廃と群像のグリムガル ~不惑の幻想~   作:西吉三

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とか、ぐずぐずしている間にお気に入りを失う! (σ´Д`)σロスト!!


4.運命の別れ道

 人は、未来を予知することができない。

 それなのに、常に自分の未来を選択し続けなければいけない運命にある。

 時に、どうしてそのような選択をしたのか、激しい後悔を抱えながら、それでも前に進まなければならない。

 その選択が未来を大きく変えるものだとしても、それに気付くことはできない。

 それは“運命の別れ道”と呼ばれる。それは気付かないくらい優しく、そして残酷に運命を(わか)つ。

 今日も、その選択をする日だと気付かない者達がいた。

 

 

 二日酔いの重たい頭と体を抱えて、グンゾウとリョータは昼過ぎに宿舎に戻った。

 途中でリョータが光の護法(プロテクション)の存在に気が付かなければ、2人は宿舎まで戻れなかったかもしれない。光の護法(プロテクション)は酷い二日酔いも軽くしてくれる。

 昼過ぎだというのに、中庭の食卓では、ヨシノ、アキ、シムラが仕事の格好をしたまま待機していた。

 グンゾウ達に気付くと、ヨシノは立ち上がり、駆け寄る。

 泣き出すのではないかと勘違いするくらい、興奮して、両手でリョータの胸を叩いた。

「リョータ! どこ行っていたの?! 事件に巻き込まれたんじゃないかって、みんな、すーっごい、心配したんだから!」

「すまない、ヨシノ……ちょっと、今回の兵団指令(オーダー)の件でオッサンと議論しすぎて……」

 (うそ)は言っていない。

 ――9割は別の話だったけどね……。

 アキとシムラも安堵(あんど)の目で、グンゾウとリョータを見詰めていた。

 グンゾウは仲間に仕事をさぼったことを責められるのではなく、事件に巻き込まれたのではないか心配されていたことに罪悪感を覚えた。良く考えてみれば、天涯孤独の身となってグリムガルにやってきたグンゾウ達にとってみれば、家族と言える存在は小隊(パーティ)の仲間だけだ。さらに年長者である男2人が居なくなったとなれば、残された仲間が極めて不安なことは予想がついた。

 ――申し訳ないことをしたな……。

「あれ? ハイドは?」

 グンゾウは周囲を見渡す。頭を動かすと重たい頭痛が走った。

「あー、ハイドは仕事がないなら寝るって、寝てまっせ」

 シムラが呑気(のんき)に答えた。

「そっか……」

 ――雷帝、流石だな……。

「ちょっと、今日は一日休みにして、兵団指令(オーダー)について考えてくれ。夜、シェリーの酒場で話し合おう」

 そう言うと、リョータはふらふらとしながら、寝室の方に向かっていった。

 グンゾウが風呂に入ってから寝るか、そのまま寝るか逡巡していると、ヨシノが話しかけてくる。

「グンちん、リョータとの話し合いでは、兵団指令(オーダー)についてはどうなったの?」

 ヨシノは不安そうな目をしていた。

 ――ヨシノらしくないな。

 グンゾウはそう感じた。

「なんだか、不安そうだね?」

「……うん、そう……かな」

「一応、色々な要素を考慮した結果、()()()()()やる気だよ。俺はまだ悩んでる。みんなの納得感が大事だから、夜までしっかり考えて、意見を聞かせてよ」

 ヨシノは明らかに悩んでいる様子だった。傍で聞いていたアキも同様だった。

 シムラは完全に気持ちを切り替えて、木の(まと)相手に星貫(ほしぬき)の練習をしている。

 ――ハイドは……まあ、いっか。

 

 

 沐浴室で、水蒸気が結露した天井を眺めながらグンゾウは考えていた。

 兵団指令(オーダー)を受ける利益と危険を天秤にかける。

 ――利益は……、1日で1ゴールド。これは確実だ。それに他の義勇兵に聞いた話じゃ、デッドヘッド監視砦にいる砦守(キーパー)のゾラン・ゼッシュを倒せば金貨100枚、呪術師アバエルを倒せば金貨50枚が手に入るという。呪術師は能力が不明なので不確実性の影響(リスク)が大きいが、武闘派のゾラン・ゼッシュはリョータとヨシノがいればもしかしたらいける……かもしれない。

