そして一夏に再び問われる戦う理由………。
では、どうぞ
あと、新年の挨拶してませんでしたよねw
みなさん、あけましておめでとうございます。
本年も一つ、太陽の翼をお楽しみくださいね。
獣染みたラウラのスピードに置いていかれそうになりながらも、必死に後ろから食らい付きながら追いかける箒であったが、ラウラが知ってか知らずか、施設の改修のために本日は先日から使用厳禁になっている第一アリーナに逃げ込んでいくのをチャンスと捉える。
「あそこなら今は誰もいない………ケリをつけるにはもってこいか」
獲物の方から人のいない場所に入ってくるというのならば幸いだと、腕に巻かれた待機状態のISに手を置くと、自身の剣たるISの名前を叫ぶ。
「紅椿っ!!」
紅の閃光を纏った剣姫は大地を力強く蹴ると、一気に上空を飛んでアリーナの中に飛び込んでいくのだった。
「ぎぃっ! あ、あああああいいいいつらぁぁぁ!!」
頭がイタイ、体がイタイ、心がイタイ………力を得た筈なのに、これで教官の家族になれるようになったはずなのに、どうしてそれの邪魔をするんだ。
一番最初につけられた記号、遺伝子強化試験体C-0037。ただ戦うために軍によって鉄の子宮から生み出され、育てられ、鍛えられた、戦うための兵器。
格闘を覚え、銃器に扱いに長け、各種兵器の操縦を熟知し、彼女はラウラ・ボーデヴィッヒという名前を与えれたが、そんな彼女の存在意義を奪い去ったのは、やはり彼女と同じ兵器であった。
IS―――インフィニット・ストラトスの登場と、その操縦者として選ばれた彼女に待っていたもの。適合性向上処置『超界の瞳(ヴォーダン・オージェン)』移植手術の失敗という過酷な現実であった。
『超界の瞳(ヴォーダン・オージェン)』。擬似ハイパーセンサーとも呼べる、ナノマシンを肉眼に移植することで脳への視覚信号伝達の爆発的な速度上昇と、超高速戦闘状況下における動体視力の強化を目的にしたものであったが、ラウラのそれは理論上ありえることのない不適合が起こった。使用者の意識でONOFFができるはずのナノマシンがコントロール不能となり、彼女の左目は絶えず超界の瞳(ヴォーダン・オージェン)が稼動し続ける一種の暴走状態になっていたのだ。
たった一つの欠陥を抱えたラウラは、早々と軍内部での地位を転落させていくことになる。
IS操縦で他の者達か遅れを取り始め、やがてそれはあからさまな侮蔑と嘲笑へと変化していき、彼女は仮初の光を奪われ、元いた闇へと舞い戻ることになるのだった。
そう、織斑千冬とであるまでは………。
「どうして、いつも、いつも、いつも………」
どうしていつも思い通りにいかない!! どうしていつも一番欲している物が遠のいていく!?
