何のことかは、フランス編のメインイベント、陽太VSオータム達によるISバトルで語られています!
あと、あとがきにブレイズブレードのデータも載せました。
一緒にご鑑賞ください!!
日が落ち、歴史的な街灯が立ち並ぶパリの夜の街を、四人組の少女達が紙袋と荷物を抱えて通りを歩いていた。
「まったく……アンタの買い食いのせいで、時間食っちゃったじゃない!」
「ふふふっのふ~~ん~♪」
14.5歳の金髪を両サイドで纏めたツインテールの髪型をした少女が、同じ歳ぐらいの口の周りにドーナツの食べカスをつけた茶髪のお団子ヘアをした少女を注意しつつ、手元の携帯に似せた情報端末で新着の情報がないかチェックを行っていた。そしてその後ろでは……。
「ここ数日、親方様からの連絡はこないどころかお姿も見えない………一体、どこにいかれのたか…」
「親方様のことですから、きっと大丈夫ですよ~」
「キサマッ!!………もしもの事があった時、どう責任を取るつもりなんだ!?」
「ぐ、ぐるじい!」
歳は17.8ぐらいの、一本だけ異様に長く飛び出した犬歯が特徴的なショートヘアの東洋人の少女が、今にも卒倒して倒れそうなぐらいに顔面を蒼白とさせながら落ち込んでいたかと思えば、急に怒り出して、16歳ほどの眼鏡をかけた理知的な印象の銀髪の三つ編みの少女に掴みかかっていた。
四人の中では一番長身のショートヘヤの少女は、同年代から見ても頭一つ分抜けているぐらいに大型なため力も強く、みるみる眼鏡をかけた少女の顔色が土気色に変わっていく。
「よしなさいスピアー………みっともない」
「なんだとフリューゲル?」
そんな少女を見かねたのか、歳も身長も低いフリューゲルと言われた少女が、仁王立ちしながらスピアーという少女を注意する。
「貴方と違って親方様は私達が心配しなくても大丈夫なの………むしろ私が心配なのは貴方の方。また変な面倒事起こされると私の責任になるんだから、注意しなさい!」
「貴様っ!………なぜ私の不始末がお前の責任になる?」
「決まってるじゃない!……リーダーはわ・た・し。貴方は部・下・!……おわかり?」
カチンッ! という音が聞こえたのは気のせいなのだろうか?
眼鏡をかけた少女を乱雑に放り出すと、背の低いフリューゲルに額をこすり合わせながら睨みつける。
「いつお前がリーダーだと決まった? リーダーはNo.2のこの私だぞ!?」
「貴方がNo.2とか何の冗談なの? 全く笑えないんだけど?」
「お子様のお前につき従うなど出来ないと言っているんだ……理解できたか、このド貧乳」
「十回ぐらい死んでみる? このド脳筋!」
目を血走らせ、全身から迸って暑苦しい炎のような殺気を放ちながら睨み合う二人。眼鏡をかけた少女の背中を擦りながら、お団子頭の少女は呑気な声で二人の様子を眺めていた。
「フリちんもスピちんも仲良しさんだね! リュっちん!」
「………私、時々フォルゴーレのその性格が凄く羨ましくなるんだけど…」
今にもリアルファイトが起こそうとする二人をさりげなく遠巻きで見守る二人。
その時であった。
突如、上空で爆発音が響き渡り、人々が一斉に空を見上げる。
「ふ、ふたりとも~~!?」
リューリュクという名の少女がお互いの襟を掴んで殴りあおうとしているフリューゲルとスピアーに慌てて声をかける。だが声をかけられるよりも先に二人は上空を注意深く観察していた。
しばし空を睨みつける四人………だがそこへ、フリューゲルの通信機に連絡が入り、四人の視線が一気にそこへそそがれることになるのであった。
☆
パリの夜空を四つの光が美しいイルミネーションとなって着飾るように飛び交い続ける。
一つは神話の物語から出てきたような、全身を白い鋼で覆われた天空を統べる炎の騎士にして帝王たるIS、『大空炎帝(たいくうえんてい)』の異名を与えられた『ブレイズブレード(猛炎の剣)』。
朱金色の炎を纏って夜空を駆ける空の炎帝であったが、その周囲を取り囲むように三つの禍々しい紫光が周囲からマシンガンでの攻撃を仕掛けていた。
