というわけで改稿ついでに新話うpだ!
エース同士の一騎打ち、ついに決着!!
というわけで、本編いってみよう!!
目の前で突如出現した、巨大な白い閃光の爆発を見たジークは、我を忘れるほど呆然としながら、その脳裏に忌わしい過去が蘇っていた。
―――ふざけるな! そんな馬鹿のことがあるか!?―――
―――ツインドライブシステム………コア同士を完全同調させて出力を二乗化するだと?―――
―――ありえない………ISコアの自我が完全同調を阻むハズ。理論上不可能とされていた技術!?―――
―――いや。そもそもISのコアから基礎システム、そして機体の全てまで………今日に至るISの全ては『彼女』が作り上げた物だ―――
―――では………我々の今までの歩みは、何だったというのだ?―――
―――所詮、私達はどこまでいっても『二流(まがい物)』。真似ることはできても、彼女のような『天才(本物)』のように、何かを生み出すことはできないというのか?―――
―――ああ………私達は彼女の掌の上で踊っているだけに過ぎない。その証拠こそが―――
「(ツインドライブシステムを持ち、生み出された莫大なエネルギーを効率運用する展開装甲を、究極のIS)………第四世r」
自分から全てを奪い去る原因を作った過去を思い出し、動揺するジークだったが、そんな彼を現在に呼び覚ましたのは、皮肉にも彼の友人を奪い去る原因を作った敵であった。
「なんだかよく知らないが俺を無視するなパンチッ!!」
「グッ!!」
完全に陽太の存在を忘れ去っていたためか、彼の放ったツッコミパンチをまともに受けてしまったジークは、後ずさりながらもなんとか倒れることなく踏み止まり、陽太を睨み付ける。
だが、そんなジークを凌ぐ剣幕で怒りながら指を刺す陽太が怒鳴り散らした。
「てめぇ!? 勝負の最中に人様を意識の外に飛ばしてほかの事に見取れるなど、超許せん。ぼろ雑巾にして、記念撮影すっぞゴルァ!?」
「ガキがッ!! 今はテメェに構ってる場合じゃなくなったんだヨ!! そこを退けッ!!」
一刻も早く、この閃光の発生源に行きたいジークであったが、陽太はそんなジークを冷めた目で見ながら、見下すように言い放つ。
「それはムリ。なんせお前が向こうに行くには俺を倒すしか道はねぇーぜ? ましてや………」
―――陽太は右手にヴォルケーノを逆さに持ち直し、小指をトリガーに掛け―――
「何に対して突然キレたのか知らんが、お前にとってマリア・フジオカが目の前のことに比べればどうでもいいって、その程度のことだって言うなら………死んでも敵討ちなんて考えるな?」
―――フレイムソードを左手に逆手に持ち直した―――
先ほどまでと随分と異なる構えを取り出した陽太の様子に、二人の戦いを静かに見守っていた亡国幹部のスコールからも疑問の声が上がる。
「アラ? 陽太君………あれってどんな意味がある構えなのかしら?」
「………面白いな」
構えの意図が掴めないスコールに対して、リキュールは陽太の行っている構えの意味を見切っていた。
「あれは、防御主体の構えだよスコール………前後左右どこから来ても対処できるようにガードを固めて、即時反応できるように構えたんだ」
「へえ~? 意外と小ズルイ戦法するのね、彼?」
「(彼の性格からして、少々消極的な戦法ではあるが………ジーク君、気をつけたまえ。陽太君はすでに君の能力(疾さ)を見切っている可能性があるぞ?)」
ジークの最強の武器である『疾さ』に対して、すでに陽太が突破口を見出している………半ば確信的にその事に気がついていながら、リキュールはあえて黙っておくことにした。
本来なら部下の劣勢を招きかねない事柄である以上、即刻伝えるべきなのだが、それをしては『面白くない』と彼女は考えたのだ。
二人の天才が剥き出しの才能でぶつかり合っている。それを自分が片方に肩入れして天秤を傾けるのはいささか不公平ではないのか?
