IS インフィニット・ストラトス 〜太陽の翼〜   作:フゥ太

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またしても今回は陽太がやらかします!


特訓~後編~

 

 

 

 

 

 日本某所・マンション15階

 

 都内の夕方の煩い位の喧騒の中において、この部屋だけは恐ろしく静かに、時々カチカチという音だけが鳴り響いていた。

 山積みにおかれたダンボールや家具の数々、それらをリビングや寝室に置きっぱにして、置かれたテーブルの上で更に山積みにされた『プリンのカップ』の数々を量産しつづけている一人の男………捕食獣の目をした精悍な顔つきと、山猫を彷彿させる均整のとれた筋肉質の体型をした青年は、何かに取り憑かれたかのように黙々とプリンを平らげ続けていた。

 これは彼が大の甘党でプリンがないと生きてはいけない………というわけではなく、彼の特殊な『体質』の影響か、大量の糖分を必要としているための行為で、別段、プリンだけが大好きなわけではないのだ………それ抜きにしても甘党であることは否定しないが………。

 

 黙々とプリンを平らげ続けること早30分………彼の手が、11個目のプリンに伸ばされた時、テーブルの上にプリンと一緒に置かれていた携帯に着信が入る。

 画面を見た瞬間、彼は相手が誰なのか理解し、露骨に嫌そうな顔をするが、迷うことなく通話ボタンを押し、それでも抑えきれない嫌悪感が声色に出てしまった。

 

「…………んだぁ?」

『ハァァアッ! ダメェッ! リキュール、そんなトコ噛んじゃぁっ!!』

『スコール………しかし君の『ココ』は、喜んで私を咥え込んで離してくれないんだが?』

 

 ピッ!

 

 切ってやった。迷うことなく通話を切ってやった男は、テーブルに携帯を放り出すと、再びプリンを食しようとするが、そんな彼の手を再び携帯に掛かってきた着信が阻んでくる。

 次にあんなふざけたことしながらなら、今度は携帯を窓の外に放り出してやると決意し、携帯の通話ボタンを押す男。

 

「用件だけ伝えろ、スコール!」

『………ハァ、ハァ……私とリキュールの情事に興奮しちゃったの?』

『フフフッ………』

 

 電話の向こうで果てしない高みから果てしない微笑を浮かべているであろう人物達に怒りを覚えるが、うかつに『上司』とその『同僚』に口答えすると、後でどんな報復という名の嫌がらせを受けたものかわかったものではない。正確に言うなら、『嫌がらせ』という名の『雑用』と、『お仕置き』という名の『血祭り』に上げられることが彼にはわかりきっているのだ。

 だが、それでも、この電話口の向こうの相手のいい加減さには常々閉口させられてしまうものなのだが………。

 

『あら~? また私の悪口考えてたでしょ? い・け・な・い・子!』

「………それで、いったい何の用だ? さっきメールで定時連絡しただろ」

『そのことなんだけど………ちょっとだけ言い忘れてたことがあったの』

 

 何のことだ? と嫌な予感を覚える男に、電話口の向こうにいる彼の上司である『スコール』が、妖艶な微笑みを浮かべながら、青年に謎めいた言葉を口ずさむ。

 

『雛鳥の巣に、とってもご主人様想いの子猫ちゃん4匹が向っています。ですが、その巣には今、雛を守る親鳥と一緒に、その親鳥に育てられ、今や立派に成長した歴戦の鷹さんがいるのです』

「………あの竜騎兵達(ガキ共)か……」

『フフフッ………狼さん、鷹さんから子猫ちゃん達、守ってあげてくれないかしら?』

 

 これだけでスコールが大体何を言っているのか理解した青年は、改めて電話口の向こうにいる上司の命令を復唱する。

 

「つまり、今からIS学園に向っている竜騎兵(バカ)共を止めればいいのか?」

『残念、そろそろ到着するころだから、逃げやすいように援護してあげてね』

「……………あいつ等、アンタ等と一緒にヨーロッパの別荘にいたんじゃないのか?」

『いたわよ、二日前ぐらい』

「何でそのときに言わねぇーんだ、オイ!!」

『フフフッ………貴方の困った顔を見たかったから☆』

 