残り三つの光の正体は、悪鬼の魂を宿し己が欲望と狂気と言う糸で獲物を捕らえ、蹂躙して捕食する『凶つ蜘蛛(まがつくも)』と恐れられるIS、『亡国機業(ファントム・タスク)』が改造を施したIS『アラクネ』。
通常、ISの戦闘となるとルールに定まった内容で行われ、戦場となるフィールドも専用の競技用アリーナで行われるのが一般的であり、ましてやリミッターが解除されている軍用ISが一般市民が多数いる大都市上空での戦闘など、国家間の大問題であるがために公式では、今まで確認されたことはない。
だが今、パリ市民の前では、規定も協定も最低限の安全性もない、ルールという鎖が解き放たれた四機の最新鋭兵器の空中戦という前代未聞の珍事が行われていたのだった。
「えっらそうな態度取りやがって、糞餓鬼が!!」
オータムのマシンガンが撃ちながら高速で接近してくる。先ほどから陽太は攻撃を一方的にされるがままであった。三機の攻撃を紙一重で回避し、左腕のシールドで何とか受け止めながら逃げ惑う。
火力も数も今の所アラクネが圧倒的に勝っているが、敵ISの飛行速度は少々やっかいだと判断したオータムは、出来るだけ長時間相手を嬲りながらエネルギーを減らして行動不能に陥らせた後、ゆっくり丁寧にぶち殺そうと、舌なめずりをしていた。
部下の一人がマシンガンから、グレネードランチャーに武装を再構築して発砲する。それを陽太はバレルロールのような動きで回避すると同時に上空へと一気に急加速したした。そんな陽太を撃ち落そうとオータムと部下がマシンガンとアサルトライフルで攻撃を仕掛けてみるが、あらゆる弾丸が自分の意思を持っているかのように陽太の至近距離を通過していく。先ほどから一度たりとも直撃はしておらず、全ての攻撃が寸でのところでところで回避されてしまう。
「テメェーら、もっと良く狙え!!」
だんだんと焦れてきたオータムが通信越しに部下に怒鳴り散らす姿を観察しながら、相手の能力の分析を陽太はほぼ済ませていた。
「(三人とも適正はBかCだな。射撃の精度もイマイチだし、普通のISなら手間がかかる相手じゃないんだが……やっぱり問題はオーガコアの方か)」
別段陽太は敵に押されていたわけではない。ある程度手の内を知りたくてあえて逃げ回るフリをして、オータム達の能力の解析をしているのだ。そしてそれも大体終了させる、どうやら三人のオーガコアは未だ危険域に到達はしていないようである。
人間に異質にして異形の力を与える『アレ』は、ISの能力以上に危険な代物なのだ。あまり時間を与えると面倒なことになりかねない。
現にリーダーであるオータムのあの過剰なほどの攻撃的な言動を見る限りは……
「適性はともかく、浸食度はB+といったとこか……」
「何の話してやがんだ!?」
「すぐ終わらせてやるっつう話だ!!」
「!?ッ」
最初は何が起こったのか理解できなかった。
部下の操縦者のISが一人でに装甲が砕けたのかとオータムは感じていた。
だがそれが、神速で飛び立った陽太が放った攻撃によっての撃墜だとオータムが理解した時、彼は次なる行動に出ていた。
右手に持った分と合わせ、左手にも15mm口径カスタムハンドガン『ヴォルケーノ』を構築し、アサルトライフルの射撃を横に滑るように回転しながら回避すると同時に、振り返りざまに三発発射する。正確無比に放たれた弾丸は、部下の一人の肩と武装を貫き、ダメージで大きく吹っ飛ばしてしまった。
「何ぃっ!?」
「フンッ!」
動揺して動きを一瞬緩めるオータムの隙を突き、空気が弾け飛ぶような加速で接近した陽太は、動揺して距離を開けるタイミングを失った部下のIS使いの正面に躍り出る。
先ほどの動きを見ていたためか、シールドを呼び出して後方に距離を取りながら発砲しようとしてくる部下のIS使い。上司よりも冷静だな、と心の中で褒めながらも容赦をする気もなく、自分に向って放たれる弾丸を接近しながらミリ単位で回避していく。装甲を掠って火花が散る感覚を楽しみながら一瞬で背後に回り込んで密着状態に持ち込んでしまう陽太は、精一杯の賛辞を彼女に送るのだった。
