IS インフィニット・ストラトス 〜太陽の翼〜   作:フゥ太

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もう、なんだか指が進まないッス(涙


もう少し早く、投稿するようになるにはどうすりゃいいんだろうか?


二人の復讐者

 

 

 

 

 

 

  日本某所・マンション15階

 

 最も日の高い時間帯となり、見下ろされた地面に巨大な影を作り出している高級マンションの一角にある部屋において、分厚いカーテンで日の光を遮り、真っ暗になった室内で、唯一ついたモニターの映像を食い入るようにジークは見つめ続けいた。

 

 ―――蝙蝠型オーガコアとの空中戦―――

 

 ―――オーガコアと一体化したラウラとの格闘戦―――

 

 ―――そしてムカデ型のオーガコアと、変異体に成長したオータムとの戦いも―――

 

 その映像の中に映し出された陽太が駆るブレイズブレードの一挙手一挙足に至るまで事細かにジークは観察し続けていた。それも本部からこちらに帰還してからほぼ不眠不休でだ。

 

「(パワー、スピード、テクニック、ISの性能、そして行動のパターン………)」

 

 観察に観察を続けた末の結論………口元を歪ませながらジークは語る。

 

「………九分九厘で俺なら血祭りに上げられる」

 

 断言できるだけの確信を得たジークが立ち上がった。今からスコールに連絡を入れて出撃の許可をもらおうと、スマフォを手に持つ。だがその時、ちょうどスコールからの着信が入り、ジークはタイミングが良い密かに喜ぶ。

 

「………さすが俺の上司様だ」

 

 そして通話ボタンを押し、嬉々として彼は上司相手にタメ口で言い出した。

 

「オイ、スコール!?」

『ちょっ………ジークッ!? 貴方、仮にも上司に向かって』

「そんなことはどうでもいいんだヨッ! 早く俺をIS学園に行かせろよ!! その為の電話なんだろ?」

『違うわジーク………別の用件よ』

「チッ!」

 

 一気に意欲を失ったのか、手に持ったスマフォを放り出そうとするジークの気配を呼んだのか、スコールが慌てて本題を切り出した。

 

『もう! 貴方に指令を下しますジーク………今すぐこの地点にいるオーガコアを回収しに行って。マドカとフリューゲル達にも命令しています。現場指揮は貴方に任せるわ』

「………あのな」

『貴方、部下ッ! 私、上司!! 以上!!』

 

 素の部分が一瞬だけ出たスコールの電話越しの剣幕に押されるジーク………意外に押しの強い女性には弱い傾向が彼にはありそうだった。

 

『あとそれと、先に行っておきますが、今回は回収が任務です。まだ作戦プランが完全に出来上がっていない以上、くれぐれもIS学園との戦闘は避けるように………判った?』

「………了解」

『その間は何なの!? やっぱり貴方には任せておけな・』

「あ、位置情報来たな。じゃあ出撃するぜ、上・司・様」

 

 ニヤリと微笑んで出現ポイントの情報を見るジークは内心、結構な期待で心躍らせる。見ればここから数キロと離れていない………つまりIS学園から対オーガコア部隊が出撃しても、十分に数分で駆けつけてこれる位置なのだ。

 

「てめぇーらは、オーガコアから民間人を守る、正義のヒーロー様だったよな!?」

 

 そうだ。自分は悪の手先でいい。どうせ自分の行く道は血と殺戮の道だ。だったら嘘くさい、青臭い正義の味方なんぞよりも、悪党の方が性に合っている。

 

「そうだ………俺は何人が犠牲になろうと関係ねぇんだからな」

 

 まるで何か自分に言い聞かせるように立ち上がると、ジャケットを片手に部屋の外へと足を踏み出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

「あら?」

 

 彼女の存在に気がついたのは、たまたま退院する患者を見送るために病院の入り口まで降りていた婦長だった。

 病棟のすぐ傍にある木にもたれかかりながら、とある病室の窓を覗くポニーテールの少女の姿を見た婦長は、一目見てそれが誰なのかを理解し、病棟の中にある自販機へと足を向ける。

 

「……………」

 

 対して、ポニーテールの少女………箒は、しばし最上階の病室の窓、簪が入院している窓を見ていたが、徐に下を向くとそのままその場に座り込んでしまう。

 

 IS学園を出た後、彼女は寮に戻ることもせず、されど何処か行く宛てもなく、気がつけばここに足を運んでいたのだった。そして自分が無意識に簪に甘えに来たのだと思うと、そのまま病室に行くことも躊躇い、だが引き返すこともできず、この場に留まる事しか出来ずにいたのだ。

 

「こんにちわ」

「!?」

 

 そしてそんな彼女に、両手にジュースを持った婦長が声を掛ける。

 

「二日連続だなんて………ちょっと感心できないわね、箒ちゃん」

「あっ!? えっ!? いえっ!!」

 

 よりにもよって見つかりたくない人物に見つかってしまい、すっかりパニックになってしまう。鞄を持ってダッシュでこの場から立ち去ろうとしたする箒だったが、彼女が立ち上がるよりも前に婦長は箒にジュースを差し出す。

