先週、日間ランキングに載ったらしく、UA&お気に入りが急伸し、大興奮の西です。後半の燃料になります。ご愛読いただいている方々には感謝しかありません。
――危なかった。動きの素早い敵との戦いは不測の事故が起きやすいから怖い。リョータやヨシノが殺られなくて良かった。
「よし。
グンゾウが声をかけると、リョータが反対してくる。
「おいっ! オッサン! お前には血も涙もないのか?! こいつらの死体をこのままにするつもりなのか?」
リョータは目にうっすらと涙を浮かべ、倒れた
「あ、いや、じゃあ、端っこに寄せとく? 俺等も先を急がないといけないし」
グンゾウが妥協案を出すと、次はヨシノから反対意見が出てきた。
「先を急ぐ? あたし、グンちんがそんな冷たい人だと思わなかったよ。彼等は最高の友達だったんじゃないの?」
ヨシノは潤んだ、そして綺麗な目でグンゾウを睨み付ける。両手には強く槍を握り締めていた。グンゾウは、変なことを言おうものなら突き刺されそうだと感じた。
「さ、最高の友達?! ま、まあ、そ、そうだったかも知れないけど、ほら、何て言うか、その、シムラ、ちょっと助けて」
グンゾウは助けを求めてシムラの方向を見る。シムラは通路の端に座り込んでいた。目頭を押さえながら、肩を震わせ、下を向いている。
――泣いてる?!
「あああ、アキぃ?」
グンゾウはアキの方に視線を送る。アキは
――駄目だ。ハイドだ。こういう時は
「ハ、ハイドぉ?」
グンゾウが後ろにいるはずのハイドを振り返る。そして、ぎょっとした。
あのハイドが顔をぐしゃぐしゃに崩して、声もあげずに泣いていた。涙と一緒に鼻水が大量に
「ひぇっぐ、ギジジ。ひぇっぐ、ギジジ」
ハイドは一生懸命泣きじゃくりを我慢していたようだ。
リョータ
――俺が間違ってるのかなぁ?
「こっちは終わったよ。リョータ
カズヒコが向こうの通路から顔を出して、前進を促した。カズヒコの後ろからはチョコが
――なんか、チョコはどんどん可愛いくなってきているな。あの格好は
「お前もかカズヒコ。この冷血女たらしめ!」
リョータが両手を上げて、興奮しいる。
カズヒコは狐につままれたような顔をしてから、一言「え?」と言った。
グンゾウはカズヒコの
「なんだか、リョータ小隊は極度の犬好きが多いらしくて、コボルドを埋葬しないとみんな前に進めないらしい」
「それは……時間がかかりそうですね」
カズヒコは言いたかったであろう言葉を飲み込んで、色んな想いを含んだ微妙な表情をグンゾウに向けた。
それに理解を示すため、グンゾウはカズヒコの目をしっかり見て、黙ったまま深く深く頷いた。
「ちょっと、グンちん、ちゃんとパトラッシュにお祈りをしてよ。神官のお仕事でしょー」
ヨシノが腰に両手を当てて、怒ったように呼んでいる。
「はいっ! ありがとうございます。ただいま、お
――何だかカレン師の
グンゾウはヨシノに指示され、死んだコボルド達への祈りに
グンゾウ達はサイリン鉱山と呼ばれる坑道を進んでいた。
サイリン鉱山はダムローよりさらに北西へたっぷり2時間歩いた所にある、十層にも及ぶ広大な鉱山で、かつてはアラバキア王国の管理化にあったが、人間族が大敗した
このコボルドという
また、犬らしく厳格な階級社会を築いている。愛らしい見た目かと言えば、人間とは敵対関係にあるため、出会えば
「ゴブリンよりは全然可愛い」
これがチョコの評価だった。グンゾウもそれを聞いて深く同意した。
鉱山内は
何故、ダムロー旧市街の奪還を目指していたグンゾウ達がサイリン鉱山にいるか。
理由がある。
ダムロー旧市街攻略の方針が決まった後、課題をひとつずつ解決していこうということになった。
ひとつめの課題である橋の破壊に関して、毎晩、全員で意見を出し合った。
排除した案として、ハイドの
次に出た案は、
結果として、火薬を使った爆発物を手に入れようということになった。
主にシェリーの酒場と北区の市場で集めた情報によると、オルタナの遠く北方にある黒金連山には、ドワーフと呼ばれる人間族に比較的友好な種族がいるという。グンゾウ達はこのドワーフに目を付けた。
ドワーフ達は
グンゾウ達はオルタナ北区の市場で、定期的にドワーフの商人と交流があるという商店を見つけ、接触を持たせてもらった。
グンゾウ達が紹介してもらったのはルドゥルフと言うドワーフの商人だった。
しかし、橋を壊しゴブリンを
破壊を考えているダムロー旧市街の橋について、大きさや材質、形状等を説明すると、必要な火薬の量や設置する場所まで詳しく説明してくれた。最小の火薬で最も効率的に橋を壊すためには、橋の中央部で最も重量が架かっている
ただし、その後にルドゥルフから出された条件はかなり厳しかった。
