実況パワフルプロ野球‎⁦‪-Once Again,Chase The Dream You Gave Up-   作:kyon99

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 一対五の四点差を追いかけろ!!
 ――対極亜久高校戦三話! 遂に決着!?


第13話 星雄大と矢部明雄

 空に燦燦と輝く太陽の光に照らされる。

 まだ四月の下旬だと言うのに、チリチリと肌を焦がすような感覚があった。

 河川敷グラウンドで行われている恋恋高校と極亜久高校の試合は二回表に、恋恋高校のキャプテンを務める小波球太の一振りで、四点差へと縮める事が出来た。

 しかし、まだ、極亜久高校のエースナンバーを背負う悪道浩平のオリジナル変化球である『ドライブ・ドロップ』を攻略出来てはいない為、この試合はまだどう転ぶかも分からなかった。

 だが・・・・・・。キャッチャーである星の采配は相手チームに読まれている為、今現在、恋恋高校がやや押され気味で有るのは確かな事だった。

「チッ! 小波球太の野郎ォ! いい気になるんじゃアねェぞ!」

「・・・・・・落ち着くんだ浩平。お前の『ドライブ・ドロップ』はいつもの好調の良いボールだった。打たれてしまったのは気にするな! それに、お前はもう打たれる事はない。気をつけるのは小波一人だけで良い!! そうだろ?」

「俺は認めてねェ・・・・・・絶対ェ認めねェぞ! あのホームランは、マグレに決まってるッ!! 気をつけるのは小波一人だけだァ? そんな事は分かってるッ!! あいつらにはもう打たせはしねェ!!!」

 マウンドで悪道と犀川は、恋恋高校のベンチに座る小波を見つめていた。

 悪道自身にとっては『ドライブ・ドロップ』は、所謂奥の手だ。

 それを受ける犀川も同様に、完璧に歯が立たない切り札だと言う事は承知していた。

 だが、この二人にとって小波に打たれた事はショックだったようだ。それも初見でと言う事が更に追い討ちをかける。

 そして、五番レフトの山吹が左打席に立ってバットを構えていた。小波にホームランを打たれた事を引きずっているのか初球は大きく外れたボール球になってしまった。

 続く二球目、三球目とコントロールミスが重なってしまい、結果、山吹はフォアボールで無死一塁となった。六番打者は新入部員の赤坂紡となり、カウントツーストライク、スリーボールからの六球目、巧くサード線へと手堅い送りバントが成功して一死二塁、得点圏へとランナーは進んだ。

 だがしかし、後続の七番の毛利、八番の古味刈の野球経験一年足らずの二人が空振りの三振に仕留められ二回表の攻撃が終わってしまった。

「俺のホームランで一点は返せたものの点差は四点も離されているからな・・・・・・。これは気を抜けねえな」

 スパイクの紐をキツく結び治しながら小波はそう呟いた。

 『ドライブ・ドロップ』の打開策を思いつければこの試合は五分五分に持っていけるのだが・・・・・・と、考えていた。

 後は、星の読まれているリードをどうやって奴らを欺くかという点では、小波が考えるより、星本人が考えなければならない問題点なのだ。

「小波くん」

「ん? どうした早川?」

 あれこれ思考を凝らしている小波に早川が隣に立って声を掛けてきた。

「星くんの事なんだけど・・・・・・。リードが読まれてるって言ってたけど、大丈夫なのかな? さっきも星くんが言っていた通り、椎名くんをキャッチャーに置いた方が良いんじゃあない?」

「いや、椎名をキャッチャーに置かない。星には悪いがこのままマスクを被り続けてもらうぜ」

「で、でも!」

「早川。お前が心配してるのは分かってる。そりゃあ皆んなも同じかもしれない。でもな、俺はあいつを信じたいんだ」

「し、信じたいって・・・・・・」

「あいつだって、このままヤられたままじゃあ終われねえって気持ちが必ずある。本当は心の底では思っている筈だ。中学時代から何も変わらなかった自分自身を変えれるチャンスが遂に来たかもしれないんだって、だから俺はあいつがチームの為に成長してくれるって信じたいんだよ」

