実況パワフルプロ野球-Once Again,Chase The Dream You Gave Up- 作:kyon99
夜の風が二人の間を横切った。
十月にしては、あまりにも冷たい風が身体、制服を揺らした。
それと同時に柔らかい感触が俺の黒くて癖のある前髪を靡かせる。そして、目の前に立つ早川が俺の眼を真っ直ぐに蒼い色の瞳で見つめていた。
たった今、早川の口から思わず耳を疑うような言葉が、今も身体中にこだますると、ハッと我に返えってみると、顔一体が一気に熱を放射したかの様に真っ赤に染まっていたのだ。
『キミの事がね、好きなんだよ』
たった今、早川が口にした言葉だ。
それは紛れもなく告白だった。
なんの身構えも無く飛び込んで来たその言葉に俺は、今も尚眼を見開いたまま、オマケに口が半開きと言う何とも情けない表情を見せている。
ドキドキ、ドキドキ。
胸の鼓動が一層と高い音をなり響かせ、そこから帯びていた熱が熱く広がっていき、段々と脈打つように鼓動の音が大きく、さらに速く、俺の身体を駆け巡る。
一言で言えば……緊張だ。
こんなにも緊張しているのは生まれて初めてでは無いか、と思うほど自分で言うのもなんだが普段緊張の欠片も見せないいつもの俺は何処に行ってしまったのだろうか……。
今では自分でも驚くほど、その場に立ち尽くしている。
勿論、異性から告白されたと言う経験は、十七年生きて来て今まで無い為、これが普通なのだろうと自分に言い聞かせてみるが、相手が早川となると、これは決して普通じゃ無いのかもしれない。手に汗が滲む。
確かに俺は、早川の事は嫌いじゃない。寧ろ好きな部類に入るだろう。それはただ異性としてでは無く、チームメイトとして好きだと言う事だった。
「…………」
ふと、ここで早川との思い出を振り返って見る。苦難を迎える場面が多かった早川には、どんな時でも笑っていて欲しいと勝手に想いを浮かべていた……と言う紛れも無い事実が真っ先に浮かび上がる。
嗚呼、そうか。もしかすると俺は早川の事が好きなのかもしれないと言う事なのだろう。
不思議だが妙に納得してしまった。
それなら、返事は一つだ。
―――でも、それで良いのか?
今、此処で早川に返事を返してしまえばどれだけ楽だろうか。早川には悪いが、俺はまだやるべき事、成すべき事がある。それを成し遂げた時、俺から改めて早川に伝えなければならないと何故かこの時、ふと思ってしまった。
「球太くん?」
「早川……。ありがとう。お前の気持ちが解って良かった。でも、返事は待っていてくれないか?」
「どうして?」
「俺は、まだお前に似合うべき男じゃない。それに俺はまだやるべき事がある。何より、お前たちを甲子園の舞台に連れて行かなきゃ行けないから」
「…………」
「俺、ずっと思ってたんだ。このチームを甲子園の土を踏ませてやりたいってさ。そう言っても簡単じゃ無いのは解ってる。それでも連れて行きたいんだよ。皆んなに野球やってて良かったって思わせてやりたいんだ……だから、その時が来るまで返事は待ってて欲しいんだ」
今まで誰にも言って来なかった思いを初めて俺は打ち明けた。
この恋恋高校に入学し、矢部くんと出会って、怪我をしてから遠ざかっていた野球を再び始めたその時から、密かに想いを強めてきていたのだ。
あいつらに甲子園の土を踏ませてやりたい。ただそれだけだ。
その想いは、ずっと揺るがないまま此処まで想いを連れてきた。そして、今年の夏の大会で予期せぬ出来事が起きた。そう、早川の女性選手問題だ。それをどうにか乗り越えた時に、再び想いは強く燃えあがっていたのだ。
初めて話す事に、早川はどう言う反応を示すのか少し気になる。呆れるだろうか、それとも笑うだろうか……。
「ふふ、そう言うんだろうって思ってたよ」
鼻で少し笑いながらも、早川のその顔付きは少し呆れた表情にも見て取れた。
「思ってた??」
