実況パワフルプロ野球‎⁦‪-Once Again,Chase The Dream You Gave Up-   作:kyon99

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第14話 目良浩輔

 極亜久高校との練習試合を見事勝利で終え初勝利を収めた次の日、恋恋高校の野球グラウンドには数人の人影が見えた。

 今日は日曜日という事もあり、学校に居るのは野球部の顧問である加藤理香と星雄大、矢部明雄、早川あおい、七瀬はるか、山吹と毛利の七人の姿だけだった。

 練習試合があった為、本来なら今日は休みにしようと小波球太は思っていたのだが、星達が練習がしたいと言う意見を汲み取って練習をする事を許した。

 日曜日くらい休めばいい、と加藤は頑なに首を横に振っていたのだが、折れたのか練習を許可して貰った。

 しかし、練習開始と共に加藤は「陽射しを浴びたくないから、練習が終わったら声を掛けて頂戴」と言葉を残したまま保健室へと涼みに行ってしまった。そんな事を他所に、野球部員達は活気に満ち溢れた声を出して正午のグラウンドに響き渡った。

 昨日の試合の後、各自の不得意な部分が改めて実感したのだろう。

 皆が、やる気に満ちた顔つきで練習に励んでいた。

 しかし、元から人数が少ない為、練習は限られているが、そこから最小限の効率の良い練習を行い、十四時を過ぎた頃、ようやくひと段落つく事にした。

「浩平達には勝てたは良いけどよォ。何だかよ……、不思議といまひとつ勝ったって言う気がしねェぜ」

 溜息を一つ零して、星が言う。

「そうでやんすよね……。実際、小波くんが居なかったらオイラ達は完全に負けていた試合だったでやんす」

 マネージャーの七瀬が、氷水で冷やしたタオルを絞り、全員に渡し、それを受け取った矢部は礼を言いながら、ボソッと呟いた。

 矢部の言う通り、昨日の試合、九対五で勝利を収めたものの、小波はホームランを放っていたし、チームの流れを変えるファインプレーも魅せていたからだ。

「こうしちゃいられねェよな……。浩平の野郎は、きっと、必ず、今以上に成長してくるはずだ!! なんせ格下と罵って見下してた俺たちに負けちまったんだからな。アイツの性格上、さらなる成長を遂げて立ちはだかってくるはずだぜ!!」

「それは同感でやんす!! しかも、オイラたちと極亜久高校とは同じブロックでやんすもんね。一回戦で当たらないと言う保証はないでやんす!! いつでも当たっても良い様にオイラ達も今以上に頑張るでやんす!!」

「おっ? なんだなんだ? 矢部ェ!!ㅤ今日はやけにテメェと気が合うじゃねェの!?」

「星くん。何を言ってるでやんすか? オイラ達は共に『モテモテライフ』をエンジョイすると決めた同士でやんすよ!」

「ああ!! そうだったな!!」

「今度、悪道くんと戦う時が来たら!」

「その時は、俺たちでアイツを負かそう!!」

 二人はギュッと拳を握る。

 悔しさを痛感したまま、これからの練習に対して、必死に努力を重ねようと心に決めているのだ。

「……」

「どうかしたの……? あおい」

 すると、マネージャーを務める七瀬はるかが早川あおいに近寄って心配そうな声をかける。

 今日の練習中。始まってから今まで気が沈んで元気の無い様子だった早川事を気になってしまったのだろう。

「あ、うん。練習試合とは言え、チームが勝ったんだから本来は喜ぶべき事なんだろうけど。でも、ボクはまだまだみたいだよ。はるか……なんか気にさせちゃったみたいでゴメンね」

「……何かあったの?」

「ちょっとね……。やっぱりボクってピッチャーとしてまだまだ実力不足なんだなって昨日の試合で改めて痛感したよ。悪道くんって凄く人としては嫌な人だったけど、同じピッチャーとしてはかなり相当な実力の持ち主だって事が解ったんだ。自分だけの『オリジナルの変化球』を投げるなんて並大抵の努力じゃ出来ないもんね」

「そうでやんすよね……。悪道くんは中学時代からカーブが一番の得意球だったでやんす。それを磨きに磨いた結果。『ドライブ・ドロップ』と言う決め球に昇華させたでやんす」