 そう思った後、グンゾウは考えを改めた。

 ――駄目だ。なんて稚拙(ちせつ)(ひど)妄想(ファンタジー)だ。この兵団指令(オーダー)は積極的に利益を得ることが目的じゃない。全員無事で生きて帰ることが目的だ。そうなると、利益は金貨1枚。そして、リョータ小隊が参加することで、カズヒコ達の安全は格段に上がるということだ。どれくらい確率が上がるかを定量評価するのは難しいなぁ……。

 グンゾウは湯の中に頭の天辺(てっぺん)まで(うず)める。湯の中に全身が浸かることで重力から解放され、脳が重たい悩みから解放されたように感じた。

 耳を覆う水を通して、掛け流されている湯の注がれる音がくぐもって聞こえる。グンゾウは温かい母親の胎内にいるような、安心感に包まれた。

 しばらく、その心地よい浮遊感を味わう。

 息が苦しくなり、湯の上に頭を出すと、窓から吹き込む冷たい風が思考を明晰にしていった。

 ――危険は……、オークだ。オークに関する知識も、対峙した経験も無いからそこに不確定要素が多い。また戦場での指揮を誰が()るかも重要だ。如何(いか)に兵士が優秀でも指揮官が無能では犬死にするだけだ。その2点は確認をしないと情報が少なくて評価できないな。

 グンゾウは必要な情報が明確になったので、風呂から上がる。男部屋に行くと、ハイドが明瞭な寝言を、リョータが大鼾(おおいびき)()いていた。

「うは。シシシシシシ。砦守(キーパー)強すぎ。チートじゃね? キシシシシ。盾役(タンク)ちぼんぬ。シシシ。暗黒さん、マラソンよろ! うは。引き寄せ、キシシシシシ」

 ――何だか、ハイドは楽しそうだな。気になること言ってるけど、夢……なのか?

「ぬごごごごごごごごごぐぐぐぐぐぐふぅぅぅぅ。んががががががががががごごごごごご……かぽっ! ……ぬごごごご」

 ――リョータもひでぇ(いびき)だな。

 環境の悪さに眠ることを諦めたグンゾウは、情報収集に街へ出た。

 

 

 シェリーの酒場で昼間から酔っ払っている義勇兵を捕まえて、情報収集を行った。

 グンゾウはよく独りで飲み歩いていたので、酔っ払いの知り合いは多かった。顔が広い同期のキッカワが、遠方へ狩りに出掛けているのが少し痛手ではあったが、それなりに情報を得ることができた。

 結論として、オークはとても強いということ。

 身長は人間と同様に様々だが、体躯は間違いなく良く、力強さは戦士として一流とのこと。知能も人間並みで隙が無い。数的優位性か、戦闘技術に大きな差が無いと勝てないということだった。逆を言えば、常に戦力を分断して、数的優位性を確保したまま戦えば勝てると言うことでもあった。

 数の話に限れば、200匹程度のオークが守る砦を、正規兵700人+義勇兵の軍勢で攻めるため、圧倒的有利が確定していた。門を突破し、開けた地で戦えれば、だ。

 ただ、砦と言っても、梯子を掛ければあちこちから登れてしまうくらい低い壁ということも同時に聞かされた。それは良い情報だった。

 次は指揮官についてだ。人数が多くとも指揮官がアホでは烏合の衆になってしまう。

 それは()()()()()()()()()()()

 グンゾウはできれば近寄りたくなかった。まして、2人きりになるなんて遠慮したかった。

 しかし、どうしてもやらねばならなかった。

 決死の覚悟をして、その扉を開ける。蝶番(ちょうつがい)(きし)む嫌な音がして扉が開く。

「あら、珍しい。いらっしゃい。何か御用かしらね? そうねー、きっと兵団指令(オーダー)の件ね」

「そうだ」

 ()()()()指揮官であるオルタナ辺境軍義勇兵団レッドムーン事務所の所長、そしてオカマのブリちゃんことブリトニーだ。相変わらずの奇抜な容姿をしている。緑色の髪に、黒い唇、長くて量の多いバサバサとした睫毛(まつげ)に青い瞳、そしてムッキムキの筋肉だ。