 小波の言葉に、早川は黙ったままだった。

 早川は、不安にもなったが余りにもまっすぐな瞳で話す小波の言葉を信じようと思ったのにそこまで時間は掛からなかった。

「・・・・・・分かったよ。キミが言うなら、ボクも星くんの事を信じてボールを投げるよ」

 

 二回の裏、極亜久高校の攻撃が始まった。

 二巡目のバッターボックスに立ったのは、一番打者の悪道浩平だ。先ほどの打席では左中間を破ったツーベースヒットを打っている。

「よォ、まだマスクを被ってそこに座ってるのか? 星よ。さっき小波に俺の『ドライブ・ドロップ』をホームランにされたのは腹が立ったが、更に点差をつき離させて貰うとするぜ?」

「・・・・・・・・・・・・」

 黙ったまま、悪道の言葉をまるで右から左へと聞き流していて、ただ定位置に座っているだけの星だった。その目はどこか遠くを見ているように雲っていた。

「星くん!! 後ろ!!」

 すると、一瞬。鈍い金属音が聞こえてくると共に、マウンドに立っていた早川が大声あげて星の名前を呼び挙げる。

「――ッ!?」

 早川の声が聞こえてハッと我に返える。

 すると一球目、インコースの真ん中へ投げ込まれたカーブを悪道はバットに当てたが打ち損じしてしまったのだ。ボールはキャッチャー定位置から、約五メートルから七メートルの間の後方へ高々と打ち上がっている。

 だが、反応が遅れてしまったのかボールはもうすぐ落下地点へ着きそうになった。

「チッ!! 間に合わねェ!? クソッ!! 俺が・・・・・・俺が試合に集中していない所為で!!」

「オイオイ、潔く諦めな。テメェなんぞに、そりゃあ間に合わないやしねェよ」

 悪道が意地悪そうに呟く。

 ムカつく言葉だが、その言葉など聞きもせずして、星はキャッチャーマスクを投げ着けてボールを追う。

 『どうしたって間に合わない』

 星自身もそれはわかっていた。

 一歩、一歩ボールへと近づいていく度に自分の弱さ、自分の愚かさ、自分の無力さを痛感していた。

 少しずつ走るスピードは遅くなって行く。

 自分自身の絶望に、星の活力はすっかり底を尽きてしまったのだろう。今にも泣きそうな顔を必死に隠し通している、内心、諦めた顔をしていた。

「勝手に諦めてんじゃねえよ!!! 星ッ!!」

 目の前を全速力で駆け抜けるファーストの小波の姿があった。

「――ッ!? 小波!?」

「チッ!! また、テメェかァ!! 小波球太ッ!! しかもファーストからここまで来ただと!? だが無駄だ!!」

 頭から飛び込むダイビングキャッチで、見事左手にはめてあるファーストミットを伸ばして落球を掴もうとしていた。

 泥濘む土の上、ビシャァっと音を立てて滑って行った。判定はどうだ?

「アウトッ!!」

 球審の高橋が近寄って、手を上げて声を上げた。小波はキャッチャーフライを取ったのだ。

 慌てながら星が駆け寄る。

 はぁ、はぁ・・・・・・と、肩で息をして疲れた表情を見せる小波。

「こ、小波!? 大丈夫か!?」

「へへっ。ファーストからここまでって意外と追いつく・・・・・・モンなんだな。ふぅー、やれやれ。間に合って良かったぜ」

「馬鹿な事を抜かしやがって! 無茶するんじゃあねェよ!!」

 ユニフォームに着いた土を払い落としながら小波は言う。自然と星の視線は俯いていて、目線を合わせようとはしなかった。

「小波、すまねえ・・・・・・。俺がシッカリしてなかった所為でこんな・・・・・・」

「なんだ? 謝るなんていつもの星らしくねえじゃねえか。それにまだ試合は終わってないんだぜ?」

「どうしてだ? お前は、責めねェのか? 俺を・・・・・・」

「はぁ? 責める? 一体、お前に何を責めるんだ? それに野球は一人でやるもんなのかよ」

「・・・・・・」

「一人じゃあ、野球は出来ねえんだ。お前一人で野球やってると思うなよ! 困ったら助け合いだ。その為のチームだろ? しっかり頼むぜ、星! お前には『モテモテライフ』を楽しみたいって目標があるんだろ? ここで挫けちゃあダメだろ?」