 その言葉を引き金に、ブチ切れた青年が携帯を壁に投げつけて、木っ端微塵にしてしまう。髪をガシガシと乱暴に掻き毟ると、青年は隣にいる部屋で寝ている自身の相棒を叩き起こすのだった。

 

「起きろ! マドカ!!」

 

 寝室のベッドの上………腰まで伸びた黒髪を白いシーツに泳がせ、年若いながら豊満と言える裸体をシーツ一枚で隠していた少女が、寝ぼけた表情でムクリと起き上がった。

 

「………ゴハン?」

「低血圧なのもいい加減にしやがれ。急ぎの仕事だ、出掛けるんだよ」

 

 しばしボケーっとした少女は数秒後、シーツを乱暴に放り出すと、裸(マッパ)のまま洗面所にいき、冷たい水で顔を洗い出す。そしてしばし洗面所で自分の顔を鏡と見つめ合わせると、無言で手を差し出した。その手に当然と言う感じでタオルを渡す青年………もう何度言ったか覚えてもいないが、頼むからお願いだから羞恥心のカケラぐらい覚えてほしいと青年は嘆いた。

 

「………で、どこに行くんだ?」

 

 乱暴に拭ったタオルをその場に放り出すと、ツカツカと寝室に戻り、インナースーツを着込み、ベッドに置いてあった自身のISを掴むマドカと呼ばれた少女………。

 

 その姿、その声色、その顔………歳こそ若いが、知り合いが見れば全員が口をこう動かすであろう。

 

 ―――織斑千冬そのものだ―――

 

 そして、その言葉が少女の心の内にある、ドス黒く澱んだ感情を更に掻き毟るとは知らずに………。

 

「IS学園だ」

「!?」

「勘違いすんな、あくまでも独断専行したフリューゲル達を止めるだけだ。それに今、どうやら例のミスターネームレスも学園にいるらしいからな」

「IS学園………『姉さん』がいるあの場所…」

 

 少女の犬歯がギリギリと鳴り響き、もう待てないと言わんばかりに険しい目付きになって青年を睨み付けさせてしまった。

 

「だが、『不慮』の遭遇による戦闘なら、仕方ないハズ……」

「お前もホント好きモンだな………油断すんなよ、なんせ『あの』オータムさんを完殺した奴も……」

「あんな女を何回殺したところで、なんの強さの証明になるものか………」

 

 『あんな女』呼ばわりされた同僚に砂の一欠けらの同情をした青年は、インナー姿で外を歩こうとする少女に服を手渡し、睨んでくる少女を逆に睨み返しながら、諭すように言いつける。

 

「今はまだ、俺達は目立つわけにはいかねェーんだ」

「チッ!……」

 

 舌打ちしながらも大人しくし洋服に袖を通す少女に満足したのか、自分も黒いスーツに袖を通し、黒いネクタイを締め、彼は内ポケットの中に己の信ずる全てとも言えるある『物』を放り込むと、その手に車のキーを掴み、マンションのドアを開く。

 

「途中まで車で移動だ。文句言うんじゃねーぞ?」

「一々口やかましく言うな」

 

 自分の相棒である少女の様子を可笑しそうに笑い飛ばすと、エレベーターに乗り込みながらポケットからサングラスを取り出して夕日を眺めながら掛ける。途中、エレベーターの窓に映った彼の瞳が『金色』に映ったが、それも一瞬でビルの影に隠れてしまった。

 そして数十秒後、地下駐車場に到着した彼らは迷うことなく、黒いランドクルザーに向かうと、青年を運転席に、少女を助手席に乗せて、車を走らせ始めたのだった………。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 ―――時間はその数時間前に遡る―――

 

 早朝に『ISの無断使用及び飛行』という本来ならそれなりの懲罰の対象になる馬鹿な行いをした、世界で二人だけの男性操縦者コンビといえば………。

 

「ぜぇー、ぜぇー………なあ?」

「ぜぇー、ぜぇー………口を動かすな、手を動かせ」

 

 ジャージ姿に軍手と麦藁帽子、そして手に草刈用の鎌とビニール袋片手に『IS学園敷地内の雑草むしり』という比較的軽い罰で処遇が決まり、早速それを行っていたのだが………。

 

