IS インフィニット・ストラトス 〜太陽の翼〜   作:フゥ太

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実に一ヶ月ぶりの更新

そして今回はちょっと長くなったのでちょっと分割して掲載します。

後半部分は夜にでもッ!


第三の介入者

 

 

 

 

 灼熱のプラズマは暴龍帝を飲み込むと、そのままアリーナの壁に激突しなお止まらぬ勢いで隔壁を一気に貫き、IS学園の敷地を削りながら海面に到達し、巨大な水蒸気爆発を起こしたのだった。

 

「「きゃあああっ!!」」

 

 避難勧告を受けて緊急シェルターに入っていた一般生徒達も、それに随伴した教職員も、突然起こった学園全体を包み込む爆発音に悲鳴を上げてします。

 そしてその爆発の衝撃は中に篭っていた者達よりも、無論外にいた者達の方がより大きく受けることになったのだった。

 

「ちょっ!!」

 

 巨大な波飛沫の後に襲ってきた衝撃波に吹き飛ばされかけた鈴であったが、隣で伸びかけていた一夏とEシールドを半分近く融解させられたシャルの両肩を掴んで二人が吹き飛んでいかないように必死に支える。

 ラウラも背後にセシリアと箒の二人を庇いつつ、フィールドを展開し激しい衝撃から身を守り、マドカも同様にバリアフィールドを広げ、衝撃波から傷付いていた千冬と傍観を命令された仲間達を守り抜いたのだった。

 

 そして巨大な水柱とあたり一面に広範囲の『雨』すら降らせた爆発を目の当たりにし、唯一戦闘に参加しなかった楯無も、驚きながらも大したものだという賞賛と安堵の笑みを浮かべ、陽太を見た。

 

「あの化け物に本当に勝っちゃうなんて………ちょっとこの間、言い過ぎたかな?」

 

 シャル救出作戦の僅かな合間しか二人は言葉を交わさなかっただけに、いかに箒から陽太は変わったという報告を受けても、信頼を置けるか否か懐疑的な目でしか彼のことを見れなかったが、確かにこれまでの動きと戦いを見る限り、陽太は信頼するに足りえる人格と能力を有しているのは間違いなさそうである。

 

「むしろ、私の方こそ、生徒会長失格ね」

 

 敵のあまりの強大さに尻込みし、戦う前から諦めてしまうという前代未聞の失態を演じた自分がこの学園の生徒達の長を務めるなどおこがましい。

 いや、すでに自分よりもふさわしい人間が目の前にいるのではないのか?

 

「はぁ~~………!!」

 

 深いため息をつきながら陽太の姿を見続けていた楯無だったが、その時、ブレイズブレードにある異変が起こっていることに気がつく。

 

「機体温度………摂氏800℃!?」

 

 いくら異常な火力を放出したとはいえ、ISの搭乗者保護の観点から見て、強制冷却は発射と同時に行われていないとおかしい。

 しかし冷却を行われているにしては機体内部の温度があまりに高すぎる。

 

「まさかっ!」

 

 そのことに気がついたとき、彼女は既に地を蹴って彼に向かって一直線に飛び立っていた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「ヨウタッ!!」

 

 爆風が止んだのを見計らい、シャルは真っ先に陽太の安否を確認しに彼の元に一直線に向かう。これほどの威力の攻撃、何のリスクも背負わずに放てるとはとても思えない。しかも彼はそれ以前にあの暴龍帝に戦いを挑み、全身ボロボロになっていたのだ。その状態でISを纏って戦っている時点で相当無理をしているはず。

 

「(本当に痛い時ほど、絶対に『痛い』って言ってくれないんだからっ!!)」

 

 以前カールから『男はなるべく他人に大変なことは背負わせたくない』と言われていた事を思い出していたシャルは、おそらく陽太は相当な重症を無理して、戦っていることを理解していたのだった。

 

「ヨウタッ!?」

 

 そして彼の姿を捉え、一直線に駆け寄ろうとした時、青い影が上空から飛び降り、自分の前に立ち塞がったのだ。

 

「待ちなさい、シャルロットちゃんっ!!」

「貴女は………更識会長っ!?」

 