「うん。だって、キミは何時でも他人優先で自分の事なんてそっちのけにするおバカさんだって事くらいボクはもう知ってるよ! それに、今、キミに思いを伝えたのは……その……よ、予約だから!」
「予約?」
「そう。ボクが最初にキ、キミに好きって伝えたんだから……他の人に告白されても……最初はボクに想いを伝えてよね!」
「……お、おう。分かったよ」
「分かればよろしい!」
ニコッと笑う早川に、俺も思わず吊られて笑った。返事を先延ばしした事に対して不満は無い様で早川の機嫌を損ねる事は無かったから一先ず安心と言った所だろう。
「さてと、帰るか」
「そうだね」
お互いに目が合った。少しの間、俺たちはニコッと笑みを交わす。
そして俺は、このまま早川と一緒に歩き出して早川を家の前まで送り届けた。その帰り道、今まで以上に他愛のない世間話で話が盛り上がってしまい、予定時間より一時間以上もくだらない話を二人で駄弁ってしまっていたのは、勿論、みんなには内緒だ。
それから早く一カ月が経過した。
相変わらず変哲も無い日々を過ごし、季節は十一月を迎える。此処最近で何か起こった事と言えば秋季大会が終わった事位だろう。
俺たちは早川の問題解決の代償として秋季大会は自粛の為、大会には不参加だったが、殆どの試合をメンバー全員で観戦しに行った。
極亜久高校、流星高校、ときめき青春高校を始めとして、今まで戦った事のあるチームはレベルを上げているのが確かに感じられた。
それ以上にやはりレベルの高いきらめき高校やパワフル高校はそれ以上にレベルが上達している……。だが、俺たちも負けてはいない。
そして、夏の頑張地方を制した王者・山の宮高校、その王者に敗北を喫してしまったあかつき大附属が、なんと、この秋季大会の決勝戦で激突したのだ。
夏の決勝大会の再来……太郎丸龍聖と猪狩守の投手戦となったこの試合は、今までに無い程の観客動員、メディア、スカウト達の注目を集める歴史に残る程の試合となった。
新体制となったあかつき大附属、エースは新キャプテンとなった猪狩守、そして相方のキャッチャーは、三年の二宮先輩の跡を継いで一年生にして唯一のスタメンに選ばれた猪狩守の実弟の猪狩進がマスクを被る。
進の相変わらず丁寧ながらも攻めの采配、時折に見せる守りに入る采配を際どいタイミングで切り替えていき山の宮高校打線を完璧に封じ込んだ。左腕・猪狩守のストレートは何時もより光る。この試合を恰も見据えていたような、この試合の為だけにかなり調子を整えてきたように絶好調だった。百四十後半を連発、高校生レベルを遥かに凌ぐノビのあるストレートにキレのあるカーブ、スライダー、フォークの三つの変化球を使い分けて相手打線を翻弄した。
だが、やられたまま終わっていないのが、夏の覇者である山の宮高校だ。猪狩同様、左腕・太郎丸龍聖に相棒の名島一成も息の整った阿吽の呼吸で、あかつき打線を捩じ伏せて行く。
回を跨ぐ事で次第に尻上がりに調子を上げて行く太郎丸は、六回から切り札であるアンユージュアル・H・ストレートを惜しみなく放り投げる。
〇対〇のまま迎えた最終回。猪狩守は此処で見た事も無いストレートを投げ込んだのだ。
左腕から振り抜かれるリリースの一瞬の事だった。それはまるで黄緑色の閃光のようなオーラとでも言うべきか、その不思議なオーラから飛び込んだストレートで三者三振を奪い取ると球場は呆気に取られた。それは試合後のインタビューで明らかになったが、猪狩守の新たな切り札と言うべき、猪狩守しか投げれないオリジナルストレートだった……。
猪狩の急激なストレートに対して動揺した太郎丸は手元が狂ってしまい、あかつき打線から連打を浴びてしまい、三番打者の猪狩進がレフト線を破るサヨナラタイムリーヒットで試合を決めたのだ。
翌日、新聞の一面を飾ったのは猪狩守一人だけがピックアップされたカラー写真がとても印象的だった。