 

「あ、あの私はこれで………」

「………一息つきたいところだから、お付き合いしてね箒ちゃん?」

 

 温和でありながら幾分威圧感があるその笑顔に、箒は気圧される様に首を立てに振るのみだった。

 

「………」

「………」

 

 何も言わずに隣に座ると、ニコニコと微笑みながら時々ジュースを飲む婦長を、箒は何を話しかければいいのか検討もつかず、しばし黙り込んでしまう。だが、そんな箒に婦長は微笑みながら俯くと、微笑みの中にほんの少しだけ悲しいものを含めながら、彼女に問いかけた。

 

「本音ちゃんと喧嘩したのかい?」

「!?」

 

 その問いかけに、箒は答えることが出来ず、俯いて膝を抱えて蹲ってしまう。婦長は尚も続けた。

 

「じゃあ………織斑一夏君と喧嘩したの?」

「!?………ち、違います!! 私は………」

「箒ちゃん、自覚がないかもしれないけど、誰かと何かトラブルがあるたびに、簪ちゃんに会いに来るでしょう?」

「うっ!?」

「でも、簪ちゃんに甘えるのはいけないと思って、いっつも病室の前だとか、中庭だとかで、一人悶々としてるでしょう?」

「あ、貴女はどうして私の事をそこまでっ!?」

「あら、私、人を見てお世話する看護婦(スペシャリスト)よ?」

 

 よもやそこまで自分の事を見られていたとは………驚きと羞恥心で立ち上がるが、しばらくして肩から力を抜くと、溜息をつきながら再び座り直し、ポツポツと語りだした。

 

「喧嘩………ではありません。私が………一方的に傷付けただけです」

「……………」

「心配………してくれたんです。なのに………私はいつもそうだ。いつも………何もかも裏目に出てしまって……」

 

 自分を心配してくれた二人に、自分勝手を押し通し、背を向けて逃げるようにここまで来た。しかも二人に背を向けたくせに、そのことを後悔して簪に今度は甘えようとする自分の弱さが堪らなく許せない箒は、膝を抱え、落ち込んでしまうのだった。

 だが、そんな風に落ち込んでしまった箒を、彼女は優しく微笑みながら、ちょっとからかい気味に話しかける。

 

「プッ!」

「!?」

「ハッハッハッ! 箒ちゃんって………プププッ、ホント真面目さんなのね!」

「な、何がおかしいんですか!?」

 

 流石にそのリアクションは心外だと言わんばかりに顔を上げて抗議する箒の頭を撫でながら、婦長は話を続けた。

 

「失敗なんて、人生には付き物付き物! 会いに行って御免なさいしたら良いだけじゃない?」

「そんな………簡単には」

「謝罪は簡単よ。難しいのは本当に反省すること………その点は箒ちゃんは安心ね」

 

 そう言う婦長は『しばらくしたら上がってきなさい』と言い残し、その場を後に歩き出す。箒の方はというと、まるで煙に巻かれたかのような心境になり、いま一つ納得できないものを抱えながら、その場から空を見上げたのだった。

 

 対して、病院内のロビーに入った婦長は、自分の持ち場に戻ろうと一階のエレベーターに向かうが、そこによく見知った少女と、まったく見知らぬ一人の少年がエレベーターを待っている場面に出くわし、箒を相手にした時と同様に、慈愛を含めた笑顔で少女の背後に立つと、手に持っていたフォルダーで軽く頭を小突いて見せる。

 

「こら、平日に学生さんがこんなところで何をやっているの?」

「!? あ、婦長さん!! こんにちわ~」

 

 袖がダボダボの制服と、ユルイ笑顔を浮かべたのほほんと、初対面の人間の登場に驚きながらも丁寧に頭を下げて会釈する一夏。婦長はそんな一夏のことを見て、ヒソヒソ声でのほほんに問いかける。

 

「あら、本音ちゃん。素敵な彼氏ができたわね?」

「ん? 私じゃないよ~~。おりむーはほーちゃんの彼氏さんなんだよ~」

「なんと………これが噂のイケメンさんね」

「?」

「しかも、楯無ちゃんの言う通り、女心を理解できない困った君か………確かに箒ちゃんが苦労しそうね」

 

 楯無経由で自分はこの人にどんな人間だと伝わっているのか………非常に気になる一夏に、婦長はニカッと微笑むと、彼の腕を掴むとエレベーターに乗り込もうとする。

 

「あ、すいません! 俺、実はココに人を探しに来てて………」

 

 だが一夏にしてみれば、今は箒の捜索を優先したく、あいにくと婦長に長々と付き合う時間は無い。そう思って手を振りほどこうとするが、予想を超えた力強さでそのまま引きずられてしまう。

 

「大丈夫大丈夫、箒ちゃんは、今、外で自己反省中」

「えっ!?」

「箒ちゃんに声をかけるなら、今はこっちを優先しなくちゃね」

「婦長さん、それって」

「そうよ本音ちゃん。今は一夏君を簪ちゃんに紹介してあげなくちゃ」

「!! だよねっ!!」

 