 なぜこの場になぜ生徒会の会長がISを装着して、自分の前に立ち塞がるのか? 理解できずに思わず身構えかけたシャルだったが、楯無は左手でシャルを押し留めながら、右手を陽太のほうに差し出し、自身が操る水流を彼にぶつけたのだった。

 

「更識会長ッ!? 何をッ!!」

「貴女、気がつかないの?」

 

 そしてブレイズブレードに水流が当たった瞬間、大量の蒸気が上がるのを見て、シャルも陽太の異変と、同時にその原因が彼のISが持つ単一仕様能力(ワンオフスキル)だったことに気がついたのだった。

 

「あのワンオフ使ったからッ!!」

「命を削る大技ってことかしら? それにしても、なんて熱量が篭ってるの?」

 

 ISの内部温度が中々低下しないことに苛立ちながらも、彼の救助を続ける楯無の元に一夏も駆けつける。

 

「会長ッ!! 陽太はっ!?」

「異常加熱で蒸し鳥にでもなってなきゃいいけど………」

「そんな不味そうな食い物、誰も食べたくないわよ!!」

「!?」

 

 心配そうに見つめるがサラッと酷い事を言ってのける鈴に向かって、さすがのシャルも不機嫌そうに睨み付け、鈴もその表情を受けて気まずそうに明後日の方向を振り向く中、シャルが言葉でツッコむよりも早く、鈴に向かって手厳しい言葉をぶつける男がいた。

 

「……………お前の、不気味中華よりも、遥かに……マシだ」

「ヨウタッ!!」

 

 長らく意識が飛んでいたのか、水流を受けても無言のままだった陽太からいつもの減らず口が出たのを目の当たりにし、ようやくメンバー達から安堵のため息が漏れる。そしてシャルロットは嬉しそうに陽太に駆け寄ると、彼の肩を支えながら話しかけるのだった。

 

「身体は大丈夫なのッ!? 全身傷だらけなのに、こんな無茶してっ!!」

「………火照った体には……誰かさんの水鉄砲は…ちょうどいい塩梅だったんだが」

 

 自分の武器を水鉄砲呼ばわりされて若干不機嫌になる楯無と、この間の腹パンの件を忘れていない陽太との間に微妙な空気が流れ始める。

 

「(チッ、助けてもらったらまず初めにありがとうございましたじゃないのかしらね?)オ久シブリネ、元気ソウデ何ヨリヨ」

「(などと考えていることが丸判りなんだよ。さっきまで引っ込んでた分際で)イエイエ、オ気ニナサラズ」

 

 微妙な空気が二人の間に流れる。それも男女の仲とか敵同士とかとは違い、すごく微妙な嫌悪と共感が入り混じった片言な日本語で挨拶しあう二人。本質的に嫌悪しあっているというより、なんだかんだで似ている部分がある二人なだけに一度絡んだだけで同属嫌悪を持ったのは流石と言うべきなのだろうか………?

 そんな二人の微妙な空気を振り払うように、呆然としていたシャルが我を取り戻し、彼の身体の調子を確かめる。

 

「それよりも………ヨウタッ!? 身体の方は?」

「………さすがに…ボコボコ殴られた後にワンオフ使ったからな……ちょっち、疲れた………ゴホッ!」

「ヨウタッ!!」

 

 シャルの肩を借りてなんとか歩き出そうとした陽太だったが、全身のダメージが痛みになって駆け巡り、そのままバランスを崩して倒れかける。

 

「陽太ッ!」

「大丈夫かッ!?」

 

 地面に倒れこむ寸前で、一夏とラウラが身体を受け止める。

 

「!?」

 

 陽太の身体が微妙に痙攣していること。理由が全身の怪我によるものだと理解したラウラが彼のバイタルを確認し、そして愕然となってしまうのだった。

 

「(顎に亀裂骨折、肋骨四本、両手首亀裂骨折および炎症、両足骨軽度の捻挫、内臓数箇所損傷………)馬鹿者ッ!! 立派に重症人だろうが!!」

 

 自身も多少の怪我を負ってはいたものの、まさか陽太がこれほどまでやせ我慢しながら戦っていたとは思っておらず、声を荒げてしまった。だがその言葉を聞いたシャルが、ラウラと同じように陽太のバイタルを確認し、震えるほどの怒りを感じて思わず叫んでしまう。