どうして!? どうして!? どうして!?………。
「どうして………………………(………ケテ)………!?」
通行止めされていたアリーナへの入り口を潜り、長く非常灯しか点いていない通路を走っていたラウラの脳裏に突然響いた声。
まるでその声だけが不協和音のように脳裏で騒ぎ立て、胸中が異常にざわめく。
「ダマレェ!!」
自分の中で響く自分ではない声。
強くなった自分には必要ない、不要物のはずの物………。
それが何なのか思い出そうとするが、自分の周囲には誰一人としていないことに気がついたラウラは、その事が急に恐ろしくなり、僅かな光が見える方向に走り出す。
走って、走って、通路から一気に開かれた青空の真下、アリーナ内部にたどり着いた時………。
「待っていたぞ、オーガコア!」
紅を纏った、悪鬼を屠る剣(篠ノ之 箒)が両手に持った刃をラウラに突きつけながら立ちふさがった………。
「誰もいないこの場所を選んだことだけは褒めてやろう………己の欲のために他人を巻き込む貴様等(オーガコア)にしては見上げた性根だ」
「!?」
コイツ………さっき自分(ラウラ)を攻撃した女。火鳥陽太と同じく自分を邪魔する敵。そのように認識したラウラの脳内が一気に、どす黒く染まり、ひとつの結論に至る。
「敵………そうか、お前は敵か。ならばいいな………見せてやる! 私が得た至高の力を!!」
「悪鬼に魂を喰われた貴様の力など至高であるわけがないッ!! 大人しく成敗されろ!!」
「!?………私を否定するなぁぁぁぁっ!!」
敵、自分を否定する者。打ち滅ぼさねばならないもの………怨讐とも呪詛とも取れる何処からか聞こえてくる言葉に突き動かされるままに、胸元から妖しい紫の光を放ったラウラの身体を、一瞬で黒い『何か』が包み込む。
「!?」
黒い光と共に鋭く氷の様に冷たい殺気が迸ったのを感じた箒は反射的に飛び上がった。次の瞬間、衝撃波が大地を引き裂いたのを見た箒は、自分に向かって突撃してくる黒い影が繰り出した無数の突きを、二本の刀でことごとく受け止め、逸らし、回避しきってみせた。
「ホゥ?………私が手に入れた力を試すには、ちょうどよい餌のようだ」
「キサマッ!?」
ラウラが纏うのは、シュヴァルツァ・レーゲンではない。
液体金属のように黒いゲルが全身を覆い、そこから最小限の装甲を腕と脚に着け、赤いラインセンサーが奔るフルフェイスのマスクを被った『女性』であった。
そもそもオーガコアとは、人の感情を糧に、且つ『核』にすることで既存のISを凌駕する出力を発揮する兵器であり、そのためか決まった形状というものを持っていないとされている。ではなぜ今までのオーガコア搭載機は虫のような形状を取っていたのか?
それは単に『負』の感情によるものである………人の嫌悪、憎悪、憤怒、傲慢、嫉妬……さまざまな負の感情オーガコアは吸収し、より強大な力を振るう性質を持つ。そしてそうやって手に入れた強大な力を存分に振るうために、操縦者の中にある負のイメージを感じ取り、それを具現化させるのだ。
ではなぜ、今、ラウラはこのようなとある『女性』の姿をとっているのか?
「キサマに見せてやる! 私が手に入れた『最強』の力を!!」
疑念にとらわれた箒の問いに答えることなく、叫ぶと同時に彼女はその右手に持った刃を中段に構えてラウラは突撃してくる。箒もそれに対応して中段に構えなおすが、次の瞬間、ラウラが振るった刃を受け止めようとした刃が二本とも弾かれてしまった。
「(まずいっ! これは!!)」
これと同じ技を振るう者を箒は三人知っている。一人は自分、一人は彼女に剣術を教えた師である実父。そしてもう一人………箒にとっては姉弟子であり、実姉の親友であり、幼馴染の姉であり………箒が憧れた最強の操縦者(ブリュンヒルデ)………。
箒は全速で後退して、おそらく次に来るであろう追撃を回避する。刹那、彼女が今までいた場所を超高速で振り下ろされた上段の刃が地面を深く抉ってしまうのだった。
「その姿………その刀、そしてその技………お前は…」
「そうだ! 私は手に入れたのだ!! 織斑教官そのものを!!」
フルスキンの左目の部分が吹き飛び、中から金色の瞳が箒を睨み付けた。狂喜と狂気を浮かべ、右手に握られた刀―――かつて彼女が現役選手時代に愛用した『雪片』そのものの姿をした刃を振るい、己の身体を千冬と同一にしたラウラが声高々に箒と自分以外いないアリーナで宣言する。
「教官!! 私が貴方の最強を証明いたします!! 最強の称号は唯一無二、貴方のための物なのですから!!」
「………世迷言を…」
箒には今の彼女の言葉も行動も単なるオーガコアに取り憑かれた者の猟奇的なものとしか映らない。早々にラウラを黙らせようと、箒が、二本の刀をそれぞれ上段と中段に構えて斬り込んだ。ラウラもそれを受けて立つといわんばかりに迎撃する。
閃光の様な刃、一流同士の裂帛の気合、鍛え抜かれた古流の技。それらが二人しかいないアリーナで激しく火花を散らし合う。
「遅いッ!」
「!!」
ただの刀を二本使うのと一流の剣士が振るう二刀流とは根本的に技の脅威が違ってくる。無論、箒は後者、一流の剣士であり、こと近接での格闘戦ではオーガコア相手であろうとも遅れを取るようなことはないという自負があった。
だが目の前のラウラは違う。
二刀の技を使う自分と同等以上の速度で斬り結んでくる。しかも徐々にその速度が上昇し、攻め込んだ自分が守りに入らされそうになっていくことに箒は驚愕していた。
まるでこれでは本物の織斑千冬ではないか!?