 婦長の言葉に心底嬉しそうに相槌を打ったのほほんは、彼女と一緒に一夏の腕を持ってエレベーターに向かう。一人意味がわからない一夏はというと、自分を引きずる二人の人間に交互に『自分で歩けますから!!』と言い放つのが精一杯であった………。

 

 

 エレベーターに乗って最上階まで連れてこられた一夏を、そのまま二人は笑顔を浮かばべたまま連行し続ける。途中、何人かのナースとすれ違うが、婦長は彼女達に『どう? 私の新しい彼氏(旦那様)は?』と言って、一夏を苦笑させつつ、角にある一際大きな病室へと案内される。

 

「さあ、着いた。入って入って一夏君」

「え? あ、あの………すみません、ここに誰が?」

「ん? 私の幼馴染で、ご主人様で、ほーちゃんの大切な親友だよ!!」

「ご、ご主人様?」

 

 戸惑う一夏に答えたのは、婦長ではなく隣にいるのほほんだった。彼女は笑顔でドアを開くと、一瞬だけ、いつもの笑顔ではなく、もの悲しさを浮かべた表情となったのを一夏は見逃さなかった。

 

「おっはよう~! かんちゃん~! 元気にしてかな~?」

「!?」

 

 病院で騒ぐのは聊か問題はあるが、それが必死に悲しさに囚われないようにしていることを知っている婦長はのほほんのその叫びにも咎める事はしない。

 もはや見慣れた病室に入っていくのほほんと、初めて入るために若干緊張している一夏は、病室の主ともいえる、幾つかのチューブを鼻の中に入れられた状態で白いシーツの上で眠り続ける簪が出迎えた。

 すっかりとやせ細った身体に点滴を刺された状態で眠り続けるその姿に、若干気後れるように足の歩みが遅くなる一夏に、婦長は背中を叩きながらとあることを伝える。

 

「こういう子に会うのは初めて?」

「え? ええ………」

「そうなの………だったら、覚えておいてね」

 

 婦長はゆっくりと近づくと、日差しが強くなり始めた窓を開き、新鮮な風を病室に迎え入れる。フワリッとカーテンがしなる中、婦長は窓から地上を覗きながら、一夏に言葉を紡いだ。

 

「こんな状態だけど、簪ちゃんは戦ってるのよ」

「………た、戦ってる?」

「そう。話すことも動くことも自分ではご飯を食べることもできない………見た目はただ眠っているだけ。でもね、この娘は、今、必死になって戦ってる………必死に生きようとしている」

「……………」

「自分のせいで悲しんでいる箒ちゃんのことを、簪ちゃんはこんな状態でもちゃんと理解している………だから、これ以上、悲しみを背負わせないように、これ以上箒ちゃんが悲しい思いをしないでいいように、必死に生きてるの」

 

 看護婦になって20数年間、沢山の人達の生死を共にしてきた婦長の言葉に一夏は息を呑む。そしてその『戦っている』という言葉に彼は深い感銘を覚える。

 

「(力がなくても………戦っている)」

 

 知らず知らずのうちに、一夏の手に力が篭る。自分の知らないところで、箒のためにこうやって戦ってくれている簪に気後れしたことを恥じて、彼はベッドの横に向かうと、一度だけ深呼吸をして簪に挨拶をした。

 

「こ、こんにちわ。俺の名前は織斑一夏っていうんだ。よろしくな………ええっと……」

「更敷簪だよ!」

「そ、そうそう!! よろしくな、簪!」

 

 返事は無い。頷きもしない。だが何故だろうか? 一夏にはどうしてか簪が静かに微笑んでくれたかのように思えたのは………。

 

「おりむー………」

「何、のほほんさん?」

 

 そんな一夏に優しく微笑みながら、のほほんはベッドの脇に座ると、簪の額の髪を優しく撫でながら話し始めた。

 

「かんちゃん、おりむーに会えて嬉しいって!!」

「いや、それはどうかと………」

「ううん~、私、一番、かんちゃんと付き合いが長いんだも~ん!!」

 

 にへへ~とユルく笑いながら、彼女は語った。

 

「かんちゃん、言ってた………ほーちゃんと自分はそっくりさんだから、どうしても放っとけなかったって」

「のほほんさん………」

 

 『かんちゃんと私は一心同体~』と嬉しそうに話すのほほんの姿に、一夏は彼女もまた、深い悲しみを持っていたけど、それに負けないように戦っているのだということに気がつく。

 

「(………みんな、戦ってる)」

 

 力が無いと戦えない。だから力が欲しい………ISを手に入れるまで、ずっと考えていたことだ。そしてISが手に入っても、上には上がいる世界な為に、今でも力が欲しいという気持ちは変わっていない。だが、今、目の前にいる人達の姿は、かつての一夏の姿に近く、だけど限りなく遠かった。

 

 彼女達は、戦う力は無い………だけど、そこに一切の悲観は無い。後ろ暗い惨めな思いも無い。それを知った上で、自分ができることを見つけてやっている。現に、今、簪は戦っていた………この瞬間も、懸命に。

 

「(箒………やっぱり、今のお前は間違ってる)」

 

 そう、今の箒は間違っていると一夏は直感的に感じ取った。

 

 箒は敵討ちしたくて、力が欲しかったのか?