「小波・・・・・・ああ、そうだな。その通りだ」

「解れば良いぜ」

 ポンと背中を押し、小波はキャッチしたボールを早川に投げ、定位置まで駆け足で戻っていく。立ち止まったままの星は、空を見上げながら大きな声を出して叫んだ。

「うおおおおおおーーーッ!!」

 ピタッと河川敷グラウンドに居る者の視線を釘付けにし、ピリピリと伝わってくる程、その声の張りには威圧感が漂っていた。

 暫しの沈黙の後、シーンと静まり返ったグラウンドで星は、一息ついて顔を真っ直ぐに向けた。

「へへ、良い面構えじゃあねえか」

 小波が思わず口に出してしまう程、先ほどの曇った顔はそこにはなかった。逆に晴れ晴れとした面構えは、恋恋高校チーム全員に今まで持てなかった安心感を抱かせた。

 ゆっくりと歩いて定位置に戻る。

 投げつけたマスクを再び手に持ち、一歩踏み出して、星はまた大きな声を上げた。

「おっしゃーー!! テメェら!! 気合い入れて行くぞぉ!!」

 その声と共に、恋恋高校のメンバー達も負けない程の声を返した。

 さぁ、ここからが恋恋高校の反撃の開始だ!

 

 星の調子を取り戻し、早川との連携を更に強めて行った。後続の二番、三番をサードゴロとレフトフライに打ち取り二回裏は無失点で切り抜く事が出来た。

 しかし、悪道浩平のドライブ・ドロップの前には全く歯が立たずに試合は進んでいく。唯一打った小波の二打席目は初球のストレートをセンター前に弾きかえすクリーンヒット以外は全て凡打と三振に打ち取られてしまう。

 そして、試合は刻々と進んでいく。

 九回の表、一対五の四点差。極亜久高校との練習試合は最終回を迎えていた。

 最初に打席に立つのは四打順目を迎える三番の海野だ。

 ツーストライク、スリーボールのカウント。六球目のスライダーを海野がライト線を破るツーベースヒットを放った。

「チッ!! 浩平のストレートにキレとノビが減少して来てる・・・・・・。ドライブ・ドロップのスタミナの消費が激しいせいか」

 キャッチャーの犀川が思わず吐く言葉、これは悪道にはほぼスタミナは残っていない証拠だった。コントロールはもちろん、ドライブ・ドロップ、スライダー、シュート等の変化球にも同じことが言えた。

「浩平! 最終回、あと三人だ! それに四点差もある!」

「・・・・・・解ってる! だが、次のヤロォには俺は、手抜きなんかするつもりはねえぞ!」

 悪道が強いトーンで言う。

 海野の次は唯一ホームランとヒットを記録している四番打者の小波がネクストバッターズサークルから腰を上げて、バッターボックスへと向かって来ているのだから・・・・・・。