「そう言えばそうだったな。ま、一時期だけって言う短い期間ではあったけど、浩平の野郎、あの時は相当の量の練習を打ち込んでたな」

「そうだよね……。よし、決めたよ!!」

「決めた? 一体、何をだよ?」

「ボクも悪道くんみたいに、ボクの得意球である『シンカー』を今よりもっともっと磨いて誰にも打たれない凄い球にしてみせる!!」

 早川は、右手に握っていたボールを強く握りしめた。ピッチャーとして、自分の決め球を見出したいと言う、成長への高みを目指そうとしている強い目をしていた。

「早川も『オリジナル変化球』を投げる様にするのか・・・・・・。こりゃ、俺たちもウカウカしてられねェな。なァ、矢部!!」

「そうでやんすね!!」

 少し落ち込んでいた四人の雰囲気が柔らいだ。

「ところで、あおい。変化球の名前は決めてあるの?」

「な、名前?」

「悪道さんのように『ドライブ・ドロップ』みたいな、名所」

「……と、特に決めてないかな? それにまだ完成した訳でも無いんだし、少し気が早いって感じしない? いつか納得行く球が完成した時に改めて名前をつけるよ」

「それじゃ、この俺が直々に早川の新しい変化球の名前ってヤツを決めてやるッ!!」

「いや、別にいいよ……」

「良いからお前は黙って聞いとけって!! 早川らしさもちょいとばかり含めてェからな。……だからよォ、こう言う名前で良いんじゃねェか! 『鉄拳制裁暴力――うげっ!」

 ドゴォッ!!

 と、鈍い叩く音が聞こえると。

 ドタン!!

 と、続いて倒れる音が聞こえるのに一秒の間も無かった。

「ひぃぃぃぃぃぃーーーッ!! ほ、星くんが殴られたでやんす!!」

「当たり前でしょ!! 何がボクらしさを含めたいだよ!! 失礼にも程があるよッ!! それが何よ!! 『鉄拳制裁暴力』って!! それじゃまるでボクがただの暴力女みたいに聞こえるじゃないか!!」

 早川の右ストレートが星の頬を直撃し、振り抜かれ、星はベンチから腰を落として、そのままピクピクと痙攣してしまった。

 矢部は血の気を引いた顔で、地面に蹲って気を失っている星を見ながら、早川に聞こえない程度な声量でこう呟いた。

「いや……言えてる事だとは思うでやんす……」

 

 

 

 その頃の小波は、デパート街と呼ばれる繁華街に来ていた。

 日曜日のお昼過ぎの街は、休日を満喫する人でいっぱいだった。

 街並みの中、人混みを避けて這うように歩く、その表情はいつも以上に気怠さを隠しきれていなかった。

 数百メートル歩いた所で、ピタッとその脚は止まった。

 少し顔を上げて見上げると、そこには「ミゾットスポーツ・頑張支店」と大きな看板が聳え立っていた。

 ミゾットスポーツとは、全国規模で展開されているスポーツ用品メーカーであり、品揃えは最早業界一とまで評される程の会社なのだ。

 小波は、中へ入っていく。

 そこの一階はちょうど野球道具がフロア一杯に埋め尽くされているコーナーと成っているが、日曜日の休日なのにも関わらず人は小波と数名のスタッフがいるだけだった。

「いらっしゃいませ!!」

 店員と思われる人物が、自動ドアが開いた所で丁寧に駆け寄って挨拶を交わしてくれた。

 見たところ年齢は…・・・三十代後半辺りだろう。

 それでも若々しく見える。

 真っ赤に染まった赤い髪、薄灰色の大きな瞳が妙に印象的であり、スーツの胸ポケットに掛けてある名札には『明日(あす)』と印刷の文字が表示されていた。

 小波球太は、その『明日』と言う名前を見るなり、どこかで聞き覚えのある様な名前だなと頭を巡らしたが、殆ど野球の事に費やしている為、中々出てこなくどうやら忘れてしまった様だった。

