太陽の翼の更新スピード 上昇が困難
フゥ太の残業時間 加速的に上昇
………言い訳してないよ。ありのままのこといってるだけだお
すいません。言い訳ばっかりで一ヶ月放置とかマジでやばい………
てなわけで、本編いってみましょう!!
箒から突然待機状態のISを差し出され、そして『IS操縦者を辞める』などと言われたシャルだったが、そんな中でも彼女は一度大きく深呼吸をして、気持ちを入れ替えると、きっぱりとそれを断る。
「嫌だよ箒………私は何も聞かずに紅椿(それ)を受け取ることなんてできない」
「………シャル?」
未だ顔を上げようとしない箒の肩に頭を軽く乗せたシャルは、夕日差し込む窓から外を眺めながら、静かに語りかける。
「話してよ………どうして急にIS操縦者を辞めたくなったの?」
「……………」
「箒がどうしても辞めたいっていうなら、私は受け取るよ? 一応、ISの運用規定とか国との契約とかがあるから直ぐに辞めれるとは限らないけど………無理強いしちゃ、箒にも周りの人にも迷惑になっちゃうし」
「……………」
「ああっ!? 別に私は箒のこと、嫌いになるとか軽蔑するとかじゃないよ? 箒は私の友達だよ。それは今までもこれからもずっとそうだからね」
「……………」
「箒が頑張ってきた事はなんとなくだけど分かるよ。あの普段は人を誉めたこともない陽太が、この間『近接だけなら俺とタメはるかもしれない』とか偉そうに言ってたくらいだしね………どうして、陽太はあんなに偉そうな言い方しかできないのかな~? ホント、小っちゃいときは謙虚で可愛かったんだよ?」
「……………」
「てか、あのおっぱい大きい人と何があったのか知らない箒? 本人に聞いても口を絶対に割ろうとしないんだ………アレは絶対に何かある」
いつの間にか音が鳴るほどに拳を握り締め、アレキサンドラ・リキュールと陽太とのやり取りを思い出し、思わず頬を大きく膨らませながら頭から湯気が出そうなぐらいに怒りを燃やすシャル……………頑なに何も自分に話そうとしない陽太も腹立たしいが、あの女傑の完全に陽太を我が物のように扱いかつ、それを当然のように考えている態度にシャルは一番の怒りを感じているのだ。
「(ヨウタは『貴方のもの』じゃない!! ヨウタは………私の……ハッ!?)」
自分が今考えなくてはならないのはこんなことではない。イヤ、こんなことというには大変な大問題ではあるのだが、今はとりあえず思考の脇に置いておこう。
首を横に振ってとりあえず考えを無理やり元に戻し、もう一度箒に話しかけようとするシャルだったが、それよりも早く箒がシャルにポツリポツリと話し始める。
「シャルは………本当に火鳥を想っているのだな」
「なっ!? そ、そそそそそんなことは…………その……一応、あんなんでも幼馴染だし」
箒の口から思わぬ言葉が飛び出し、目を白黒とさせながら答える。
「だが……………私は駄目だ。いつも自分のことばかりだ」
「………箒?」
「ISをもう纏えない理由………シャル…………私みたいな人間は、力を持っちゃいけないんだ」
「!?」
俯いたまま彼女が語ったその言葉に、シャルは思っていた以上の重い理由が箒にはあるのだと感じ取る。そう、彼女が戦う理由、それゆえに戦えな苦なってしまった理由が………。
だからこそ、シャルは話してほしいと懇願する。どうして箒が自分自身をそこまで追い詰めないといけないのか、その理由を………。
「箒っ!」
「………シャル?」
シャルは箒の肩を掴むと、まっすぐに彼女の瞳を射抜く。箒に胸の内を話してもらうのだ、中途半端な態度では彼女に失礼である。
そして、瞳を通して無言の『話をしてほしい』というシャルの問いかけに、しばらく沈黙が続いた後、箒はぽつりぽつりと自分の過去をシャルに話し出すのだった。
☆
「………辛かったね」
IS開発以降に始まった、家族の離散、大切な幼馴染との離別、孤独な小学生時代、だからこそそれを救ってくれた『暖かな場所(親友)』を守れなかった自分の不甲斐無さを呪い、ひたすら一人でオーガコアと戦い続けてきたこと………。
