IS インフィニット・ストラトス 〜太陽の翼〜   作:フゥ太

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セカンド娘さんの本格参戦第一話!

ちょっと原作よりも「アレ」な感じですが、いってみましょう!




中華娘、襲来

 

 

 

 

 

「だから、何度言えばわかる!?」

 

 ラウラのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』に搭載されている右肩のレールカノンが火を噴き、空中で高速機動を行っている一夏に襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

 超音速で飛来した砲弾を紙一重で回避する一夏であったが、彼の周囲を取り囲む四基のビット達に行く手を遮られ、空中で急制動を掛けて停止しようとした。が、これが致命的な隙となり、背後から迫るシュヴァルツェア・レーゲンの二本のワイヤーブレードの接近を許してしまう。

 

「ちくしょうっ!」

 

 今日何度目かの悔しさを滲ませた言葉を吐き捨てると、一夏は右手に持っていた雪片で迫る二刃を弾き上げるが、白式のアラームが自分に向けられている銃口の存在を教えてくる。

 

「やべっ!?」

「これで七度目ですわよ、一夏さん?」

 

 極めて冷静な声で、レーザーライフル『スターライト』の引き金を引くセシリア。

 蒼いレーザーは正確な軌道を描き、空中で完全に無防備になっている一夏に直撃すると、彼の白式のシールドエネルギーを0にし、それによって一夏はゆっくりと地上に落下していくのだった。

 

 

「はぁ………とりあえず、お前さんはしばらく回避訓練のみな」

「……………」

 

 一夏の訓練風景をアリーナの内壁の上で眺めていた陽太は、目の前でシールドエネルギーが再び貯まるまで休憩していた一夏に言い放ち、彼も渋々ながらそれに同意する。

 

 白式の性能上、その突破力を生かしてチーム内での最先鋒の『フロントアタッカー』になることは戦術上確定している。だが、このポジションは、早い話敵に急接近して味方の活路を切り開く、最も重要なポジションであると同時に、最も危険なポジションでもあるのだ。それゆえに敵からの攻撃を回避できる技術は必須科目ともいえるのだが、結果は訓練通りの有様である。

 

「………わりとメンドくせぇーな、隊長ってのも」

 

 自分一人のころは、こんなことを考える必要もなかった。敵がどうこようが、自分の実力とISの性能にモノ言わせ、叩き伏せるだけですんでいた。

 しかし、これからはそうはいかない。隊員達の能力とISの性能を把握し、それに見合った戦術とそれを行えるための訓練メニューを逐一立てていかないといかない。だがそういった細かく物を考えることが大の苦手である陽太にしてみれば、落ち着いた状況で黙々と分析作業をこなすのが苦痛で仕方なく、一夏の前だというのに、思わず本音が漏れてしまう。

 

「キサマッ! 今からそんな態度でどうする!?」

 

 そんなだらけきった様子の陽太を、『立派な隊長』にするという使命感に燃えるラウラがISを展開した状態で右手のプラズマソードを出力したまま切っ先を鼻先寸前まで陽太に突きつける。普通なら相当に危険極まりない行為であり、教師に見つかろうものなら問答無用で指導室で生活指導を食らおうものだが、生憎とここには教員はおらず、またラウラは操縦者として一流の領域に到達するレベルであり、陽太にいたっては、千冬を除けば、教員すらも凌駕するほどの操縦者であり、いちいち教員に言いつけるような真似もしない。

 鼻先にソードを突きつけられても眉一つ動かすことなく、陽太は暢気に欠伸をすると、内壁の上で寝転がり、尻をボリボリと掻きながら堂々とサボろうとしだす。

 

「ええっ~~~………今日はもうなんか面倒くさいので全員自主トレでいいじゃん」

「ふ・ざ・け・るなぁっ! 隊長が自ら率先して訓練をさぼるな!! それに、キサマッ!? 昨日私が渡した、『指揮官としての心得大全集(直筆)』には全て目を通したのか!?」

「ドイツ語読めない」

「日本語で書いたぞ!?」

「ごめん。俺、フランス育ちで諸国渡り歩いてたから、フランス語か英語ぐらいしかわからないの。スワリヒ語は片言なら話せるけど………」

「今、日本語を話しているだろうが!」

「いや~~~………日本に来て三週間……環境適応してきたってことか……じゃあ、おやすみ……」

「寝るなっ!」

 

