少し時間が経つと結構修正入れていたりします。
原作を全巻読まれている方には、色んな意味で涙が湧いてくる回です。
グンゾウ達は、ダムローの西にある
全滅の危機を乗り越えた経験と、ギルドにおける2週間の
「うおおおおおおおおおぉぉぉおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!」
この声はリョータではない。ヨシノの声だ。戦士特有の
動きが止まった敵を戦士達が逃す訳が無い。
リョータが
カズヒコ、ミッツもそれぞれ1匹ずつを迷い無く斬り伏せる。ミッツも踏み込みが深くなり、少しは戦士らしい自覚が身についてきたように見えた。
クザクの目の前にいたゴブリンは素早いタイプのゴブリンで、クザクの
――
クザクは資金を主に装備へ
――クザクの体格じゃ、アキみたいにゴブリン装備は入らないしな。
不運なのはクザクを突破したゴブリンだ。
「ジール・メア・グラブ・フェル・カノン」
ノッコの
「キシシ、ジェス、キシシシシ・イーン・サルク、キシシ・フラム・ダルト、フシシシシシ」
ハイドは黄色い宝石が付いた杖を使ってエレメンタル文字を空中に描いている。2週間を空けて現れたハイドは杖を3本も持っていた。今回の修練で身に付けた魔法の系統にそれぞれ合った杖らしい。ハイドはいちいち使う魔法毎に杖を持ち替えている。
いやらしく笑うハイドの詠唱が終わると
中空からゴブリン目がけて
ハイドのお気に入りは
ハイドの
――いい
グンゾウが視界を広くすると、アキが目に入る。
アキの目の前にいるゴブリンはふらふらだった。正確にはアキにふらふらにされてしまっていた。アキの
最終的にアキが習得してきたのは
真剣にゴブリンの動きを観察して、動き出しを見て全身でぶつかっていくアキの姿がかわいらしくもあった。
――あの技、ちょっと面白いな。
前衛が手当されていない残った2匹のゴブリンの内、奥にいた1匹は矢が心臓付近の胸に2本刺さって倒れた。シムラが
手前のゴブリンには、
――終わったな。
全てのゴブリンへ手当てが完了し、グンゾウは安心していた。
「グ、グンゾウさん。あれっ!」
そこにタイチの声が届く。「おやっ?」と思い、目を
――9匹もいたのか。森の中は視界が悪いから
ハイドとノッコはすぐに
「キシシシ、いいのか? グンゾウ」
「ああ、俺にも仕事させてくれよ」
そう言うと、グンゾウは
「光よ、ルミアリスの加護のもとに……
この魔法は護身法と
グンゾウの手元から放たれたまばゆい光が近付いてきたゴブリンの体を捉えた。
「ギャギャギャギャギャ……」
――この魔法は、ダメージが小さい割に結構苦しいんだよね。何回も喰らったからわかるよ。
「
「やっ!」
グンゾウが
「あ」
グンゾウが
「あ、ちょっと覚えた
「全然、いいよ。でも、声はかけてね。危うくチョコごと叩いちゃうところだったよ」
「気をつけまーす」
チョコはぺこっと頭を下げると、ダガーに付いた血を一振りで払い、
その頃には、アキもヨシノもそれぞれの相手を地に伏せていた。
グンゾウ達は、ほぼ
――楽勝だな、これ。
「おー、よく見える。でも、建物の影はやっぱり見えないな。いっぱいいるなー、ゴブリン達」
グンゾウは監視塔の屋上にいた。木製の三脚を立てたブリちゃんの
「あたしも見たいよー。グンちん替わってよー」
ヨシノがグンゾウの傍で望遠鏡を覗きたくて、ぴょんぴょんと
――子どもみたい。子どもは鎖帷子着ないけど。
塔にはグンゾウ、ヨシノ、ハイドだけ残り、他の仲間は塔に近付くゴブリンを狩るため
「ちょっと待ってね。先に今日、確認する点だけ全部見させてね」
グンゾウはダムローの大まかな地図を手帳に書き込むと、気になる事実と感じた感覚を
「ぼろぼろが旧市街で、ある程度
「早くー、早くー」
ヨシノのぴょんぴょんが速くなり、落ち着きがない。そもそもゴブリン狩りではなくグンゾウの護衛についているのも退屈なのかもしれない。
――まあ、今日はここからどんな感じで見えるかがわかっただけでいいか。何回も通わないいけないしな。やっぱりせめて旧市街の地図が欲しい。しかも直近で詳細なやつが最高だな。
「ほい。いいよ。ヨシノ」
「わーい!」
グンゾウは望遠鏡を覗く位置をヨシノに
