廃と群像のグリムガル ~不惑の幻想~   作:西吉三

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6.ドーリーで朝食を

 カラーン、コーン、カラーン、コーンと遠くで鐘が響く音がする。

 ――何だろう? 結婚式?

 グンゾウは何かに足をトントンと突かれる感覚がした。

「オッサン、起きろ、行くぞ」

「んあ?」

 目を覚ますとリョータがグンゾウの足を足で軽く蹴っていた。

 いつの間にか壁に寄りかかって座ったまま寝てしまったようだ。

 ――もうちょっとましな起こし方無いのか。

「年寄りは早起きじゃねーのかよ」

 リョータが朝から小うるさいことを言った。

「ああ、だから若いって証拠だな。おはようリョータ」

 グンゾウは立ち上がると、両手を上に伸ばして固まって肩と背中の筋を伸ばした。

 ――口ぐらい(ゆす)ぎたいな。

「キシシ、年寄りも寝坊はする、キシシシシ」

 ハイドは基本無視でもいいと思ったが一応「おはよう」と挨拶(あいさつ)した。グンゾウは寝起きの朦朧(もうろう)とした頭で周りを見渡す。

 義勇兵団事務所だ。寝て、起きれば悪い夢から覚めていると思っていたが、どうもここは()()のようだ。

「おら、起きろ、イガグリ!」

 次にリョータは床に転がっているシムラの腹を軽く蹴っ飛ばした。シムラは「うっ!」と呻いたまま、睡眠に戻っていった。もう一回蹴られる。今度は少し強め。

 ――死んだ? 俺の方がましな起こされ方だったのね。

「カズヒコが、もう朝だから街に繰り出すっとよ」

 リョータは後ろ指で義勇兵団事務所の出口を指差した。既に多くが事務所の外に出て、街の風景を見ているようだ。

 カウンターではブリちゃんが突っ伏して寝ていた。割れた(あご)にどんな風に(ひげ)が生えるのか見てみたかったが、朝からおぞましいモノを見ることもないと思ったので美しいものに目を向けることにした。

「ほーら、アキちゃん起きてー、起きろー、朝だぞー」

 ヨシノがアキの肩を揺すって、起こそうとしていた。アキもグンゾウと同様に壁を背にしながら床に座って丸くなって寝ていた。

「ほーら、よしよしよしよし、外の景色がきれいだよー」

 アキの顎の下に手を入れて、耳の裏にかけてくすぐって起こしている。また耳の穴にふぅーっと息を吹きかけている。

 ――俺もヨシノに起こして欲しかった……。

「ぁぁぁ。起きるから、やだやだぁ」

 アキは手をブンブン振り回すとすくっと立ち上がり、フラフラと歩いて出口の方に向かっていった。扉の柱に「ゴン」とぶつかると、そのまま座り込んで寝てしまった。

 出口からカズヒコがひょこっと顔を出して、アキの存在に驚いた後、グンゾウ達に話しかけた。

「じゃあ、外に集合しようか。井戸もあるし、顔も洗えるよ」

 

 

 湧水している自噴井戸があり、顔を洗い、うがいをすると目が覚めた。

 立ち上がって周りを見渡すと、グンゾウの目にも街の風景が飛び込んでくる。昨夜の移動で分かっていたが異国の田舎街という感じだ。空は青く、木々は豊富で、道が土でできているので道端には花が生えている。小さな蝶が2匹ひらひらと楽しそうに飛び回り、鳥は天高く舞っていた。一部しか見ていないが、水彩画のように美しい街並だった。旅行に来たようで自然と笑顔になった。

 井戸水を少し飲んだら、とびきり美味しかった。

「ぉはょぅござぃます……」

 孵化する時期を間違えた蚊が秋に成虫になり、寒くて元気なく羽ばたいているような声でアキが挨拶をしてくれた。

「あ、おはよう」

 アキが柱にぶつけて赤くなったおでこをさすりながら、井戸で隣に並んだ座った。目はまだ閉じたままだ。

 思わず隣でアキを観察してしまう。本当に肌の白い子だ。井戸水で顔をパシャパシャと洗った後に、口に水を含んで、そのまま……寝る。

 ――朝のアキは面白すぎる。この子は朝が苦手なのか?

「おーっ! すげっ! 井戸水湧いてるやん!」

「そうだろ? へっへっへ」

 シムラが何故かミッツに連れられて井戸に騒がしくやってきた。頭だか顔だかわからない所までバシャバシャと洗う。その後、ゴクゴクと喉を鳴らして水を飲み始めた。

「水、うまっ!」

「だろぉ? へへへ」

 ――朝からテンション高っ!。

 シムラはグンゾウにも話しかけてきた。

「グンゾウさん、おはようございます! なんか、みんな集まってるみたいなんで行きましょう!」

「おはよう。シムラ。今行くから、待っててね」

 ちらっとアキを見たら流石に騒がしくて起きたようで、目がパッチリと開いていた。それでもいつも伏し目がちだけれど。

 義勇兵団事務所の前には、グンゾウ含む4名以外は全員集合しており、思い思いに話したり、ストレッチ等をしていた。

「じゃあ、昨日の説明通り、(ふた)班に分かれて、情報収集をしよう。昼過ぎには1回集合で」

 カズヒコが言った。するとチョコが手を挙げて、拗ねたような口で聞く。

「……何を、情報収集すればいいんですか?」

「そ、そうだよね」

 カズヒコも頭をひねってしまった。

 ――ここは大人の出番かな?