そんな箒の歩んできた道を、シャルは黙って受け止めたのだが、当の箒にしてみれば、それは重大な過ちであったと首を横に振ってしまう。
「私は優しくなどないよシャル。結局自分のことしか考えていない人間なんだ」
亡国機業との戦いの中、ジークと向き合い、怒りと憎しみで我を忘れ、そしてそれに流されるままにマドカと周囲の状況も省みずに戦い、一夏に言われた瞬間、理解してしまった。
復讐という高尚なものですらない。自分は八つ当たりがしたかっただけだった。
『IS』という力を持って、自分の不満不平をぶつけたかっただけで、その口実に簪の事を引き合いに出したのだ………その証拠に、自分はなんら復讐とは関係のないマドカとの戦いで、ホンの僅かな『楽しみ』すらも感じ取っていた………それを感じ取ってしまったがゆえに、箒自身がIS操縦者として、自分は不適合だと思ったのだ。
「IS操縦者は、その強い力を持つ人間は、決してその力を振るうだけの確かな『理(ことわり)』からは外れてはいけない………力を持つ者としての責任を、全うせねばならない。そしてそれができないのであれば………」
箒は拳を握り締めながら、ようやく頭を上げて、天井を呆然と見つめながら言葉を紡いだ。
「力なんか持つべきじゃない。それは不幸を作ってしまうから………」
「………箒」
シャルは箒のそんな顔を、信じられない物を見るかのような瞳で見ながら、思わず呟いてしまった。
「凄い!!………私、初めてこんなにしっかりした理由でIS乗ってる人に会ったよっ!」
「なぬっ?」
今度は箒の方が、シャルを信じられないといった表情で見つめ返す。見つめられたシャルはというと、あっけらかんと微笑みながら、おかしそうに話し出す。
「箒の言葉を借りると、私なんて最初からIS乗る資格なんてないよ………だって、私はヨウタの力になりたいだけでIS乗るって決めたもん。純度100%自己満足だよ」
「そ、それは………いや、私はただ、私自身の心構えを…」
「それにね………今、話を聞いて分かったよ」
「?」
「箒は、本当に優しいんだね………いつも、誰かのために必死に戦ってる」
シャルの思わぬ評価に、箒はどう答えたらいいのか判断できずに戸惑ってしまうが、そんな箒の様子がおかしかったのか、クスクスと更に声に出して笑い出すシャルロットに、流石の箒も憤慨してしまう。
「ハハハハハッ! 箒、照れ屋さ~~ん!」
「!! 勝手に言っていろ!!」
頬を膨らませながらそっぽを向く箒を見て、彼女の肩の力がようやく少し抜けたことを確認し、シャルは話を続ける。
「箒の優しいところ、私は好きだよ………だからかな、そうやってすぐに自分を卑下しちゃう所は嫌いだよ」
「………シャル、だけど私は」
「言い訳するところも………もう、ヨウタも箒も、どうして肝心なところで突然そういう『逃げ』に走っちゃうのかな!? どうせ箒も『自分は戦うことしか知らない』とか言おうとしたんでしょう!?」
「うっ」
普通に図星だったようで二の句が継げない箒を見ながら、シャルは思わずため息をついてしまう。
戦うことに関しては掛け値なしに天才である陽太や、オーガコアとの戦いにおいてベテランというべきキャリアを持つ箒であったが、こと一般的な人間関係になると、途端に臆病な子供のように自分の殻に閉じこもりがちになってしまう。本質はとても純粋で優しいのに、無駄に警戒心を全開にして、まるで未熟な牙を剥いて威嚇してくる子猫のようにも見えると密かに思うシャルだった。
「……………とりあえず一段落着いたわ~」
「着いたね、一段落~~~」
が、そこに女性の声が廊下の向こう側から聞こえてきた。当然ここは病院なのだから中で働いている人はたくさんいるのだが、表の騒ぎの後片付けのために人手が大部分で払っていたため、今までは病院内部が恐ろしいほど静かだったのだが、俄かに活気出す。そしてその中で知った声が混じっていたことに気がついた箒の表情が一瞬で青ざめた。