「だからとてっ!!」
「!?」
左右から挟みこむような斬撃を囮に、本命である脚部のレーザーブレイド『胡蝶蘭』の斬り上げの一撃を放つ箒。如何にラウラが織斑千冬を丁寧かつ完璧に真似様が、一本の刀で三撃同時は防ぎようはない。しかし………。
「遅い、と言っている!!」
「なにぃ!?」
防御不可能なそれらの三撃同時攻撃を、ラウラは『視て』回避したのだ。いかにハイパーセンサーを内蔵しているISと言えども、纏っているのは人間であり、反射速度の限界があるだろうに………。
だがそれに驚いていた一瞬の隙を突いて、ラウラが箒の背後に回り込む。
「終わりだ」
「しまっ・」
必中の距離であり、優れた操縦者の箒も回避不可能のタイミング。『やられるのか!?』と彼女が覚悟を決めようとした瞬間であった。
「!?」
ラウラは上空から放たれた三発のレーザーの攻撃を、バク転しながら回避して、箒から離れてしまったのは………。
更に距離を離したラウラに向けて、無数のプラズマ火球が連続で叩き込まれ、彼女の周辺を一瞬で紅蓮の炎が包み込んでしまう。
「大丈夫か! 箒!!」
ISを纏った無手の一夏が上空から箒に近寄ってくる。
「一夏!?」
「それが、箒の専用機かよ………すげぇなオイ」
自分のISである紅椿を褒めてくる一夏に呆然となる箒。なぜ彼がここにいるのだろうか? 戸惑う箒と、ラウラのほうを睨み付ける一夏の前を、先ほど上空から箒を助けるためにレーザーライフルで狙撃した、BT未搭載のブルーティアーズを展開したセシリアと、炎の残滓を銃口に残している二挺のハンドガンを両手に持ったブレイズブレードを纏う陽太が降り立った。
「………怪我はないみたいだな」
振り返った陽太のその言葉に、箒は軽く血圧が上がる感覚に襲われる。この男、マスクの下で絶対に自分を鼻で笑い飛ばしているだろうと箒は感じたのだ。
「とりあえず後はリリーフしてやる」
そんな箒の気持ちなど知りもしない陽太は、『援護など結構だ』と後ろで叫んでいる箒を無視して、紅蓮の炎を上げるラウラの元へ歩み寄る陽太。
右手に持ったヴォルケーノを仕舞い、フレイムソードを展開してナイフからロングブレードに変形させた時、突如炎が真っ二つに割れ、中から無傷の状態のラウラが猛烈な勢いで陽太に襲い掛かってくる。
「待っていたぞぉぉぉっ!! 火鳥陽太ぁぁぁっ!!」
歓喜の声を上げながら、模造品の雪片で斬りかかってきたラウラを真っ向からフレイムソードで受け止める陽太。両者が激突した瞬間、アリーナ内部で衝撃波が発生し、地面に亀裂が入り、空気が弾け、施設に振動が響き渡る。
「私が手に入れたこの力で、最初に蹂躙する者は貴様だと決めていた!!」
「その格好………なるほどな」
かつての千冬の姿と技、そして武器までコピーしたラウラに、陽太は彼女が何を思い、何を考え、何を信じていたのかをすんなりと理解する。そう、自分がラウラにいったい何をしてしまったのかも………。
先ほど、箒が疑問に思った彼女に植え付けられたオーガコアが、彼女の何の感情に反応したのか?