そこには、山の宮高校を制した試合後に語られたインタビューが掲載されており、最終回に放り投げられたストレートに付いてこう述べられていた。
『あのストレートは、去年から念入りに仕上げて来たウイニングショットです。夏の大会、僕自身の弱さを痛感したお陰でこのストレートが生まれました。今後、誰にも負けないように作り上げてきた僕だけのストレート……』
文面から見ても、何処か猪狩らしく、自信に満ち溢れていた。
『では、その決め球の名前は?』とマスコミが問いかける。
そう尋ねられると、猪狩は少し間を置いたのだろう。新聞の記事の内容には黙ったまま名前を考えていたような文章が書いてあった。
『そうだね。取り敢えず『ライジングショット』と呼んでおこうかな』
と、そう良い残して猪狩は周りに軽く会釈をして笑顔で立ち去ったらしい。
ちなみに『ライジングショット』は、太郎丸の『アンユージュアル・H・ストレート』の様にノビの回転を利用して真っ直ぐ突き刺さる軌道は描かず、全身のバネと回転をボールに伝える事により、まるで拳銃の弾丸のような高速横回転をかけて放つ事により、ポップするように浮き上がるストレートを指すと書いてあった。
猪狩が新しく手に入れた決め球、『ライジングショット』と言うストレート……。
あの負けず嫌いな猪狩が相当な努力を費やして完成した結晶と言うべき切り札に対して、甲子園の道は更に険しくなるに違いないと確かに感じた。
全く天才には敵わねえぜ。
正直、恐れ入るほどにな。
それでも俺は負けないさ。
今に見てろよ! 凡人の底力をいつか見せてやる。
なんて思いながら俺は観客席からライバルの勝利を見送り拍手を送っていた。
「球太」
「…………」
「球太! 準備は出来たのか?」
「ん、あ?」
突然、名前を呼ばれ俺は返事を返したつもりだったが変な感じになってしまった。その返事に取れない変な言葉に、少し呆れた表情を浮かべているのだろう。感覚で分かる。
やや少し低めに視線を下げるとその表情がはっきりと分かった。目の前に立つ紫色の髪に紅い大きな瞳がジロリと此方を睨んでいて、オマケにアホ毛が風に吹かれ、それはまるで踊っている様に見えた。
「一体、先程からどうしたのだ? 投球練習をしたいと言ったのはお前の方だぞ? 球太」
ああ、そうだったっけ。
少しぼっと考え事をしていたから吹っ飛んでしまっていた様だ。
そう、俺は今、聖の家に来ている……。とは言ったものの、聖に投球練習をしたいと言い出したのは確かに俺の方だが、それは猪狩が『ライジングショット』と言うオリジナルストレートなんてものをいつの間にかに編み出した事を知った事で、猪狩に触発されたなんて言える訳が無かった。
「いや、なんでもない。投げるぞ」
何も無かった様に装いながら、俺は右腕を振り抜く。
先ずは軽くストレートだった。
しなやかに振り抜いた肘に痛みは無く、聖が心地の良い捕球音を鳴らすとテンションが上がる。
「うむ。中々いい調子じゃないか? 球速は百四十前半ってところと見たが」
「今はそれで充分、ここから次第に球速を上げていくぞ。取り敢えず今日は『三種』を徹底的に投げ込むぞ」
俺はそう言う。因みに『三種』とは変化球の事ではない。実は、俺には三つのストレートが投げれるのだ。猪狩や太郎丸の様に俺も俺だけのウイニングショットを持っているのだ。だが中学時代、中学二年生の全国大会の途中で肘を壊すきっかけになったのが、この球でもある。
去年、投球練習を始めた頃と同時期から聖に対して何度か投げている。今の所、痛みは無いどころかむしろ調子が良い方である為、今はかなりの頻度で放り込んでいる。
来年、俺たちは早くも最後の年を迎える。恋恋高校の投手は早川一人と言う事実。勝ち進むにしては無謀と言うのは、星も何度か俺に嘆いているし、早川もその様な言葉を口にしていたのを聞いている。