そう。二人にはもっともっと限界ギリギリの死線の上で、実力を引き出しあってもらわないとならないのではないのか?
「(せっかくこんなにもこんなにも楽しい戦い(演劇)を見せてくれているのだ。無粋な野次など差せるハズはない………)」
ビックリ箱のような今回の戦いの最終演目となる二人の激突の行方を、まるで楽しみにしていた映画のラストを心待ちにする無邪気な子供のような笑顔を浮かべながら見続けるリキュールと、その隣で『ゴメンねジーク。きっとこの人ロクでもないこと考えているわ』とため息をついたスコールは、静かに二人の戦いの結末を見守り続けるのだった。
☆
「マリアの事を軽く考えてる………だと?」
ヒビの入ったバイザーに触れながら立ち上がったジークは、陽太の言葉が見え見えの挑発だと分かっていながらも、言葉に出して反応してしまう。
「………いいぜ」
マリアを殺したコイツを殺して、改めて自分自身の本命(第四世代)を見つけ、ソイツも殺す。
順序を決める事で、一旦感情を納得させたジークは、両手にガンブレードを構築すると両手に持ち、身を屈め、肉食獣が獲物に飛び掛るような体勢を取る。
「ヘッ」
ようやく彼(ジーク)の心が自分のほうに向いたことを確認した陽太は、改めて気を引き締め、集中力を高める。
「(コイツを地べたに這わせる手段は思いついた。だが、一つだけ確認しておかんことがある)」
陽太の重心が右足にかかり、ジークが眉をピクリと動かす。
「だしゃぁっ!」
「!」
地面を蹴り上げ、土砂を巻き上げる陽太。と同時にジークも動いていた。
―――一瞬で陽太の左側方。ハンドガンから最も遠い場所を取るジーク―――
着地と同時にジークのアサルトライフルが火を噴くが、そのすべてをフレイムソードで倍増されたプラズマ火炎が遮り、銃弾を一瞬で蒸発させてしまう。
「!!」
攻撃全てを遮られたことに驚くジークに向かって、陽太がヴォルケーノの銃口を向け、火球を発射する。至近距離三連発、普通なら回避する事はできない間合いなのだが、目の前の操縦者とISの速力は陽太にとっても過去最速であり、ものの見事に残像だけを撃ち抜いてしまう。
「(遅れるな!!)」
攻撃が掠りもしなかったことは苛立つものの、その事にイチイチ驚く暇はないと陽太が反転して真後ろに向き直る。
「!?」
「ワンパターンすぐる!!」
自分の背後に高速移動して回り込んでいたジークに、今度こそ渾身の一撃を叩き込もうとヴォルケーノを連続で発砲した陽太だったが、必殺の間合いとタイミングで放たれたはずの弾丸が空を切って地面に突き刺さった。
「ワンパターン?」
「(コイツ!?)」
ジークの声に背筋が凍りつく陽太。
「お前の事だろうが?」
今度こそ完全に陽太の死角を捉えたと微笑んだジークは、ガンブレードの切っ先を、陽太の延髄目掛けて解き放つ。
勝った。ジーク自身が確信するタイミングであったものの、陽太はそこから驚くべき反撃に出る。
「はああああああっっっっ!!」
「!?」
瞬時加速(イングニッションブースト)の要領でスラスターからプラズマ火炎を吹かし、ジークの突進の勢いを殺したのだ。ダメージを与えるほどの炎を発生させるエネルギーは集められなかったが、ホンの僅か、予想外の反撃に、ジークの動きと切っ先が若干鈍ってしまう。
「!!」
そしてその鈍りは陽太にギリギリのタイミングで攻撃を回避させる猶予を与えてしまった。
ガンブレードの切っ先を、体を捻りながら回避して、陽太はジークの腕を脇で挟みながら彼の額目掛けて後頭部でヘッドバッドを仕掛け、見事にヒットさせる。そして更に追撃の回し蹴りを放とうとする。
だが攻撃を食らったジークも、ただでやられっぱなしでいるわけにはいかないと、体を回転させて、遠心力を上乗せしたキックを放つ。
―――交差する両者の蹴り―――
「ゴフッ!!」
「ガハッ!!」
陽太の左脇腹とジークの鳩尾………それぞれの蹴りが突き刺さり、両者を吹き飛ばしながら、互いに地面になんとかしがみ付く様に着地する。
装甲にヒビが入っている事を認識しながらも、どうあっても無傷では済ませれない目の前の相手に、陽太とジークは互いに心の中で舌打ちをした。
「(マジでイテェーなこんチクショーが! つか、なんで先に蹴りを出したのにギリギリ相打ちなんだよ! アイツ、まだ速くなるのか? てか手抜きしてやがったな………)」
「(装甲が一番厚い胸部をシールドバリア越えてヒビ入れやがったのか!? それにこっちの動きに即座に順応してくる適応能力………明らかに戦う前とは別モンだ。クソッタレが! これだから天才って奴はよ!!)」
ジークのギアがまだ上がることに怒りと驚愕を覚え、陽太の底知れない才気に背筋を凍らせる。両者が互いの技量を一通り体感したところで、次のなる一手をどう打つのか?