 この三週間、目の前で繰り広げられている漫才に一夏は苦笑が漏れてしまう。どうにも陽太は自分に苦手なことになると途端に意欲が消え失せてしまうのが玉に傷のようで、千冬以外の人間相手だとのらりくらりと言葉を避けてしまうのだ。

 

「私はお前を立派な隊長になるよう教育すると、教官に誓いを立てたのだ! それだというのに、なんと意欲のない男なのだ! 恥ずかしくないのか!?」

「ない。それに勝手におまーさんが千冬さんと交した約束など、俺には120%関係が………」

 

 尚も陽太に食い下がろうとするラウラであったが、そんな彼女の脇を通り抜けて、ISを解除してインナー姿で近寄ってきたセシリアが、優雅な動作で頭に血が上っているラウラに『待った』をかける。

 

「お待ちなさいラウラさん。そのように頭ごなしに押し付けるだけでは、陽太さんが可哀想です」

「何を言っている! 可哀想も何も、コイツは最低限の努力をしていないんだぞ!?」

「だからこそ、ここはこのセシリア・オルコットにお任せください」

 

 彼と知り合ってほぼ一月。千冬以外の人間には中々本心を見せず、飄々と掴み所ない陽太に想いを寄せていたセシリアは、中々にチャンスにめぐり合えず悶々としていただけに、この期を逃す手はないと、多少頬を赤く染めながら陽太に近寄ると、密かに色々と情報収集してようやく見つけたとっておきを使おうとする。

 

「(これを使えば如何なる殿方もイチコロだと雑誌にも書いてありましたわ!)………あの……陽太さん?」

「ん?」

 

 寝転がっている陽太に、セシリアはまるでメス豹のような妖艶な動きで近寄ると、彼の頬に手を置き、これまた妖艶な微笑で彼に語りかけた。

 

「私と一緒に、秘密の個人授業………しましょ?」

「「(どんな雑誌を見た?)」」

 

 その光景を見ていた一夏とラウラがさりげなく心の中で同じツッコミを入れるが、そんな中、顔を真っ赤にしていっぱいいっぱいなセシリアとは対照的に、いたって落ち着いた表情の陽太は………。

 

「………まあこの歳でこの大きさなら合格か」

 

 思いっきり目の前で揺れているセシリアの胸を触りだしたのだ。

 

「…………」

「安心せい。おっぱいマイスター検定二段の陽太さんのお墨付きだ! お前は将来必ず大きくなる」

 

 いい笑顔で親指を上げてサムズアップする。

 最初は呆然となっていたセシリアであったが、段々と状況が理解し始めると、プルプルと肩を震わせながら、両目に涙を貯めながら陽太を睨み付け、そして………。

 

「貴方という人はーーーー!!!」

「怒るな怒るな」

 

 両腕にISの部分展開をし、スターライトからレーザーを至近距離で乱射しだすセシリアと、左手だけ部分展開し、指の先だけでライフルの銃口を弾いて、レーザーの軌道から自身を外す陽太。重ね重ね言うが、普通なら命の危険もある行為だが、半ば錯乱状態のセシリアと自分に絶対の自信を持っている陽太はやめようともせず、また一夏とラウラも止めようともしない。

 

 だが、そんな時、アリーナの観客用の入り口から、静かだが良く響く声が聞こえ、全員がそちらの方を一斉に振り返る。

 

「なにをやっている、お前たち?」

 

 書類の束とスーツの上着を手に持ち、カッターシャツを腕まくりした千冬であった。

 その姿を見た瞬間、セシリアは我を取り戻すと、上品そうに『オホホホッ』と笑いながらライフルを背中に隠し、ラウラは几帳面に直立不動で敬礼を、一夏は嬉しそうに笑みを浮かべ、一人陽太だけはやる気のなさそうに手をプラプラとして、それを返事の代わりにするのだった。

 

「少し目を離すと案の定か………まったく」

「申し訳ありません、教官」

 

 ツカツカとアリーナを降りながらため息をつく千冬に、陽太の教育を任されていたラウラは申し訳なさそうにうなだれてしまう。無論、ラウラには非はないのだが、千冬に期待をかけてもらっていると感じているラウラとしては、その期待に応えられないことがいたたまれないのだ。

 

「そうだ、そうだ………もっと反省しろ」

 

 だからと言って、それを陽太(元凶)に責められる謂れは何一つないのだが………。

 それがわかっていた千冬は、小声でラウラを挑発する陽太の後頭部目掛けて複数の書類が入った封筒を投げつけ、見事にクリーンヒットさせる。

 