「ほんとだ。ゴブちんいっぱいいるー。これ、お金払わなくてもずっと見れるのがいいよねー」
「それ、どういうこと?」
ヨシノはグンゾウと顔を見合わせてから、不思議そうな顔をした。
「ん? あれ? あたし、なんか変なこと言ったよね? 望遠鏡ってお金払って見る感覚があったー」
「ははは。なんでだろうね」
「キシシシシ、つ、次は僕が観る」
ハイドも望遠鏡を覗きたいらしく、ヨシノの後ろに列を作って並んでいる。
――みんな子どもだな。
ガサガサと音がして、チョコが塔の下の茂みから顔を出す。
「いたよ。4匹。ダムローの一団じゃない。野良だと思う。ヨシノどうする?」
「行ってもいい? グンちん」
ヨシノが瞳をきらきらさせながら、グンゾウの顔を見る。
――4匹なら往復3分だな。こんな顔されたら断れないよ。
「はいはい。いってらっしゃい。すぐ戻ってきてね」
ヨシノはグンゾウの返事を聞くや否や、望遠鏡をハイドに譲ると、槍を持って出掛けてしまった。望遠鏡を譲られたハイドはダムローを観察し始めている。
「チョコー。終わったらみんなを戻して。今日の監視は終わりにする」
グンゾウが話しかけると、チョコはぺこっと頭を下げると、茂みの中に消えていった。
「キシシシ、戦士は
「まあね。そういう面もないと困るからね」
ハイドは集中してダムローの様子を眺めている。グンゾウは塔の壁にもたれて座った。手帳の内容をまとめながら、オルタナに帰ったら何を準備すれば良いか考えていた。
「シシシ、グンゾウ、これ見てみろ」
ハイドが望遠鏡を覗きながら、声だけでグンゾウを呼ぶ。
「ハイドー、俺はお前の親じゃないんだから、声だけで呼びつけるなよ」
グンゾウが振り返っても、ハイドは望遠鏡から目を離さない。
「見た方がいいぞ。フシシ」
――そう言われると気になる。
グンゾウが重い腰を上げてハイドに近付くと、ハイドは望遠鏡を手で押さえながら「覗け」と
「あいつは……!」
グンゾウが顔を上げて、ハイドを見るとハイドは「シシシ」と笑った。
グンゾウは
「しかし……、新しい武器を手に入れてんな……」
グンゾウは頭を抱えたくなる事実を見つけてしまった。
「それにしても……でかい。ハイドも見た?」
「シシシ。見た。でかいな」
ハイドは楽しそうにコクンコクンと頭を縦に振った。
ホブゴブリンはゴブリンに比べ知能が低いため、ゴブリンに捕まると
――ま、ざっくり言えばクザクと同じか……。
そう考えるとグンゾウは少し前向きになれた。
「おう! 帰ってきたぜ、オッサン」
リョータが帰ってきた。塔の下から急に声をかけられて、グンゾウとハイドはびくっとした。
「なんだよ。随分、
――こいつ、いま「俺様」って言おうとしたな。
「リョータ、あたしのゴブちんをまた取ったでしょー。女の子の楽しみを奪うってどうなの?」
後ろからヨシノやその他の仲間も帰ってきた。ヨシノはお楽しみを奪われたようで
「ヨシノの手を少しでも汚させたくなかっただけだって」
リョータはタジタジしながら答える。
グンゾウは立ち上げると、塔の下にいる仲間に向けて声をかけた。
「あー、ちょっとみんなに見て欲しいものがあるんだけど。ハイドがいいもの見つけたよ」
今日は、帰り道でも3匹のゴブリンの群れに遭遇し、計16体を倒した。1人2シルバー程の稼ぎで、良くも悪くも無いといった感じだった。16時の鐘の前にオルタナに戻り、危険な場面が全くなかったことを考えれば、良い日だったのかもしれない。
「じゃあ、今日はここで解散しようっか」
北区の市場でカズヒコが声をかけて、解散となった。リョータはニヤニヤしながらカズヒコを連れだって天空横町の方へ向かっていった。ハイドは「杖を探す」と言って市場に消えていった。「まだ買うのかよ」とグンゾウは思った。
女子達は今日はマライカというお店で女子会のようだ。マライカは女性客が大半で、女性義勇兵の間では有名なお店らしい。
シムラ、ミッツ、タイチ、クザクはそれぞれ生活用品の買い物や洗濯がたまっている等で自由に散っていった。確かにシムラは洗濯を全くしていない。宿舎の部屋に洗濯物が山積みになっていたので、今朝リョータに「汚ねぇ」と怒鳴られていた。