「(だが、確信は持てた。潮時か)」
「(これ以上時間をかけるのは得策じゃねぇーな。プレッシャーかけて動かして、後の先をもらう)」
陽太の戦い方が明らかに変わってきたことに気がついているジークは、とにかく陽太を動かし、スピードで圧倒して主導権(アドバンテージ)を取ろうと両手のガンブレードを、研ぎ澄まされた牙を見せるように前に突き出して構えるが、そこにきて、陽太は誰もが思いもしなかったことをしでかす。
―――武器を逆手に持ったまま、両手を左右に広げる―――
そしてそのままジークに向かってゆっくりと歩き出したのだった。
「(………足止めてど真ん中、空けやがっただとぉぉっ!?)ナメやがって……」
「予告してやる。今から三分後、お前は俺によって死ぬほど酷い目にあってしまう」
よりにもよってスピードで上回る自分に対して、真ん中を空けて接近してくる陽太の態度にカチンときたジークの殺気があからさまに濃くなったのを感じたのか、陽太が調子に乗ったような声で話しかけてくる。
「大丈夫。ちゃんと痛くないように手加減してあげるからよ?」
「………死ねッ!!」
もう貴様の軽口はウンザリだ。と言わんばかりに、一瞬で陽太の前にまで踏み込んだジークの強烈な突きが陽太に襲い掛かる。
「!!」
陽太の左のヴォルケーノが、ジークのガンブレードを外に受け流し、体をあっさりと入れ替える。そのあまりに容易に捌かれた事実に、更なる怒りを募らせ、両手を使い連続で突きの連撃(ラッシュ)を繰り出したのだった。
「!?」
「!!」
流石の陽太も、連撃(ラッシュ)の壁のような突きの全てを一度に捌き切れない。白い装甲に無数の火花と切り傷、そして破片が舞い、ブレイブレードの装甲とシールドバリアを削り続けるが、致命傷を与えることができないでいた。
だが並みの操縦者ならば、一瞬で五体を穴だらけにされた上にバラバラにされそうな連撃(ラッシュ)を、ヴォルケーノとフレイムソードで巧みに捌き続ける陽太の姿を目の当たりにし、スコールが賞賛の声を上げる。
「ワォッ! さっすが貴女のお気に入りの陽太君ね………ジークのスピードにここまでついて来れるような人、私は貴女以外知らないわよリキュール?」
「……………」
「だけど残念………ジークのトップスピードはまだまだこんなものじゃないわ。残念だけど、陽太くんはこのまま……」
『ボロ雑巾みたいにボロボロにされちゃうわよ♪』と言葉を続けようとしたスコールの唇を、リキュールは静かに自分の人差し指でふさぐと、優しく微笑んでこう言い返した。
「陽太君の真価………どうやらここかららしいね。黙ってラストまで見守ろうじゃないか?」
心の底からワクワクとした表情でそう言い放つリキュールに、おもわず胸が『キュン』となって頬を赤らめたスコールは、素直に彼女の言葉に従ってしまう。
そして再びリキュールが二人の戦いに目をやったとき、一見先ほどとは変化がない、ジークが攻め、陽太が捌くという展開のように見えながらも、微妙な変化を起こしていることに気がつく。
「(フフフッ………だんだんと陽太君の変化に気がついてきたようだねジーク君)」
リキュールの目から見ても、先ほどとは比べ物にならない速度で突きを繰り出し続けているジークだったが、その切っ先に動揺が走っていることが彼女には見て取れた。
速度をどれだけ上げても、陽太が捌き続けている………自分の速度についてきているのだ。しかも………。
「!」
連撃の一つを、陽太は首を捻る事で見事に回避してみせる。
「ザケンナッ!」