「何かお探しですか?」

「右投げ用の『ピッチャー用のグローブ』を探してるんですけど。良いのありますか?」

「右投げ用のピッチャーグローブですね。かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

 丁寧に深くお辞儀をし、明日という店員がバックヤードへ向かって行ったのを確認し小波球太はゆっくりと店内を見回した。

「流石、業界一と言われるだけある『ミゾットスポーツ』だよな。こんなに野球道具があると、ついつい余計な物まで欲しくなっちまうぜ」

 小波は財布の中身を確認してみるものの、月の小遣いも人並み程度しか貰えず、バイトも出来ない状態の学生の懐事情は虚しさを増すばかりなのでため息だけ零して財布をポケットの中にしまった。

 店内を見渡している内に辿り着いたのは、スパイクのコーナーだった。

 最新モデルからプロ野球選手モデルのタイプまで選り取り見取りだ。

 思わず小波も最新モデルのスパイクに興味を惹かれ手に取る。

 すると。

「いや〜!!ㅤお目が高い〜!! ここの品揃えは、全国有数の品数が種類豊富、選り取り見取り、なお店なんですよ〜。是非とも如何ですか〜? お客様〜?」

「――ッ!?」

 急に聞こえた声。

 のんびりした雰囲気と底抜けに明るい声だった。

 店内には数名のスタッフしかいなかった。そのスタッフ達はこのスパイクのコーナーには誰も居ないと思っていた小波球太は流石に驚く。

 バッと振り返ると、そこには先ほどの同じ店員と同じ赤い髪をしていて、空を写しているような綺麗な青い色の瞳を浮かべていた女の子が立っていた。

 見たところ店員とは思えない程に若く。

 見る所、中学生ぐらいだろうか。

 ニコッと笑みを浮かべて覗かせる八重歯がとても印象深かった。

「えっと……、君は?」

「私は西満涙中学の明日未来(あすみらい)で〜す!! 部活は軟式野球部に所属してるんですよ〜!! なんと、ポジションはサードです〜!!」

 右目の前にピースサインを当て、舌をペロリと出しながら『明日未来』と言う名前の女子中学生が答えた。

 何かと幼稚らしさが抜けきれなていないのが中学生らしい。

 そして、ハイテンションな妙に変わった子だった。

 明日未来。

 ふと、小波の頭の中にピシッと、何かが降ってきた。

 目の前の女子中学生の名前には聞き覚えがあった。

 そう。以前、六道聖に中学の入学祝いを渡した時に……。

「明日未来……? あっ、君か!! 聖の言っていた子って!!」

 小波はようやく思い出したらしい。

「聖? えっと、もしかして『ひじりん(・・・・)』の事かな〜?」

「ひ……、ひじりん?」

 と、明日未来が普段のあの『六道聖』のキャラクター像からは絶対的に想像出来ない『ひじりん』と言うあだ名で読んだ為、小波球太は思わず吹き出し笑いをしてしまう所だった。

「そうなんです〜!! ひじりんと私は無二の親友なんですよ〜!! いや〜まさかひじりんと知り合いの方なんですね〜!! それとも……貴方が小波球太さんだったりしますか〜?」

「そ、そうだけど……。君は俺の名前を知ってるんだね」

「やっぱり!! 小波球太さんなんですね〜!! 部活中に毎日ひじりんが貴方の事を話題に出すんですよ〜」

「へぇ、話題にね」

 一体、聖のヤツ。本人が居ないところで何を言っているのだか。

「例えば『球太は、野球は好きだけど物事に関して興味がなさすぎる』とか『球太は、いつも寝てばかりでだらしがない』だとか、その他諸々なんですけどね〜。小波さんの話題はいつも欠かさず聞かせて貰ってるんですよ〜」

「あははは……そりゃどうも」

 余計な話題ばかりだった。

 まったく、聖のヤツ。後で覚えとけよッ!!

 と、小波はボソッと呟いた。

 頭を掻いて苦笑いを浮かべると目の前にいた明日未来はその場から姿を消していた。

「ねぇねぇ!! 光〜! この人が『ひじりん』が言ってた小波球太さん本人だって〜!」

 と、再び明日未来の声が聞こえた。

 それも遠くの方からだ。

 棚の奥からスッと姿を現すと、もう一人。誰かを連れてきた様子だった。

 お客様の連れ添いの方が待っているであろう、パイプ椅子が置き並ぶ休憩所から明日未来に手を引かれてもう一人の男の子が現れた。

 同じ赤い髪。

 同じ背丈。

 まるで明日未来をそのまま生き写ししたかの様に瓜二つだった。

「——ッ!?」

 まさか、ドッペルゲンガー!?