「!?」
「いい動きだったが、相手が悪いな」
褒め言葉と同時に、メインスラスターを撃ち抜かれて墜落していくアラクネとIS操縦者。サブスラスターとPICがあるから大怪我にはなるまい、と考えながら見送る………これで少なくともあの部下の女はこれ以上の空戦はできなくなってしまった。
対して、ホンの三秒あまりで一気に劣勢に立たされたオータムは、陽太の実力を目の当たりにして顔色を変え、全身の毛穴から滲み出る嫌な汗を悟られないように彼を睨みつける。
「(円状制御飛翔(サークルロンド)をやった直後に、瞬時加速(イグニションブースト)と三次元躍動旋回(クロスグリッドターン)を同時にこなしやがった!!………化け物か!!?)」
通常、瞬時加速中は他方向への旋回行動はできないと言われているが、目の前のISと操縦者はそれを平然と当たり前のようにやってのけている。それはゼロコンマ数秒にも満たない僅かな時間のマニュアルによる姿勢制御とバランスの変更を行うという神技である。
そんな常識では不可能な芸当をいとも簡単にやってのけられ、戦慄を覚えるオータム。
―――神話の中に語り継がれる化物のような存在―――
嫌な考えが彼女の脳裏を掠め、それが激情へと一瞬で変化された。
決して認めることができない、認めがたい。なぜならばオータムはそんな芸当ができるIS操縦者などは一人しかしっていないからだ。そして彼女はその存在を全身全霊で憎んでいた。
「(あいつと同種の存在!?………)そんなもん認められるかぁぁっ!!」
怒りが彼女に冷静さを欠かせた代わりに、折れかけた闘志に火をつけた。
指先でエネルギーワイヤーのようなものを作り出し塊にして陽太に向って投げつける。見れば先ほど被弾した部下のISも同じようにワイヤーを形成している。投げつけられたワイヤーの塊は、陽太の目前で破裂すると巨大な網になって全身に絡み付いて動きを封じてしまう。
「!?」
「今だぁっ!」
オータムから合図を受けた部下の操縦者は、身動きが取れない陽太にエネルギーワイヤー絡み付かせると、全身のスラスターを駆使して彼を振り回し、真下にある廃墟と化しているビルに叩きつけた。
コンクリートをぶち抜きながら中に突っ込んでいく陽太に対して、オータムは間髪入れず左手にマシンガンと右手にアサルトライフルを構築し、フルバーストで乱射する。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇっ!!」
弾が切れると素早くマガジンを交換し、過剰な程に撃ちまくるオータムの狂気じみた姿に、部下も言葉を無くしてしまう。約二分間休みなく撃ち続けたオータムは、キンッ、キンッと鳴る手応えのないトリガーの感覚によってようやく最後のマガジンが弾切れを起こしたところで、銃を撃つ手を止めて彼の死体を確認しようとする。
「ハア、ハア、ハア………あれだけ撃ったんだ。絶対防御が発動してても足りやしないはずだ」
肩で息をしながら、硝煙と煙が立ち込める廃ビルを見つめるオータム。これだけの攻撃を放てば通常ISならば致死ダメージに十分に達しているはず。
生意気な小僧をいたぶれなかったのは残念であるが、ここはゆっくりと死体を引きずり出して、あの小娘にでも見せつけてやるか、と暗い嫌がらせを考え付いた。
そうだ、そうしてやろう。あの小僧の変わりに、あの小娘を死ぬほどいたぶってやる。自分の目の前で茶番を行ったあの家族もろとも………。
だがその暗い愉悦は突如、廃ビルからコンクリートの破片と舞い上がった粉塵を消し飛ばす真紅の炎がが全て絶望へと変化させる。
「!!………あれは…」
何事かとオータム達がセンサーで確認したとき、炎の中心からゆっくりと白い装甲が歩き出す。瓦礫も銃弾もワイヤーもすべて蒸発させた火炎状態のプラズマエネルギーは、天を焦がす勢いで噴き上がり、市民達の目に止まるほどの炎の柱を生み出していた。