そんなものはただの偶然だ。そう己に言い聞かせるように放ったワンツーも、陽太は明らかに偶然ではない動きで回避してみせる。速度で勝る自分の動きが見切られているのか? 疑問が頭をよぎった僅かな瞬間、陽太は心の隙をついたように、左腕部の多目的防御楯(タクティカルガードナー)からグレネードを発射したのだった。
「とろいっ!!」
だが、普通の弾丸すら視覚のみで回避する超スピードを持つジーク相手には、あまりに弾速が遅すぎる。たとえ至近距離から放たれたとはいえ、今のジークはスピードのギアをトップにまで引き上げているのだ。かすりもせずに最小限の首を捻るだけの動作で回避され、グレネードはむなしく空を切るのみだった。
ゆえにだったのかもしれない。陽太の次の攻撃こそが本命だと錯覚したのは………。
「!?」
―――バックステップで後方に飛びながらヴォルケーノを構える陽太―――
「しゃらくせぇーマネしやがって!!」
攻撃を避けれるぐらいにまで自分に順応したから、得意の格闘戦に持ち込んでくる物だと思っていたために、この陽太の行動には聊かの失望を覚える。
陽太が発砲したの同時に、ヴォルケーノの銃弾を回避したジークが、冷えた声で陽太に言い放った。
「テメエーにはガッカリだ!」
「だれがっ!!」
逃げ腰になっているくせに、何をぬけぬけと………ジークが右手のガンブレードを、刃渡り2m以上ある野太刀型の実体剣に持ち替え、ズタズタに切り裂いてやろうと振りかぶった。
「死ねっ!!」
もう油断はしない。自分の最高速で火鳥陽太を斬り捨ててやる。ジークが止めを刺そうとした瞬間だった。自分の背後から何かを撃ち抜く音がしたと思えば、全身を黒い煙幕が包んできたのは………。
「これはっ!?」
さっきのグレネードを陽太が自分で撃ち抜いたのだ。銃撃は初めから自分を狙ってはいなかった。と気がつくと同時に、今の自分が非常に危ない状態であることに思い当たり、このままでは狙い撃ちにされると身構えたジークの後方から、何かが飛んでくるのを彼のISのハイパーセンサーが捉える。
「チッ!」
実体剣が超速で振るわれ、その飛んできた物体を真っ二つにする。が………。
―――真っ二つにされたグレネードから飛び出る銀色の粒子―――
突如、ISのハイパーセンサーに激しいノイズが走り、妨害(ジャミング)の警告音(アラーム)がマスクの中で喧しいほどに鳴り響く。
「(チャフ(対ハイパーセンサー用)グレネードッ!? こすっ辛い真似をッ!!)」
最新鋭兵器であるISの標準装備であるハイパーセンサーの阻害をする特殊なチャフグレネードを不用意に攻撃してしまったことに自分自身で腹を立てながらも、ジークはISの警告音を無視しつつ、グレネードが飛んできた方向に向かって瞬時加速を行う。
―――一瞬で陽太に詰め寄るジーク―――
ジークの実体剣と陽太のフレイムソードが激しい火花を散らして鍔競り合う中、陽太の行動にジークが激怒した。
「テメェッ!! 人をおちょくるのもいい加減にしやがれ!!」
「俺はいたって真面目だ、ボケッ!!」
ジークを押し返し、陽太は続けて煙幕とチャフを交互に発射し続ける。あたりが煙幕と銀色の粒子で充満し、ISのハイパーセンサーをもってしても、相手を見つけるのが困難なほどに視界が悪く中、二人の操縦者は、鎬を削り合うように互いの獲物を激突させ、幾重も斬り結ぶのだった。
☆
そして少し離れた場所でも、二人の戦いが最終局面になっていることに一夏達が気がつく。もっと正確に言えば、陽太が放ったチャフによって、展開中の全ISのハイパーセンサーに強烈なノイズが走ったのだ。全員がその異変に不快感を表しにし、周囲を見回す。
「ッ!! なによ、このノイズ!?」
「鼓膜破れるッ!!」