「ぐおっ!」

「お前宛の土産だ。書類関係は今日中に目を通しておけ。後、中にIDが入っている。紛失させるなよ」

 

 後頭部に直撃し、地面に転がり落ちた陽太にそれだけ言い放つと、全員の方を向き直し、必要事項の連絡に入る。

 

「織斑、オルコット、ラウラ。後、転がってる小僧………良く聞け」

「効き過ぎじゃ………」

 

 後頭部を押さえて悶える陽太の小さなツッコミにも動じない千冬は、二週間少々の出張の成果を全員に発表する。

 

「IS委員会は正式に対オーガコア部隊の発足を認め、学園の理事もこれを許可された。そして、それに伴い、イギリスとドイツの代表候補生であるオルコットとラウラ、お前達は一時的に国連軍に出向という形になる」

「はい!」

「はっ!」

 

 IS委員会はその性質上、どの国にも所属していない国連直轄の組織である。そしてイギリスとドイツに籍を置き、また国の代表候補生という立場にいる二人は、同時にその国の軍属であるため、おいそれと異なる機関に所属することは出来ない。そのため一時的に「出向」という貸し出す形を取り、部隊に配属しようという千冬の意図も、当然という感じで二人は受け止める。

 だが、そういう軍隊の仕組みをイマイチ理解していない一夏だけは、首を傾げながら千冬に疑問をぶつけた。

 

「なんでセシリア達が出向なんだ?」

「話の腰を折るな………二人はこの学園にISの運用データの検証のために入学している。もっとも、それだけではないが………そんな二人が実戦配備されるんだ。色々文句を言う輩がいるかもしれん、その為の処置だ」

「わかったような………わからないような……」

「それにな、実験機の大規模改修なんて真似をするんだ。口実は必要だ」

「なるほど・」

「「か、改修!?」」

 

 セシリアとラウラが驚愕して目を広げ、千冬の顔を見つめる。二人の驚きも無理はないと思いながらも、千冬は二人に自分が提案した案件の内容を話し始めるのだった。

 

「お前達も肌で感じているだろうが、通常のコアを使用した競技用ISでは、オーガコアを使用したISには出力的にまるで太刀打ちできん。一応戦術を駆使すれば『一矢報いれる』かもしれんが、あくまでそれだけだ。噛み付いたネズミは容赦なく獅子に食い殺されてしまう」

 

 そうなのだ。

 通常ISとオーガコア搭載ISのパワーの差は歴然で、如何に優れた操縦者がISを操縦しようとも、その差は埋めがたいものがある。そして出力の差は、その他の差にも如実に現れる。

 単純な機体のパワーから始まり、大出力兵器の搭載、高出力の機動性、シールドバリアのゲインと強度、etc、etc………。それらは命がけの戦場では絶望的な戦力差であった。

 これは例えるなら、一般用の軽自動車とモータースポーツのF1カー程の差が両者には存在している。ましてやこれはカーレースではなく、命を奪いかねない戦闘ではその差は明白。それに対抗するための処置を講じた千冬は、二人の専用機の強化処置を部隊設立の次の重要案件として提示していた。

 

「改修の方は明日から早速執り行う。しばらく愛機と別れることになるが、理解してほしい」

「あ、いえ………了解しました」

「ですが………本国のほうから私には何も通達がありません。それに本国が早々と許可を出すとは……」

 

 一応の理解を示すラウラに対し、セシリアの方は半信半疑といった感じであった。無理もない。国の威信を賭けて開発されたISを、いくら必要とはいえ、おいそれと別の機関が改造するのを了承するなど有り得るわけがないのだ。本来ならば………。

 

「その辺りは抜かりない………お前宛の土産はこれだ」

「?」

 

 そういうと、千冬は懐から一枚の便箋を取り出し、セシリアに手渡す。それを受け取ったセシリアは、誰が自分宛に綴ったのだろうと、裏面を見る。

 

『セシリアお嬢ちゃんへ あなたの大好きなエリザベスお婆ちゃんより』

 

 丁寧かつ柔らかい筆跡で裏面に書かれていたその文面を見た時、5秒程時間が止まったセシリアの顔色が、段々と青色に変色し始める。

 

「私も最初は驚いたぞ。イギリス政府に問い合わせ、政府関係者と会談しようとしたら、まさか『この人』が直々にこられるとはな」

「あ………な………へ……」

 