陽太はそれが『憤怒』であったと感じ取っていた。
千冬に教えを請うておきながら、何もできなかった自分に彼女は『憤怒』して、自分を否定し、千冬になりきることで、彼女は千冬に貢献しようとしているのだ………その代償が、人間であることを捨て去ることにあるとは知らずに………。
「何で昨日お前が怒ってのか、解ったよ」
「なにぃ?」
「『そんな』ざまになってまで千冬さんに尽くしたいって気持ちは認めてやる………だがな…」
フレイムソードの切っ先をラウラに突きつけた陽太は、悠然と言い放つ。
「その姿でやってはいけないことは二つ………力による蹂躙とオーガコアに魂を売ることだ。織斑千冬を真似るっていうんなら、そういうところも真似てみたらどうなんだ?」
「黙れぇっ!!」
陽太の言葉など聴きたくもないと言わんばかりに、彼の忠告を刃で切って捨てたラウラは、陽太に雪片の一撃をぶつけてくる。
彼女の攻撃をフレイムソードで弾き、いなしてて、距離を取ると左のヴォルケーノからプラズマ火球を立続けに放つ陽太。飛来してくるプラズマ火球をラウラは雪片で次々と切り裂きながら、陽太に対して果敢に斬り込んで行く。
間合いを詰めて近接戦闘を仕掛けようとするラウラと、それはさせないと間合いを開いてプラズマ攻撃で牽制する陽太。
二人のそんな戦闘をこの場で誰よりももどかしい気持ちで見つめる者がいた。
「(ちきしょう………アイツ、千冬姉の姿で……)」
ラウラ同様に千冬を誰よりも敬愛している一夏である。
当初、箒とラウラの戦闘を見た一夏は誰よりも真っ先に現場に飛び掛ろうとした。激情に身を任せ、地冬の姿で箒を攻撃するラウラの姿に激怒した一夏は、鉄拳の一発でもお見舞いしてやろうとしたのだが、そんな彼を背後から陽太が首根っこを掴んで静止してしまう。
「アホか。出落ちで首チョンパにでもされる気か?」
「離せよっ! アイツ、ふざけやがって!!」
「落ち着けっ」
ブチキレて話を聞こうともしない一夏を落ち着かせようと、彼の喉仏にチョップをかます陽太。『グヘェッ!』と情けない声を上げて咳き込む一夏を心配するように、後ろからセシリアが彼の背中をさすりながら陽太に忠告する。
「火鳥さん!? いくらISを纏っているからといって、同じく貴方もISを纏われているのですよ!!」
「ソイツは悪いことしたなオイ」
まったく反省している様子もない陽太の声にげんなりとなる二人であったが、陽太はいくらか落ち着いた様子になった一夏に問いかける。
「この間、言ったばかりだよな………勝負を制するのは『ココ』だと」
陽太は再び親指を胸に当て、一夏を見つめる。マスクを被っているため彼の表情はわからないが、一夏は陽太の視線に射抜かれ、動きを止めてしまうのだった。
「取っ掛かりだけでもいい。『ココ』がなんなのか、お前なりの答えは見つかったか?」
「えっ? あ、いや、その………」
「それが見つかってないなら、戦闘は厳~禁。イギリスのエロ下着代表。お守りよろしくな」
「誰がエロ下着代表ですかぁっ!!??」
突然着けられた不名誉極まるあだ名に激怒するセシリアを置いて、陽太は一直線にアリーナに飛来するのだった………。
そして現在、一夏は陽太とラウラの二人の戦いを非常にもどかしい気持ちで見つめていた。今すぐにでも陽太よりも前に出て、ラウラに一発ブチかましてやりたい。
でも、それを行動に移そうとする度に、陽太の問いかけが心に蘇り、足が止まってしまう。
『ココ』がなんなのか、お前なりの答えは見つかったのか?
