廃と群像のグリムガル ~不惑の幻想~   作:西吉三

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さーせんっ!! もう謝るしかないっす!!
Level.2はプロットが完成しているのに書く時間が無い日々でした。

4月に昇進したり、鬼畜なプロジェクトに組み込まれたり、毎日仕事で休日とか数える程しかなかったり、(家に帰ると任天堂Switchのゼルダの伝説が面白かったりで、)全然執筆が進みませんでした。

ようやく仕事も慣れてきて、(ゼルダの伝説もクリアしたので、)前へ進めると思います。

リョータ小隊のメンバーの性格などを忘れてて、書き進めるのが少し大変でした。でも、個人的には彼等にまた会えて嬉しかったっす。Level.2は、時間かかっても最後まで書ききります。

因みに久しぶりすぎて、文章ぐだぐだっす。
さーせん、ふひひ……。


17.ハナシノコシ

 地面に敷き詰められた落葉樹の葉が、歩を進める度にぱりぱりと音を立てて、グンゾウの緊張感を高める。

 涼風が吹く山間部の林。しかし緊張の冷や汗が額から垂れ、目に入りそうになる。グンゾウは音を立てないように服の袖で顔を拭った。木の陰に隠れながら視線は1点に注目している。

 林の中の小道をオークが2匹歩いていた。両方とも装備は金属製の鱗鎧(スケイルメイル)に短槍。頭から生えた毛は逆立ち、鮮やかな緑色に染め上げられていた。同じ氏族なのだろう。どこかの氏族の先遣隊なのか、(ある)いは1日で()とされたと噂のリバーサイド鉄骨要塞から逃げてきた敗残兵なのだろうか。

 敵の隠れ家(アジト)まで5キロ程度の距離。1時間も歩けば到着してしまう。当然、敵の警戒範囲だ。その周辺では慎重に()を進めなければならない。

「光よ、ルミアリスの加護のもとに……」

 グンゾウが小さく呟くと、審判の光(ジャッジメント)の粒子がオーク達に降り注ぐ。

 その七色の粒子が描く幻想的な風景とは異なり、魔法の効果は容赦が無い。

「オルッシャ?」

 オークの1匹が景色の変化に気付いた時には既に手遅れだった。「ポシュウッ、ポシュウッ」という静かな爆発音がして、光の粒子に触れたオークの身体が弾ける光の粒子に削られていく。既に周囲を光の粒子に囲まれているため、衝撃力で弾き飛ばされた先にも粒子があり、次々と損害(ダメージ)が蓄積していった。

 血だらけのオーク達。武器や盾も取り落としていた。

 周囲の森に隠れていた兵士達が一斉に襲いかかる。オーク達は混濁する意識の中で、自分達の身に何が起きたか理解する間もなく命を失っていった。

 

 

「はっはっはっはっは。やるじゃねーか、オッサンっ! 流石、俺様の参謀だ」

 リョータが兜の面防(バイザー)を上げて、大声で笑う。

「リョータ、うっさいっ! 敵の隠れ家(アジト)が近いんだってっ!」

 ヨシノに肩を叩かれて、リョータは満面の笑みを浮かべながら口を手で押さえた。

 ――ドMかっ……!!

 グンゾウは心の中でリョータを突っ込んだ。

「……お前もな……キシシシシ」

 グンゾウの背後でハイドが呟く。グンゾウがドキッとして振り返ると、ハイドは立ちながら居眠りをしていた。

 ――なんなんだ、こいつは?

 ブリセイスを始め、兵士の面々が呆れた顔でリョータ小隊(こちら)を見ている。その視線に気付いたのか、アキは恥ずかしそうにそっと盾で顔を隠していた。

 ――いいな……、盾。……俺も欲しい。

「しかし、これ……、ちいっとずれてまへんか? お掃除の道」

 シムラが汗で光り輝く頭皮を木綿の布で拭いながら誰とはなく訊いた。シムラにしては珍しく、狩人(レンジャー)らしい発言だ。

「確かに……、今日は今まで進んできた方向より北にずれて……る?」

 グンゾウは辺境軍から与えられている地図を広げ、自分達がいると思われる場所を指で押さえた。反攻部隊の主力が進んでいる道よりも、かなり北側に外れていた位置で戦っていた。