鈴とフリューゲルが耳を塞ぎながら、大急ぎでハイパーセンサーを一時的にシャットアウトする中、すでに二人よりも早く対処していたシャルが、駐車場横の公園の方から、スモークが立ち込めていることに気がついた。
「(あっちは陽太が戦っている方向………)ゴメン、ラウラ!! 私行ってくる!!」
「シャルッ!!」
いくらオーガコアとの戦いが終わったといっても、亡国は目の前にいるというのに………と一瞬だけ叱り付けてやろうかと思ったが、それを飲み込んだ上で、未だ挑戦的な瞳で、箒を抱いたままの一夏を睨み付け続けるマドカに言い放つ。
「いいのか、亡国機業(ファントム・タスク)? このままだと、お前達の負けは確定だぞ?」
「………何?」
今の今までラウラに対して何の興味も示さなかったマドカが、ギロリとラウラを睨み付ける。
「本当のことだろう? 陽太はお前達のリーダーに勝つ。そうなれば最早お前たちに勝機はない。よしんば陽太が負けたとしてもだ………手負いになっていることは確実。今の一夏が加わった我々だけでもお前達全てを捕縛するのは可能だ」
「………そんなに先に逝きたいのか?」
ライフルを持ち直し、ビット達をパージする体勢を取ったマドカは、その鬼気迫る表情のままラウラだけではなく、IS学園のメンバー全てに強烈な敵意と殺意をぶつけるように叫ぶ。
「お前達は………悪だ!」
「「!?」」
その言葉に表情を変化させる一夏とラウラに、彼女は尚も叫び続けた。
「お前達は、そうやって!! 自分達は何も穢れていないフリをして!! 私『達』から奪っていく!! 全てをッ!!」
「(………奪う? 俺達が?)」
何を言われているのかまったく理解できない一夏の表情が甚く癇に障ったのか、殺気を更に増大させたマドカがビットを切り離そうとした瞬間、そんな彼女の肩を背後から掴む者がいた。
「マドっち!!」
「邪魔をするなぁっ!!」
味方であるはずのフォルゴーレすらも、彼女は敵同然に殺気を飛ばして強引に掴んだ手を振り払おうとする。だが、思いのほか彼女を掴む力は強く、そしてフォルゴーレは強引にマドカを振り向かせると、バイザー同士が擦れるほどに顔を近づかせ、有無を言わせない迫力を醸して説得に当たる。
「ジーク君を助けて、ココを離れよう!」
「!? お前は何を………」
「口論してる場合じゃないよ!! 時間がたったらIS学園から増援が来ちゃって、私たちはピンチになっちゃうんだから!」
「キサマの指図など…」
「織斑マドカッ!!」
自分のフルネームを叫んだフォルゴーレの真剣な表情に意表をつかれたマドカが戸惑う中、彼女は静かに語る。
「お願いだから………」
焦りと願いを含む言葉は、徐々にマドカに冷静さを取り戻させる。先ほどまでの激情は薄れていき、瞳の中に理性が戻り始め、自分が置かれた現状を分析し始める。
「(チッ! あの銀髪の言うとおり、今のままの戦闘続行はこちらの分が悪い………)ジーク回収後、速やかにこの場を離脱する」
「マドっち!?」
マドカのその言葉に、嬉しそうな表情を浮かべるフォルゴーレを見て、マドカは若干頬を赤く染めながら彼女に謝罪の言葉を述べた………凄く気まずそうな表情で。
「さ、さささ先程はいい言い過ぎた。悪かった。反省している」
「うんっ!!」
フォルゴーレとしては別に気にはしてなかったのだが、わりとレア度の高いマドカのリアクションを見た結果、あっさり許すことにする。
「うん、いいよ! てか、マドっち、超プリティー!!!」
「!?」
「何してんのよ。とっとと帰るわよ」
「親方様の命でもないのに、これ以上は付き合いきれん」
「早く帰って新刊書き上げないと」