リョータはがさつな性格だが、洗濯や料理、装備の修理等を器用にこなす上に、結構綺麗好きた。この2週間の間で、買ってきた木材で宿舎のトイレを改修して、座式の便所に替えていた。流石のグンゾウもこの件に関してはリョータに感謝した。
グンゾウは1人になって考えを整理したかったので、花園通りにあるシェリーの酒場に行った。少し早めの時間であるため混んではいなかったが、既に多くの義勇兵で盛り上がっていた。
グンゾウはカウンターの一番
――目的、目的を明確にしないと。ダムローを監視するにしても、俺等の最終目的はダムロー旧市街から新市街のゴブリンを撤退させることだ。そうすると、旧市街に来ている新市街の司令官を倒す? 司令官って誰だよ。じゃあ、全滅させる? あの数じゃ現実的じゃないな。上手くやっても半年はかかってしまう。あいつ等はゴブ算的に増えていくし。新市街で生み出されたゴブリンを旧市街に送り込めないように、旧市街のゴブリンが生活し
グンゾウの前にビールと塩茹でしたペビーの小腸が出された。小腸の歯ごたえを味わいつつビールを口に含んだ。
――美味い。
美味しいビールとおつまみによってグンゾウのやる気が高まった。
――やっぱり士気を上げたり、下げたりするのは食料だよな。あれだけのゴブリンを生産能力のない旧市街で活動させるためには、新市街から
「やっぱり、詳細な地図が必要だな。こりゃ、必須だわ」
グンゾウは思わず独りなのに大声で
「よー、よー、元気ー、また会ったじゃん。何か独りで大声出ちゃってたみたいだけど、悩みごとー? ずーちー? ずーちーって黄色くて美味しいやつー?」
グンゾウが顔を上げると、話しかけてきたのは陶製のジョッキを手に持ったキッカワだった。
「お。キッカワか。俺、独り言を言ってた?」
「言ってた、言ってたー。聞いてた、聞いてたー。どうしたのー? えーっと……」
「名前はグンゾウね」
「ああ、ゴメン、ゴメーンね。知り合いが多すぎて、名前覚えられなくてさー。ほら、グンゾウって名前固すぎない? そんなことない? 覚えるのに関係ない的な? で、グンゾっちはどうしたのかなー?」
――相変わらず落ち着きが無い。
「あー、前に話したけど、ダムロー旧市街のゴブリンを追い払うことを考えているんだけど、いくつか足りないものがあって、現在のダムローの詳細な地図が欲しいなって思ってたんだよ。旧市街のだけでもいいんだよね」
グンゾウがそう言うと、キッカワはいつもよりも目を細めて考えこむ。そして、急に目を見開くと、
「ひらめー、ひらめー、ひらめついたよー。だったらさー、ハルっち達に聞けばいいんじゃなーい? ハルっち達は最近までダムローに通い詰めちゃってた訳だから、内部のじょーじにも、くわしーんじゃない?」
――確かに、ゴブリンスレイヤーならダムロー旧市街の事情にも詳しいかもな。
「
「まーまー、あんまり細かいことは気にしないー、気になるけど気にしないー。じゃあ、ハルっち達を紹介するよー。さっきランタを見かけたから、ここに来てると思うしねー」
「助かるよ、キッカワ」
グンゾウはキッカワに礼を言うと、ペビーの小腸を全て口の中に詰め込み、ビールをぐいっと
ゴブリンスレイヤーはいつも定位置である1階隅っこの薄暗い卓に
「よー、よーう。元気してるー?」
とゴブリンスレイヤー達にハイタッチを誘いながら、気楽にキッカワが声をかけると、天然パーマの男の子が慣れた仕草で「いえーい」とハイタッチで応じる。お下げ髪の女の子は「あー、キッカワやんなー」と何だか変なイントネーションでゆっくりしゃべっていた。
キッカワはキョロキョロしながら、ゴブリンスレイヤー達に
「あれー? ハルっちは-? 今日は紹介したい人がいるのにー。すーるー、すーるー的な? スルーみたい? いまいちわかりにくい? るーすー的な?」
「ああん? あのバァカは財布を忘れたとかで、宿舎に取りに行ったよ。何だったら、その紹介ってのは俺様が、あ、この最強暗黒騎士の俺様が受けてもいいぜ。おい、キッカワ、当然紹介ってのは目もくらむようなバッキンバッキンのボインボインのおねーちゃんだろうな? その後ろに連れてる
――出た、俺様2号。
「いやー、なんて言うか、ランタ。そのおっさん的な? この愛すべき後輩の新入り義勇兵グンゾウっちが紹介したい人なんだよねー」