 ブリトニーはその青い瞳で、グンゾウを見透かすように見詰めてきた。舌なめずりをしている。グンゾウの下半身で()()()が30%縮み上がった。

「色男の小隊(パーティ)は参加するみたいだけど、筋肉馬鹿の小隊(パーティ)はどうするのー? まだ悩んでるとか、どんだけー」

「前向きに検討中だよ。ただ、指揮官に今回の作戦について考えを聞きたい」

 グンゾウはブリトニーの不気味さに負けないよう胸を張る。

 ――少し戦いの経験を積んだから分かる。ブリトニーは練達の戦士だ。体の動きにキレがある。

 ブリトニーは両掌を上に向けて、お手上げのような姿勢をする。

「あーら。指揮官がアタシって情報が漏れてるの? 嫌だわあ。軍隊は秘匿性(ひとくせい)を保てることが肝心なのに。そう思わない? グンちゃん。誰かしら、話しちゃったのは。後であっつーーーーいお(きゅう)()れてあげないと。あはっ」

 グンゾウの下半身で()()()が60%縮み上がった。グンゾウの額から脂汗(あぶらあせ)が出始める。

 ――やばい、やばすぎる。早くこの場を去らないと、人生最大の心的外傷(トラウマ)を負いそうだ。

「それは……、当日の戦略等について、事前には話せないってことかな?」

 ブリトニーが怪しい目でグンゾウを見詰める。突然、右の人差し指を軽く舐めてから、服の上から自分の右乳首に当てた。指先を小さく、そして優しく、ゆっくりと回し始める。

 ――な、何をしているんだ。これは圧力(プレッシャー)をかけられているのか?!

 グンゾウは背中から腰にかけて冷たい汗が流れるのを感じた。グンゾウの下半身の()()()は90%縮み上がっている。

「そうねー。そうなるかもね。まあ、人間からオークに戦略が漏れるとは思わないけど、念には念を入れるに越したことなくなーい? 集団を指揮する者としてはねー」

「だが、複数人で戦略を練った方が、抜け漏れのない戦略になるとは思わないか?」

「ふーん、そうかもねー。その()()()新人(ルーキー)のグンちゃんが適任かどうかはわからないけど」

 ブリトニーは右手は乳首に置いたまま、左手の黒い爪の汚れを息で吹き飛ばした。完全に相手にしていないといった風だ。

「作戦が上手くいかなくなった時の退避手順、正規軍との連絡手段等、何か安全対策の情報が欲しい。俺には若い仲間を守る義務がある」

 ブリトニーの(あき)れたような表情。

「どんだけー。過保護ね。最初にも説明したけど、義勇兵団の流儀は“自己責任”よ。己が才覚、独自の判断で敵を叩く。言わなかった? それに兵団指令(オーダー)は義務じゃない。そうでしょ?」

 ――軍隊の戦略にそんなのいい加減なことあるか?!

 グンゾウはストレスで右の(まぶた)痙攣(けいれん)するのを感じた。ブリトニーはそれに気付いたかもしれない。

「そうか……、よくわかった」

 ――管理(マネジメント)のない組織は烏合の衆だ。こいつが指揮官では()()()()()()()()()()

 そう確信したグンゾウは話を切り上げて、仲間の元に帰ることにした。

「参加、待ってるわ。グンゾウちゃん」

 扉を開けると、ブリトニーが猫なで声でグンゾウに呼びかけてきたが、気持ち悪いおっさんの声にしか聞こえなかった。

 ――取るべき道は2つだな。兵団指令(オーダー)に参加して、カズヒコ達を助けるか。カズヒコ達を兵団指令(オーダー)から降ろすか、だ。

 軍義勇兵団事務所を出ると、グンゾウの歩く速度は次第に速くなり、最後は走るようにして宿舎へと向かっていった。 

 

 

 夕べのシェリーの酒場は、いつものように義勇兵の武勇談や悲劇、怪しい儲け話や怪談話で溢れかえっていた。一時(ひととき)の癒やしを求めて、男女が恋の駆け引きをしている現場を目にすることも多い。今夜も胸の大きな給仕の女性を、何人ものむさ苦しい義勇兵達が必死に誘っていた。給仕の女性も義勇兵の扱いには慣れていて、また酒場に来てくれる程度に適度に誘い乗っては、軽くあしらっている。