つまり、確実に勝利をつかむ為には、俺も本格的にマウンドに立つのが増えるという訳で夏の合宿終了後、こうして聖を交えた投球練習は昔は週一程度が、ほぼ連日続けている。
「さあ、もう一球投げるぞ」
「うむ、来い」
ふぅーと小さな息を吐いた。全身で集中力を高めて行く……。
シーンと耳が遠くなると共に次第にキャッチャーミットだけが見えてきた。
大きく踏み込んで、腕を振り抜く。スバンと音を立てたミットは左側のストライクゾーンをギリギリ入るところでピタリと止まった。左打者ならインコース、インコースが不得意の打者ならほぼ見送るに違い無い、間違いなく絶好球のストライクボールだろう。
「ボール」
「……ん? いや、待て、今のはストライクだろ?」
「いいや、ボールだ。球太」
「ストライクだ」
「ボールだ」
「…………」
今の球で浮かれるなって言いたい訳って事だろうな……。
聖の浮かべている顔から見て一歩も引く気は無さそうだ。
「こうなったら、お前がストライクって認めざる負えないほどの際どいストライクボールを投げてやる!」
「バカか。急にムキになるな、力むとボールに力が入るし荒れ球になる」
聖の鋭いツッコミが飛むと、俺は少し口元が上がってしまう。
ま、ごもっとな意見です。
「それに、球太。そのスパイクはもう駄目みたいだぞ? ほら、つま先に穴が空いている」
「あれ? あ、本当だ。ここ最近、かなりの頻度で投げ込みをしていたからな。まあ当然だろうな」
部活用とは別で聖とのピッチング用で買っていたスパイクだったが……やれやれここは仕方ないな。
「こりゃ、新しいスパイクを買うしかないようだな」
俺は、聖にそう告げた。
暫くしてクールダウンを行い今日の投球練習は終わりを告げる。
それは、まだ空が赤く滲む夕刻の時だった……。
十一月の夕暮れ時になると、夏に訪れたデパート街と呼ばれる繁華街近辺は、あの時と比べてみるとやや賑やかさに欠け、静かさが増す。
自分で言うのもアレなのだが、野球以外の賑わう風景に溶け込んで生活をする自分の姿など正直言って全く想像が付かない。
想像するだけで似合わな過ぎて鳥肌が立つと言うか………もどかしい。
それ位、野球以外に全く興味が無いのは少し問題ではある気もするのだが、今は高校生であり高校球児だ。しのごの言わずに今は野球を謳歌するとしよう。
立ち並ぶビルを歩道を歩きながら狭まる空に窮屈を覚えながら目的地へと脚を進める。冬になると陽が落ちるのは早い。辺りは徐々に暗くなって行き高層ビルやデパートなどの蛍光灯のネオンサインの光がこの夜の街に色を付ける。
「それで? どうして、お前が着いてくるんだ?」
「む、いけない事か?」
見上げていた空から視線を逸らし、平然に横を歩く声の主、聖に目を向けた。途中で辞める羽目になったピッチング練習を終え新しいスパイクが買いに向かおうとした時、何故かは分からないが聖も何事も無い様な素振りを見せ、こうして付いてきたのだ。
着いてくるのはいけないことでは無いが、着いてくるのは何というか、必然的な事だ。
こう見えて聖は学校の通学、下校以外は全く持って外には出ない。出会った頃なんかは家の縁側に座りお手玉を毎日一人でやっているのをよく見かけたりもした。
家柄が家柄だったのだろう、それは今でも変わらずに気軽に外出はしない。
だが俺が居る時だけは例外で、たまにこうして着いてくるのは今日に始まった事ではなくいつものことだった。
そして今、聖は完全に浮いている。
周りや通りすがる視線は釘付けだ。
何故ならば、聖の私服は着物しか持ち合わせていないのだ。
制服に着替えるならまだいい方だが、本人曰く着物の方が落ち着くとの事らしい。
そんな視線を掻い潜り抜ける様に夜の街を歩くとあっという間にミゾットスポーツの店の前まで辿り着いた。
「いらっしゃいませ〜」