「よし! 一旦、基地まで戻るぞっ!」

 兵士達がオーク達の痕跡を消し終えると、ブリセイスは声を抑えて、号令した。

 ――早いな……。

 まだ、太陽は中天に輝いていた。

「お。もう終わりか……、これで20シルバーとは楽な商売だぜ。帰っても何も娯楽はねーが、ゆっくりすっか……。そうだ、おいっ! シムラっ! 将戯盤(しょうぎばん)の続きすっぞ!」

 リョータがシムラを掴まえて、肩を強く叩く。シムラは少し嫌そうな顔をした。

「リョータはんはなぁ……、負けそうになると盤返しするしなぁ……」

 将戯盤(しょうぎばん)とは、木の板の上に13×13の枡目(ますめ)が描かれ、その上に職業(クラス)が書かれた(こま)を配置し、順番に(こま)を動かしながら大将(たいしょう)を討ち取った人が勝つという盤上遊戯(ボードゲーム)だった。

 (こま)の動かし方と基本的な規則(ルール)さえ覚えてしまえば、木の板と小石等を調達すれば遊べるため、兵士の間での娯楽として流行していた。小隊(パーティ)内では今のところグンゾウが頭ひとつ抜けて強く、反攻部隊の兵士達と勝負してもかなりの勝率を誇っていた。

 小隊(パーティ)内では、次いでハイドが強い。リョータは最も弱く、唯一近い実力のシムラを誘って勝負をしていたが、負けそうになると盤をひっくり返すという、子ども()みた禁忌をよく犯した。女子2人はあまり興味がなさそうだった。

「う……、も、もう、あれはしねーよ!!」

「ほな、やりまひょかあ……」

 呆れ顔の周囲の兵士達に囲まれながら、リョータ小隊(パーティ)は帰路に着いた。

 ――恥ずかしいなぁ……。しかし、この時間で作戦終了ってのは違和感あるな。

 帰り道、グンゾウはブリセイスの部隊について考えていた。

 ――昨日……、ヴェールがカレンに渡した紙と何か関係があるのだろうか?

 月明かりに浮かぶヴェールの美しい肢体が、グンゾウの脳裏に浮かんでは消えていった。

 そんなグンゾウの傍にアキが寄ってくる。

「グンゾウさん……」

 グンゾウの顔を下から覗き込むように見上げるアキ。少し伸びた前髪が目にかかり、しきりに手で前髪を横に流している。その深い前髪(バング)がアキの顔の小ささを際立たせて、美しかった。ヨシノのように派手さはないが、肌の色が白く、伏し目がちな表情は神々しさすら感じさせた。

「ん? どうした?」

 ――かわいいな……。

 グンゾウは、前髪の下から覗くアキの黒い瞳へ、吸い寄せられるように顔を近付けた。

「あの……、この隊だけ他の隊と違う動きをしていませんか? こんなに早く引き上げるし……、ちょっと今日の動きは少しおかしいと思うんです。……カレンさんから何か聞いてますか?」

 ――本当にかわいい……。ずっと見ていたい。

 グンゾウはアキの表情を呆けて見詰めていた。

「グンゾウさん……?」

 グンゾウが機能停止に陥っているため、アキが不思議そうな表情を浮かべた。

「答えろ、ロリコンすけべ。シシシシシ」

 グンゾウの背後という定位置にいたハイドが、杖でグンゾウの頭を叩いた。

「ロ……リ……?」

 アキが何度も目を(しばたた)かせる。

「って……、何すんだ、ハイド。この野郎、髪の毛抜くぞっ!」

 グンゾウが声を荒げると、ハイドは「シシシシ……」と言いながら兵士達の陰に消えていった。グンゾウはアキに向き直る。

「逃げる時だけ妙に素早い動きしやがって……。えっと……あー、ごめん、アキ。カレンからは特に何も聞いてないんだ……」

「そうですか……。戦争だし、しっかり情報を集めて、正しく立ち回らないと危ないですよね……」

 アキは下を向いて考え込む。

 将戯盤(しょうぎばん)の話に夢中になっているリョータとシムラや、鼻歌を歌って軽くステップを踏みながら歩いているヨシノに比べると、アキはこの戦争で生き残ることに真剣だった。

「確かに変だよね。基地に戻ったら、カレンやブリセイスに聞いてみるよ」

「あ、はい……」

 ――アキは真面目だなあ……。よしっ! アキの役に立って株を上げようっ! そして、実績を積み重ねて、いつかは……っ!