 そんな楽しげな風景の中、リョータ小隊(パーティ)は真剣な顔で、1階奥の(テーブル)を陣取っていた。(テーブル)を囲うようにリョータから時計回りにグンゾウ、シムラ、ハイド、アキ、ヨシノの順で座っている。

 机に両手を置いて前のめりになり、リョータが唐突に話し始めた。

「先に言っておく。俺は兵団指令(オーダー)を受けて、オークをぶっ倒すつもりだ。皆の意見を聞かせてくれや」

 ――なんか、アホっぽいな。

「リョータ。参加、不参加の判断と(あわ)せて、理由もみんなに聞かせてくれよ」

 グンゾウが冷静に突っ込むと、リョータは自分の意見を言い終わって油断していたのか、不意を突かれたように慌てた。

「おっ、おう、そうか。まあ、1ゴールド手に入るし、今の俺等なら負ける気しねぇ」

 普通の理由。次にリョータ小隊(パーティ)全員の視線がグンゾウに集まる。

 ――次は俺か? ……そりゃ、そうか。

「俺は悩んでる」

「なんだそりゃ?」

 リョータが(あき)れたような表情をする。ブリトニーの反応と似ている。

「理由は2つある。ブリトニーに会ってきた感じ、義勇兵団の軍隊としての統制は期待できなかった。つまり、敵から組織的な攻撃を受けると痛手を負う可能性が高い。だから、今回の兵団指令(オーダー)は危険性が高いから受けたくない。しかし、俺等が受けないと既にやる気のカズヒコ達が危ないから、受けたい気持ちもある」

 リョータ小隊(パーティ)の面々が「うーん」と(うな)る。

 グンゾウは、手で合図をしてシムラに順番を回した。シムラはイガグリ頭をさする。頭を使っている時の癖だ。

「俺は、どっちでもええかなーって。受ければお金が手に入るし、危険が高そうなら受けなくてもそんなにお金に困ってないしなー?」

「キシシ、右に同じ。シッシッシ。僕の最強は変わらない」

 ――単純だが、妥当な選択だよな……。中立が3か。あとは女性陣次第だな。

 並び順のアキを飛ばして、ヨシノが話し始める。

「あたしは……、受けたくない。理由……は言えない」

「言えない? おいおい、ヨシノ、いくらなんでもそりゃあ……」

 リョータの言葉を(さえぎ)るように、アキが口を開く。相変わらず低くて静かで、でもかわいらしい声だ。

「私も。今回はちょっと」

「おいおいおいおいおいおいおい。アキ、『ちょっと』って何だよ。そんな理由あるか?」

「リョータ、女の子には()()あるんだよー」

 ヨシノが責められているアキを助ける。

「なんだそりゃ?!」

 リョータがヨシノに対して苛ついた顔をする。

 ――はっ!

 グンゾウはヨシノの台詞(セリフ)を聞いた瞬間、ヨシノやアキが参加に消極的な理由に思い当たってしまった。

 ――あれ? やばいぞ。きっとそうだ。ヨシノもアキも日数を気にしていた。記憶は失われてるが俺には思い当たることがあるぞ。この流れ、俺が止めないと駄目な気がする。

「ヨシノ! らしくねーぞ。ここはオークをぎったぎたに倒すぞー! って流れ……」

「んんっ! おほんっ!」

 グンゾウが咳払いでリョータの発言を(さえぎ)る。

「オッサン、うるせぇぞ。痰絡(たんから)まり(じじい)か! 今、ヨシノと話してんだよ!」

「あー、リョータ君、もう、いいんじゃないかな? 俺も反対にするわ。賛成1、反対3、中立2で。俺等は不参加でいいんじゃないかなー?」

「ああん? 何言ってんだよ、オッサン。さっき悩んでるっつったろーが。ボケてんじゃねーぜ。()めるにしたって理由なしじゃ納得いかねーんだよ」

「そこら辺をふわっとさせとくのも大人なんじゃないかなー」

「てめぇ、さっき俺には理由言えっつったろーが!」

「うん、うん、そう! さっきは言った、さっきはね。でも、何て言うの? 状況がなー。なんだろなー、わかんないかなー?」

「何、訳わかんないこと言ってんだよ。まじで、ボケてんのかよ!」

 ヤンキーリョータの苛立ちが頂点に達したのか、グンゾウの神官衣を左手で掴んで、右の拳を振り上げた。

 グンゾウはやむを得ないと、受け入れ体制を整えて、損害を最小限にしようと防御姿勢を構えた。

「リョータっ!!」

 いつもは、にこやかなヨシノが金切(かなき)り声を上げて、机に激しく両掌(りょうて)を叩き付けながら立ち上がる。グンゾウを掴んだまま、リョータは動きが止まる。ヨシノの方を向いて固まった。