「………これっていつ終わるんだよ?」

「知るかっ! てか、なんで俺はこの学園に来て掃除ばっかりせんといかんのだぁぁぁ!!!」

 

 地団駄を踏む陽太と、それをツッコむ気力も沸かずに呆然と眺める一夏。単に敷地内といわれても、IS学園の敷地は通常の学園とは異なる。軍事機密の塊であるISを運用するために、施設一つとっても国に数個しかないぐらいの大きさを持っているのだ。当然それを敷地内に存在させているのだから、導き出される結論は一つである。

 広い。べらぼうに広い。こんなの二人だけで雑草取りしだしたら、一日どころか何ヶ月かかるかわかったものではない。

 そんな敷地内において、二人は今第一アリーナ裏のあたりを雑草むしりさせられているのだが、そこですら全部終わらせるのに二日はかかりそうな広さがある。

 

 一刻も早くISの操縦訓練をしたい(させたい)二人はといえば、いつ終わるのか想像も出来ないこの苦行にすでにダウン寸前であった。

 

「はぁ………」

 

 そんな二人を溜息をついて見つめてる人物に気がつき振り返ると、『あきれた』と言わんばかりに大きな溜息をついている千冬が立っていた。

 

「!! このb」

「黙れ」

 

 姿を見るなりさっそくキレた陽太よりも早く、千冬の前蹴りが陽太の股間に直撃し、『鶏の首を締め上げたかのような悲鳴』を挙げながら地面をのたうつ陽太と、それを青ざめた表情で見る一夏。恐らく、地面をのたうつ陽太の苦しみを理解したのか腰が引けて両手で股間を隠してしまう。

 

「お前達は………自分達がどうして罰せられているのか、骨の髄まで理解できていないようだな」

「オオッ………ん、んな……もん…」

 

 地面で半分死に掛けているような状態でありながら、なお減らず口を叩こうとしている陽太のその様子を見た千冬は、先ほどまで呆れたような声とは違った、落ち着いた声で話し始める。

 

「この学園でも社会でも同じだ。皆生きるためにルールを守っている」

「!?」

「!?」

「陽太………お前は今回どんなつもりで一夏の面倒を見る気になったのかはあえて聞かないが、これだけは言っておく。窮屈に思うかもしれないがルールは守れ。そしてなぜそんなルールが課せられているのか、お前自身で考えてみろ」

「……………」

「一夏! お前もだ! 二人とも、ルールを知らないから守らなくてもいいなどという開き直りは一切私は聞く気はないぞ!」

 

 どちらかと言えばこの手の説教をするタイプではない千冬の言葉に閉口する二人。普段二人が知る姉でも操縦者でもない、『教師』としての千冬の姿を見たがためか、二人が大人しくなってしまったのを確認した千冬は、二人に罰則の打ち切りを伝える。

 

「とりあえず、草むしりはそれぐらいにしておけ」

「ほんとかぁっ!」

「うっしゃぁー!」

 

 先ほどまでしょぼくれていたクセに、一瞬で立ち直った二人に再び出そうになる溜息を抑え、千冬は二人に授業に戻るように指示を出そうとする。

 

「着替えて午後の授業に……」

「それについては意義有り。俺とコイツはこのままアリーナで引き続きISの操縦訓練」

「!?」

「………理由を聞こうか?」

 

 『舌も乾かぬうちに』と一夏がビビッてしまうが、意外にも千冬は怒ることなく陽太の話を聞く姿勢をとった。

 

「まずは、このアリーナって今日は誰も使わないんだろ? さっき掃除用具借りるときに用務員のジジィがそう言ってたし」

「……………」

 

 IS学園の実質的な経営者を『ジジィ』呼ばわりする陽太を注意するべきかと迷う千冬であったが、今はまだ十蔵氏も話すべきではないと言っている以上、この件は今は聞き流すことにする。次に言ったらぶん殴るつもりであったが………。

 

「次に、コイツに聞いた話だと、明後日に模擬戦するらしいな………普通にありえんと思うが、無謀過ぎて」

「………なんだよ」

 

 鼻で笑い飛ばす陽太の態度に腹を立てる一夏であったが、一夏にしても薄々感じていたのか、強く言い返せないでいた。だが、そんな一夏に陽太はとある提案をするのだった。

 