「……ないな……キシシ」

 いつの間にかグンゾウの後ろに居たハイドが小さく呟いた。

 

 

 休息期間の兵士達は基地の広場に集まり各々好きな息抜きに興じていた。

 グンゾウは慣れたもので、士官用の黒い服に身を包み、兵士達の間を散歩する。

「おーう、神官殿ー。一戦どうだい?」

 顔馴染みの中年兵士が将戯盤(しょうぎばん)に誘ってきたが、グンゾウは笑顔で手を振りながら断る。

「今日はこの後も仕事がありそうだから、やめとくよ。それより怪我はないかい?」

「あー、神官殿に頼るような怪我はないな。昼番の奴等が帰ってきたら頼むよ」

 グンゾウは笑顔で首肯した。

 笑顔のまま、注意深く基地内の兵士達を観察する。

 いつもと違う動きがないか。

 いち早く集団の異変に気付くことが、自分の命を助けることになる。

 また、グンゾウにはもう一つ気になっていたことがあった。イアン・ラッティーの言っていた辺境軍に潜む敵側の密偵の存在だった。

 グンゾウは今回の兵団指令(オーダー)を受けてから、多くの兵士達と積極的に会話をしながら、怪しい人物がいないか探りを入れていた。

 グンゾウ達は正規兵ではなく義勇兵だ。

 義勇兵は言ってしまえば卑しい身分であり、金さえ積まれれば汚い仕事でも何でもやると思われているきらいがある。その辺りの社会的背景を含め、運が良ければ何らかの接触があるのではないかと考えていた。

 グンゾウが兵士達のいる広場の先に目を向けると、彼女が居た。

 一際(ひときわ)目立つ白銀の長衣に身を包み、小柄な身体に釣り合わない長いスタッフを持って、グンゾウの方を睨んでいた。

 カレンだ。

 カレンにしてみれば睨んでいるつもりはないのかもしれないが、眼鏡の奥から覗く鋭い眼光は、グンゾウの精神に深く突き刺さった。

 グンゾウがカレンの方を見ると、カレンは小さな顎を後ろにしゃくり、「付いてこい」という無言の合図を送ってきた。

 ――あわわわわわわ……。俺、なんか不味いことしたかな……?

 何も悪いことはしていないのに、グンゾウは緊張で身が引き締まる。

 ゆっくりと歩くカレンの後を黙って付いていく。

 カレンは少し離れた1つの天幕の前で止まり、再び小さな顎をしゃくる。その天幕は幕僚が会議をするような大きなものだ。現在は兵站の保管に使われている。木箱や樽が詰まっているだろう。

 ――入れってことだな……。一体、この中でどんな責め苦が待っているのだろうか……。

 グンゾウは気が滅入るような、期待するような、相反する感情を携えて天幕の入り口を開いた。

 

 

「おっ! グンちん、いらっしゃーい」

「あ、グンゾウさん……」

「……」

 天幕の中に入ると、ヨシノが木箱の上に座ってひらひらと手を振っていた。その横には、同じく木箱の上に体育座りのアキ。天幕の一番奥にはブリセイスが樽に腰掛けていた。

 ――おおうっ! びっくりした。女性だらけ……。え? 仲間の女性の前で公開プレイなのか? 新境地っ!?

 グンゾウが状況把握をしていると、天幕の後ろからぶつぶつと文句を言いながらリョータが入ってきた。その後ろにはシムラ。

 ――あれ? なんか違うな……。カレンがリョータ小隊(パーティ)をここへ集めているのか……。

「せっかく将戯盤(しょうぎばん)でシムラに勝てそうだったってのに、なんなんだよ……」

「そうでっか? あと少しで詰んでまへんか? 重装歩兵も、騎馬兵も無かったですやん」

「るせぇ、左端の槍軽歩と傭兵が上っていく戦略なんだよっ!」

「あれは敵陣の手前で魔法使い達に潰されまっせ……」

「何言ってんだよ、両手剣の傭兵が魔法使いなんかに負けるかっての!!」

 2人は将戯盤(しょうぎばん)の話でまだまだ盛り上がっている。

 将戯盤(しょうぎばん)において、重装歩兵は大将を守る要駒で、騎馬兵は攻めの要駒なので、それを奪われているリョータは間違いなくシムラに陣地深くまで攻め込まれていることが覗えた。