 リョータ小隊の全員が、ヨシノに注目する。シェリーの酒場全体が少し静かになったように感じる。少しの静寂の後、ヨシノがおずおずと口を開く。

「その日、2日目(ふつかめ)なの……」

 ――あーあ、言わせちゃった。

「キシっ?」

 ハイドが首を(かし)げる。

「はぁ? なんの……」

 と、途中まで言いかけたリョータの鼻の穴がぷくっ膨らんだ。どうもようやく理解したらしい。

「よ、ヨシノちゃん……」

 アキが驚いた表情をする。アキの顔は耳まで真っ赤だ。その恥じらいの顔を見たグンゾウの鼻の穴が2倍に膨らんだ。

 ――これはルミアリスのご褒美だな……。

「あー、あああ、あえー、あ……えっと……」

 リョータが二の句を告げられず、振り上げた右手で頭を掻いている。グンゾウはリョータの左手を振り払うと神官衣の襟を正した。

 ヨシノが続きを話す。 

「今までも、当然あったんだけど。結構重くて……。貧血で力が入らないから動きが鈍くて……。ゴブちん相手でもすごく疲れるの。最近は日にちを管理して、なるべくお休みか訓練の日にしてた……。だから……、ちょっとオークんとの戦争は自信がないかな……って。…………あっ、アキちゃんは違うよ? あたしだけだからね。アキちゃんは別に2日目(ふつかめ)じゃないよ」

 ヨシノは急に気付いたようにアキの理由について自分とは違うと否定した。しかし、この流れで2回も名前を出されたアキは、恥ずかしさに顔を上げられなくなったのか、下を向いて机に顔を伏せてしまった。

 ――あー、これ助けた(フォロー)風で、実は一番恥ずかしいやつだ。ヨシノ……天然(ナチュラル)なだけになかなか悪質だな。

「お、お、おう」

 リョータが動揺して返事をする。顔を向け、グンゾウに助けを求めてくるが、グンゾウはさっき殴られそうだったのでさっぱり助ける気が無い。グンゾウはリョータから目を(そむ)けた。

「なんや姉さん、2日目(ふつかめ)ってなんですのん?」

 シムラが空気を読まずに質問をする。

「馬っ鹿! 馬鹿シムラ、黙れ!」

「とぅいまてーん」

 リョータが怒鳴ったので、シムラは黙って小さくなった。

「あの、だから、みんなで兵団指令(オーダー)を受ける機会(チャンス)を潰しちゃうもしれないけど、今回はお休みにしたい」

 ヨシノが(りん)として言い切る。誰も反対できるわけはなく、リョータ小隊(パーティ)兵団指令(オーダー)を受けない方向で意志決定がされた。

 

 

 打ち合わせを解散した後のシェリーの酒場。

 リョータとグンゾウは居残って毎度の反省会を繰り広げていた。

「オッサン……、俺はヨシノに嫌われたかな?」

 リョータは陶製のジョッキからエールを浴びるように飲んだ。グビグビと(のど)が鳴る。

「まあ、2歩くらい後退したことは間違いないな。あと、俺の名前は“オッ”じゃねーけど」

「はーあ……、そうかー、ヨシノはもうすぐ生理かー」

「聞いてないな。あと、お前、俺のこと殴ろうとしたろ? あの時点で間接的に教えてやったのに。これから俺が意見を(ひるがえ)した時は気を付けろよな……聞いてるか?」

「はーあ……、ヨシノはもうすぐ生理かー」

 ――全然聞いてねぇ……。

 

 

 オルタナの街は今日も平和()()に夜が更けていく。

 しかし、この決定がリョータ達、そしてカズヒコ達の運命に大きく影響を与える別れ道であったと、後になって気付くのだった。

 

 

 




結構大事な転換点だったけど、基本下ネタ系で終わる本小説のクオリティ(*゚ー゚)
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