 グンゾウは手を挙げてから発言した。

「まずはオルタナの地理を知る必要があると思う。主な店や市場、病院とか銀行とか役所の場所を知ろう。次にお金のこと。この1シルバーだとか、1カパーだとかっていくらの価値があるのかわからなくない? 10シルバーで何日暮らせるのか? あとは誰か義勇兵宿舎ってのを下見に行く必要があるかな? 今日からの宿困るでしょ? トイレとかお風呂とか風土病とか衛生状態も知りたいけど……」

 グンゾウが発言をすると皆に「おおー」と感心される。

「さすがオッサン! 俺のチームの参謀だ。俺のチームのな!」

 リョータに力強く肩をバンバンと叩かれる。

 ――いつからこいつの参謀なのか? 昨夜、戦力外って言ってなかったか?

「グンゾウさんの意見はすごくいいと思う。他には何かあるかな?」

 グンゾウの隣で、ハイドが手を挙げる。

「キシシ、職業(クラス)システムについて、キシ知る必要がある。キシシ。義勇兵は……な何らかの職業に……就いているはずだから。フキシシ、こここのオルタナで何の職業に就けるのかキシシ、フシ、調べないと……修正パッチ前で有利な職業もあるはずだしキシシ」

 全員唖然(あぜん)としていた。そもそもハイドは何を言っているか聞きづらいことがあるが、今のは何を意味しているか分からなかった。

 全員の頭に疑問符が浮かんだままの状態でハイドは話を続けた。

「キシ、あああ、あとは戦闘システムについても調べないとキシシシ。小隊(パーティ)が何故3~6人……なのか、ああと、魔法の種類……とか。死んだら生き返れるのか……とかキシシシシ。修正前の神スキルとかないかキシシ」

 ――何を言ってるんだ? 全然分からないぞ。魔法? 死んだら生き返れる? 修正パッチ?

 カズヒコも困ってしまったようだ。返事に戸惑っている。

「あー、じゃ、じゃあ、僕の班はお店とお金関係、あと衛生状況も調べるよ。リョータ班で宿舎の下見と職業と何だっけ戦闘システムってのを調べてきてくれない?」

 ――あ、ずるい。結構策士だよなぁ、カズヒコ。

 

 

「だぁぁらぁー、わっかんねーんだよ、その戦闘システムだとかよー、馬鹿にしてんのかお前?」

 リョータとハイドの顔の近さはあと2センチ位しか離れていない。お笑いならもうそろそろキスしてもいい距離だ。

 良くわからない調査を押し付けられたヤンキーリョータが切れてハイドに脅しをかけているのだ。

 ハイドの顔は汗だくになり、鼻の穴をぴくぴくさせている。「フヒフヒ」言いいながら屈せず反論する。

「フキシ、キシシ……、で、でも、これは僕が正しい……。キシ、ルールを把握した者が世界を制する……わからない奴が馬鹿」

「うっせぇ!」

 リョータがハイドに頭突きを食らわす。

「やめなよ、リョータ」

 ヨシノがリョータの腕を掴んで止める。

「暴力はダメだよ」

「何だよ、こいつが……」

 リョータがハイドを指差し、子どものように言い訳をしようとしたが、ヨシノが「めっ!」っときれいな顔で(にら)んだのでリョータは「ちっ!」っと舌打ちをしてから黙ってしまった。

 ――子どもの喧嘩に口を出すか。

 グンゾウは助け船を出すことにした。

「わかった。こうしよう。ハイドとシムラと俺で職業とかその辺りを調べるから、リョータはヨシノとアキを連れて、2人を護衛しながら宿舎の下見に行くというのはどうだい? 宿舎の場所すら知らないしね、俺達」

 リョータは少し不満があったようだったが、女の子に囲まれて移動するのはまんざら悪い気分でもないらしく、次第に少し鼻を伸ばしながら了承した。

 

 

「さてっと……」

 グンゾウはどうしようか考えた。

 ――しかし、義勇兵団って基本的な事すら何も教えないってどういうことなの?

 昨夜、カズヒコやリョータとブリちゃんからもう少し情報を引き出せないか色々働きかけたが、ブリちゃんは完全に知らぬ存ぜぬで、はぐらかされた。挙げ句の果てにカズヒコは危うくキスされそうになっていた。

 ――とりあえず、人が多く集まっている場所に行かないと駄目かな?