 オーガコアを残さずぶっ潰す為に強くなりたかったのか?

 

 弱いことに我慢できなくて力がほしかったのではないのだろうか? ではなぜ我慢できなかった?

 

「(お前だって…………守りたかったんだよな)」

 

 勘違いしてはいけない。力があったから自分達は戦おうと考えたんじゃない、力があるから戦わないといけないわけでもない………力が無くても戦っている、大切なものをくれた人達を守りたくて、壊したくなくて、力がほしかったんじゃないのか?

 

「箒………お前は一人になっちゃいけないんだ」

 

 一人に、孤独に、戦っちゃいけない。そんなことして、目の前で今も必死に戦っている親友(なかま)を傷つけちゃいけない。

 ギュっと拳を握り締め、伝えなくちゃいけない気持ちに気がついた一夏は、病室を出て行こうとする。

 

「ごめん、のほほんさん! 俺、箒のところにまで行ってくる!」

「おりむー………」

「大丈夫! アイツを独りには絶対にしない!!」

「!?」

 

 爽やかな笑顔と、熱い言葉で、見つめるのほほんの表情を紅潮とさせた一夏が走り出そうとした時だった………。

 

 病院内を、突如大きな爆発音が襲ったのは………。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

「!?」

 

 その爆発音の発生現場には、最上階にいた一夏よりも、外にいた箒の方が反応が早かった。突然の事態で一瞬パニックになりかけたものの、すぐさま我を取り戻し、その場を走り出す。いつでもISを展開する心の準備をしながら、中庭の角を曲がり、爆発の中心………救急搬送口にたどり着いた時、彼女が目にしたのは、赤い炎を上げながら炎上する救急車、パニックになりながらその場から走り出す病院関係者と、炎上した救急車からゆっくりと抜け出してくる、全身傷だらけの女性だった。

 

「!!」

 

 箒の直感が嫌な予感を告げる。箒が取り逃がし続けているオーガコアの進路。出現ポイントが疎らながらも、少しづつ人里に近づいていたが、この病院は行動範囲にギリギリ入っていたのではないのか?

 

「キサマはっ?」

「?」

 

 白目を向きながら箒の声に反応した女性が、ニヤリと笑った瞬間、地面がいくつも盛り上がり、爆発させながら、雀蜂に酷似した機動兵器を出現させた。

 もはやその様子に、問答する必要もないといわんばかりに、飛び出しながら愛機の名を叫ぶ。

 

「紅椿!!」

 

 一秒にも満たない時間で、量子変換された装甲を纏い、箒が両手に空裂と雨月を持って、機動兵器(蟲共)に斬り込んだ。

 

「はあああああぁぁぁっ!!」

 

 両の刃を斜め下に振り下ろし、一撃で更に前方から来た敵を迎撃するべく、振り下ろした直後、地面に片手を置きながら前方一回転しつつ右脚のビームブレイドを展開し、踵落としで縦一文字に斬り裂いてみせる。

 

「(時間は掛けん! 短期決戦で秒殺あるのみ!!)」

 

 時間がかかれば、オーガコア(本体)が何をしでかすか分かったものではない。現状、ただ此方を舐めているのか、それとも何か別の狙いがあるのか?

 判断が付きかねる箒だったが、敵が目の前にいる好機を逃すこともできない。ここは慎重に対応するよりも、早期決着をつけるべきだと決意し、箒はオーガコアに向かって突撃する。

 

「覚悟ッ!!」

 

 空裂と背中のビットを合体させ、展開装甲を使用し、必殺の技を放つ。

 

「剣撃飛翔!! 紅牙rっ・」

 

 だが、増幅された巨大なビーム刀波は、目標であったハズのオーガコアから大きく外れ、まったく関係のない駐車場を深く抉るのみだった。

 

 オーガコアの能力がそうさせたのか?

 

 目測を誤らせる能力を有していたのか?

 

 しかし答えはそのどちらでもなく、ただ箒が目の前のオーガコアの存在を忘れ去ってしまうほどの衝撃を受け、呆然と途中で立ち尽くしてしまったからだった。

 

「あ………あ……」

 

 箒がその瞳に焼き付けて離さぬ存在………その『人物』がゆっくりと地面に降り立つ。

 

「ったく………IS学園はまだ到着してないのか?」

 

 全身黒い装甲に覆われたISを身に纏ったジーク・キサラギが、周囲を見回しながらぼやいた。そのすぐ後ろに、蒼いISを身に纏い、手にビームライフルを携えたマドカがそんなジークの肩を持ちながら注意する。

 

「ジーク。今日はオーガコアの回収が最優先任務だ。IS学園については後日、改めてスコールが練った強襲作戦を実施する」

「そういうのがトロくせぇって言ってんだよ………なんなら俺一人行って、上司様方の手間を省いてやってもいいんだぜ?」

 