 いいや、そんな訳が無い。

 ただ違うのは、その男の子の髪の長さが明日未来よひ短い事と、瞳の色が先ほどの店員と同じ『薄灰色』だという事と明日未来にはあった特徴的な八重歯が生えていないと言う違いだった。

「小波さん〜。それでは紹介します〜!! 私の兄の明日光(あすひかり)で〜す!」

「……」

 光と呼ばれた男の子は、黙ったままコクリと会釈し目を背けたまま一向に小波の方を見ようとはしなかった。

 先ほどまで本を読んでいたのだろう。

 腕の間には、分厚い文庫本を持っていた。

 先日、聖が言っていた様に『明日光』とは愛読家の様だ。

「……」

「もう〜!! 光ってば〜!! 名乗んなきゃ小波さんが光の事をなんて呼べば良いか困っちゃうじゃない!!」

「いや、大丈夫! 君が言ってくれたから、二回も言ってくれたから」

 聖が言っていた様に個性が強い、と言うよりも随分不思議な子だ、と思いながら小波が苦笑いしながら言う。

 それにしても明日光。名前とは裏腹に暗いどんよりしたオーラが滲み出てると言うのは、流石に初対面からして大きなお世話なのかもしれない、な。と小波は思った。

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁぁああああああああああーーッ!!!!」

 

 

 すると、二階のフロアへと続く階段から大きな声が聞こえて来た。痛烈な悲鳴と呻き声に似た、まるで断末魔の様な叫び声だった。

「——痛ッ!! 痛ェよ!! 痛ェから耳を引っ張るなって!! なぁ、頼むから離してくれよッ!! 千波!! 俺が悪かったって!!」

「そりゃ当然!! どう考えても悪いのは浩輔くんでしょ!? 皆んなで、修学旅行の水着決めに来てるって言うのに、着替えの途中で試着室の中に堂々と入って来たバカはどこのどいつよ!!」 

「決して見てねェから!! 二つの大きな塊が上下左右にたぷんと揺れてた事以外は見てねェから!! 頼むから許してくれよ!!」

「——ッ!! や、やっぱり見たんじゃないの!! サイテー!! バカ!! 変態ッ!!」

「やれやれ……。浩輔の奴には毎度の事ながら頭を悩ませるな。全く懲りない奴だよ、本当に」

「そうですね。でも、それに付き合う姉さんも姉さんですけど、彰正先輩も先輩ですよ……」

 降りてきてたのは、小波球太の幼馴染であり、現在きらめき高校に通う高柳春海と春海の一つ上の姉である高柳千波。きらめき高校野球部員の目良浩輔と館野彰正の四人だった。

「……春海? おい、春海!」

「き、球太!?」

「あッ!! 球太くんー!!」

 駆け足で寄ってくる春海。

 そして、その後を嬉しそうな表情で千波も駆け足で向かってくる。

「やぁ、珍しいもんだね。球太とこんな所で会うなんて」

「まあな。今日の部活はオフだしな。せっかくの休みだからそろそろグローブでも新しく買い換えようかな、と思って買いに来たんだ。春海達は……海かプールにでも行くつもりなのか?」

「いいや。姉さんと先輩達は来週から沖縄に修学旅行に行くんだよ。姉さんってば妙に張り切っちゃってね。ここの四階にある水着コーナーでかれこれもう二時間程品定めに付き合わされちゃってさ。参ってた所で丁度さっき決め終わった所だったんだよ」

「こらこら、春海ッ!! 球太くんの前でそんな変な事は言わないでよ!! あ、そうだ!! 沖縄に行ったら友達と水着で写真撮る約束してるから球太くんにもメールで送るね!! 勿論、写真付きで!!」