 そして、小波対悪道、犀川バッテリーの四度目の対決が訪れた。

 悪道は初球。いきなりドライブ・ドロップを投げ込んだ。その変化は今までま以上のキレを凌駕していた。

 小波に負けたくないと言う信念が、悪道浩平自身の限界を突破しようとしているのだ。

 続く二球目、再びドライブ・ドロップを投げ込んだ。頭に向かって投げたボールは間近付近で軌道を変えてインハイギリギリのストライクコースへと突き刺さる。

「ストライクーッ!!」

 小波は思わず生唾を飲み込んだ。

 ここに来て、このボールを投げるとは・・・・・・悪道浩平と言う人物は、中々手強い相手であることを再認識した。

 そして、三球目。

 悪道の右腕からしなるムチのように振り抜かれたボールは、真ん中のややインコースよりに投げ込まれる、またしてもドライブ・ドロップだった。

 着球地点は、アウトロー。

「悪道浩平・・・・・・。お前はすげえよ。ここで衰えたドライブ・ドロップを絶好調の様に鋭い球を放るなんてさ。でも悪いが低めは俺にとっちゃあ絶好球なんだぜ!」

 小波はバットを振りに行った。

 快音を轟かせ、打球は素早くレフト線を破って行く。

「よっしゃ! 海野はこれで生還だ!」

 ベンチから身を乗り出して、星が言う。二塁ランナーの海野は三塁コーチャーの御影の指示でホームへと向かい、恋恋高校は待望の二点目を取り返した。

「小波くん! ナイスバッティングだよ!」

 早川が喜びの声を上げる。

 小波のタイムリーツーベースヒットでスコアは二対五として、点差は三点まで縮めた。

 これで調子を崩してしまった悪道は、五番打者の山吹、六番の赤坂にそれぞれタイムリーヒットを打たれ二点を追加で取り返す。

 四対五。点差は一点まで追い詰めた。

 未だにノーアウト、ランナーは二塁とチャンスの場面だが、七番、八番を三振に打ち取り、九番の早川あおいの打席を迎えるのだが、ここは敬遠で一塁を埋めたところで、一番打者の矢部を迎い入れた。

「タイム!」

 星が矢部が打席に入る前にタイムを告げた。

 何事かと矢部は首を傾げるが、表情はどこか怯えている様に自信なさげだった。

「どうしたでやんすか? 星くん」

「矢部、ここで浩平のヤロォが、ピッチャーの早川をわざわざ敬遠で一塁へ歩かせた理由は馬鹿なお前でももちろん知ってるな?」

「オイラを仕留める為でやんすよね?」

「ああ、あいつはお前を・・・・・・って、お前はヤケに冷静じゃあないか?」

「冷静・・・・・・だったらどれだけ良いことか。本音を言うと強いでやんす。でも、悪道くんとこうして試合をしているのは、オイラの所為で招いた事でやんす。オイラはここで悪道くんを超えなくちゃあならないでやんす!」

「矢部・・・・・・」

「オイラは、弱いでやんす。野球なんて下手くそでやんす。ただのオタクでやんすよ。・・・・・・でも、負けたくないでやんす! 勝ちたいでやんす! オイラ、この恋恋高校のみんなで勝って笑いたいんでやんす! 小波くんが言ってくれた様にオイラは恋恋高校のスピードスターの矢部になりたいんでやんす!!」

 そこには、キラッと輝く一筋の涙があった。

「矢部・・・・・・。弱いのは俺も同じだ。俺も成長してなかった。だからよ、あの浩平のタコヤロォをぶっ飛ばして、前に進もうぜ。強くなろうぜ! 俺たち・・・・・・強くなろうぜ! なぁ、矢部!」

「もちのろんでやんす!!」

 涙をアンダーシャツで拭い、ヘルメットを深く被り、矢部はバッターボックスへと向かって再び歩き出した。

「最終回・・・・・・ツーアウト。ランナー一塁、二塁のチャンスの場面で矢部か。小波にはムカつく結果で終わっちまうが、お前を抑えて清々しい終焉を迎えようじゃあないか! 矢部ェ!」

「悪道くん・・・・・・。オイラは、君から打って恋恋高校の勝利を収めてやるでやんす! いつまでも昔のオイラだと勘違いしないでほしいでやんす! 打ってやるでやんすよ! ドライブ・ドロップを!!」