陽太が問いかけた言葉………自分の中にある、自分の戦うために一番必要なもの。
「………クッ」
「………セシリア・オルコット。一夏を頼んだぞ」
その時、一夏とセシリアの隣で二人の戦いを静観していた箒が、刀を再び構えなおして戦線に復帰しようしたのだ。それを慌てて止めるセシリアは、箒の肩を掴むと行かせまいと彼女の行動に抗議する。
「篠ノ之さん、お待ちになりなさい!」
「離せ、セシリア・オルコット!」
「今、火鳥さんが戦われておられます。あの方に任せておけば………」
「!? 私は、『剣』になると誓った!!」
セシリアの言葉に反論するように肩に置かれた手を振りほどいた箒が、セシリアを睨み付けながら自分の胸の中にある、彼女が戦う理由を言い放つ。
「この世界に巣食う悪鬼の魂(オーガコア)を、一個残らず殲滅するまで、私は剣となって戦い続けると、私の友に、何よりも私自身に誓ってきた!!」
「!!」
箒のその言葉が一夏の胸を激しく打つ。
「そのためにISに乗り、自分を鍛え続けてきた!! ゆえに私はあの男に任せきりになどせん!! これは私自身の戦いでもあるのだ!!」
箒は、篠ノ之箒は………自分が知っている幼馴染は、自分が知らない場所でも戦っていた。
自分と別れた後の彼女がどのような生き方をしていたかは知らない。だが彼女は今の自分では決して揺るがない、強い生き方をしている。自分で戦う理由を決めて、努力して、それを貫いてきた。
箒の戦う理由を聞き、頭をハンマーで殴られたような強い衝撃を受けている一夏に気がついてのか………。
雪片をフレイムソードで受け止めながら、ラウラと鍔競り合う陽太は、一夏達にも聞こえる大声で語りだした。
「ドイツのチビ女!! 俺がなんでIS操縦者やってか知ってるか!?」
「………そんなこと知らん!!」
「だろうな!」
突然何を言い出すのかと、凝視してくる三人と、戸惑いながら言い返すラウラの様子にも陽太は気にすることなく言い放つ。
「俺が一番だと認めさせるためだ」
「?」
「俺は自分が一番だと信じてる。俺は空の上では、IS使ったら誰にも負けねぇー!!」
フレイムソードに力を込めて、陽太はラウラを押し返す。小さく舌打ちをしながら後退するラウラに、陽太は再び切っ先を突きつけながら、まるで先ほどここにいない千冬に宣言したラウラのように言い放った。
「いつだってそうしてきた………この空の下、火鳥陽太が『一番』だって、俺は信じてる。だから戦う。誰が相手でも………織斑千冬だろうが、あんの腹立たしい爆乳恐竜女だろうが、俺は負けねぇー、逃げねぇー、媚びねぇー、後ろは見せねぇー!!」
フレイムソードから炎が吹き上がる。彼の闘気に反応して、その炎を徐々に巨大化させながらラウラに向かって突撃する陽太。
「だから!」
「なにぃ!」
フレイムソードと雪片が激突し、アリーナ内部を再び衝撃波が襲い掛かる。その威力に吹き飛ばされそうになる一夏達。
「勝った奴が一番………シンプルでいいと思わないか!?」
「だったら私が勝つ!! なぜなら私は最強の力を手に入れたのだからな!!」
そう、勝った者が、勝者こそが正しいと言うのならば、自分は負けるわけにはいかない。最強の力を手に入れた自分こそが、正しい。それこそが今の自分を支えている、彼女(ラウラ)の矜持(存在価値)なのだ。
渾身の力を込めて、炎を纏ったフレイムソードを上空に弾き上げるラウラ。驚愕に固まっている陽太が左のヴォルケーノでプラズマ火球を放とうとするが、それも雪片で弾き、左手から銃を手放してしまう。
陽太の両手から武器を弾き飛ばしたラウラは、心の底から湧き上がる歓喜に突き動かされるまま、その場から跳躍して上空に飛び上がるラウラ。
「観てください教官!! 私は貴方の最強を!!」
そう、千冬(ラウラ)こそが最強だと、ようやくこれで自分は証明することができる。ようやく自分が千冬の一番になれる。自分が千冬の家族になることができる。
「終わりだぁぁぁぁぁっ!!」
念願を達成できる。
それが、油断となっていることに気がつかないまま、彼女は雪片を振り下ろした。