顔を真っ赤にしてフォルゴーレの言葉を否定するように、すぐさま一夏を改めて見直したマドカは、他の竜騎兵達の急かされながらも、再び厳しい表情に戻ると、一夏に静かに言い放った。
「織斑一夏! 私とお前が分り合うことはない! 絶対になっ!!」
「………さっきから聞いてりゃ、わけわかんねぇーんだよ! 何がどうして分り合えないって結論になってんだよ!!」
事情をまったく知らない一夏にしてみれば、目の前のマドカは、勝手にキレて勝手に喚いている少女に近い。だが彼にしてみても、自分の姉と瓜二つの顔を持つ少女が自分とはまったく無関係であるとも考えがたい。そこには確かに自分の知らない事情があるのだろう。
「訳を話せよ! なんで俺とお前が分り合えないのか、その訳をッ!?」
「訳など………」
「マドカッ!!」
「クッ!」
フリューゲルの急かす声にマドカは話を打ち切り、その場から飛び去り、一直線にジークに向かって飛び立つ。遠くなっていく背中を目で追いながら、腕の中にいる箒に声をかけた。
「箒ッ!? もう身体は大丈夫か?」
「あ、ああ………大丈夫だ」
まだ力が戻りきっていない虚脱感はあるが、先ほどの瀕死な状態から大分回復してきた手応えはあるし、血色も戻りつつある。箒の無事を確認すると、一夏は箒に一声かける。
「箒、帰って来たら必ず話そう?」
「………一夏」
「だから、今は………ゴメン!」
「ああ、別に構いやしない」
彼女を立たせると、心配は要らないと自分を気遣う箒に感謝し、一夏もその場を飛び去り、マドカ達を追いかけ始める。姉と瓜二つの少女の存在に、妙な胸騒ぎが先程から止まないからだ。
だからこそ一夏は気がつくことができなかった。
一夏が飛びだった後、すぐさま悔しそうに唇をかみ締めながら俯く箒の姿に………。
☆
一方、真っ先に現場に駆けつけたシャルは、濃いスモークとチャフのせいで使い物にならないハイパーセンサーによって、目視が困難な状態にも関わらず、肉眼だけで陽太の居場所をを見つけ出そうと必死になっていたが立ち往生してしまう。
「こんな状況で、二人は戦っているっていうの?」
ほぼ視界ゼロの状態で、しかもハイパーセンサーが使い物にならないにも拘らず、時々ISの武器同士を激突させる音が聞こえてくるのだ。どうやって二人はお互いの位置を確認しあっているのかと問い詰めたくなる。
もっとも、両人に聞けば『相手の闘気感じてんだ、それぐらいできるだろう!?』と不条理な答えが帰ってくるが………。
「ヨウタ………」
彼の身を案じて、どうやってこのスモークの中に飛び込もうかと思案する中、とある変化に気がつく。
「?………煙が」
立ち込めていた煙が徐々に晴れてきたのだ。あいにくハイパーセンサーの不調はいまだ直らないが、この様子だともう少し煙が薄くなってくれれば飛び込むこともできるだろう。
だが、その状況を幸運だと感じたのはシャルだけではなかった。
「(………スモークが)命運尽きたな、火鳥陽太」
彼の身を守っていたスモークが徐々に晴れていく。おそらく手持ちのグレネードが尽きてしまったのだろう。そしてここまでは悪足掻きを続けていた陽太の気配の動きが止まったのを感じたジークは、正面に刀を構え、睨み付けた。
徐々に晴れてくる煙………そしてその向こう側には………。
「………プハァー!」
ようやく顔だけが見れる状態だったが。バイザーもマスクも解除し、煙草の煙を吸い込んで吐き出していた陽太の姿があった。
「………人生最後に吸った煙草の味は、さぞかし美味いだろうな?」
自分と闘っている最中でありながら、一服をかました陽太に、内心ブチキレたジークは、むしろ恐ろしく冷静になりながら低い声で陽太に問いかけた。