 

「バカッ!!! ヨウタのバカッ!!」

「………うっ」

 

 彼の肩を掴むと、シャルはこれ以上の問答をしている暇がないと言わんばかりにカールに連絡を入れようとする。

 

「カール先生を今すぐ呼ぶから、一緒に病院にいこうっ!!」

「そんな暇ない」

「私、本気で怒るよっ!! 今はそんなこと言ってる場合じゃないんだよっ!!」

「いや、そういうことじゃないんだ」

 

 陽太の数少ない悪い主義として医者嫌いがあるのだが、シャルはいつものそれだと勘違いしていたのだが、寄り添うシャルをやんわりと引き剥がすと、自分が空けた大穴の方を向き、そして心底うんざりするように呟いた。

 

「ホントもう………勘弁してくれよ」

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 ブレイズブレードの超火力による一撃を目の当たりにした亡国の若手連中も、この予想外の展開に動揺を隠せずにいた。

 

「アイツ等………」

 

 絶対に負けるはずがない亡国最強の操縦者を、砂の一欠けらのような勝機を手繰り寄せ、見事に逆転してみせた陽太達に嫉妬を隠し切れないジークが奥歯をかみ締めながら、彼らの方に振り返る。

 

「親方様……」

「そんな……」

 

 そしてアレキサンドラ・リキュール直属の配下である竜騎兵達の動揺は一際大きく、天地逆転しようともあり得るはずがないと思っていた事態が起こってしまったのかと思い、フォルゴーレとリューリュクの表情が青褪める。

 

「なんて顔をしてる、二人ともッ!!」

 

 だがそんな二人を叱り付けたのは、暴龍帝を神の如く崇拝しているフリューゲルであった。

 

「フリちん………」

「親方様が甘んじて一撃を受けただけだろうが!! そんなことは、いつものことだっ!!」

 

 そしてそんなフリューゲルに賛同するように、スピアーも声を荒げながら彼女が敗北したなどという考えを一瞬で蹴り飛ばし、奮い立たせるように叫んだのだった。

 

「たとえいかなる事態になろうとも、簡単に顔色を変えるなっ!! 暴龍帝に仕える竜騎兵として恥ずすべき行為でしょう!?」

「我々が成すべき事は一つ! 親方様が見ていろと言われたのなら、決着がつくまで案山子となっておくことだ!」

 

 ただの妄信ではない。洗脳などでもない。ましてやこの後のことを考えての我が身の保身などでは断じてなく、竜騎兵がその胸に抱く想いはそんな低俗でも下種なものもない。彼女の言いつけを忠実に守り、暴龍帝アレキサンドラ・リキュールが勝利するということに微塵の疑いも持たぬ、本物の『忠義』こそ全員が抱くただ一つの共通の想いなのだとフリューゲルとスピアーは、フォルゴーレとリューリュクに訴えているのだ。

 

「親方様は唯一絶対無敵にして、あの方こそが最強なのだ!!」

「たまにはいいことを言うじゃないスピアー!」

「……………」

 

 普段は仲が悪いくせに、こういうときに息がぴったり合う二人を見たフォルゴーレがその通りだと内心で安堵の笑みを浮かべ、自分だけでもリキュールを探しにいこうとした瞬間だった。

 

 

 

 ―――地響きを伴って近づいてくる足音―――

 

 

 

「!? これはッ!!」

 

 嬉しそうな表情で振り返ったフォルゴーレが、何時も通りの言葉で彼女を出迎える。

 

「親方様ッ!!」

 

 本当に嬉しそうな笑みを浮かべるフォルゴーレと、彼女の存在を感じ取り、感極まってベソをかきはじめたフリューゲルとスピアーとリューリュク………そしてブレイズブレードのワンオフスキルによって開けられた巨大な穴から、律儀に歩いて戻ってきたその異形の戦士は出迎えてきた部下達の顔を見るなり、第一声にこう言い放つ。

 

「なんという面をしている? 情けないぞ」

「「「ぶあいっ!!」」」

「ハイッ!!」

 

 嬉しそうな安堵した表情の四人を背に、暴龍帝は心底嬉しそうな顔をして、半壊した『左腕』を見せながら敵である少年達に話しかける。

 