「俺なら100%勝てるが今のコイツじゃあ100%負ける………でもだ。俺と今から訓練すれば、5%ぐらいの確率で勝てるかもしれない」

「………つまり、今からお前達は私の授業を受けずに訓練に専念したい……そう言いたいのか?」

「………ああ」

「(やばい………お怒りだ)」

 

 千冬の気配が変わったことに怖気づいた一夏とは裏腹に、陽太の態度は変わらない。普通なら天下のブリュンヒルデに対等な態度で望む生徒などいないものだが、この陽太だけは何故か不敵にどこまでも怖気つかずに千冬に対等であろうとする。そのことが、ほんの少しだけうらやましくなる一夏。

 そして、しばし考え込んだ千冬は、ゆっくりと振り返ると、陽太の意見を聞き入れたのだった。

 

「特例は今回だけだ。来週からは授業を受けてもらうぞ? いいな?」

「イエス・マム!」

 

 軍隊調の挨拶をおどけながらする陽太に無言で苦笑する千冬。そしてその光景が、自分でも気がつかないぐらいに小さな棘が一夏の心の中に突き刺さる。だが、そんなこと知りもしない陽太は、更に続けて千冬に何かを頼みだす。

 

「後、………と………と……を用意してくれないか?」

「お前……何をするつもりなんだ?」

「ん?………もちろん、訓練だけど? ちょっとすごいことにはなるかもしれないけど?」

「………多大な不安が残るが、お前も素人ではない。その辺りは信用させてもらうぞ?」

 

 そして千冬の了承を得た陽太は、水を得た魚のように元気を出して、一夏に不敵な笑みを見せながら、話し出す。

 

「今から20分後に第一アリーナにISを展開状態で待機しとけ。訓練再開だ」

「あ、ああ………」

 

 この時、一夏は断固反対して千冬に頼み込んで普通に授業を受けるべきであった。そう強く後悔する羽目になるとは思いもしなかった………。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 きっかり20分後、第一アリーナの広い芝生の上でISを展開していた一夏は、空を見上げながら、とある物思いに更けていた。

 

「(なんで、千冬姉にあのことを聞かないのか?)」

 

 ISを始めて展開したときに見えたあのビジョン………あんな姿を見たことはない一夏は、ずっと朝からあの光景が焼きついて離れずにいた。

 

「(………でも、なんか怖いのかな? 聞いちまうと後には引けなくなりそうで……)」

 

 姉が秘密にしていることを知ってしまい、どう話をすればいいのか悩む一夏であったが、今はそれよりも目先に迫ったセシリア・オルコットとの模擬戦、延いては目の前の陽太との訓練を無事にこなそうと頭を切り替え、周囲を見回す。

 

「………てか、これって誰かの忘れ物なのか?」

 

 一夏がきた時から地面に突き刺さるように置かれているISの武装………一夏は詳しく知らないが、第二世代ISのラファール用の先端に銃剣が取り付けられたアサルト・ライフル、サブマシンガンに実体シールド、近接用に作り上げられているスピアー、そして打鉄用の日本刀を模したブレードが二本が地面に突き刺さっていたのだ。

 暢気に一夏は誰かの忘れ物かと思い込んでいたが、よくよく考えれば『実弾』が入ったライフルなど、誰が忘れて突き刺して帰るものであろうか………。

 

「………とりあえず、訓練の邪魔になるから、どっかに片付けて……」

 

 そう思って、まずは一番大きな盾に手を伸ばす一夏。

 

 その時であった。

 

『警告・敵性射撃体勢に移行。ロックされました』

「!?」

 

 ISから電子音声で自身の危険を知らせる言葉を聴き、思わず振り返る一夏。そして彼が見上げた先にいたのは………。

 

 ―――アリーナの頂上から太陽を背にして、ハンドガンの銃口を自分に向けている、ブレイズブレードを纏った陽太―――

 

「な、なんの冗談………」

「…………」

 

陽太の得意技である悪ふざけかと思われたその時、あろうことか本気でトリガーを引く陽太。それを奇跡に近いタイミングで、動く指に反応出来た一夏がとっさに後退する。

 弾ける土と、穿たれた地面を見た一夏は、陽太が今、眼前で行った信じられない行動に対して、怒りが爆発した。

 