 珍しく冷や汗が垂れている千冬の言葉に、セシリアは今度こそ自分の考えている通りの人物だったことに、今度こそ驚愕し、ゼンマイ仕掛けのロボットというか、油が切れた機械のようなぎこちない動作で便箋をあけ始め、それを片手に持って、アリーナの隅で一人しゃがみ込みながら読み出す。

 

「………アレ、なんだ?」

「『幼少時に訳も判らずにお婆ちゃんと呼んでいた』人物………だそうだ」

「?」

 

 陽太がさっぱりわからないと首を傾げるが、とりあえずセシリアの方は放置し、話を続ける千冬。

 

「そして火鳥、お前も同時にIS委員会所属の操縦者としてコアと共に登録された」

「ええ~~~」

「それに伴い、お前の好き放題極まる行動にも制限が生まれる………その書類に書いてあるから全部読み上げ、記憶し、必ず守れ」

「メンドクサイ~~」

「その意見は全面却下だ。それだけではない………封筒の中にIDが入っているだろ?」

「………これか?」

 

 封筒を逆さにすると、中から陽太の顔写真入りのIDが出てくる。

 

「………本来なら有り得ないが、お前にも国連軍としての階級が与えられた。普通なら有り得んがな」

「ホントか!?」

 

 『階級』という言葉に、ちょっとだけ何か特別扱いされている気がして嬉しくなった陽太はIDを眺め始める。

 

「………多大に不安極まる所なのだが、お前の階級は少佐相当官だ。本当に不安極まっているのだが………」

 

 『相当官』というのは、陽太が委員会に所属こそしているが、正規の軍人ではないための処置であり、実際には『大尉』権限しか与えられていないのだが、こう言っては何だが、一般人に比べて押さえるところと押さえなくていいところの差が激しく、時々その常人離れした能力を容赦なく振るう陽太に、そんな権限を与えてよいものかと千冬も迷ったのだが、委員会からの直々の命令に逆らえる権限は彼女にはなかった。

 

「(これは委員会側からの陽太への首輪か………どうやら単純に喜んでいい問題でもなさそうだな)」

 

 心の中でそれだけ呟いた千冬は、気を取り直すと、ようやく復活して青い表情のままのセシリアを含めた四人に、今回の一番の手土産の話を切り出す。

 

「そして、最後に………対オーガコア部隊の新メンバーを伝える」

「!?」

「へっ?」

「ムッ?」

「(フッ……階級………俺も出世したな)」

 

 一人だけ話を聞いていない奴もいるが、千冬はアリーナの入り口のほうを振り向くと、新しいメンバーの名前を呼び上げる。

 

「鳳鈴音(ファン・リンイン)!」

「!?」

 

 その名前を聞いた瞬間、一夏は驚いた表情のまま入り口のほうを凝視する。

 小柄な体に左右それぞれを高い位置で結び、金色の留め金がよく似合う艶やかな黒色をした肩にかかるかかからないか位の髪を風になびかせ、IS学園の制服に身を包んだ、少女がにこやかな笑顔を浮かべて降りてくる。

 

「………鈴?」

 

 一夏のその呟きに、セシリアとラウラは驚きながら彼の顔を見るが、一夏は途端に破願すると、手を振りながら自分が鈴と呼んだ少女に近寄っていく。

 

「オイーッ! 鈴っ!!」

「あ、一夏!!」

 

 自分の名前が呼ばれたことがよほど嬉しかったのか、少女は少年の下に『涙』を溜めながら走っていくと、途端に抱きついてしまう。

 

「えっ?」

「会いたかった! ずっと会いたいって思ってたよぉ、一夏!!」

「ヘッ? ヘッ?」

「一夏の匂いだっ………一夏、一夏!!」

「(ダレダコノコハ………?)」

 

 違う。断じて違う。

 自分の知りうる鳳鈴音(ファン・リンイン)という少女は、こんな甘えた系妹キャラでは断じてない。か弱い小動物のように震えながら自分にしがみ付いてくるような少女ではない。きっと自分の知っている鳳鈴音(ファン・リンイン)ならば出会い頭にこう切り出してはずだ。

 

『久しぶりね一夏! 私のいない間に怠けて頭ダルダルにしてたんじゃないの!? まあ、私が来たからにはもう安心ね! 今日からみっちり鍛えてやるわ!』

 

 きっとこんな感じである。

 心の中でそう呟いた一夏は、今も自分の胸の中で嬉しそうに頬ズリしている少女を相手に、どう接すればいいのかわからず、ただ立ち尽くしてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「そう、それでね! 一夏と別れて中国に行ってから、必死にがんばって代表候補生にまでなったんだよ! スゴイでしょ!?」