「………!!」
「………箒?」
急にキョロキョロとしだしたかと思えば、箒は急に立ち上がると、有無も言わさずシャルの腕を引っ張りながら口を塞いで、廊下の陰に隠れてしまったのだ。
「!?!?!?!?!?!」
「す、すまん! だが………そのすまん!!」
何故いきなり自分の口を塞いで拘束するのだと口を塞がれながら抗議するシャルに、動揺しながら必死に謝る箒………普通に考えれば隠れる必要は欠片もないのだが、残念なことに今の箒にはどうしても会いたくない、会いづらいことこの上ない人の声だったがために、激しく動揺してしまった結果だった。
「あら? 箒ちゃんの声が聞こえたと思ったんだけど?」
「あれれ?」
その人物………婦長とのほほんは、ナースステーションの椅子に腰掛けると、のほほんはリュックの中からお菓子を取り出し、婦長はそんなのほほんに気を使い、備え付けのコーヒービーカーからコーヒーを入れて差し出す。
先ほどまで、外にいる患者の誘導と手当てを行っていた婦長と、その婦長の隣で自主的に手伝いをしていたのほほんは、一通り仕事を終えると休憩がてらナースステーションまで戻ってきていたのだ。
湯気を上げるコーヒーを受け取ったのほほんは、ミルクと砂糖をたっぷりと投入し、疲れた脳内に糖分を補給しようとコーヒーを飲みあげる。そんなのほほんに、婦長は微笑みながら話しかける。
「お手伝いご苦労様ね、本音ちゃん」
「お安い御用だよ婦長さん~! ほーちゃんたちも一生懸命頑張ってるからね~」
「そう………本音ちゃんは、本当に友達想いなのね」
「えっ!?」
婦長の思わぬ評価に、のほほんはお菓子の包み紙を開ける手を一旦ストップして、照れ隠しするように頭をポリポリと掻き始める。そして、婦長は廊下の方を一瞬だけ見ると、ぽつりと言い放つ。
「箒ちゃんも、同じくらいに友達想いなんだよね、本音ちゃん?」
「ん? そんなの決まってるよ~!」
その言葉に肩を震わせて、下を俯く箒を見たシャルは、彼女が心の中で今の言葉を否定していることが手に取るように理解できた。
だが、婦長は、知ってか知らずか、話を続ける。
「………本音ちゃん、私はね、職業柄のせいで、色々な人達(お医者さん)を見てきた」
「???………婦長さん?」
「長く患者さんと付き合っていると、自然と情が移ってしまって、その患者さんが死んでしまうと皆泣いちゃうの………でもね、長くそれを繰り返していると、皆心を移さないようにする」
彼女の静かに語る言葉が、広い病棟の中、三人の少女の心に響く。
「そしてね、泣かなくなっちゃうの………私もそう、人間だもの。悲しい事が続くことに耐えられなくなって、自分の心を守ろうとするのは当然よ」
婦長はのほほんの頭に静かに手を載せると、言葉を続けた。
「だけど箒ちゃんは違った」
箒の方が震える。動揺が手に走り、掴まれていたシャルに伝わる。
「ううん。箒ちゃんだけじゃない、貴方も楯無ちゃんもそう………どんな悲しみにも真正面から向き合って、いつも瞳に涙をためて、必死にこぼさないようにしてた」
婦長の声が響いてくるたびに大声で『違う、違う』と叫ぼうとするが、どうしてだか声が出ない。喉元まででかかった言葉が口から素直に吐き出されてくれない。
自分はそんな人間ではない、そんな優しくも強くも美しくもない………なおも心の中でそう自分に言い聞かせようとする箒だったが、その時、自分が掴んでいた手をシャルが強く握り返し、まっすぐ箒を見ながら首を横に振る。
『そうじゃない。もう自分を否定しないで、ちゃんとあの人の言葉を聞いて』
言葉を使わないメッセージがなぜか心の中に流れ込んできた。強い、真っ直ぐな言葉は、箒の心の深いところに響く。
シャルの意志に気圧されたかのように、彼女の言葉に黙って従った箒が、ゆっくりともう一度婦長の方を見たとき彼女は涙ぐんでいたのほほんの頭を優しくなでながらこう囁いた。
