今更ながら、ライトノベル的にはジニー隊長は金髪の美人女戦士にすれば良かったと反省。
まあ、おっさんが主人公な位だから良しとするかな(*゚ー゚)うほっ! いい漢。
なお、サブタイトルの「輪舞曲」は「ロンド」とお読みください。
空気を切り裂く音。
暗闇の向こうから、次々と矢が飛んで来る。
――狩人の
その風切り音はグンゾウにとっては脅威だ。金属鎧を身に付けていない神官など一撃で致命傷を負う可能性があった。
そもそも大弓から放たれた矢は、薄い金属鎧なら簡単に貫通する威力がある。
第5小隊の全員は体勢を低く保ち、暗闇に身を潜めていた。
「いつなんだ、その
ジニーは訝しげだ。グンゾウは口に指を当てて答える。
「しっ! とりあえず動脈が切れていなければ、平気さ。痛いけど……ほら、聞こえてきたろ? それに見えてきたぜ」
ジニーが耳を澄ますと、先程第5小隊が来た道の後方から、音が聞こえてくる。
金属鎧の擦れ会う音。
第6小隊の行軍する音だ。
「まさか、……第6小隊を
「声がでかいよ。よく考えろ、別に第6小隊に死ねというわけじゃない。俺等と同じように、暗闇に潜んで敵を惹き付けていればいいんだ。それに、あっちには
ジニーは黙る。反論をするだけの理論武装がない。
グンゾウは少し嘘を
「分かった……だが、第6小隊に警告だけはする。いいな」
「問題無いよ。むしろ、そうしよう。」
ジニーとグンゾウの間で合意が得られた頃、後ろから追いついてきた第6小隊が狙撃手に狙われ始める。「うわっ!」等といった叫び声が聞こえ、混乱している。
第5小隊に飛んでくる矢の量が激減した。
「よし! 今だ、第5小隊は全速前進!」
ジニーが叫ぶと、全員動き出す。グンゾウもジニーの影を追った。
天望楼裏門の
「第6小隊!
さらにジニーが叫ぶと、しばらくして第6小隊の
その頃には、グンゾウを含む第5小隊は既に危険地帯を脱していた。
裏門前は
「……なんなんだ……」
ジニーが呆然として立ち尽くす。
天望楼裏門前に到着した第5小隊の目に、普段では考えられない風景が飛び込んでくる。
鉄格子で出来た門は、既に開け放たれ、目の前には両手で数えきれない程の死体が横たわっていた。横たわっている死体の半数は辺境軍の兵士のものだったが、半数はあまり見ない黒ずくめの装備だった。グンゾウが見たことのない
――敵は
グンゾウが回りを見回したが、倒れている人影の中にヨシノの姿は無かった。
――ヨシノがそう簡単にやられるわけない……よな。主戦場は天望楼内か? アキは大丈夫だろうか?
「光よ、ルミアリスの加護のもとに、
グンゾウは天望楼の方を見つめながら、矢傷を負った2名の傷を
――こういう時に1人ずつ治すのは効率が悪いな。
天望楼は建物の入口が開け放たれ、中から光が漏れている。建物内から戦闘の気配は感じられない。
中庭の暗闇から兵士達の声が聞こえた。何らかの戦闘が行われているようだ。
「天望楼内は正門から援軍が駆け付けるだろうし、辺境軍で最強の兵士達が守っているので大丈夫だろう。我々はこの門を封鎖して、中庭の敵を殲滅しよう。生存者を中庭に入れて、味方は回復、敵は尋問しよう。門を閉鎖しろ!」
ジニーが指示をする。
――そうかな? 追撃して天望楼内の敵を挟み撃ちした方が良いような気がするけど……。まあ、早くヨシノを探したいから黙っとこう。
第5小隊の面々は素早く生存者や大盾等の使える装備を探すと、天望楼の裏門を閉じた。生存者は裏門を警備していた兵士1名しかいなかった。
――これが噂に聞く
グンゾウは動かない
「グンゾウ、この者を回復させて話を聞くんだ」
――人使い荒いな……。早くヨシノを探しに行きたい。でも、そのためには生存者に話を聞かないとな。
「へいへい。光よ、ルミアリスの加護のもとに、
ジニーが指示するまま、グンゾウは兵士の傷を癒やした。負傷の程度が分からないので、