「あ、ああ………」

 

 衝撃の再会からしばし、とりあえず本日のトレーニングを切り上げた一同は、鳳鈴音(ファン・リンイン)の詳しい自己紹介を兼ねたミーティングのために食堂の方に集まったのだが、何故か鈴は隣にいるセシリアとラウラに見向きもせずに、一夏にばかり話しかけ、二人の少女が額に青筋を作っているのが見えている一夏はかなり焦っていた。

 しかもだ。今日に限って、授業が終わった後にすぐ何処かに外出している箒が珍しく校内に留まっていた事が一夏に更なるプレッシャーをかけていた。

 無理もない。自分達の隣の席で、先ほどから俯き、ひたすらコーヒーのカップには手をつけず、スプーンでテーブルを小突いたまま、どす黒いオーラを全身から発散したまま時々自分の方を心底冷え切った斬り裂くような目で見てくるのだ。生きた心地がしない。

 

「……………」

 

 この状況に耐えかねた一夏が端っこの席に座っている陽太に助けを求めるが、彼は受け取ったIDを眺めたまま、未だにちょっとした優越感に浸っていて頼りにならない。

 

「あ、そうだ!」

 

 だがここで一夏の視線に気がついた鈴が、IDを見つめている陽太に思わぬ言葉を言い始める。

 

「自己紹介が遅れました! 火鳥 陽太『隊長』ですよね!?」

「………ああ、そうだが?」

 

 対オーガコア部隊のメンバーは、未だに誰も陽太のことを『隊長』と呼ばない為、階級を貰って上機嫌な陽太はちょっとだけ鼻の先が伸びたような調子の良い笑顔で鈴に応えた。

 そんな調子に乗り始めている陽太に対し、鈴は更に彼を増長させるような発言をした。

 

「うわぁー! 私、感激です!! 生きた伝説のIS操縦者、最強のIS乗り、無敵のミスターネームレスなんて呼ばれている火鳥隊長の元で戦えるだなんて~~~!!」

「!!………ハハハッ、そうかそうか……俺が伝説か…」

 

 更に鼻の先が伸びるのが一夏達には見え、鈴以外の人間に微妙な苛立ちと腹立たしさと不快感を与える。一言にまとめると『イラッ』ときたのだ。

 だが、鈴に煽てられ際限なく調子に乗り始めた陽太は、そんな周囲の人間の空気を読まずに、ちょっと良い笑顔をしながら、物凄い上から目線で一夏達に話し始める。

 

「まあ、鳳鈴音(ファン・リンイン)君。すでに伝説になっているこの火鳥陽太の部下としてはまずまず

の態度だ。ほら、他の諸君も私に話しかける時は前と後ろに『サー』をつけて敬語でハナシタマヘ。後、拝観料5分間で500円な」

「ふざけんなっ!」

「貴様、際限なく調子に乗り過ぎだぞ!!」

「その調子に乗る速さだけは伝説級ですわよっ!!」

 

 『ハッハッハッハッ』と足を組んだまま優雅なポーズを決めたまま、『人生勝ち組の陽太君にジェラシーを感じる愚民共』とか言い放つ陽太に、ふざけるなと一夏達が猛烈な抗議をするが、何を言っても『ハッハッハッハッ』で受け流すだけで一向に話を聞こうともしない。

 

「でも、伝説の操縦者である隊長と、織斑千冬の後継者である一夏と、この私がいればこの部隊、もう安心ですよね!!」

「「!!」」

 

 先ほどまでの言葉は、何とか受け流すことはできる。まあ陽太が調子に乗っているのは十分に大問題が………。

 だが、この言葉だけは聞き流すことはできない。

 目の色を変えてそう感じたセシリアとラウラは、思いっきりテーブルを叩いて立ち上がると、鈴を冷めた目で睨み付けた。

 

「ちょっといいかしら、新入りの方?」

「? てか、貴方達誰ですか? 数合わせの背景さん?」

「なんですってぇっ!!」

 

 挨拶もせずにいきなりそんなことを言われて笑顔で許せる人間はここにはおらず、そしてセシリアは勿論そんなことを言われて黙っていられる女ではない。襟首を捕まえて捻り上げようとするが、そこは隊の副隊長であるラウラが制止する。

 

「仮にもお前よりも先に部隊にいる者に対して、いきなりその態度はどうかと思うぞ、鳳鈴音(ファン・リンイン)?」

 