「貴方達は本当に賢い娘だから………泣き方、変えたのね」
熱い、熱いものがこみ上げてきた。どんなに我慢しようともそれは自分の内側からこみ上げて、外に溢れ出ることを止められずにいたのだ。
「迷っても間違ってもいいの。だって、貴方達は悲しみを忘れてないから………悲しみを忘れない子は、優しさも忘れないから」
暖かい、暖かい、母親のようなその言葉は、限界を超えてしまった箒の瞳から、かつて彼女が望んでいた心無き人形では決して流すことができない『涙(もの)』を流させる。
「(どうして!? もう二度と流さないと誓っていたのに………!?)」
どれほど拭っても、後から後から涙は湧き出てくる。強くなるために、今度こそ大事な人達を守り抜くために、もう二度と流さないという誓いを自分自身に立てていたというのにだ………だが、そんな箒とは裏腹に、シャルは黙って彼女の肩を抱き寄せると、温かな腕で抱きしめながら背中を摩ってくれた。
「……うっ!………ううっ!!」
その仕草が、初めて自分を慰めてくれた親友(簪)そっくりだったために、またしても涙が溢れて止まらなくなる………どうしても止まらない涙を前に、箒はついに泣き止むのを辞めて、声だけを押し殺してシャルの腕の中で泣き続ける。
「………もう、本当に泣き虫さんなんだから」
鼻水垂らしながらしゃっくりを上げるのほほんの頭を撫でながら、横目で廊下の方を見ながら、婦長は確かにそう呟いたのだった。
☆
「報告は以上か………ご苦労だったな」
ラウラ達からの報告を受け取った千冬が、いつもの通りの涼しげな鉄仮面のままで対オーガコア部隊をねぎらう。
瓦礫の撤去作業などを行っていた陽太達だったが、重機と専門の人間が現場に到着したことでお役御免となり、疲れた身体を引きずってIS学園へと帰還していた。途中シャルと箒が現場を離れたが、後からシャルの連絡が入り、二人は遅れた帰ってくるとの事だった。
「って、なんでシャルは電話一本で信用されるんだ? 俺はちょっとでも外出すると鬼の尋問タイムだってのによ!?」
寮の玄関ホールにおいて、疲れ果てて備え付けのソファに座るセシリアと鈴の隣で、ジュースを飲みながら、千冬に噛み付く陽太だったが、そんな彼の言葉も彼女は華麗に受け流し、そして反論を叩き潰す一言を言い放った。
「一言でまとめるなら『お前が陽太だから』だ………ラウラ、途中でこいつが勝手に抜け出して煙草を買いに走ってはいないだろうな?」
「いえッ!! その点は抜かりなく………休む間も与えずに働かせました!!」
「おのれ鬼畜共めっ!!」
『俺を馬車馬のごとく働かせた理由がそれか!?』と憤慨する陽太であった………ちなみに未成年のくせに喫煙を止めようとしない自分が悪いとか考えないあたり、千冬の指摘は大いに正しいといえるだろう。
「もうお前達のような涙を持たない冷徹共と付き合えるか! 俺は飯食って風呂入って寝る!!」
「そうかそうか。だがまだお前個人の報告書が上がっていないんだ………山田君」
「ハイハ~~イッ!」
「!?」
気が付いたとき、すでに両手を笑顔の真耶と彼のお目付け役の一人であるラウラに拘束された陽太は、ズルズルと引き摺られながら連行されていく………。
「イヤァァァァァッーーー!! 今日ぐらいゆっくり寝かせてぇ~~!!」
「大丈夫ですよ~~~。誤字脱字もなくちゃんと書ければ30分で済みますからね~」
「キビキビ歩け隊長!! 言っておくが今日はシャルに甘えることはできないぞ!!」
隊長としての威厳もなにもあったものではない………事務仕事が極端に苦手かつ大嫌いな陽太にしてみれば、地獄から舞い戻ったと思ったらもう一度地獄に叩き込まれた気分になり叫び声をあげるが、そんな時、彼の直感が学園内の僅かな異変を気づかせる。
「(何だ? 一瞬だけ殺気に似た気配が………)オイ、ラウラ」
そしてラウラの方を真剣な表情で見ながら、彼はラウラに申し出た。
「どうした?」
「学園内に侵入者がいるかもしれん。全員で捜索をするぞ!」