キッカワがヘラヘラしながら、グンゾウのことを手で示して紹介した。
――
「どうも……」
グンゾウはランタと呼ばれた少年が作り出した悪い雰囲気に飲まれ、ぺこりと頭を下げただけの
「ほら、バカランタの
お下げ髪の女の子が
「バッカ、バッカ、俺様の所為じゃねーよ。辛気臭いものを辛気臭いと言って何が
「ユメ、頭にお花咲いてるかなぁ? きれいやんなぁ」
ユメと呼ばれた少女は頭に花が咲いていると言われて何故かニコニコと喜んでいるように見えた。
「あの、ユメ。今のは褒め言葉ではない……気がする」
魔乳さんが説明をすると、ユメはきょとんとした顔をした。
「え? そうなん? ユメ、褒められたと思ってたわー」
「バッカ、シホル! 余計なこと教えんじゃねーよ。その無駄にデカイ
ランタがとんでもない
「……汚物。早くこの世から掃除されちゃえばいいのに」
「てめぇ、このっ、表現が
――なんだ、この
ゴブリンスレイヤーの騒がしさにグンゾウの意識が遠のき始めた頃、体の大きな男の子が口を開いた。
「あ、あの、みんな。なんでグンゾウさんをハルヒロくんに紹介する必要があるのか、聞こうよ」
そうやく場が静まり、話せる状況になった。「俺が……」と言って、キッカワを制するとグンゾウは話し始めた。ダムロー旧市街の状況、新市街のゴブリンを追い払う戦略を練るために、直近の詳細な地図が必要なこと、直近でダムロー旧市街を探索していたゴブリンスレイヤーに情報を教えて欲しいことを説明した。
「ダムロー旧市街の状況については知ってるがな。そうか、そうか、それはご苦労なこって。地図はある。俺様が作成したスーパーでスペシャルなやつがな。で、その地図とやらを俺等がおっさんに渡すと、どんなメリットがあるんだ?
「あれは、マナトくんが書いた地図でしょ」
「そうやんなぁ」
ユメがシホルに同意して
「謝礼はしたいが、先輩義勇兵を喜ばせられるような
グンゾウは頭を下げた。それを見て、ランタは
「だーめだ、駄目だ、駄目だ。話になんねぇ。そんなんで
――駄目だ。正論かもしれないけど、
「そうか。残念だけど、仕方ない。時間を取らせてすまなかった」
グンゾウは再び頭を下げると、
グンゾウの後ろで「見せてあげるくらいええやん、ケチランタ」「うっせぇ、地図はバカパルピロが持ってるから、元々ここにはねーんだよ」という声が聞こえてきた。
――ハルヒロってのはあの
グンゾウはシェリーの酒場にいると、気分の悪さが
お店に入ってから少し時間は
「あ、あの……」
グンゾウが後ろを振り返ると、ぬうっと大きい人影が目の前にあった。ゴブリンスレイヤーの一番大きな男の子がグンゾウの後ろに立っていた。グンゾウは少し驚く。
「おわっと、えっと、あの、ゴブリンスレイヤーの?」
「さっきはランタくんが失礼な感じで……すいません」
男の子はこれまた大きな頭を下げた。
「い、いや、頭を上げて。君が謝ることじゃないし、俺が無理なお願いをしたので」
男の子は頭を上げて照れたように笑うと、「あの、これ……」と言って手に握った紙をグンゾウに差し出した。グンゾウは紙を受け取る。受け取った紙を広げていくと、大きな一枚の地図になった。
「これは……、ダムロー旧市街の地図? すごい書き込みだ」
「そ、そうです。それはマナトくんが、あっ、マナトくんて言うのは僕らの
――神官はあの美人じゃないのか? 良くわからない部分もあるけど、
「最近はサイリン鉱山しか行かないし、ハルヒロくんが原紙を持ってるから、それは差し上げます。マナトくんも色んな人の役に立った方が嬉しいと思う……から」
グンゾウは一気にこの
「本当に? すごく嬉しい。ありがとう。えーっと名前は?」
「あ、そうだった。僕はモグゾーです」
グンゾウはモグゾーの大きくて厚い手を取ると、頭を下げた。モグゾーの手は温かくて、そしてずっしりと重かった。
「本当にありがとう。モグゾー君。このお礼はいつか必ず」
「えへへ」
グンゾウのお礼に対して、モグゾーは最高に優しそうな笑顔で応えてくれた。
――良かった。
こうして、グンゾウは
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