「そうでもないぞ? これを最後にして禁煙する気は更々ないしな………てか、一応言っておく。もうすぐ三分だ。そのまま来たら酷い目にあうぞ、お前?」
「そうかよ。じゃあとっとと死ネッ」
自分が一瞬でも意識した男とはもう考えたくもない。存在そのものを亡き者とするために、切っ先に殺気を漲らせて突撃してくる。
「あ~あ………」
一応は警告したのに………と言いたげに呆れる陽太が『右手』で煙草を持つ。
距離にしてみれば8m弱。最高速のジークなら到達まで0.1秒も必要としないだろう。そしていくら逃げようとも、スピードはジークの方が速いのだ。逃げ切れるものでもない。
―――疾風と化したジークによって、煙が巻き上がる―――
「ヨウタッ!?」
ようやく彼の姿を目にしたシャルが駆け寄るが、そんなシャルの視界にジークの姿も同時に入ってくる。声を出す暇もなく、両者が接近し………ジークが構えた刀の切っ先が彼を捉え……
―――陽太に刃が届く寸前、ジークが急停止してしまう―――
「???」
何が起こったのか? シャルの脳裏に疑問符が浮かんでは消えていく中、煙に隠されていた全容図が、その答えを提示してくれる。
そして、それはシャルの後を追ってきたマドカ達の、そのマドカ達を追ってきた一夏の、二人の天才を見守っていたスコールを驚愕させ、アレキサンドラ・リキュールにうっかり賞賛の言葉を上げさせてしまったのだった。
「………エクセレントッ(大変素晴らしい)!!」
口元に笑みを浮かべ、彼女の紅玉に歓喜を浮かべさせた、その図………。
―――ブレイズブレードの『左腕』から伸び、周囲に張り巡らされたワイヤーの『結界』が、ジークの四肢を絡み取っていた―――
つまり、完全に陽太がジークを捉えた証でもあった。
いつのまにこれほどの仕掛けを作っていたのか? 一瞬だけ考え込むスコールだったが、すぐさま気がつく。
「構えを変えたあの時から、彼にはこの図が見えていたのね?」
若干厳しい表情になって隣にいる親友(恋人)にそう問いかけるスコールに対し、リキュールは実に実に愉悦を感じている表情で、答えてくれた。
「ああ。得意のプラズマ火炎を全方位に展開して『自分に死角はない』と思い込ませ、構えを変えることで、ジーク君に対して、自分の間合い(エリア)への侵入ルートを正面だけに限定し、スモークとチャフを使って『自分の姿を隠す』と思い込ませ、本命のワイヤー設置を密かに行っていたんだよ」
「………じゃあ、あの防御主体の構えの意味は?」
「刷り込みさ。ジーク君がスピードで主導権(アドバンテージ)を取りにかかったように、陽太君は『心理(メンタル)』で主導権(アドバンテージ)を取りにかかった」
背もたれに身体を預け、リキュールは陽太の横顔をうっとりとした表情で見つめる。
「一見、バラバラに思えていた彼の行動だったが、陽太君はジーク君とのスピード差を体感した時点で、彼のスピードを殺すために動きを封じにきていたんだ。普通にワイヤーを仕掛けて、引っかかってくれるジーク君ではない。それゆえに『口だけが威勢がいいが逃げ腰』な自分を刷り込ませることで、ジーク君をコントロールしてみせた。おそらくジーク君のISがスピードを特化させるために、他の全てを犠牲にしていることも気がついた上でね」
そして彼女は、一人拍手しながら惜しみない賞賛を送る。
「天才とは、想像力に長けた者………すなわち、無から有を生み出す」
やはり自分は間違っていなかった。雑魚ではない、強敵をぶつけることで、陽太はその本当の輝きを見せてくれたのだ。