自動ドアを潜る。独特の電子音のチャイムが店内に鳴り響いくと、直ぐさま店員が駆けつけて目の前で止まり頭を軽く下げて出迎えてくれた。赤毛の短髪頭に少しひょろっとした体型の背の高い『明日』と書かれた男性がやって来て俺の顔を見るなり笑顔を見せたのも、前に来た時にグローブを購入した時に対応してくれたからだろう。
「今日はどんなご用件でしょうか?」
「ピッチング用のスパイクがダメになってしまったのでスパイクを買いに」
「では、こちらへ」
二、三歩先前を誘導するように歩き、俺たちはその後を着いて行った。グローブ、ミットやバット、ボールなど各カテゴリー毎に分かれている一回の野球フロアには、最新モデルの野球道具一式がずらりと店内を彩っていた。
「品揃えが豊富とは、正に、この事だな」
聖は見慣れないものを見る様に、落ち着かない様子を見せながら後に着いてくる。キャッチャー防具コーナーを見つけるなり脚をピタッと止める……だが、中学生の聖の財布事情では簡単にレジに持って会計が出来るほどの金銭はもちろん、持ち合わせては居らず、頭を横に振って欲を振り切り、少し小さな溜息を零すとトボトボと肩を落として再び歩き始めた。
スパイク売り場に辿り着き、俺はゆっくりと自分に合うスパイクを選び始めるがそんなに時間は掛からなかった。真っ先にコレと決めた黒色の最新モデルのスパイクに決めレジへと持って行こうとした時だった。レジの斜め前に展示されているバットコーナーに何人かのグループが立っているのが見えた。それは、見るからに女子生徒だった。
制服からして、二年前の恋恋高校と同様の女子高の聖ジャスミン高校だった。
「なんだべ? オラ達に何かようだべか?」
「――ッ!?」
急に後ろから聞こえる声に驚き顔を向ける。
顔を見た瞬間、俺は更に驚き声を失った。
時代錯誤も良いところな瓶底眼鏡にブラウン色の長い髪に若干の違和感を感じるが、確かに見覚えのある顔立ちからして、その声の主はまさかの矢部くんだ……が、矢部くんには女装癖でもあるのだろうか? 長髪のカツラを被り、口元にはやや薄紅色の口紅を塗ったように紅く艶やかだった。
「矢部くん。君は、こんな所で一体何をしてるのさ」
「矢部? オラは矢部田亜希子だべ」
「え?」
「アンタこそ一体どちら様だべ? まさか……オラの事を付け回すストーカーだべか?」
「いや・・・・・・それはどう考えても無いと思うよ」
矢部田亜希子と名乗る矢部くんに瓜二つと言っても過言では無い人物に出会った。
『矢部明雄』に『矢部田亜希子』顔も名前も似てるのは紛らわしい……いや、待てよ? この間、部活帰りにファミレスに寄った時に星がトイレに行った時、何か言っていたな。
『女子トイレから矢部に似た女が出てきたんだよ!』
そうか、星が見たのはこの矢部田さんだったのか。
本来、聖ジャスミン高校は恋恋高校からそう遠くは無い所に在るし、あの新しく出来たファミレスも勿論、難なく立ち寄れる訳だ。
もしかしたらあの時、この矢部田さんもたまたま立ち寄っていたのかもしれしれないな。
おっと、余計な事を考えていた。
先程から目の前に居る矢部田さんから熱視線を浴びせられている、このままだと本気で俺の事をストーカーと勘違いし兼ねないな。
「で? 一体、どちら様だべ?」
「俺は、恋恋高校の小波球太だ」
「小波球太……恋恋高校……」
「あ、ちょっと!」
ボソボソと復唱すると、矢部田さんはバットコーナーに居る友達の元へと駆け出して行ってしまった。
「あの矢部田と言う女性は、一体なんだったのだ? 球太」
「いや、俺もよく分からん」
「ん? 球太。矢部田と連れが此方に来るぞ」
矢部田さんを筆頭に、バットコーナーから此方へと歩み寄って来た。一人はピンク色の髪色をした身長が小さな女性、褐色肌で灰色の髪色をした身長が高い女性、そして以下にも優等生ですとでも言わんばかり主張の激しい縁眼鏡を掛けている青い髪の三人が向かって来た。