「……………了解した」
が、そんな陽太の発言も、今のラウラと真耶には冗談としかとってもらえない。両脇の脇固めがさらに強固なものになったことを察知した陽太が慌てて言葉を続けた。
「お前が報告書を作成し終えれば、夜通し巡回させてやる」
「そうですね~~。まずは報告書を作ってからですね~」
「チョッ!? おま!? 冗談じゃなくて俺は本当に変な気配を感じ取ってだな!?」
「ああ、了解了解」
「ハイハイ」
陽太がどんなに言っても二人は真面目に取り合おうとしない………やはり普段の振る舞いによる信頼とは重要なことなのだと、このときに陽太が反省したかどうかは誰にもわからないのだった………。
と、そんな駄目隊長を視線だけで見送った一夏は、喉元にまで出掛かった言葉を吐き出すこともできずにおり、ひたすら無言で姉の姿を見続ける。
―――姉と瓜二つの年下らしき少女―――
―――そして千冬に大怪我をさせたアレキサンドラ・リキュールという女―――
聞きたい。今すぐ全てを聞きたい。
だがそれを聞くのが恐ろしい………千冬が自分にひた隠しにしていた真実を知れば、彼女が遠くに行ってしまうような気がして聞くに聞けない。無意識に奥歯を噛み締め、拳を強く握り締めて、一夏は黙って姉を見続けるだけだった。
「………どうした? 何か身体に不調を持ったのか?」
そんな弟の視線に気がついた千冬は、心配そうな表情で彼の顔を見る。以前の教師としての威厳を保つために厳しい言葉しか吐くことはしなかったが、最近は言葉の端々に柔らかさがポツポツと見られるようになった………ホンの僅かづつだったが………。
「………くっ!? なんでもない!!」
「一夏っ!?」
「一夏さんっ!?」
背後から呼び止める千冬とセシリアの声も無視して一夏は走り出す。姉の視線に耐えられなくなった一夏はその場を走り出してロビーを飛び出してしまう。
今の千冬なら、自分の質問に素直に答えてくれるだろう。たとえそこで自分が激高するような事態になっても逆ギレなんてしないのだろう。
だが、今の一夏の心の中には、姉に対して湧き上がった疑念を振り払うために、彼女と瞳をあわせることが出来ずにいたのだ。
―――なんらかの悪事に姉が加担していたのではないのだろうか?―――
湧き上がった疑念が脳裏に染み出すが、一夏はそれを無理やり押し殺す。
「(千冬姉がそんなことするはずなんてない!! 間違ったことをしてるわけがない!!)」
ならば何故、亡国機業(ファントム・タスク)に彼女と縁のある人間が二人もいるのだろうか?
アレキサンドラ・リキュールと自分は本当に出会っていたのだろうか?
束のことも彼女は直接面識があるように言っていた。それは何故なんだろうか?
次から次へと湧き上がる内なる声を振り払うように、一夏はその場から少しでも遠ざかろうと必死に走り続ける。
対して、一夏の異変に気がついた千冬は、直接現場にいたセシリアと鈴に彼の異変の理由を問いかける。
「何があった? 報告書によると、亡国機業の幹部と直接対話したとあるが………あの女に何を言われた?」
「あ、あのそれは………」
千冬の質問に口篭るセシリアに対して、意を決した鈴は物怖じせずに答える。
「亡国の、あの馬鹿乳女(アレキサンドラ・リキュール)が一夏に言ってたんです。『10年ぶりの再会だ』って………」
「!?……………そうか」
一瞬だけ表情を歪めた千冬だったが、すぐさま表情は元に戻り、最近では癖になってしまった胸元の傷を服の上から触れる仕草を見せる。
「教えてください千冬さん!! どうして千冬さんが亡国機業の幹部と知り合いなんですか!? それにあの女がその傷をつけたって本当なんですか? っていうか、どうしてそんな殺し合いするような事になったんですか!?」
感情のままに言葉を走らせる鈴だったが、千冬の表情を見た瞬間、激しく後悔を覚える。
「……………そうだな、何故なんだろうな?」