 普段とはまったく逆転した、いつもは血気盛んなマドカが、冷静沈着なジークを止めるという図式になっていた。そんな二人を心配したのか、同じくジークを心配している少女が話しかけてきた。

 

「マドっち」

「………フォルゴーレ」

 

 全身重武装のISを身に纏った、暴戦士親衛隊『竜騎兵(ドラグナー)』の一人であるフォルゴーレは、ジークの背中から発せられている負のオーラの存在に気が付いてた。

 

「(ジーク君………今すぐにマリアちゃんの敵討ちに行きたいんだ………だけど)」

 

 マリア・フジオカのことはフォルゴーレもよく知っている。年が近い割りに、非常に頭がキレ、諜報能力に長け、決して選択を誤らない判断力を持った友人だ。だからこそ、彼女が火鳥陽太に殺されたと聞かされた時、怒りよりも先に疑問が湧きだった。

 

「(マリアちゃんはどうして殺されたの?)」

 

 どう考えても腑に落ちない。火鳥陽太がもし自分達が敬愛するアレキサンドラ・リキュールに認められた一流の戦士であり、少なくとも自分たちと戦った時には進んで殺しを働こうとしない、真っ直ぐな性根の持ち主だったのなら、やはり彼が殺したというのは多分に疑問を感じる。

 そして第一発見者がキャスター(魔術師)メディアというのが、フォルゴーレには一番警戒を抱かせる要因になっていた。組織においては彼女の評判は最悪以上の悪評であり、『総帥』を抱きこんで組織を私物化しているというのがもっぱらの噂である。そしてなによりもリキュールが彼女の存在を全身全霊で毛嫌いし、『敵』と言っているのだ。

 

「(親方様の敵は………私達の敵だ)」

 

 アレキサンドラ・リキュールの言葉には、一切の疑問の余地をはさまない。竜騎兵(ドラグナー)全員の不文律であり、それを最も忠実に守っているフォルゴーレにとって、キャスター・メディアの情報など鵜呑みにするなどとても出来ない。

 

「おかしいよ………マドっちは、マリアちゃんをあの陽太君が殺したと思っているの?」

 

 ポツリと疑問が口から漏れるが、マドカは苦虫を噛み潰すような表情でこう答える。

 

「敵のことなど私は知らない。仮に火鳥陽太がやったにせよ、そうでないにしろ、私達にとってはアイツは倒すべき敵という事実は揺るがない」

「それは………そうだけど」

 

 マドカの言葉に、反論することが出来ずに視線をほかの竜騎兵(ドラグナー)達に向ける。ヘヴィーランスに寄りかかりながら欠伸をするスピアーと、趣味による徹夜明けで目の下に隈を作っているリューリュク、そして一番高い木の上でISを展開して、電波撹乱をしているものの、目には一切の真剣さが宿っていないフリューゲルといった状況に、ため息が漏れた。敬愛するアレキサンドラ・リキュールが見ていない戦いなど、真剣にする必要はない、と無言のメッセージである。

 

「(皆、親方様がいないとだらけちゃうんだね)」

 

 昼間から食っちゃ寝してるお前には言われたくない………三人が口を揃えて言いそうなことを考えながら彼女はまとまらない考えのために、ジークを上手く止める言葉が思い浮かばずにいたのだった。

 そんなフォルゴーレの心を知らず、ジークは目の前のオーガコアを見ながらも大した興味も抱かずに、周囲の索敵をし続ける。

 

「(火鳥陽太のISの反応はない………チッ。適当にオーガコアと戦って時間を潰すか…)?」

 

 オーガコアの回収という任務を事実上放棄するような考えをしていたジークであったが、その時、前方から、猛スピードで突っ込んでくるISがいた。

 

「見つけたぞぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 両の手に空裂と雨月を携えた箒が、上段に両刀を振りかざし、絶叫しながら突っ込んできたのだ。そしてそのあまりの形相と絶叫振りに、大してやる気の起こらなかった竜騎兵達は軽く驚いて、初動が遅れてしまう。

 

「うあああああああああっ!!」

 

 ジーク目掛けて振り下ろす両刀………だが、二本の刀を甲高い金属音と共に防ぎきったのは、ジークではなく、マドカの左腕に持たれた実シールドであった。

 

「貴様、『私の相棒』に何の用があって襲い掛かる?」

 

 『私の相棒』という言葉を強調していうマドカに、フリューゲルとリューリュクとフォルゴーレは内心で『また、マドカ(マドカッち)の焼きもちが始まったか』と呟く。が、そんなことを知る由もない箒にしてみれば、今、マドカに構っている余裕など欠片もなかったのだ。

 

「邪魔を………」

「!?」

 

 両腕に渾身の力を込めながら、スラスターを全開にする箒の勢いに、マドカが徐々に押され出す。

 

「するなぁぁぁっ!!」

「ぐっ!?」

 