 『俺はいきなり殴られたんだが?』とラウラに心の中でツッコんだ一夏であったが、そんなラウラを鈴は鼻で笑い飛ばすと、激怒しているセシリア同様に心底小馬鹿にしたような態度で接する。

 

「じゃあ、アレですね。雑魚」

「ハァ?」

「雑魚の方ですよね。えっと………ドイツの言葉で雑魚ってどういんだっけ?」

「………キサマッ」

 

 ラウラの空気が一気に零下に突入し、のどかな筈の食堂は一気に戦場のど真ん中に豹変してしまう。

 すでに好感度は無くなり、敵対心を隠すこと無いセシリアとラウラに、未だに笑顔を崩さないまま、その目が笑っていない鈴。流石にこれはまずいと思った一夏が思い切って割ってはいる。

 

「な、なあぁ! これから一緒に戦っていこうって話し合いのためのミーティングの場で、乱闘はちょっとばっかりまずいだろ?」

「一夏ぁ~~~! この人達怖いよ~~」

「「!!」」

 

 だが、そんな一夏の苦労など微塵に気にすることなく腕にしがみついて、さも相手に落ち度があったんだと言い始める鈴に、一夏は小声で注意する。

 

「(オイ、鈴! いい加減にしろよ。これじゃあお前の立場が悪くなるだけだぞ!?)」

「(一夏の息がくすぐったい!………耳、弱いの…)」

「(やかましい! とにかくすぐに謝れよ!)」

「(やだよ~! どうして私が謝らないといけないの~)」

 

 舌を出しながら『あっかんべ~』と一夏だけでなく、セシリアやラウラにまでした鈴に、とうとう二人がブチ切れた。

 

「いい加減にしていただけません!! どうして初対面の方にここまで言われなくてはいけませんの!!」

「いくら教官が連れてきたメンバーとはいえ、とてもこれから命を預けて戦っていこうとは思えん!!」

 

 テーブルを思いっきり叩きつけて食堂を出て行くセシリアとラウラ。そんな二人を追いかけようとする一夏であったが、それをなぜだか鈴が腕を引っ張って呼び止めてしまう。

 

「邪魔な人達いなくなったし、さあ、ミーティング始めましょ!?」

「鈴っ! お前っ!!」

「いいからいいから! そうだ? 一夏ってISの操縦まだ不慣れなんだよね! 私が教えてあげよっか?」

「だからっ!」

 

 腕にじゃれ付いて離れない鈴の扱いに、心底困り果てる一夏。

 そんな二人の様子を、額に青筋を浮かべながら見つめていた箒は、未だに腕と足を組んで上に向かって鼻を伸ばしている陽太に、小声で話しかける。

 

「(オイ、火鳥………なぜ放置する?)」

「(言葉の前と後ろにサーを……)」

「(いい加減にしろ! キサマ、それでも隊長のつもりか?)」

「(………じゃあ、お前さんが部隊入ってよ。あの馬鹿(織斑弟)はまだ前線危なっかしいから、お前さん入ってくれれば、俺が助かる)」

 

 そこはかとなく勧誘してみる陽太であったが、箒はその話が出るたびに、不機嫌そうに断りの言葉を言い放つ。

 

「(私は誰とも組む気は無い)」

「(一匹狼さんね………クールな侍ですこと)」

「(それよりも、お前は…)」

「(見事な愛想笑いだな、アレ)」

 

 陽太が顎で笑いながら一夏にじゃれ付いている鈴の様子をそう指摘する。それは箒も感じていたことで、今の彼女の笑顔は、どこか作られた物的な無機質さがあり、まるで人形の仮面のように思え、かつて自分がそうなりかけていた経験を持つ箒は、直感的に鈴の二面に気がついてたのだ。だがそれに自分と同じように気がついていた陽太は何故鈴を止めないのか、それだけがわからず箒は再び彼に尋ねてみる。

 

「(まさかこのまま放置するつもりではあるまい?)」

「(そのまさか、と言ったらどうする?)」

「(お前………それでは)」

「(とりあえず今は様子見だ。まあ、大体なに考えてんのかは検討つくがな)」

 

 そう自信を持って言う陽太の態度に、箒は今一つ半信半疑な気持ちを拭えずにいるのだった。

 

 

 

 

 

 

 





ブリッ子する鈴さんっていうのも、ちょいと難しいな。

次回、騒動は更に加速します。


追伸、主人公にイラッと来るのはフゥ太もですw
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