必要な量の爆発力が高い火薬は手に入れることはできるが、ドワーフの王国でも火薬の技術は発展途上で、生産力に余裕があるものではないとのこと。また、採掘用の火薬を分けると、採掘の進捗に影響が出るため、結果として生産の下流にある鉄の
普通に生活していたら
これも地道な情報収集の結果、サイリン鉱山のコボルド達は製造した
「鉄の塊400キロぉ? そら、無理だろ?」
リョータが遠慮なく発言する。
――ですよねー。
「まあ、無理かもしれないけど、サイリン鉱山は行ってみたかった場所だし。第5層まで行けば
カズヒコがさわやかな笑顔を見せる。
「コボちゃんってー、顔が犬みたいなんでしょー? あたし、犬だーい好きなんだー。見てみたーい。行こー」
ヨシノが手を祈るような形で胸の前で組み、目を嬉しそうに輝かせた。リョータは初耳だったようだ。
「う、まじかよっ! 俺も犬は……見たい……かな」
――ま、あなた方はそれらを倒すんですけんどね。
流石に400キログラムを1度に運ぶのは無理と判断し、100キログラムの運搬を4回繰り返す計画とした。グリムガルに来てから、グンゾウ達の中で「面倒くさい」という言葉のハードルは恐ろしく上がっていた。
暗い坑内の至る所で、
時折
サイリン鉱山第2層では、第1層との連絡井戸から、しばらく狭く入り組んだ通路を過ぎると、
サイリン鉱山では各層間の上下の移動に関して、義勇兵が「井戸」と呼んでいる
グンゾウは手を伸ばし、近くの岩壁に生えていた
――これは植物っぽいけど、実際は
岩壁に沿って辛うじて残った狭い通路を12人が縦に並んで通っていく。
心癒やされる幻想的な風景に反して、ここは地獄の2丁目でもある。
地獄の番人はコボルドだ。2層から先は
通路の脇には横穴があり、グンゾウが背伸びして覗くと中で数匹の
「うわー、かーわいー。もふもふしてるー」
ヨシノが
「どれどれ、見せてみろよ。本当だ。こいつらでかいなー。良く食べるぞー」
リョータも横穴を覗き込んで、楽しい玩具を見つけた時の少年のように興奮している。
――えーっと、人肉も食べるかもしれませんよ?
「俺も、俺も、俺も」
シムラは背が足りずにあまり見えないため、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。
ハイドはもっと背が足りず、
「か、かわいい……かなぁ?」
ノッコが呟くと、チョコは
「私は……どちらかと言えばかわいい派」
アキが首を縦に何度も振って、
――確かにアキ姫は可愛い。
「興奮して、寝ているコボルドを起こさないようにね。これだけ
カズヒコが声を落として注意した。
2層に降りてから、採掘の音なのか、引っ切りなしに金属のぶつかり合う音が坑道内に響いている。それにしてもリョータ小隊はコボルドに興奮しすぎていた。クザクとミッツは初めての戦場に緊張し、会話に参加すらしてこない。
「確かここには、義勇兵団事務所の掲示板に手配書の出てる
グンゾウが聞くと、タイチが袋から手帳を取り出して答えた。
「それは、デッドスポットですね。手配書によると『極めて凶悪なコボルド離れしたコボルド。数々の義勇兵をその手にかけている。呼び名は、
「ほおぉ、すごいね。ありがとうタイチ」
最近、タイチはカズヒコ
「おーっきいわんこかー。楽しみー。あたし大きい犬が好きなんだよねー」
サイリン鉱山に来てから、ヨシノは興奮しっぱなしだ。
「デッドスポットは手練れも含めて、何人もの義勇兵が犠牲になっているらしい。悩まないようにルール
カズヒコが爽やかに笑う。各自「はーい」などと良い返事をした。
返事をした直後、通路の先から
「あ、コボルドだ……」
隊列の後方にいたチョコが緊張感のない感じで敵の襲来を告げた。
「あーあ、本当にここは
グンゾウは思わず独り言が口から漏れてしまった。
「グンちん、それ、いいねー! ほらー、パトラッシュー、怖がらなくてもいいんだよー、仲良くなろうよー」
ヨシノは槍を振り回しながら、満面の笑顔でコボルド達に向かっていった。
――あの笑顔、コボルド達も怖いだろうな……。
「ほーら、よし、怖がるな。来い、来い、来い、来い。お座り! お座りだっつーの!」
リョータが一生懸命、コボルドを手懐けようとしている。
「弓じゃあかんねん、弓じゃ……」
グンゾウの後ろでシムラが意味不明なことを
真剣に戦うカズヒコ小隊と真剣にペットにしようとしているリョータ小隊を眺め、グンゾウは深い溜息を
――こりゃあ、今回の
サイリン鉱山へのお散歩編に突入しました。
次回も引き続きサイリン鉱山です。
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