「ブラボー! 君はまさに私が望んでいた天才だよ、陽太君!!」
そんな惜しみない賞賛を送られているなど終ぞ知るはずもない陽太は、再びマスクを着用すると、右手の煙草を燃やし尽くす強烈な炎を拳に纏わせ、ゆっくりとジークに近寄っていく。対してジークも何とかこの状況を抜け出そうと躍起になるが、四肢に絡みついたワイヤーは離れてくれない。
「てめぇー!! こんなもん、いつのまに張り巡らせやがった!?」
「グレネード撃ち込んでから、おまーと戦り合ってる最中かな?」
「(俺から逃げ回るフリして、コレを狙ってやがったのか!?)どちきしょーが!!」
完全にハメられた。油断してさえいなければ気がつけたかもしれないのに、思っていた以上に自分が動揺していたことに気がついたジークは、脳裏に、ふと『目の前の敵に集中できない? そんな様でどうする気だい?』と言ってくる暴龍帝(タイラント・ドラグーン)の姿を思い浮かべ、犬歯が砕けそうになるぐらいに噛み締める。
「(なんで肝心なときに俺は)!?」
そして目の前に陽太が立つと、腰を低くし、拳を構える。
「あと、ちょうど三分だ。宣言どおり酷い目にあってもらうぞ」
「グッ!?」
このままではおとなしくやられてたまるか!! ジークの中で爆発したその思いは、彼の指先を動かさせた。
手に持った刀をいったん手放し、親指と人差し指だけで柄の先端を掴み、右腕に絡み付いているワイヤーの一本を断ち切ったのだ。そして拘束が緩んだことをことを確認すると、改めて刀を持ち直し、目の前の陽太を突き刺そうと………吼える。
「火鳥………」
「じゃあ、答えてもらうぜ」
―――放たれた突きを、左腕の楯で受け流し―――
「………陽太ぁぁぁぁっ!!」
「マリア・フジオカのことを、全部!!」
―――右の炎拳を、ジークのドテっ腹にぶちかます―――
「があああああああああああっっ!!!」
突き刺さった右の拳は、その炎によって威力を倍化され、ジークのIS『ディザスター』のシールドバリアを突き破り、黒い装甲を砕き、拳型の跡を着けて、彼の身体を拘束していたワイヤーごと引き千切って吹き飛ばしてしまう。
木々を突き破り、元いた駐車場にまで吹き飛ばされたジークを見ながら、陽太はちょっとだけまずそうな声で、呆然となっていたシャルに問いかけた。
「や、やりすぎちゃったかな?」
「………ふぇ?」
流石に尋問しないといけないことが山程いる相手を死なせるわけにもいかない………とりあえず戦闘不能には追い込んでいるだろうと判断した陽太が、ジークに近寄ろうとしたとき、彼の背筋に悪寒が走り、あわてて周囲を見回す。
「(この気配は!?)」
「………ヨウタ?」
陽太の突然の変化に戸惑うシャルだったが、その時、彼女は大の字になって倒れているジークのすぐそばに、一人の女性が立っていることに気がつく。
―――腰まで伸びたプラチナの髪、焼けた肌、軍用のアーミーパンツの上に素肌にジャンバー一枚を羽織った姿―――
そして、爛々と紅い光を放つ瞳を持った女性に、陽太も気がつき、そして知らず知らずのうちに武者震いしていた自分を抑えることなく、呟いた。
「………会いたかったぜ!?」
陽太のその言葉が聞こえるはずはない距離でありながら、彼女はジークを見つめながらも、嬉しそうな表情を浮かべて答える。
「それは、私もだよ。陽太君」
『暴龍帝(タイラント・ドラグーン)』アレキサンドラ・リキュールは、歓喜に満ちた表情で、成長した『敵(陽太)』を見つめたのだった………。
最後の最後で、親方様登場………あれ? IS学園やばくない?
ラウラさんがせっかく「こっちが有利だ(ドヤッ)」したのに
(・ω・)