 そしてマドカを横に弾き出すと、両手に持った刃をジークに叩きつける箒………殺気を漲らせた渾身の双撃がジークに襲い掛かる。

 

「……………」

「!?」

 

 だが、その渾身の攻撃はまるで目測を誤ったかのようにジークを通り過ぎる。何が起こったのか理解できなかった箒だったが、そんな彼女を黙ってみていたジークの一言で、再び怒りと共に意識を再起動させた。

 

「誰だ、お前?」

「!!」

 

 自分を覚えていない………その事実を述べた言葉に、箒の怒りのボルテージが今まで以上に登り上がる。

 

「私を………覚えていないだと!? 取るに足らない存在だから、記憶するに値しなかったと!? ふざけるなぁぁぁ!!」

 

 両脚のビームブレイドを出し、箒は二剣二刃の計四つの斬撃をジークに向かって繰り出し続ける。縦横斜め上下前後左右………あらゆる覚悟の斬撃を高速で振るい続けるが、その全てがまるで手応えを感じさせずに目の前のジークを通り過ぎていくのみだった。

 

「お前が忘れても! 私は忘れたことなど一秒もない!! 貴様が、二年前にしたことをっ!!」

「………だから、それが何の話だ?」

 

 目の前のジークが、箒の高速蓮撃を正確に『見切り』、最小限の動きで『回避してから元の位置に戻ってきている』という常識の外の動きをしていることにすら気がつかないほどに激昂した箒は、ペース配分やエネルギーの消費など一切に気にせずに、ひたすら攻撃し続ける。

 しかし、そんな中、半ば放置されたオーガコアが、病院施設に襲い掛かりだす。

 

 邪魔をする者がいなくなったのをいいことに、オーガコアは失ってしまった兵力を取り戻そうと、病院にいる人々を取り込みにかかったのだ。そして邪魔になりそうな者や、条件を満たせない者を次々と葬り去り始める。

 逃げ遅れた人々や、怪我で動けない人々に次々と針を撃ち掛ける姿を目の当たりにしたジークは、どうするか未だに決めかねているマドカと竜騎兵達に指示をだした。

 

「マドカ、フリューゲル達はあのオーガコアを潰セ」

「ジーク!?」

「な、なんで私たちにアンタが命令してんの!?」

「俺はお前達よりも階級上だぞ? それにな、家賃滞納分はしっかり働いてもらわねぇと、その分をお前達が愛する『上司様』に請求しないといけないんだガ?」

「なっ!? 親方様にタカる気か、貴様っ!?」

「そうなるかどうかはお前ら次第だよ。ほら、とっととお仕事してロ!!」

 

 ジークのその言葉に、渋々といった表情でフリューゲル達はオーガコアに向かっていく。元々彼女達は敬愛する上司以外の命令を聴きたくないという、組織人としては致命的に常識が欠けr…………一本気な気質のために悪態をついてしまったが、目の前で蹂躙される人々を見て、腹を抱えて笑えるほど非情な人間でもない。ましてやアレキサンドラ・リキュールの教えに『真の強者たれ』という大前提がある。そして『真の強者』は弱者のためには戦わない、が弱者をいたぶって悦に入るような下衆を生かしてやることもしないのだ。

 

「仕方ないわね。行くわよ………スピアー、リューリュク、フォルゴーレ」

「だから貴様が仕切るな!」

「まあ、今回は文句を言わずに付き合ってあげます」

「さっすが、フリちん!! かっくいい!!」

 

 悪態をつきながらもスピアーを最前線にし、その後をフリューゲル、リューリュク、フォルゴーレがオーガコアに飛び掛る。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

「失せろ! 虫ケラ共ッ!!」

 

 空中にいる敵を、ヘヴィーランスの突進力で薙ぎ払うスピアーと、そんな彼女と併走しながらビームサイズで敵を斬り裂き続けるフリューゲル、後方からはリューリュクとフォルゴーレが射撃と砲撃の双方で援護し、オーガコアが率いる軍勢も、厄介な敵だと彼女達を判断して、戦力を集中し始めた。

 

「うじゃうじゃ沸いてきましたよ!」

「それでいいの! 私達に向かってきてくれてるんだから!!」

 

 虫が大の苦手なリューリュクとしてみれば、できれば永遠に相手にしたくないのだが、フォルゴーレは続けざまにロングレンジバスターキャノンを放ち、敵を爆砕させ、できるだけ注意を引きつけようとする。

 そのうち、逃げ遅れた母子を見つけたフォルゴーレは、襲いかかろうとしたした雑魚敵を右手に持ったハンドキャノンで撃ち落した。

 

「早く、逃げて!!」

 

 呆然となってその光景を見ていた母親がその叫びに我を取り戻し、あわてて礼を言いながら駆け出していく………途中で子供がこちらに手を振るのを見たフォルゴーレが、同じように手を振る………それが致命的な隙になるとは気がつかずに。

 

「フォル!?」

「!?」

 

 リューリュクの叫び声に気がついたフォルゴーレが振り返った時、上空の機動兵器の一機が、その毒針の照準をフォルゴーレに向けていた。それに気がついた彼女であったが、避けるには時間があまりに刹那過ぎる。