天井を見上げ、胸元に右手を置きながら、彼女は今にも泣き出しそうな表情でポツリと呟く。
「……………私とアイツが殺しあったのは事実だ。そうだ………事実なんだ」
―――ハハハッ………ハハハッ!! ハァッハッハッハッ!! そうだ!! 我々は最初からこうあるべきだった!!―――
―――嫌だッ!! 止めてくれ!!―――
―――何を嫌がるッ!? 私達が本来あるべき姿に帰っただけだ!!―――
―――嘘だッ!? 私とお前は親友だッ!!―――
―――違うッ!! 私とお前は『宿敵(てき)』だ!! 『宿敵(てき)』であるべきだったんだッ!! 命を賭けて雌雄を決する戦士であるべきだったんだ!!!―――
―――違うッ………私達は……こんなことのために……『先生』はッ!?―――
―――あの人は関係ないっ!!………だから私と全力で戦え!! 全てを振り絞って死力の限りを尽くせ!! 私を殺すつもりでこい!! そんなお前を殺し、初めてお前がその手にした『最強』を、私が名乗ることが許されるッ!!―――
―――………嫌だ。もうそんなの嫌だ………どうして私が………もう戦いたくも、ましてやお前を殺したくなんてないんだっ!!―――
―――!! 今更………貴様が言えた言葉かぁぁぁぁぁぁぁっ!!!―――
「理解し(わかり)合っていた………疑うことなく、心からそう私は信じていた」
胸に疼く鈍痛………過ぎ去った時は戻らないというのに、千冬の心の傷は10年たっても癒えることなく彼女を苛み続けている。
「いや、最初に裏切ったのは私なんだ………これ以上考えられないぐらいの、酷い裏切りをアイツ『等』に私は行ったんだ」
心の底から後悔していることが判るぐらいに憔悴した千冬の表情に、セシリアと鈴はその内容がなんなのか、それ以上問いかけることが出来ずにいたのだった。
☆
ロビーから飛び出した一夏が、寮の近くにある林の中に飛び込み、適当な木に頭を当てながら乱れた呼吸を整えようとする。
「ハァッー、ハァッー、ハァッー………ちくしょう……なんで俺は、肝心なときに尻込みしちまうんだよ」
聞きたかった。全部話してもらって千冬に少しでも楽になってもらいたかった。彼女が背負ったものを今度は自分が背負いたいから。自分のために姉が背負ってしまったモノがあったとするなら、それは自分が本来背負うべきものだと一夏は考えたのだ。
「俺が、千冬姉の全部を受け継いでみせるんだ」
だが、それがある一面において「傲慢」であることを今の一夏が知る由はない。姉のために、弟のために、互いが想い合うあまりに気負ってしまう織斑の悲しい気質なのかもしれない。
そしてそんな気質を受け継いだ者が、ここにも一人………。
「………お前に、織斑千冬の何を受け継げるというのだ?」
「!?」
木々の陰に隠れていたために気がつくことが出来なかった一夏は、驚いて声のしたほうに振り返る。そしてそれと同時に、雲間に隠れていた月の光がゆっくりと覗き、彼女の姿をぼんやりと浮かび上がらせる。
「何も知らず、何も気付かず、ただあの人に護れていただけのお前に、背負うなどと出来るはずもない!!」
「織斑………マドカッ!!」
月光に照らされたのは、自身が受け継ぐといった姉を幼くしたような、だが紛れもなく織斑千冬その人と言えるだろう容姿をした少女。自分と敵対する彼女が一人で堂々IS学園に侵入してきたことに驚愕する一夏だったが、彼女は瞳に激しい敵愾心を漲らせ、一夏を睨み付けながら言い放つ。
「ただ無知のまま、有象無象の中に埋もれていれば相手をする必要もなかったものを………そんなお前が世界でただ一機の第四世代ISを身に纏っているだと?」
同時にそれは、自分の相棒である男の標的ということを意味し、彼の興味と視線が一夏に注がれているということでもある。更に彼のISの能力には上司であるスコールですら注目しだし、今の一夏は色々な意味で『台風の目』と化しているのだ。
「腹立たしい………お前がそうやって息をしていることすらも!!」