「てめぇっ!……正気かよ!」

 

予告もなしにいきなり発砲してきた陽太に怒鳴る一夏であったが、当の陽太は何の悪びれた様子もなく、ヴォルケーノを量子化し、アリーナの頂上から優雅に飛び降りてきた。

 

「さあ、そこら辺に武器なら転がってる。お好きなのをどうぞ!!」

 

楽しそうな声で一夏に好きな武器を選べと言いつつ、アリーナの芝生の上に降り立つと、陽太は地面を爆発させるようなダッシュで一夏に突撃しながら、途中で突き刺さっていたランスとブレードを拾い上げる。その動きに、一夏はとっさに目の前にある武装に手を伸ばす。

 

「ふ、ふざけやがって!! 何が『どうぞ』だよ!?」

 

 目の前に刺さっていた楯を拾い上げ、とっさに目の前に掲げる一夏。

 

「ヘェ~?」

 

 そこに手に持ったランスを投げつける。身を引いて楯に隠れたためか、ランスは火花を散らしながらも真上に弾き飛ばされ、彼の背後の地面に突き刺さってしまった。

 だが、陽太の追撃はそこでは終わらない。

 

「!!」

 

 空いた手をブレードに握らせ、上段に構える陽太。

 

「!?」

 

 楯に身を隠してその一撃をいなそうとする一夏。

 

 ―――そして走る閃光―――

 

「なっ!」

 

 掲げた楯が真っ二つにされ、割れた装甲の向こう側から見えたブレイズブレードの姿に背筋が凍りつく一夏。そんな一夏の『嫌な予感は正解だ』と言わんばかりに、陽太は握ったブレードを切り返し横薙ぎで今度は彼の首を狙う。

 

「!!」

 

 だがこれ以上の好き勝手は許さないといわんばかりに、一夏は一歩前に踏み出すとブレードを振るった陽太の右手を自分に届くよりも先に掴んで受け止めてみせる。

 

「ほお………」

 

 珍しく感心したような呟きをみせる陽太であったが、もはや一夏の我慢も限界である。

 初対面からいきなり尊敬する姉への罵倒、屋上での自分に対する狼藉、朝早く起こして自分の意思を無視しての命懸けの特訓、そして今度はいきなりの実戦である。

 

「テメェだけは、いい加減にしやがれ!! このイカレ野郎!! 人をおちょくるのも限度があるだろう!!」

「………ずいぶんとお怒りだな?」

「当たり前だ! なんでお前はそうやって人のことを何にも考えずに好き勝手回りを巻き込むんだ!! 何でもかんでもお前の思い通りになるなんて考えんなよ!!」

 

 腹立たしい。コイツは人の気持ちなんて欠片も理解しようとしない最低な男だ。他人が傷ついても何とも思わない、自分がもっとも嫌悪する人間なんだ。そう思い込んだ一夏の言葉は止まることをしない。

 

「何考えてんのか理解できねぇんだよ、お前だけは!」

「………そういうなら、俺も理解できんな、お前の全部」

「………?」

 

 陽太の思わぬ言葉に一夏が戸惑う中、陽太はブレードを握った腕に力を込める。押される一夏であったが、陽太の力と言葉は彼を逃がしはしない。

 

「誰かを守れるぐらいに強くなりたいとか言ってた割には、フタを開ければ雑魚もいいとこ。それでいて文句ばっかり………お前さ、ホントは口だけだろ?」

「な………にぃ?」

 

 腹の底から怒りが湧き上がってくる。そしてそれを証明するように、目の前のムカツク男の右手を握る手に力が入り、それが陽太にも伝わったのか、表情こそ見えないが、明らかに自分をあざ笑った声でなお話を続けてくる。

 

「努力もしたくない、言うこと聞きたくない。でも俺は誰かを守れるカッコイイヒーロー様になりたいんんです~~~………バカじゃねぇーのか? そんな都合良くお前に守ってもらいたい奴なんか、この世にいねーよ」

「なに……を?」

「一丁前に悔しがってんじゃねーよドクズ。この学園にはお前の7億倍は努力してる奴らが専用機貰えなくて涙呑んでんだよ。お前は物珍しさだけで貰えたんだから、ちょっとは死ぬ気でそいつらの為にも強くなろうとあがいてみてはどうかね、この………『織斑千冬』の名を汚してやまない弟君?」