―――静寂に包まれるアリーナ―――
陽太の頭部に向かって刃を振り下ろしたラウラの顔が、それを成す術なく見つめていた三人の顔が、徐々に驚愕に歪んでいく。
「………最後の最後で詰めを誤ったな。お前は『織斑千冬』であることを最後で止めた。それが敗因………」
空中で静止するラウラの目が徐々に怒りと憎悪で見開かれていく。それと反比例して、二人の戦いを見ていた一夏の瞳が、陽太の背中を千冬と同じ「憧憬」で見つめ出す。
振り下ろされた雪片の刃を、両手を使った『白刃取り』で受け止めた陽太は、静かにラウラを見た。
「そこそこ千冬さんに似てたが、本家に比べて全部劣る! なにより!!」
「!?」
両手から炎が吹き上がると同時に、甲高い音を立ててへし折れた雪片を、信じられないものを見るような目で見つめるラウラ。
「(そんな………最強が……私が憧れた、最強が……)」
「千冬さんの弟子を気取るなら!」
へし折った雪片を陽太は素早く逆手に持ち帰ると、がら空きになった彼女の懐に潜り込み、一気に斬り上げる。
「あの人の気持ち………理解してやれよ」
黒い装甲を切り裂かれ、アリーナの壁にまで吹き飛ばされたラウラに向かって、初めてと穏やかな声色で語る陽太。彼とて形式上は千冬の弟子なのだ。憧れてラウラが千冬を真似ようとしている気持ちを理解できないはずもなく、それを頭から全て否定する気もない。
だからこそ彼はラウラの前に立ち塞がったのだ。昨日、千冬の代役をすると誓った以上、千冬ならラウラを身体を張って止めに入っただろう。
でも、彼女ならもっと違う言い方をしたのかもしれないが、今の自分ではこういう言い方をするのが限界だ。
「あの人の真似をするんなら、姿形よりも技よりも先に、あの人の気持ちを理解してやれよ……」
そうしてラウラに背を向けた陽太は、一夏の方を見ると、彼にも問いかける。
「見つかったか、理由?」
「……………」
沈黙で返答する一夏の様子を見た陽太は、やれやれと言った感じで肩を落とす。別段急かしている訳でもないが、陽太自身、一夏がどんな答えを自分に聞かせてくれるのか興味があるのだ。
「(まあ、これだけは本人で答えだすしかないしな……)」
心の中でそう呟く陽太であったが、その時、焦った声で自分を呼ぶ箒の言葉に反射的に反応する。
「火鳥!! 後ろだ!!」
「!?」
反射的に振り返りながら左腕を上げる陽太。そして固定式の盾に突如、強烈な衝撃が襲い掛かり、陽太を反対側のアリーナの外壁まで吹き飛ばしてしまう。
一夏達が驚愕して、『それ』を一斉に凝視する。
そこにいた者………先程まで『織斑千冬』の姿をしていたラウラの姿が、更なる変貌を遂げていた。
「あれって………」
「火鳥さんの姿に………」
織斑千冬をした姿の上から、更なる変貌を遂げ、漆黒の装甲を全身に纏い、黒い翼を羽ばたかせ、両肩から腕をもう一本生やし、計四本となった腕を持った姿に変化していたのだ。
しかも、装甲や翼の形状が、明らかに陽太のブレイズブレードと酷似した物となっており、その姿を見た箒の目付きが自然と厳しいものになってしまう。
「オーガコアの持つ自己進化機能だ。通常ISにもある進化機能だが、オーガコアは信じられない速度で自己進化させることができる………火鳥に対抗するためにあの姿を取ったとしたら……」
箒が一夏とセシリアを守るために、一歩前に出る。彼女の予感が告げている………本家に及ばないものの千冬の技と力に、陽太の能力までもが上乗せされたとしたら、かなり最悪なことになる、と………。
その箒の予感を証明するかのように、無言のまま新たに生やした二本の腕を構えたラウラは、その手から紫色の炎を発生させる。
「くるぞっ!」
箒の言葉に、意識を集中させる一夏であったが、この時、彼は自身のISが告げている警告に気がついていなかった。
『……………フォーマットとフィッティング終了まで、残り180秒』
第二変貌を遂げるラウラは、千冬と陽太の能力を持つ強敵だった!
そしてついに一夏が覚醒する!?
次回 『White Twin Drive Ignition』
白の目覚め、それは世界を激震させる