「あ……ありがとうございます」

 再度、苦笑いをする。

 今日の小波はやたら苦笑いをするなと思いながら視線を後ろの二人に目を向けていた。

 今年の三月に行われた春季大会。

 七十年という歴史の中で、初のベスト四に上り詰めたきらめき高校を支える主軸である目良浩輔。

 そして、繊細な采配で勝利へと導いた司令塔の館野彰正に、小波は少なからず興味を示していたのだ。

「春海……。お前の隣に居る癖毛頭の奴って……まさか?」

 館野が小波を認識すると、少し顔色を変えて尋ねようとしてきた時だ。

「おい、彰正……。気付いたか、流石のお前も……」

「あぁ、浩輔」

「さっき会った赤毛の中坊をよく見てみろッ!? 何故だか知らねェけど、いつの間にか二人に増えてるぞッ!? しかも今度は男になってるぞ!!」

「ああ、そうだ。——って、そこか!? いや、違うだろ!!」 

「ちょっと、浩輔くん!? ふざけないでッ!!」

「っと、そうだった。よぉ、お前が小波球太か? あかつき大附属中学で最速『百四十キロ』のストレートを投げたって言うピッチャーっていうのは」

 目良が、一歩前に踏み出して言う。

 茶色の髪、威圧感のある雰囲気に飲み込まれそうになった。不思議とゴクリと生唾を飲み込みそうになる。

「春海から話は聞いてるとは思うが、俺がきらめき高校三年の目良浩輔だ。小波、俺はお前が気になってるんだぜ? 夏の大会では戦える事を期待してる」

「それは奇遇ですね。実は俺も目良さんと館野さんを気にはなっていた所なんですよ……もちろん試合する事になったら負ける気はさらさらありませんけどね」

「へへっ、随分と威勢の良いヤツじゃねェの!! 小波球太……、ますます気に入ったぜ!! 今年の夏、その時が来るのを俺たちは楽しみにしてるぜ。それじゃあな。せいぜい頑張れよな、若造」

 ポンと小波の肩に手を置いて目良は不敵な笑みを浮かべていた。打席に立てば負けないぞと言う強い瞳に、小波も同じ笑みを浮かべて返した。そして館野も続いて声をかける。

「お前達と大会で当たる事を強く祈っているよ。俺も浩輔もお前の事を買ってるんだ。勿論、春海もな。それと……身内を褒めるのは余り好きじゃない方なんだが……実際の所、浩輔は地区希の強打者だぞ」

 そして、次は春海が立っていた。

「春海。お前のチームは随分と頼もしい先輩達に恵まれてんじゃねえか。これは、早くも宣戦布告ってやつか?」

「そうだな。あの人達が居るから俺も足を引っ張らまいと努力を続ける事が出来てるよ。それにあの人達が居るから、俺はあの人達の最後の夏を甲子園へと連れて行きたいと本気で思っている。例え、その道に球太、お前が立ちはだかる事になったとして、俺たちは油断の一つもしない事を約束するよ」

「ああ、上等だ。俺たちも受けて立つぜ!!」

「お前の事だ、心配は無用だよな?」

 ニヤリと二人は笑みを交わしていた。

 すると、春海はピタッと脚を止めた。

「あっ……、そうだ。球太に言おうとした事があったんだ」

「言おうとした事? なんだよ、それは」

「球太に会ったら言おうとしてた事はだな……。球太、この地区の山の宮高校に警戒した方が良いぞ」

「山の宮?」

「ああ……。その山の宮には、お前が過去何度も戦った事があり、嫌と言う程知ってる『関東地方一』の強さを誇る名門の西強中学に居た『太郎丸龍聖』と『名島一誠』のバッテリーがいるぞ」

「何ッ!? アイツらが!?」

「どうやら、この頑張地区には猪狩守と球太だけが甲子園を目指す強大な壁じゃないらしい。球太や猪狩、太郎丸と名島バッテリーも居るなんて、こっちだって嫌でも燃えてくるよ」

「そうか」

 それじゃあ、と別れの言葉を交わし、きらめき高校の四人は店から出て行った。

 そして、暫くし店員が探してくれていたグローブを受け取り、四万円の諭吉札を出して買い物を済ませる。

 明日光と明日未来は、どうやら先ほどの店員が父親だった様で、少し遅れた昼食の弁当を届けに来ていただけだった様だ。

 

 夜はすっかり陽が落ち、満月が頑張市を照らす。

 もう五月に入ろうとしている四月下旬、春の終わりを暗示するかのように暖かい風が吹き付ける。

 ——そして、夏の甲子園予選大会の抽選会を迎えるのであった。

 

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