「やってくれたな陽太君ッ!! 危うく死にかけたぞ!!」

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

「な、なんで………?」

 

 そして彼女の姿を見たシャルは、もはや恐怖すら通り越して唖然とした表情で疑問の声を上げる。なんせ自分達が全てをかけた作戦と、陽太の死ぬ気の一撃を受けたはずだというのに………。

 

「バリアか何かで防がれたと?」

「いや、それをさせないための零落白夜で斬り込む乱取りだった」

 

 セシリアとラウラも、陽太の一撃を確実に当てさせるために油断と隙を作らせると同時に、防御行動を抑制するための一夏の零落白夜だったことを知っているだけに、なぜあれを受けて無事でいられるのか不思議で仕方ないのだ。

 

「だが、現実問題、奴は生きている上にああやって続きやるつもりだぞ!?」

「ああ、もう………その気だっていうならやってやろうじゃないのよっ!!」

 

 今はなぜ無事だったかの有無よりも、戦闘続行の方に意識を集中させるように二刀を構えた箒と、折れた双天牙月の代わりに、サブウエポンとして持っていたビームサーベルを両手に持った鈴が構える。

 

「せめてもう少しぐらいISが半壊しててくれれば取る手段もあった物を………腕一本だなんて」

「どうする、陽太!?」

 

 特殊なナノマシンによって水を螺旋状に纏った四門のガトリングガン『蒼流旋(そうりゅうせん)』を構える楯無と、即座に雪片の展開装甲を起動させビームブレードにして構えた一夏が陽太に指示を仰ぐ。

 

「……………」

 

 全身が痛んで今すぐにでも意識を手放したい中でも、陽太はそれを悟られたくないと言わんばかりに軽口を叩く。

 

「正直、極大烈火砲撃(ウルティマプラズマ)で止めさせたとは思ってなかったがよ………腕一本とかは、空気読めてないだろ?」

 

 遠まわしに『どうやって攻撃を凌いだ?』と問いかけてくる陽太に、リキュールは実に楽しそうに、嬉しそうな声で答える。

 

「先に言っておくと君の手順に誤りはなかったよ? ただ君が思っていた以上に私の処理速度が上回っただけだよ………一夏君が離脱した瞬間、雷撃のエネルギーを全て右腕に集中して君のプラズマを回避したんだが………それでもこの様だ」

 

 装甲が融解しヒビが入った左腕………そしてそれはISの内部にまで浸透しており、炎は彼女の左腕を焼き、痛覚すらも感じさせない熱傷となっており、早期に治療しないと細胞の壊死に繋がるほどの重症なのだが、傷つけられたという事実が彼女には嬉しくて仕方なかったのだった。

 

「ヴォルテウス………これが『戦さ』だ。これぞ『痛み』だ………お前にとっては初めての、そして私にとっては10年ぶりのものだ」

 

 GUOOOOOON!!

 

 大気を振るわせる歓喜の雄叫びをあげる愛機の様子に、リキュールも実に満足そうな笑みを浮かべる。

 

「これがなければ戦いとは言えぬ………痛みと死の間際で、刹那の瞬間の火花のように互いの命を散らし合ってこそ美しいと言えよう」

「テメェのナルシズムなんざ心底どうでもいいわ」

 

 フレイムソードを構える陽太の姿を見ながら、リキュールは思案する。

 正直IS学園側の誰もがこれ以上の戦闘続行は不可能だと感じながらも、かかって来るというのなら、とことんまで戦い抜くという意思を持っているようだ。

 そして自分の損害は腕一本。決着をつけるというのならものの数分も必要としない。

 

「(………だが惜しい)」

 

 陽太だけではない。直接戦っていない楯無を除く一夏や他のIS学園メンバーの誰もがこの戦いの中で確かに『成長』していたことを、直接手合わせしたリキュールが誰よりも理解していた。

 戦場(いくさば)で命を削りあう死闘を演じることは、時に万の時間をかけた修練すらも凌駕するほどの成長を人に与えることがあるが、彼らはその恩恵を見事に勝ち取り、限界を超えて格上である自分の喉元に一瞬とはいえ刃を突き立てかけたのだ。それほどの逸材をこの場で終わらせるべきなのだろうか?

