぜはぁー………」

 

 別段息切れするようなことは何もないのだが、先ほどからなんか大胆な行動になってきているシャル相手に気疲れしたのか、何も考えぬまま服を脱ぐと頭から冷水をぶっかける。

体にはあまりいいことではないのだ、今の取り乱した自分にはちょうどいいと思う陽太であった。

 

「シャル~~~あがるぞ~~」

 

 一応声をかけて浴室のドアを開くヨウタ。これ以上の嬉し恥しハプニングはご免である。

 

「…………明かり消えてる」

 

 シャルが消したのだろうか、月明かりのおかげで視界は十分に取れているため苦もせずに歩く陽太は、ソファーに丸まっている金色の子猫を見つける。

 

「スゥー………スゥー……」

「……………ハァー」

 

 ベッドで寝ろと言っておいたにも関わらずソファーで静かな寝息を立てるシャルにため息が漏れてしまう。

 まったくもう………とこのまま起こして説教でもしてやろうかと半分ほど考え付いた時、月明かりに照らされた彼女の生足が目に入る陽太。

 

「……………」

 

 よく見れば今の彼女の状態は裸にYシャツである。裸にYシャツである。大事なことなので二回言ってみたが、今の陽太には非常に目に毒である。

 

「……………」

 

 シャルが眠っているためか、はたまた動揺したためか、彼女の今の状態を凝視する陽太。

 

 金色に伸びた髪は腰の辺りまで伸びており、さらさらと秋ごろの稲穂のようになびいていた。シャツの裾から伸びた脚は細長く、されど決してガリガリというわけではなく、男の自分にはないしなやかさが存在していた。そして問題なのは第二ボタンが外されていたために先ほどから見え隠れしている胸の谷間である。

 陽太はシャルが着やせする人間であるとこの時初めて知った。もっと正確言うと多分今まで生きて見てきた女性の中でこれほど見事に着やせする人間はいないだろう。

 

 幼馴染の発育具合を再確認し、心の中にある理性のリミッターがぶち壊れそうになるのを何度も抑えながら、陽太はシャルを抱き上げると寝室まで起こさぬようにそっと連れていく。

 

「………ん?」

 

 極力音も振動もさせないように気を使ったのだが、寝ている感触の違いに違和感を感じたのか、シャルが目を開いてしまう。

 

「起きたか?」

「ん………私は………!!」

 

 自分がお姫様だっこされていることに気がついたシャルが慌てて降りようとする。だが、それを制止する陽太。

 

「わぁっ! きゃあぁっ!!」

「暴れるな、危ない……」

「ヨ、ヨウタ!!………下ろして!!」

「すぐつくよ」

 

 器用に寝室のドアを開くと、ベッドまで一直線に進み彼女を降ろす陽太。

 

「お、重くなかった?」

「むしろもう少し何か食え………病人かと思ったぞ?」

 

 重くなかったと遠回しに言ってくれたことが嬉しかったのか、離れていく陽太の手を掴むとシャルは驚くべき提案をするのであった。

 

「ヨウタ………一緒に寝よ!」

「!?……はいぃ?」

 

 思わず声が裏返る陽太であったが、シャルはいたって嬉しそうに彼に提案を押しつける。

 

「うん、決まりだね!」

「ちょ、待てぇ!」

「ダ~メッ、待ったなしだよ」

「俺だって一応男で………」

「大丈夫大丈夫……」

 

 何が大丈夫なのかと小一時間問い正したい陽太に向かって、彼女は満面の男殺しの笑みで、こう答える。

 

「私は………陽太のこと信じてるもん!!」

 

 真っ直ぐな、とても真っ直ぐで花が咲いたような笑顔を目の当たりにした陽太が眠りについたのが、深夜を超えて明け方付近になってしまったのは言うまでもないのだろう………。

 

 

 

 

 

 

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