「・・・・・・」

 両者の睨み合い。その睨み合いは長いようで短かった。

 悪道が振りかぶり百四十キロのストレートをど真ん中に投げ込んだのだ。

「――ッ!?」

「なぁに、驚いてんだ? へっ、無理もねえよな? 所詮矢部の実力は高が知れてるいるんだぜ!」

 二球目、インハイのストレートを、タイミングを見失ってしまい、ボールがミットへと収まった瞬間にスイングをし、空振りしてあっという間にツーストライクへと追い込まれてしまった。

「これで、終わりだ。矢部・・・・・・いや、恋恋高校! お前たちみたいな同好会レベルにこの俺が負けるハズはねえんだ! 行くぞ! 最後のドライブ・ドロップだぁ!!」

 三球目、矢部の顔へと投げ込まれた山なりのボール、悪道の言葉通りドライブ・ドロップだった。だが・・・・・・そのドライブ・ドロップは様子が可笑しかった。

 簡単に言えば、悪道のスタミナの消費が底をついてしまったのだ。変化量は少なく、キレもノビもない棒球だったのだ。

「しまった!! 小波相手に全力を尽くしてしまったのか!? くっ・・・・・・浩平にはもうドライブ・ドロップを投げるまでのスタミナがもう無かった!!」

「――ふ、ふ、ふざけんなよぉ!! テメェら如きに、この俺が・・・・・・この俺の・・・・・・ドライブ・ドロップをこれ以上打たれてたまるかって言うんだよ!!」

 ボールはインローへ、タイミングを合わせてバットを振り抜く矢部。

 打球は巧く、流し打ち、ライト線を綺麗に破る長打となった。

「よっしゃ! これで・・・・・・早川が返ってくれば逆転じゃあねえか! 行けェ!!」

 打球は、フェンスまで到達。

 極亜久高校のライトの小松がここでファンブルをしてしまい、ボールを落としてしまったのだ。

 二塁ランナーの赤坂が生還して、遂に同点まで追い上げる。

 一塁ランナーの早川は、三塁ベースを蹴り上げたところで、矢部は既に二塁ベースを蹴り上げていた。

「は、早過ぎるよ! 矢部くんってば!」

 早川がホームベースを踏み、一点勝ち越ししたところで、ボールはセカンドへ渡り、矢部はホームへと脚を走らせていた。

「ランニング・・・・・・ホームラン・・・・・・だと?」

 悪道は唇を噛んだ。血が吹き出る程、強く。

「チッ!! 舐めやがって・・・・・・退け!! 投貴!!」

「――浩平!?」

 犀川を突き飛ばし、ホームの真上に立つ悪道。

 その瞳は、既に狂気に満ち溢れていた。

「この俺が矢部を刺すッ!! こんな・・・・・・雑魚の集まりの即席チームに! 矢部みたいな底辺のカスなんかに・・・・・・この俺が負けるはずがねェンだよォォォォ!! 菊地ィィィィ!! ボールを早く投げろ!! 早く投げろ!!」

 悪道が吠える。

 慌てるようにセカンドの菊地がホームへと返球をする。すぐそこまで矢部は迫っていた。既に滑り込む体制に入っていた。

「矢部ェ!! テメェをホームベース前でタッチアウトにしてやるぜ!!」

 グローブで捕球をし、地面に向けてグローブを下げる悪道だった。

「これでアウトだぁ!! 矢部ェ!」

「いいや・・・・・・悪道くん。悪いでやんすが、セーフでやんすよ」

「な・・・・・・んだと!?」

 コツッとスパイクに当たった一つの感触。

 パッと視線を向けると、そこにはボールが転がっていたのだった。

「オイラをタッチアウトしたいが為に、焦って落球していたでやんすよ・・・・・・。オイラのランニングホームラン成立でやんす」

「テメェ・・・・・・」

「もう、オイラは昔のようなパシリのスピードスターの矢部なんかじゃあないでやんす! オイラは・・・・・・オイラは恋恋高校のスピードスターの矢部でやんす!」

 矢部のランニングホームランで六対五となつって、気を落とした悪道の乱調でさらに追加点を上げた恋恋高校は九対五で、見事極亜久高校との戦いに勝って、創設初の白星を見事上げたのだった。

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