「な………ば、化物か!?」
自分達の攻撃が全く通じていないことに戦慄していたオータム達に向かって右手を差し出す陽太。何かを掴んでいるように作られた握り拳が開かれた時、そこからは彼を射止める為にオータムが放った弾が醜くひしゃげた状態で右手から零れ落ちていく。あれだけの弾雨の中を、あろうことか飛んできた弾を掴んで止めていた陽太の異常なまでの強さに圧倒的な絶望感がオータムに襲い掛かってきた。
陽太は二挺のヴォルケーノの銃口を向ける。するとブレイズブレードから噴き上がっていた炎が一部銃口から内部に取り込まれ、ハンドガンが熱せられたように赤く輝いた。
「俺のお仕置きはちょっと熱くて痛いぞ」
銃口から放たれた銃弾が瞬時にプラズマエネルギーを開放し、直径1.5mほどのプラズマ火球を形成してオータム達に襲いかかり直撃する。
「グギャアアアアッ!!」
嫌な匂いがオータムの鼻腔を満たすが、そんなことに構っている場合ではない。オータム達は避ける暇すら与えられず上空から、市内の一般道に叩きつけられるのだった。
そして最初何が降ってきたのか理解できていなかった市民達であったが、燃え盛る炎の残滓を纏いながら、地面でのた打つオータムの姿を目の当たりにして、パリ市民達はISの戦闘が起っているのだと理解し、我先にと逃げ惑う。
そんな中、オータムは残された冷静さをかき集め自分が置かれた状況を必死に分析しながら周囲を確認していた。アラクネのシールドエネルギーが一瞬で一桁に突入しただけではない。装甲の30%が融解して、武装も大半が使用不能。自分の隣にいた部下は地面に叩きつけられた衝撃で意識を失ったままで、先ほどスラスターを撃たれて地面に落下したもう一人も、戦力的にはもう当てにならない。そもそも戦闘力が端から違いすぎる。
力の差に歯ぎしりする彼女の前に、止めを刺す気でいるのか、両手に銃を携えた陽太はまるで空の王者のような優雅に電柱の上に降り立った。
「このガキィィィィ!!!」
「さっきからそればっかだな。ガキ相手に手も足も出せないアンタは一体何なんだ?」
陽太の冷たく見下すような言葉が、オータムの逆鱗に触れる。自分が見下されているという事態に、彼女のプライドは既にズタズタであったのだ。
「(コイツっ! 殺す、殺す、殺すッ!………私を馬鹿にするテメェらなんざ、絶対にブチ殺す!!)」
尋常ではない恨みの念と、呪詛にも似た誓いの言葉が脳裏からあふれ出て、全身を血液のように駆け巡る。目の前の白いコイツを殺したい。憎い、憎い、にくい、にクイ、ニクイニクイニクイニクイニクイッ!!!!
「!!」
―――ニクシミ、ミツケタ―――
臨海にまで達した憎しみが、眠れる『悪鬼の御魂』を呼び覚ます。
「………?」
突然オータムが沈黙して動きを止めたことを不審に思った時、ISの個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)に束からの連絡が入る。
『まずいよ、ようちゃん!』
その珍しく焦ったような声に、一瞬目の前の敵から意識を外してしまう陽太。
『思ってたよりも適合値が高い! このままじゃ羽化しちゃう!』
「なっ!」
予想を上回る束の解答を聞いて、再びオータムの方に視線を戻そうとした時、突如彼の腹部を黒い触手のようなものが強打し、勢いでビルに突っ込んでしまう。
「グハッ!」
陽太をビルに叩きつけた黒い触手。それはかつてオータムのアラクネであったものが、周囲の物質を取り込んで作り出した金属状の脚であった。
まるで繭を作るように黒い触手はオータムを包みこみ、一瞬で繭を作りだすと今度は無数の触手を生み出し周囲にあるコンクリート、木材、車、ありとあらゆる物質を手当たり次第に触手から文字通り呑み込んで、中心の繭に送り込んでいく。それはさながらアメーバのような単細胞生物が餌を取り込む姿に似ていて、仮に人間が周囲にいればそれすらも同様に取り込んでしまったであろう。