「だから………お前はいったい何なんだよ!? なんで俺はお前に、そんな恨まれないといけないんだ!?」
姉そっくりな少女に訳も分からぬままに憎悪されている現状を何とか改善したい。そう願った一夏の質問に、マドカは一見、落ち着いたような雰囲気で、質問し返してくる。
「織斑一夏………お前は『VTシステム』という言葉に、聞き覚えはあるか?」
そのマドカの聴きなれない言葉に、一夏は首を捻らせながら答えた。
「VT?………セシリアのBTとかじゃないんだよな。いや、聞き覚えはないけど……」
マドカの空気が若干和らいだかのように思えたため、砕けた感じで答える一夏だったが、次の瞬間、マドカは先ほど以上に剣呑とした気配で、犬歯をむき出しに吼えた。
「よ~く分かったよ! お前はやはりこの場で死ぬがいい!! 無知のままにあの世に送ってやることが、せめてもの情けだ!!」
「だっ!? だからなんでッ!!」
たったそれだけのやり取りで、なんで駄目出し食らわないといけないんだっ!! と叫ぼうとするが、マドカの背後からすでに展開されていたBT達が、木々の陰から飛び出したことに驚愕する一夏。この少女は生身の自分相手にも、一切の躊躇をせずに、本気で『殺し』に来ているのだと実感する暇もなく、マドカは宣言する。
「死ね」
短く、死の宣告をすると同時に、八つの牙から蒼色のビームが放たれ、無防備の一夏に襲い掛かる。
「!!」
ISを展開するのも間に合わず、完全に棒立ちの状態で致命傷というにはあまりにオーバーキルな攻撃を受けようとする一夏は、叫び声をあげることなく体をビームに引き千切られ………。
―――瞬転、天空から二人の間に割って入る白き鋼!!―――
突如、空の上から超高速で落下してきた物体が、ビームを弾きながら二人の間に巨大なクレーターを作って地面に突き刺さったのだ。
「!?」
「ぐへぇっ!」
爆風によって飛ばされた一夏と、なんとか踏み留まったマドカだったが、予想だにしていなかった事態に困惑する二人………そして、舞い上がった土煙が晴れ始めたころ、落下してきた物体が月明かりで輝く白鋼だったことを確認したマドカが、思わずつぶやいた。
「………盾?」
が、マドカのつぶやきに、頭上から間髪要れずに『彼女(防人)』の声が凛と響く。
「………剣だッ!」
その声に、尻餅をついていた一夏は思わずハッとなって見上げ、そして嬉しそうな声で彼女の名を叫ぶ。
「箒ッ!!」
白き鋼、全長5m以上の巨大な斬艦刀の上に、紅椿を展開し、両手にレーザーソードを携えた箒は、一夏の声に反応し、落ち着いた声でISの展開を催促する。
「一夏ッ!! 早く白式を纏え!!」
「あっ………ああっ!」
そして一夏が慌ててISを展開するのを目だけで確認した後、自分を睨み付けてくるマドカに視線を向けた。
「キサマッ………どこまでも私の邪魔をッ!!」
「………ならば、どうする?」
昼間とは真逆の、激高するマドカといたって冷静な箒という図式となる。そして二人の少女は、湧き上がる気迫を抑えることなくぶつけて叫んだ。
「お前から先に潰してやる!! 篠ノ之箒ッ!!」
「お前に一夏は殺させないっ!!」
マドカがISを完全に展開し、ビームサーベルを抜き放つ中、箒は誰に向けたわけでもなく、今一度、己に誓うように、言い放つ。
「もう何も、失うものかと、決めたから!!」
シリアスかと思ったら、最後のネタをやりたかっただけな回でしたw
いや、中はシリアスいっぱいだよ。
と、さてさて、次回は箒VSマドカの第二ラウンド!
てか、マドカさん一人で来て大丈夫か!? 曲がりなりにも出番はないけどジークを倒したやつがいる以上、
出番のない主人公>ジーク>マドカ
が確定しているというのに
陽太「え? 俺出番ないの? ってか、読者の皆さん!! 私が主人公の火鳥陽太です! 主人公のっ!! 火鳥陽太ですっ!!(必死)」
追記
マドカが言った「ただ一機の第四世代」というのは誤字ではありません。太陽の翼では実は重要な設定になっております