 

「(戦さの不文律とこれからの成長の確約………オイオイ、これは困ったぞ?)」

 

 実に嬉しくももどかしい悩みだ。戦士である自分が敵を前にして止めを刺さずに戦いをやめるのは自身の規律に反する。だがこの場で決着をつけるには彼らの未来はあまりに魅力的だ。二律背反とはこのことなのかと思いながら、どう落とし所をつけるべきなのか、それともこの楽しみを切り捨てても決着(ケリ)をつけるべきなのか………本気で迷うリキュールだったが、その時、彼女の研ぎ澄まされた感覚が上空から迫る何かをISのハイパーセンサーすらも凌駕する早さで捉え、顔を上に向かせたのだった。

 

「フッ………良いタイミングで来てくれるじゃないか」

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「!?」

 

 リキュールが急に上を向いたのに釣られ、陽太も上空を見る。

 

「(なんだ?………何を見てんだ?)」

 

 敵を前にして隙を見せるとは………一瞬呆けた暴龍帝相手に奇襲をかけようかと思った陽太だったが、彼の視界が僅かに歪む大気の姿を捉える。

 

「(なんだ? ハイパーセンサーにはなにも……!!)」

 

 ISのセンサーは確かに異常を捉えていないが彼の持つ直感は上空に何かがいることを捉える。そしてそれは敵方のジークも同様で、彼の集中力を高めさせる。

 

「………いるっ!!」

 

 彼が呟くと同時に、まるで空間の中に溶け込んでいたかのように、全長4mほどの『銀色のにんじん』が12本、続けざまにアリーナ目掛け飛来してきたのだ。

 

『!?』

「避けろッ!!」

 

 そう叫ぶジークの声に反射的に反応し、マドカは千冬を抱え、竜騎兵達と共にその場から後退する。

 

『!?』

 

 そして銀色のにんじんは亡国機業側だけではなく、暴龍帝と対峙する陽太達の間にも降り注ぎ、まるでIS学園と亡国機業を分けへだつように地面に着地したのだった。

 

「な、なんだ?」

「さ、さあ?」

 

 一瞬、敵の増援か何かだと思った一夏と鈴は、想像以上に気の抜けた造形の何かに呆気にとられてしまう。それはセシリアやラウラも同じなようで………。

 

「わ、私達の……味方?」

「え、援軍の割には………その…」

 

 どこの国の秘密兵器かと考え込む二人………だが、この銀色のにんじんを見た瞬間から顔色が明らかに変わった箒の様子を気にした楯無は、恐る恐る彼女に問うてみる。

 

「ねえ、箒ちゃん………ひょっとしてコレって」

「………間違いない、陽太」

「ああ………このエキセントリック極まるアホセンスの移動物は……」

 

 見間違えることはない。こんな斜め上にずれたセンスの物で突撃してくる存在は現地球上でただ一人でもう十分だ。心の中でそう酷評する二人の目前で、ゆっくりと銀色のにんじんが蓋を開き、その中現れた合わせて12機の、異形の者達が陽光に晒される。

 

 ―――全身を銀色で覆われた全身装甲、鋭い二本の爪が装備された極端に大きな両腕、背部に装備されたコーン状の筒から吐き出される赤い粒子、そして怪しく光る紫色のバイザー―――

 ―――ただ一機、他の全身装甲のISとは形状を異ならせ、スカートのようなリアフロントと、黄金の杖、背中に大きな翼を持ち、頭部の兎耳が特徴的なピンクのバイザーをした機体―――

 

「………IS…なの?」

 

 謎の全身装甲のIS達に警戒心を高めるシャルだったが、その時、謎のISと思わしき全身装甲の機体達の内の11機が前屈みの前傾姿勢を取り始め、IS学園メンバーと亡国機業のメンバーも揃って武器を構え、相手の出方を見定めようとする。

 

「あの機体ッ!?」

 

 そんな一同の中において、唯一目の前の全身装甲のISに心当たりがあったのか、陽太は驚きながらも両手にヴォルケーノを持ち、信じられないといった心境で銃口を構える。

 