 回避することもできず、文字通りの蜂の巣にされる、と瞳を閉じて覚悟したフォルゴーレだったが、その瞬間、彼女を狙っていた悪鬼の蒸を、白い光刃が真っ二つに斬り捨てる。

 

「へ?」

 

 何が起こったのか一瞬理解できなかったフォルゴーレの視界に、白いISを纏った男子が降り立つ。

 

「大丈夫か!?」

 

 白式を纏った一夏が放った烈空がフォルゴーレを救う………そのことに、竜騎兵達全員が呆然となってしまった。

 

「あ、あ、あの………貴方」

 

 どうして敵である自分を救おうとしたのだろうか? フォルゴーレがそう問いかけかけたとき、一夏は爽やかそうな笑顔を浮かべながら、こう語る。

 

「いやさ………お前達が病院の人達のために戦ってるの見て、つい反応しちまったんだ。言うほどお前達、悪い奴等じゃないんじゃないのかって思ってさ」

「!?」

 

 敵であることは理解してる。目の前のIS操縦者達は亡国機業(ファントム・タスク)のメンバー達だということは認識しながらも、一夏にはこの場においてはどうしても彼女達を敵だと思うことはできず、つい窮地を救うような真似をしてしまったのだ。

 

「………箒」

 

 だが穏やかそうな笑顔は、獣のような叫び声を上げている箒を見た瞬間、一瞬で消え去ってしまう。

 

『早くココに火鳥陽太を連れて来い、ザコが』

 

 地面に叩きつけられた箒を冷たく見下ろすジーク・キサラギを見た時、一夏は感情のまま後先考えずに突っ込んでしまう。

 

「てめぇぇぇぇぇっ!!」

 

 雪片を振りかぶり、水平に横薙ぎでジークの頭部を狙い定めて突撃する一夏だったが………。

 

『………ハッ』

 

 左手にガンブレードを取り出し、一夏の渾身の一撃をジークはあっさりと弾き返す。

 

「なっ!?」

「ん? てめぇは………いつぞやのザコかヨ」

 

 一夏についてはその程度の認識しかしていなかったジークは、返す手でガンブレードの切っ先を向け、強烈な殺意を放ちながら振るおうとした。

 

「ザコには………用はねぇっ!」

「一夏ッ!!」

 

 地面に倒れこんだために、箒は助けに入ることもできず、ただ彼の名前を叫ぶだけで精一杯だった………そしてそれと同様に、体勢を崩され、反撃も防御も回避も出来ずに、ただ生すがままにジークの一撃を受けようとしていた一夏だったが、そんな彼の背後から突如、二つの閃光の鞭が走り、彼の首と胴に絡みつく。

 

「!?」

「!?」

 

 ジークが一撃を放つのと一夏が急激に後ろに引っ張られるのとはほぼ同時だったが、若干後ろに引っ張られるタイミングが早かったのか、ジークが放った一撃は見事に空振られてしまう。

 

「グエッ!」

 

 潰れた蛙のような声を上げながら地面を引きずられた一夏だったが、間一髪に自分を窮地から救った人物は、そんな彼に容赦のない言葉を浴びせた。

 

「ホント、お前はどこでも出落ちするのが得意だな? 趣味か? あっさり噛ませになるのがお前の趣味なのか?」

「陽太………大丈夫か一夏?」

 

 一夏の首に左腕のシールドから放ったワイヤーを絡まらせた陽太が、一夏を見下ろしながら言い放つが、胴体の部分にワイヤーブレードのワイヤーを絡まらせたラウラが、諌めながら一夏に手を差し出す。

 

「陽太さんッ!!」

「まだ周囲の避難には時間がかかるそうです!!」

 

 そんな二人に、ISを展開して上空から飛来したセシリア、シャル、鈴が、簡潔に周囲の状況の説明をしに現れた。

 

「元から怪我人やら病人が多いから、すぐに動かせない患者も大勢いるのよ」

 

 鈴が若干あせりを感じながら言い放ったのは、無論、オーガコアの存在だけではない。

 

「火鳥陽太ッ!! IS学園!!」

 

 先ほどまで大人しく静観していたマドカがライフルの照準を陽太に向け、敵意をむき出しにする。

 鈴を警戒させていたのは、獲物を構えて、自分達に刃を突きつけてくる亡国機業の存在もあるからである。最悪、どっちも相手にしないといけないとなると、病院の人々のことも考えると、相当に状況は悪いと言えるが、そんな中、陽太が一夏の首に絡まったワイヤーを解くと、同時に前にゆっくりと歩き出す。

 

「ラウラ、シャル達と一緒に避難と人命救助優先でオーガコアに対処しろ。どうやら向こうさんもオーガコアが狙いだ。最悪そっちは渡してもいい」

「陽太! だがっ!!」

「これ以上誰も死なせるな! それを一番の目的にしろ!!」

 

 有無も言わせぬ陽太の隊長としての言葉に、副隊長のラウラは一瞬の間、沈黙して、静かに了承する。

 