 

 その一言が引き金になった。

 怒りのまま一夏は陽太の右手を捻り上げ、手放したブレードをとっさに掴むと、怒りの咆哮とともに刃を斬り上げる。

 

「ど畜生がぁぁっ!!」

「ほらなっ!」

 

 一夏の渾身の一撃。たぶん人生で初めてといっていい、ありったけの怒りを乗せた一撃。

 それを陽太は背後にあったランスを素早く取り上げ、下からの一撃で刀の腹を先端で叩き、ブレードをへし折ってしまう。

 

「お………れた?」

「………やっぱりな」

「ちっ!」

 

 それが逆に一夏に冷静さを与えたのか、折れたブレードを投げつけながらバックジャンプする。飛来したブレードを陽太はランスで弾くと、斜め横に突き刺さっていた銃剣付きアサルト・ライフルを拾い上げ、畳み掛けるように一夏に向かって発砲した。

 着弾し大量の土砂を巻き上げながら飛来する弾丸を、ISのスラスターを全速機動させながら回避し続ける一夏。

 

「へぇ? 避けるのだけは才能有りそうだな?」

「てめぇ! ちきしょぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 遊ぶようにあえて一夏に当てないように発砲する陽太と、そんな陽太の意図を感じ取る余裕もなしに全力で避け続ける一夏。

 

「で? 逃げてるだけで世界最強に近づけるとは、やはり織斑千冬の弟は格が違うな!!」

「逃げてるだけだとぉ!?」

 

 陽太のその挑発に、一夏はとっさに目の前にあったもう一つのブレードに目がいき、ダッシュして拾い上げると、その場から全力で跳躍し勢いのまま斬り掛かる。

 上空から無謀に突撃してくる一夏を見ながら、陽太はこちらに着地してくるまでに蜂の巣にできるところをあえてせず、銃剣での近接戦闘に移行する。

 

「じゃあ、今一度聞いてやる!」

「何を!?」

 

 刀と銃剣が火花を散らし、鍔迫り合いの状態で一夏と陽太が睨み合う。

 

「今、お前は何を考えてる?」

「…………テメェが………ムカツク!」

 

 その言葉を聴いた瞬間、飛び退く両者。

 一夏がブレードを上段に構え、陽太はライフルの先端を上げて、剣道の正眼の構えのようにライフルを保持する。

 

 一夏の素の感情を目の当たりにした陽太は、包み隠さず相手に今、自分が感じている心境を伝える。

 

「俺もだ。お前が………ムカツク!!」

 

 互いの感情を刃に乗せ、二人の少年が再び激突しあうのだった。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 ボロボロのブルーティアーズを纏い、頭部から出血するセシリアは、目の前にいる金髪の少女を睨み付けつつ、隣で同じように装甲を中破させつつ、プラズマブレードを構えるラウラに目をやる。

 

「邪魔だ英国………お前は早く教員たちに、コイツ等のこと伝えろ」

「それには及びませんわドイツの方………貴方の方こそ、早くこのことを織斑先生達にお伝えくださいませんこと?」

 

 時間にしてわずか15分ほど………それほどの短い時間で、代表候補生二人を劣勢の極みにまで追い込んだ『四人組』を代表するように、獲物であるビームサイズを大仰に振りましている少女………。

 

 アレキサンドラ・リキュールの『翼』、竜騎兵(ドラグナー)のフリューゲルは、他の三人よりも一歩前に出ると、地面に蹲る二人に吐き捨てるように言い放つ。

 

「何度も言わせないで。お前達みたいな雑魚に用はないから、今すぐ私達の目の前に火鳥陽太を連れて来いって言ってんのよ!」

 

 

 

 

 

 





色々謎の展開です。
マドカたん初登場だけど、隣の男は誰だ? てかマドカは俺の嫁だr

と色々ご意見あると思いますが、正体については今回は語れません。

さてさて、ムカツクという理由で最新鋭兵器を用いて殴りあうバカ二人の結末は?

そしてピンチなセシリアとラウラを救うのはいったい?

次回にご期待ください

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