時間にして僅かに十数秒………ほんの僅かな静寂の後、黒い眉は甲高い音を立てて砕け散り、内部から奇怪な異形をした『何か』が10数メートルの何かが飛び出した。
「グヒヒヒヒィ…………アハハハハハッ!!」
あたりで一番高いビルの屋上に着地した『それ』は、屋上を踏み潰しながらゆっくりと起き上がる。
それは正に漆黒の『蜘蛛』そのものであった。
全長は10数メートルの巨体と8本の鋼鉄製の脚部を持ち、正面には憎悪を煮えぎらせた紅い目が二つ、ギラリと光り輝く。そして、その背中には肌の色も何もかもがISと同色の漆黒と化したオータムが上半身だけを生やして、不気味な高笑いをあげて周囲を見下ろしていた。
「気持ちいいいいいぃぃぃぃっっ!!………そうだよ、私が欲しかったのはこれだよ!」
全身を駆け巡る力の奔流は、彼女はかつてないほどの爽快感を感じている。もうこれで誰にも見下ろされることはない。圧倒的な全能感がその確信を彼女に与えていた。今の自分を脅かせる者などこの世のどこにも存在しない。そんな恍惚とした感覚が彼女を支配していたのだ………その『正体』が何なのかも知らずに。
「この力なら、私は誰にも負けない!!………見ててくれスコールッ!!」
ここにはいない想い人の名を叫びながら、獲物を探すオータム。
「さてと………」
まずはあの生意気な小僧である陽太を血祭りにあげてやるか、そう思いオータムがハイパーセンサーでビルの中に埋れている陽太の方を確認しようとしたとき、コンクリートの破片を吹き飛ばして、陽太が真っ直ぐオータムに向かって突っ込んでくる。
「ギィハハハハハッ!! 元気がありそうで良かったぜ小僧!!」
「チッ! もうオーガコアと融合しやがったか」
オータムと同じ高度まで辿り着いた陽太は、目の前のオータムと睨みあう。
「今すぐ、ISを解除しろ!」
「はぁんっ?」
「戻れなくなるぞ!!」
「何言ってやがんだテメェ………やめるわけねぇーだろ! こんな気持ちのいいことをよお!!」
八本の脚部から突如マシンガンの砲門が現れ、先ほどとは比べ物にならないほどの弾幕を放つオータム。アサルトライフルが機能ごと取り込まれ、独自にISが改良を加えたものだ。
その銃弾の嵐を空中で全弾回避しながら、陽太は相手の説得はすでに不可能だと判断し、ヴォルケーノを構築して返す手で撃ちまくる。
吸い込まれるようにオータムに向かって飛んでいく弾丸。だがその攻撃に機体が反応したのか、突如背中の数か所からエネルギーワイヤーを飛び出させて、弾丸を弾き返してしまう。
「チッ!」
「さっきまでとは違うんだよ!! 私は強く新しく生まれ変わったんだ!!」
「調子に乗るな! お前はISに取り込まれてんだぞ!?」
攻撃力も防御力も段違いに上昇しているアラクネの性能に、心酔しきっているオータムは巨体を跳躍させると、蜘蛛の糸を自分の腕に絡みつかせ、それで巨大な手を構築して陽太に殴りかかる。
その攻撃をあっさり回避する陽太であったが、オータムは予め予想していたのか、マシンガンの弾の代わりに今度はエネルギーワイヤーを無数に放って、空中で巨大な蜘蛛の巣を形成していくのであった。
「これはっ!」
「絡み取られちまいな、小僧!!」
アラクネが作り出した蜘蛛の巣のワイヤーの一本に脚が引っ掛かる陽太。その瞬間、周囲のワイヤーが独立した意思でも持っていたかのように、彼の全身に絡みついて動きを封じてしまった。
「全身引きちぎってやるよ!」
「クッ!」
凄まじい力で全身が引っ張られる。スラスターを全開にして抜け出そうとするが、周囲からよりワイヤーが絡みついてきてそれも思うようにいかない。
悲鳴を上げるように嫌な音が装甲に奔る中、オータムはその様子をいたく上機嫌そうに眺めながら、陽太に言い放つ。
「安心しろよ小僧………お前はいきなり殺したりしねぇーよ。まずは両手と両足を引きちぎって生け捕りにしてやる! そんでからお前のお姫様のところに行って、テメェの目の前でお姫様を嬲ってやんよ!!」
「ッ!?」