 しばらくすると、ハイドを連れ立ってカレンも天幕の中に入ってきた。

「さて……、集めたぞ。ブリセイス」

 カレンがその小さな口を開く。

 その声に呼応するように、ブリセイスが樽から立ち上がると焦げ茶髪(ブルネット)を後ろに撫で付ける。それから腰に手を当てると、リョータ小隊(パーティ)の面々を見回し、話し始めた。

「よし、静かに聞けっ! ……お前達の使命はセシリア・ヴェドイー嬢の救出だ。忘れた訳ではあるまい?」

 ブリセイスが再度全員の顔を一瞥する。

「昨夜、我々の密偵よりセシリア嬢の正確な居場所に関する情報がもたらされた……。そこで……」

 ――ヴェールの()()はこれだったのか……っ!

「おおーっ! 密偵さん、すごーい!!」

 ヨシノが感嘆の声を上げたため、ブリセイスは続きが話せなくなる。

 ブリセイスは溜め息を吐くと、ヨシノの方を向いて言った。

「……ヨシノ、話の腰を折らないでもらってもいいか?」

「は、はい、ごめんなさいっ! …………ところで、ハナシノコシって何……? 人の名前?」

 ヨシノがアキの方を向いて質問すると、アキは自分の口の前に両手の人差し指で小さく×を作った。ヨシノは驚いた表情をして、両手で自分の口を押さえた。

「……いいかな? そこで、我々は本隊を離れて隠密任務に()く。当初説明している通り、オルタナ辺境軍には敵の密偵が潜入している可能性が高い。そのため密偵に気取られぬよう最低限の人員で救出作戦を実施する。……つまり、ここに居る8人だ」

「キシシッ! やばいねぇ……、誰かさんの死亡フラグかも……」

 グンゾウの後ろでハイドがぼそっと不吉なことを呟く。

 そう言うと、ブリセイスは羊皮紙の巻物を地面に広げた。そこには基地周辺と思われる地図が描かれていた。

「セシリア嬢が監禁されていると思われるのはここだ」

 ブリセイスは腰に付けていた長剣(ロングソード)で街道沿いの北側にある山を指し示した。そこは午前中にセシリア隊が索敵攻撃をしていた場所の近くだった。

「この辺りには旧ナカンカ王国よりも遙かに昔の時代に作られた地下遺跡が多く点在している。その中の1つを利用して、奴等は隠れ家(アジト)としているらしい。この隠れ家(アジト)には20~30人の比較的多い賊が潜んでいるとの情報であるため、侵入に当たっては慎重を要する。お前達には『黙る』ということを覚えてもらわなければならない」

 グンゾウが手を挙げると、ブリセイスは眉根を寄せた。

「なんだ? グンゾウ」

「話の腰を折ってすまない。ラッティー准将の私兵はもっといたはずだが、同行者は君だけなのか?」

 ヨシノが小さな声で、再びアキに「やっぱり、ハナシノコシって何……?」と訊いている。

 ブリセイスはそれを無視して続けた。

「そうだ。他の者には継続して反攻部隊に加わり、敵の削りと陽動を続けてもらう。それは我々の救出作戦を辺境軍にも気付かせないためだ」

「……なるほど。あと、救出は8名だけで可能なのか? リョータ小隊(うち)には盗賊がいないんで、隠密行動には不向きなんだが?」

「その辺りも含めて、作戦を説明する。最後まで聞いてくれると嬉しいんだが……な」

 グンゾウは謝意を表するために、頭を軽くと下げると黙った。

 ブリセイスは、その様子を見て満足したのか作戦の全容を話し始めた。

 

 

 




久しぶり過ぎると更新が恥ずかしいですね。

次回はセシリア嬢救出編の前編です。


鹿児島空港に「リラクゼーションルームおるたな」という施設を発見しました。
マッサージ屋さんのようで、大変気になりましたが、ブリトニーみたいな兄貴に揉まれるのは嫌だと思い、立ち去りました。
皆さんも鹿児島空港に訪問した際にはいかがですか?
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