グンゾウは生存兵を揺らしたり、顔を叩いたりして起こそうと試みた。目を覚ました生存兵は「うわぁ!」と驚き、グンゾウを突き飛ばす。
「いてて……、おいおい、こんな善良な顔をした神官を突き飛ばすなんて、不信心なやつだな」
グンゾウは尻餅を
「……す、すまない」
ジニーがすぐに質問をする。
「おい、戦況はどうなっている? 何者が攻めてきたんだ? 敵の数は? 味方はどうした?」
「……わ、わからない、10人は居たと思う。突然、弓矢で狙撃を受けた後、黒ずくめの戦士達と
「敵は10人強か? 20人はいなかったんだな?」
ジニーが確認すると、生存兵は無言で頷いた。
「……すると、それ程門内には入られていないな……。多くて5、6人か。こちら側の死体の数も足りないな。中庭や天望楼内に敵を追っていったのだろうか?」
ジニーが敵側の死体を目で数えながら、安堵の表情を見せた。
「よし、それでは門の護衛に4名残り、残り3名は中庭の捜索に向かおう。護衛の4名は援軍が来たら収容するんだ。そして…………」
ジニーが小隊と生き残りの生存兵に役務を割り振り始める。
「俺は、中庭の捜索に行きたい」
グンゾウは捜索隊の3名に名乗り出た。
「わかった。ではグンゾウとライアンは付いてこい。行くぞ!」
ライアンと呼ばれた男がジニーの後に付いていく。ライアンはリョータと同じくらいの体格をした兵士らしい兵士だ。
――とにかくヨシノを早く見つけないと……。
出発しようとするジニー達に先程の生存兵が声を掛ける。
「
「……ああ……、……わかった」
ジニーが緊張気味に返事をする。
グンゾウは
先刻まで、人々が争う声がしていた方向だ。今は静かになっている。
ジニーを先頭に、グンゾウを挟んで、
「向こうの
中庭の
――みんな
「目印かもしれない。あの
ジニーが早足で動き始める。グンゾウ達は置いていかれないように急いで付いていった。
近付くにつれ、
「うわっ!」
グンゾウの後ろを歩くライアンが何かに
「落ち着け!」
ジニーが振り返り、控えめな声で叱かる。
「すいませんっ!」
――暗いし、緊張してるし、急いだら仕方ない。一方的に叱られてもなー。
「ほら、手を貸そう」
グンゾウは転んだライアンの手を掴んで、力を入れて引っ張る。しかし、ライアンは一向に立ち上がる気配が無い。
「ライアン、どうした? 自分で立たないと俺の力じゃ重たくて全然……」
と言いかけてグンゾウは凍り付く。既にライアンがグンゾウの隣に立っていることに気が付いたからだ。ライアン
グンゾウが掴んだ手は、ライアンが
グンゾウは、呼吸が浅くなった自分を感じる。
「ジニー……」
「なんだ、グンゾウ……」
「死体だ……この辺りには死体があるぞ!」
グンゾウが興奮して声を上げても、ジニーはグンゾウの言葉を無視をしたように黙っている。
「ジ……」
「わかっている! ……あの、灯り
ジニーが指差す先にある
その黒い湖の湖面で、数人が戦闘をしている。
素早く動く1つの影を4、5つの影が囲んでいた。どちらが敵で、どちらが味方かはわからないが、数的には有利不利がはっきりしていた。
「あれか?! よし、加勢するぞ」
ジニーは声を出すと荷物を落として、突撃する。ライアンも続いた。
「ちょ、ちょ待っ……」
グンゾウは
――わりと
「ぎゃっ!」と声がして、争っていた黒い影の内、多人数側の影が一体倒れる。その後、影の集団は、素早い影を追いかけるように遠くの暗闇へ移動して行った。グンゾウの視覚が認識できる範囲から消える。
グンゾウは周囲を確認しながら、慎重に歩を進めた。僅かな明かりと、
通りすがりの雲が、
グンゾウが見つめる暗闇の先に、砂を蹴る音と激しい息づかいが聞こえる。
時折、雲の切れ間から漏れた
グンゾウは緊張で口の中が乾く。
鼻腔には嗅ぎ慣れた
――血の匂いだ。
足下に
ヨシノかもしれないと、
漏れる
――脈がない。