「初体験は完了済みか!? それともキスもまだな奥手な童貞君か!? まあ、あんな乳臭い小娘なんざ私の趣味じゃねぇーけど、お前をいたぶれると考えるとなんか興奮できるな!! どうだ? お前も嬉しいだろ? 愛しのお姫様がお前の名前を呼びながら私に汚されていく公開プレーなんて、めったに観れない代物が拝めてよォッ!?」
その一言が引き金になった。
無言でブチキレた陽太がワイヤーを掴むと、ありったけの力を込めて引っ張り始める。
「無駄無駄無駄!、テメェの力じゃこのワイヤーが切れることなんざ……」
そう、力では決して切れることはない。だが彼のISの能力はそんなものではないのだ。
ワイヤーを掴んだ手、そこから真紅の炎が噴き出す。その炎を見たオータムは、若干怯えながらも強気な姿勢を崩さない。
「ば、馬鹿かテメェは………そんなチンケな炎で、私のワイヤーは…」
「うおおおおおおおおっ!!!」
ブレイズブレードが彼の闘気に呼応するように、コアの出力を飛躍的に上昇させていく。それと連動して噴き出した炎は、すぐさま巨大な炎の嵐と化してワイヤーを一瞬で焼き払う。そしてそれだけでは収まらず、炎がワイヤーの上を走り、オータムの全身を包みこんでしまったのだ。
「ギィィヤアアアアアアアアッ!!! 熱いィィイッ! 熱いいいぃぃっ!!!」
文字通り火達磨となったオータムが、身体を焼く炎に狂いながらその場を離脱しようとするが、陽太はまるで逃がさないと言わんばかりに、ヴォルケーノからプラズマ火球を連射し、アラクネの脚のほとんどを粉砕してしまう。
脚を失い地面に落下していくオータム。だが、陽太は更にそこに突撃し、禍蜘蛛の腹を蹴りつけると背中のスラスターを全開にして落下地点を無人の広場にずらし、彼女を地面に叩き付ける。
巨大な砂煙を上げながら地面にめり込むオータム。
陽太は、そんな彼女を見下ろしながらヴォルケーノを量子化し、素手で彼女を見下ろす。
「いらん事をベラベラ喋り過ぎだ。黙れないというのならもういい………俺が黙らせてやる」
「だまれぇっ!!」
まだ諦めきれないというのか、ボロボロのアラクネを操り、残った脚でブレイズブレードを突き刺そうとするが、その一撃を無造作に掴んだ陽太は、自身の数倍の巨体であるアラクネを重量差など関係なく一本背負いの体勢で投げ飛ばしてしまう。
夜の公園の木々を薙ぎ払いながら転がっていくオータムであったが、彼女が体勢を立て直すよりも早く、アラクネの腹に飛び膝蹴りを打ち込み地面にめり込ませる陽太。
続けてオータムが何か悲鳴を上げながら自分に話しかけてくるのを無視し、炎を纏った拳を豪雨のような勢いでアラクネに連続で叩きつけ、ボロボロの装甲を凹ませ、破砕し、引きちぎり、見るも無残な姿へと変貌させていく。
「ヒィ………た、たすけ…」
一息つくようにゆっくりと自分から離れていく陽太に、命乞いするようにか細い声で語りかけるオータムは、陽太が全身から放つ巨大な闘気とISの姿と合わさって、一つのイメージを感じ取っていた。
―――で、悪魔(ディアボロス)―――
闘争の神なんてものがいるのなら、間違いなく目の前の男は、そのろくでもない神の寵愛を受けた存在だと確信する。なぜなら、彼女は知っているのだから………そのような怪物が自分の所属する組織にも一人いるのだから。
「終わりだ………!」
終わりを告げる言葉と共に背中に収納していたナイフを抜き去ると、右手に構える。ナイフのが伸びて、一本のロングブレードと化す。それを陽太が天に掲げると刃と全身に炎が纏わりつき、ブレイズブレードがまるで炎の中から生まれた不死鳥のような姿へと変化させた。
「フェニックス・ファイ・ブレードッ!!!」
炎の不死鳥と化したブレイズブレードが、恐怖と戦慄と絶望に戦く禍蜘蛛のオータムに激突し、彼女の意識と悪鬼の魂ごと、紅蓮の大爆発を起こす。
そして燃え盛る炎の中から、オータムとISコアを両手に持った陽太が飛び出し、無人の広場に着地する。