「(昔、お前が自慢げに見せてた………俺がいない間に完成させやがったのか、自律稼動型無人IS『ゴーレム』を!?)」

 

 ISの歴史に新たなる一ページを加えるこの画期的なISを考案、開発した人物を直接知っているだけに、この事態の首謀者を彼女しかいないと断定できた陽太は、一機だけ動きをみせないISに向かって怒鳴り声をぶつける。

 

「テメェッ!! 今頃このタイミングでなんのようだっ!!」

 

 陽太の怒鳴り声に、全員が注目する。

 

「そのマスク取ってこっち向け、たば・」

 

 それを引き金に、銀色の『ゴーレム』と言われるISが一斉に飛び立ったのだった。

 

「!?」

「クッ!!」

 

 11機が一丸となり、ジーク目掛けて………。

 

「ナメんなっ!!」

 

 11機のゴーレムがなぜ自分だけを集中攻撃してくるのか、この場においてもっとも高い戦闘力を持っているのはアレキサンドラ・リキュールで、弱った相手を見るならすでに火鳥陽太は死に体であり、どう考えても腑に落ちない選択肢ではある。が、今はそんなことを言っている場合ではない。すぐさま思考を切り替え、アサルトライフルを取り出すと、前方から飛び込んできた一機を迎撃する。

 

『!!』

「!?」

 

 アサルトライフルの弾を極端に大きな腕を盾にしながら弾き返してきたのだ。しかも出足は一瞬の乱れもなく、攻撃を受けたというのに動揺が聊かも見受けられない。

 

「コイツ等……一体」

 

 しかもこのISから、今まで感じたことのない奇妙な違和感をジークは感じ取る。不気味な気配を感じさせるゴーレムが、ジークの間合いに入り込みその巨腕で彼を殴りつけようとする。

 

「チッ!(しかも火鳥陽太並のスピードだぞ!!)」

 

 敵の戦力の予想以上の高さに驚愕しながらもジークは残像を置き去りにするほどのスピードでゴーレムの背後に回りこみ、今度は背後の人間で言うところの脊髄目掛けて零距離でライフルをぶっ放そうと構える。

 

「!!」

 

 が、この時、予想だにしなかった事態がジークを襲う。

 

 ―――自分に向けられている、肘から伸びたビームキャノンの砲口―――

 

「やべっ!」

 

 ―――しかも周囲の10機も同様に、手首の部分からビームキャノンの砲口を自分に向けている―――

 

 そしてゴーレム達はまるでそれが最初から打ち合わせられていたかのように一斉発射し、ジークがビームの光の中に埋もれ、直後大爆発を起こす。

 

「ジークゥゥゥゥッ!!!」

 

 予想外の事態に驚いたのはマドカも同様で、彼が敵の攻撃であっさりやられてしまったのかと思い、思わず悲鳴を上げてしまうのだった。そんな彼女の絶叫がアリーナ内部に響く中、爆風の中から自分の無事を見せ付けるかのように左腕を抱えたジークが姿を現す。

 

「(隙がない上に……なんでアイツ等、死角が存在してねぇーんだよ!!)」

 

 彼生来の特殊な技能の内に『相手の死角を感覚的に捉える』というものがあるのだが、このゴーレム達には誰もが持っているはずのその死角が存在していないのだ。

 

「(人間………いや、こいつら生物なのかよ?)」

 

 激しく痛む左腕を押さえながらジークは敵の異常性に戦慄する。

 相手から生物特有の『呼吸』のような生物的な気配が一切感じられず、まるで全自動で敵を迎撃する機械を相手にしているかのような感覚に襲われたジークだったが、それにしてもこの目の前の相手の動きはあまりに生物というには滑らか過ぎる。どう考えても腑に落ちない敵の存在に、ジークが意識を奪われてしまうが、その一瞬の隙を突くかのように二機のゴーレムが彼の背後に回りこんで両手を広げる。

 

「チッ!」

 

 その両腕を掻い潜り、ゴーレムの背後にキックをお見舞いしようとするジーク。

 

「なっ!」

 

 ―――振り返ることなくその攻撃を片手で受け止めたゴーレム―――

 