まだ温かいその身体から、急速に体温が失われつつあった。もう手遅れだ。
――確認の順番が違う。俺は神官なんだぞ。
グンゾウは意味の無い反省をした。わかっているが、神官である前に人であり、大切な仲間を思う気持ちは止められない。
――信仰が薄い
暗闇の向こうで剣戟が続いている。
注意深く歩を進め、剣戟の音に近付く。
気紛れな雲が通り過ぎ、紅い月が深緑の空に輝く頃、ようやく少ない光がグンゾウの網膜に捉えられる。
突然、グンゾウは目の前に衝撃的な光景を突きつけられた。
突きの体勢で槍を構えたヨシノと敵の影。両者とも動きは止まっていた。ヨシノの首先には敵の長剣が突きつけられている。
互角と言うには不利すぎる体勢だ。
「ヨシノっ!」
グンゾウが駆け付けようとする。
「駄目っ!」
ヨシノが荒々しく声を上げて、グンゾウが近付くのを制した。
「本当に来ちゃ駄目! グンちん」
――そうはいかない。
「勝負は付いてる! 俺等は辺境軍の正規兵じゃない。ただの雇われ義勇兵だ。俺の名はグンゾウ。神官だ。傷を負っているなら治療しよう。君等を追うことはない。仲間を解放してくれ!」
敵に声をかけながら、慎重に
暗闇で敵の顔はよく見えない。
明るかったとしても、見えないと思われた。影像からクローズヘルムを着けている様子だったからだ。
――
緊張でグンゾウの足が震える。頬の汗が流れ落ち、音を立てて神官衣に
「グンゾウ?」
「え?」
美しい女性の声がする。
敵に名前を呼ばれ、グンゾウの緊張が緩む。
瞬間的に敵の影がヨシノから離れ、今度はグンゾウとの距離を一瞬で縮めた。光を反射する
感心する
――やばいっ!
緊張に体を硬くする。グンゾウは
その時、気まぐれな風が通りすがりの雲を吹き飛ばし、月明かりをもたらす。
「え?」
再び間抜けな声を上げると、そこにはクローズヘルムの
切れ長の大きな目に長い
「ヴ、ヴェール……」
「やはり、お前達か」
ヴェールは殺気を保ったまま、口を開いた。
「あの……、同期の
「貴様に状況を選ぶ権利はない」
凛とした冷たい声。
「わかった。さっき言った通り。俺達はただの雇われ義勇兵で、この件に深く関与する義務がない。よって君のことも報告しない。ルミアリスに誓おう。今、武器を捨てる」
グンゾウは
――もうすぐチャンス来るかもよ。ヨシノちゃん。ヨーシノちゃーん。ヨシ子先生ー。
「追ってきたら、次は見逃さない」
ヴェールはそう言うと、剣を収めながら、不思議な動きでグンゾウと距離を取る。上半身は動かさず、直線的に移動する
グンゾウは声をかける。
「ヴェール。君は何をしてるんだ? キッカワとはなんで別れたんだ?」
ヴェールの動きが止まる。少しの静寂。そして
「キッカワは……、キッカワは死んだ。もう
そういうと、ヴェールは暗闇の中に融けていった。
「それは、どういう……?」
グンゾウは暗闇に手を伸ばしたが、そこにあるのはヴェールの残した
「ヨシノ! 大丈夫か?!」
グンゾウが駆け寄っても、ヨシノは呆然としていた。地面に両膝を着いて、
「怪我はない? とりあえず
暗闇の中に、温かな
「……あ、
ヨシノがようやく口を開いた。ヨシノはグンゾウの方に手を伸ばすと、グンゾウの腕を掴んだ。
「ん? どうした?」
「手、……触ってみて……」
グンゾウはヨシノに言われるがままに自分の手を重ねた。
「あたし、今日、初めて
ヨシノの手は
「そうか。悪い夢のようだな……」
グンゾウは深緑の夜空を見上げた。
戦争の夜。
悪夢の争乱はまだ終わらない。
初めて読まれた方からすれば、前回、今回と「オリキャラしか出てきてないやんけ!」とお怒りのことでしょう。
その通り! (。・ ω<)ゞてへぺろ
1章から通して読んでね。
次回も同じ状況ですが、次々回はチョコとクザクのいるカズヒコ小隊に視点を移しますので、ご容赦ください。
モチベが下がって、エタらなければね!
(。・ ω<)ゞてへぺろ