「了解した。だがお前は?」

「………目の前の奴さん……俺に用があるみたいだな」

 

 そして陽太の視線は、マドカのライフルの照準を手で押しやって、同じくゆっくりと歩いてくるジークへと注がれる。

 

「……………」

 

 ゆっくりと歩くジーク。

 

「……………」

 

 同じく歩きながら、首をコキコキと鳴らす陽太。

 

 

 そして互いの間合いがある程度、狭まった時、二人はその場に留まり………地面が爆発させた。

 

 

「!!」

「!!」

 

 ―――ラウラとマドカと一夏と箒の視界から一瞬で消え去る両者―――

 

「速いッ!!」

「二人は!?」

 

 完全に他の操縦者たちの視界から消え去るほどのスピードを見せた陽太とジークの両者は、上空50mの地点で、互いの拳と拳を激突させあう。甲高い金属の激突音で二人の居場所を察知した他の操縦者たちを尻目に、衝撃波を発しながら交差した二人は、今度はすれ違いざまにお互いに回し蹴りを放ちあい、それをそれぞれ腕で防ぎ合う。

 蹴りの衝撃で、コンクリートの建物に飛ばされた陽太と、森林の中に飛ばされたジーク………。

 

 ―――着地と同時に、その場から飛び去り、再び空中で一撃を放ちあう両者―――

 

「「「「!?」」」」

 

 空中で陽太が繰り出した右拳と、ジークが繰り出した左のキックがかち合い、空気を破裂させあいながら、お互い地面に着地しあった。

 

 両雄の圧倒的な戦いっぷりに、IS学園も亡国も声が出ない中、避難民で溢れかえる病院の道をあろうことか逃げるのではなく、逆走してくる一台のスポーツカーがあった………真っ黒なボディをしたイタリア系の名車は、病院の脇に急ブレーキで止まると、ちょうど拓けた、二人の戦いが良く見える位置に停車する。

 

「フフフッ…………なんとか間に合ったようだね?」

 

 その車の助手席において、大量の紙袋とちりゴミを出しながら、手に某有名店のビック〇ックを二口で平らげたアレキサドラ・リキュールは、心の底からワクワクしていた………理由は簡単だ。彼女が思い描いていた魅力的な『出し物』が今、目の前で行われているのだからだ。

 

「はぁ………もう、私、嫌になりそうよ?」

 

 そして運転席において、イライラとしながらハンドルを握るスコール・ミューゼルは、サングラスの下から隣にいるリキュールを睨み付ける。

 

「貴方の我儘! そんなに私を困らせて楽しいの?」

「そう言わないでくれスコール。君も楽しんで見るといい。こんなカードは、本部にいても滅多にお目にかかれないよ?」

 

 日本の高級ホテルに宿泊していたスコールとリキュールだったが、オーガコア出現の報を聴くやいなや、陽太とジークが激突するのを見たさに、見物に来ていたのだ………あえてジークを煽るような言い方をしてまで。

 

「作戦前に余計な波風立たせて、私の作戦プランを台無しにする気?」

「そういうわけではないが………フフ、互いに若いね。格闘戦であえて主導権(イニシアティブ)を取ろうとしている。序盤はお互いにちょっとした維持の張り合いかな?」

 

 自分の小言を限りなく受け流し、〇ックシェイクを飲み干す恋人(親友)に、偉くご立腹なスコールは、彼女の手からシェイクを奪い去ると、そのまま一気に飲み干してしまう。

 

「……………」

「この埋め合わせは高くつくわよリキュール!!……………で?」

 

 それはそれ、これはこれ。割り切りの早いスコールは、俄然、彼女が注目する若き二人の天才の戦いの見所を問いかけた。

 

「陽太くんとウチのジーク………戦い合えば、どっちが有利なのかしら?」

 

 スコールのその問いかけに、暴龍帝はニヤリッと笑いながらこう答える。

 

「技量もISのスペックもほぼ同等といってもいい………だが、今まで同じように戦うというのであれば、まず陽太君には勝ち目はないよ」

「?」

 

 意味深な発言をしながら、アレキサンドラ・リキュールは、地面に降り立ち、互いに猛烈な闘気をぶつけ合う両者を見つつ、心の中で陽太に向けて、呟いた。

 

 

「(相手は君とほぼ同程度の強敵だ。しかも君を殺したいと思っている………今までのように『隠して』闘うことはできないよ…………さあ見せてくれ陽太君。本当の天才が放つ、輝ける『才』を!!)」

 

 

 暴龍帝(自分)が待ち望んだ存在(宿敵)になり得てくれるのか? 興奮を抑えきれない彼女は、隠し切れない笑みを浮かべたまま二人の戦いを見続けるのだった。

 

 

 

 

 





というわけで、親方様がうれしそうで何よりです、な終わり方でしたw


次回、ついに両雄、天才同士が激突!


一夏は、本当に大事なことを悟り、IS操縦者『織斑一夏』となります。



そしてそれは『あの技』の完成を意味します
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