 強靭な握力で足を掴まれ、自慢のスピードで逃げ出せなくなったジークが武装を実体刀に切り替えて相手を切り裂こうとするが、それよりも早く後方から接近した一機がジークの両手を掴み、両手と片足を封じられたままジークは地面に叩き落されてしまう。

 

「ガハッ!」

 

 強烈な衝撃で肺の中の空気が全て出尽くし軽い脳震盪に襲われるジークに、ゴーレム達はさらにもう一機加わり、彼の首元にビームクロウを三機掛りで突きつけたのだった。

 

「テメェら………!」

 

 力任せに振りほどこうにも、パワーすらもブレイズブレードに匹敵するかそれ以上の出力を誇っており、自分のディザスターでは三機まとめて振りほどくことなど到底できないのだ。

 

「(こんなところで『末那識』使うわけにもいかねーし)」

 

 切り札を使うには状況があまりに中途半端すぎる。どう切り抜けるのか悩むジークだったが、そんな彼を助けようとマドカと竜騎兵達が動こうとする。

 

「ジークッ!」

「なにやってんのよっ!?」

「お前らしくもない!!」

 

 マドカ、フリューゲル、スピアーの三人が突撃し、リューリュクとフォルゴーレが援護攻撃を加えようと構えるが、それよりも早く銀色の影は一瞬でマドカ達とリューリュク達の背後を取ると、躊躇無くビームクロウを彼女達に突きつけようとする。

 

「お前らッ!」

「危ないッ!!」

 

 押さえつけられているジークと、殺されてかけている人間を見ていられない一夏の声が重なり、その声によって自分達を狙っていた白銀の狩人の存在に気がつく五人。

 

『!?』

 

 息を呑む暇すらも与えず、五人の命を躊躇無く奪おうとゴーレム達はその牙を振り下ろしたのだった………が。

 

 

「待て」

 

 ―――リューリュクの顔スレスレを通過してゴーレムの胸に突き刺さった斬艦刀―――

 ―――マドカ達の背後を取ったゴーレムの横に立ち、繰り出された手刀を受け止める漆黒の手―――

 

 自身の部下達の窮地に動いた暴龍帝が動き、二機のゴーレムを瞬時に止めたのだ。

 

「まったく」

 

 そしてまるで問題もなさげに白銀の腕握り潰し、片腕を失ったゴーレムが後退しようとした所を相手の顔面を掴んで動きを封じると、異質なゴーレムとは異なるウサミミをつけたISを振り向いて話しかけたのだった。

 

「中々いい機体だ。OSの方も問題なさそうだ………しかし少々礼儀がなっていない」

 

 そして頭部をつかまれたまま至近距離からビームキャノンを放とうとするゴーレムの残った片腕を蹴りの一撃で引きちぎると、空中に放り投げて素早く足を掴み、その場から急加速してフォルゴーレ達の背後で胸に斬艦刀を突き刺されながらも再起動しかけていたゴーレムに向かって叩きつけ、ゴーレム同士がひしゃげ、衝撃で爆発してしまうのだった。

 

「………悪魔か」

「………化物?」

 

 爆発して炎上するISを背に、首をコキコキと鳴らしながら斬艦刀を取り出すリキュールの突き抜けた化物ぶりに、もはや驚くというよりも呆れてしまう陽太とシャルだったが、その時、ずっと静観を決めていた指揮官機らしいピンク色のISが地面にゆっくりと降り立つ。

 

「!!」

 

 その場にいた者達が緊張して武器を手にする中、ただ一人悠然と歩み寄るリキュールは、途中バイザーを解除して素顔を露にし、なびく白金(プラチナ)の髪を外気に触れさせながら、柔和な笑みを浮かべ、『旧友』を暖かく出迎えたのだった。

 

「久しぶりだというのに、相変わらずだな………束?」

「アハハハッ! やっぱりまだまだ『あーちゃん』には敵わないな~!!」

 

 ピンク色のISから聞き覚えがある声がしたと思った陽太達の顔色が明らかに変わる中、ピンク色のISのバイザーも外され、頭にウサミミをくっつけ能天気そうな笑顔を浮かべた篠ノ之束がなから現れたのだった。

 

 

 

 

 

 




詳しいことは後半部分でまとめて書きますが………


親方様、タフすぎですw
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