腕の中にいたオータムを乱雑に地面に放り出すと、白目を向いて気を失っている彼女に切っ先を向け、内心でとある決断を下す。
「……………」
―――生かしていても彼女はおそらく同じことを繰り返すだろう。ならばこの場でいっそのこと……―――
一瞬、冷たい考えが頭をよぎるが、すぐさまそこにシャルの姿が重なってしまった。まるで、彼女を殺そうとした自分を戒めるように。
「我ながら甘いのかな………」
自分を殺人狂いとは思ったことは一度もない。だが博愛主義者でもなければフェミニストでもない。殺すつもりで向かってきた以上、返り討ちにあったところで言い訳も出まい。
それが陽太の考えであったのだが、どうもこの数日間で、何かが変化してしまったようである。
そして乱雑に地面に放置されたオータムと、オーガコアを見比べながら、どうしようかと考え込むのだった。
「腐れロリコンのこともある。一度デュノア社に戻っておくか………メンドクサイけど」
帰りたいような帰りたくないような微妙な心境になりながらも、陽太が仕方なしにデュノア社に向かおうとした時であった
「!!?」
どこからともなく放たれるビーム。間一髪それに気がついた陽太が回避しようとするが、背後にいるオータムの存在を思い出す。
「チッ!!」
手間ばかり掛けさせると毒づきながら、左腕のシールドでビームを受け止めた陽太であったが、その時、更に別方向から、高速で黒い影が接近していたことに気がついた。
「(ハイパーセンサーに反応しない!? 隠密戦用機(ステレス)か!?)」
それがISだと至近距離まで気がつかなかったことに驚く陽太。
「!?」
そこに一瞬だけ、背後から貫かれるような強烈な『視線』を感じ、反応が鈍ってしまう。僅かな時間呆けてしまったが、すぐさま意識を立て直して見せた陽太であったが、そこに自分の手の中に先ほどから握られていたオーガコアがないことに気がつく。
「てめぇ!?」
見れば先ほどのISの手に奪い取られていたのだった。しかももう片方の手には気を失ったオータムまでもがおり、目の前の操縦者がかなりのやり手であることを物語っている。
黒いバイザーと、蝙蝠のようなウイングを背中に持ち、全身を黒一色で覆いながらも金髪を両サイドで纏めたツインテールの髪型をした小柄な少女であった。
「どこのどいつ……グッ!?」
舐めた真似をしてくれた例にたっぷりとお礼をしてやろうかと思った矢先、彼女の背中で突然閃光弾が弾け、視界が真っ白になる。
しばし、目を閉じてしまっていた陽太であったが、徐々に視界を取り戻し、周囲を見回してみる………だがそこにはすでに、謎のISもオーガコアもオータムも影も形も見当たりはしなかった。
「………チッ!!」
出し抜かれたことに腹を立ち、地面を蹴り上げる陽太であったが、その時、消防車のサイレンが徐々に近づいてくることに気がつき、とりあえずこの場を去ることにし、跳躍して上空を気がつかれないように飛行する。
「だが、あのIS…………」
何かしらのステレス機能を持ったISなのは間違いない。だが、自分があそこまで接近されていたことに気が付かないとは…………。
そして何よりも、さっきの自分を刺すような強烈な存在感を伴った『視線』………。
どうやら亡国機業とは、長い付き合いになるかもしれないと、陽太の中には言い知れぬ予感が渦巻くの中、デュノア社への道すがら、陽太はポツリと呟く。
「さてと………」
シャルの元に帰って、そして………
「もう決めたことだろ?」
自分にそうやって言い聞かせるような独り言をつぶやく陽太。
もう、彼は決めたのだから………。
「さよならを、ちゃんと言うって……」
主人公、陽太のIS
IS名:『ブレイズ・ブレード』Ⅱ
世代:第3.5世代
戦闘タイプ:空戦近距離戦型IS
使用フレーム:ハイパーフレーム Ver『α(アルファ)』
武装:熱エネルギー増幅機構搭載可変剣『フレイムソード』
15mm特殊弾頭使用カスタムハンドガン『ヴォルケーノ』×2
多目的防御楯(タクティカルガードナー)(左腕固定)
単一仕様能力:???
通り名:大空炎帝(たいくうえんてい)
機体説明:篠ノ之束が次世代ISのプロトタイプとして開発したISで、正式名称は『ブレイズ・ブレード・セカンド』である。これは既に第二形態移行(セカンドシフト)が行われている証であるが、劇中ではもっぱらブレイズ・ブレードとしか呼ばれていない。
対オーガコア搭載IS用にチューンされたこのISは、機体各所に内蔵されている熱エネルギー変換炉とISコアの二つによるハイブリットによって圧倒的な高出力を得ており、全ての性能が汎用型第二世代とは比較にならないほど高く、特に空戦時の機動力と運動性能は圧巻。また格闘戦を主眼に置かれた武装とセッティングによって、近接戦闘を得意とし、第三世代最強の機体として君臨している。
機体各所に内蔵された熱エネルギー変換炉は、空間に漂っている空気や電磁波、紫外線や放射能などを機体各所から取り込み、無尽蔵なプラズマエネルギーに変換できる次世代エネルギー機関であり、これによって生成された高密度超高熱のプラズマ火炎での攻撃力は凄まじく、束曰く『炎の剣を携えた大空の皇帝』の異名を与えられている。また、プラズマエネルギーをシールドエネルギーに転換させることも可能。これによって無補給の戦闘持続ができる。(ただし中の操縦者の負担は考慮しての無補給というわけではない。あしからず)
機体構造
装甲・フレーム
装甲素材こそ他のISと同一であるが、プラズマエネルギーのコーティングを受けた恩恵で、他ISよりも軽量かつ高硬度を実現されている。また使用されているフレームには、篠之乃束が初めて搭載した、フレーム内部にコンデンサーを内蔵することで、大火力、高機動、戦闘継続時間の大幅延長を目的にした「ハイパーフレーム Ver『α(アルファ)』を採用しており、現存するどのISを上回る戦闘力を発揮する設計となっている。
頭部
非常に珍しい全身装甲のため、頭部は純白マスクに一角獣のような金色のアンテナと、深紅のV字のセンサーを持ち、深緑のバイザーによって顔部全てを覆い尽くされている。これによって見た目は『おとぎ話に出てくる騎士』のような出で立ちになっている。
胸部
各装甲の外周に紅いラインが走らされ、胸には瑠璃色とエメラルドの宝石のようなものが埋め込まれている。ちなみに中央の宝石のようなものがメイン熱エネルギー変換炉。両手両足と腰部には内蔵型のサブが埋め込まれている。
腕部
右手は取り回し重視のため軽装であるが、操縦者の陽太の手癖の悪さかよく殴りまくる。左腕には固定型の多目的防御楯(タクティカルガードナー)があり、近接戦闘時の邪魔にならないよう小型にされているが防御力は非常に高く、また内蔵武装としてロケットワイヤーと撹乱用の各種グレネードが発射可能である。
背部
二枚一対のメインスラスターを兼任している白き鋼の翼が取り付けられており、優雅さとは裏腹な爆発的な機動力と加速力を秘めている。
脚部
足裏にはサブスラスターが内蔵されており、空戦時の方向転換や急加速に用いられる。また本来の用途は別にキック時に同時使用することで威力を倍増させることができる(回し蹴り限定)
兵装
熱エネルギー増幅機構搭載可変剣『フレイムソード』
伸縮自在で切れ味抜群の一品。またプラズマエネルギーを増幅させることで、必殺の「フェニックス・ファイ・ブレード」を放つことができる。ちなみにこれは陽太が必殺技と自称しているだけで、実際は単一仕様能力とは別なもの。
15mm特殊弾頭使用カスタムハンドガン『ヴォルケーノ』
第一世代の大口径ハンドガンをカスタム化した武装。すでに別物と化すほどの魔改造が施されており、威力、射程、連射速度、装弾数が跳ね上がっている。更に陽太は発射時にプラズマエネルギーを弾に込めて、撃ち出すと同時に破裂させてプラズマ火球状での攻撃をするという応用も見せている。
ちなみにマガジンはグリップ部ではなく砲身の真下。
IS spec data
(評価は、SABCDEの順、更に細かく各評価に+-がつく)
近接:A
射撃:B-
運動性:A+
機動力:A+
防御力:B+
索敵力:B-
特殊機能:A+
総合評価:A+