 リョータは女の子2人と行動になるので、あからさまに楽しそうな雰囲気でどっかに消えていった。

 辺りを見回すと遠くに高い塔の頂が見えた。この世界の太陽が東から昇るという前提であれば、北方向になる。

「とりあえず、あの塔に向かってみよう。往き道でハイドの話をちゃんと聴くから、省略なしで、詳細に説明してくれ。」

「キシ……」

 ハイドの話を要約すると()()だ。

 ハイドに強く残った記憶の中では、自分(ハイド)は「MMORPGというネットゲーム」(意味不明な単語)を一日中やっていた。その「ネットゲーム」とは仮想の人生を生きる遊びで、その仮想の人生の仮想の世界はこのグリムガルという現実に似ているという。その「ネットゲーム」の中では、人は職業(クラス)に就く必要があり、職業にはスキルというものが存在する。時間の経過によって神様が職業やスキルの強さを変えるので、一番有利な職業やスキルを検証して、身に着け、強い敵を狩るのが英雄と呼ばれる人らしい。ハイドは徹底した検証で常に英雄の地位にいたと記憶しているということだ。なお、その世界で人は死ぬことはなく、戦闘不能になった場合は本拠地に戻され、少し不利益がある位の(ペナルティ)で復活できるとのこと。

「……なるほど。にわかには信じがたいが、でもハイドの言っていることと、この世界に類似性があるならば、有利に生きていけるかもしれないな」

 グンゾウはハイドを見つめた。

「キシ……必ず最強になれる。キシシシシ」

 ハイドは自信に満ち溢れた顔でグンゾウを見つめ返した。

「じゃあ、とりあえず、その職業ってやつを探さんといけへんてことですね」

 シムラが目標を明確にした。

「そうだ、イガグリ、キシシ」

「われがイガグリゆうな!」

 ものすごい速さでシムラがハイドの頭をひっぱたいた。ひっぱたかれたハイドの眼鏡が外れて、つるが耳にかかったままプラプラしている。シムラは満足そうににんまりした。

「今のは()いツッコミやったで」

 ハイドは目を白黒させながら、両手を空中に(ただよ)わせ眼鏡を探した。

「めがね。めがね。」

 

 

「ひゃー、きれいな建物やなー」

 シムラが目の前の建築物を見上げながら興奮している。

 目の前には石造りの高い建物が立っている。周りは石畳が整備された円形の広場になっている。どうもここがこの街の中心のようだ。

 石造りの建物は、その石材のひとつひとつに彫刻がしてあり、美しい文様を魅せている。また窓枠や洋燈(ランプ)、周囲に張り巡らされた鉄柵すらも美しい金属装飾が施されいる。特にグンゾウは鉄柵に付いている忍び返しの意匠が気に入った。妖精のような生き物が槍を持っている意匠になっている。しかも全ての妖精の姿形が違うのだ。意匠の共通点としては、各所に六芒の文様が刻まれている点だ。周囲の木々もよく剪定(せんてい)され、建物と周囲の風景が合わさってひとつの芸術品のようになっている。

 ――お城か、教会か? 王様とかが住んでいるのかな?

 広場には鎧兜を身に着けて、槍と盾で武装した衛兵らしき男達が配置されている。また、中心の建物の門も衛兵が厳重に警備をしている。

 グンゾウ達が広場の真ん中でぼんやりと建物を見上げていると、衛兵がガシャガシャと近付いてきた。

「おい、お前ら何をして……らっしゃるのでしょうか? えーっと自由都市ヴェーレからの使節の方ですか?」

 近付いてきた兵士はシムラやハイドを注意しようと来たが、グンゾウの服装があまりに正装なのを見て何か勘違いをしたようだ。衛兵はグンゾウのことを怪訝(けげん)そうに見つめている。

「ああ、すいません。使節でもなんでもないです。この街の住人でもない、ただの旅行者です。美しい建物だと思って、眺めていたのです。」

 それを聞いて衛兵は安心したのか急に胸を張り、居丈高な態度に戻った。

「美しくて当たり前である。ここは天望楼。辺境伯閣下の居所(きょしょ)である。用の無きものは早々に立ち去るが良い。」

「ああ、はいはい」

 厄介事に巻き込まれるのは避けたいため、グンゾウは広場を離れようとした。

「キシシ、この街に神殿はあるか?」

 ハイドが衛兵に対して、急に話しかけた。

「そんなことも知らんのか。光明神ルミアリスの神殿はオルタナの北区にある。天望楼程ではないが、立派な建物なのですぐわかるだろう。……西町貧民街(スラム)の地下に暗黒神スカルヘルの神殿もあると聞いているが、私は知らない」

「キシシ、十分……」

 ハイドはお礼も言わず立ち去った。グンゾウとシムラは念のため「ありがとうございました」と言っておいた。

 ――思わぬ情報が手に入ったな。

 

 

 グンゾウ達は天望楼と呼ばれた建物を挟んで反対側、つまり北側へ向かった。光明神ルミアリスの神殿に向かう目的もあったが、天望楼前の広場にいた頃から北側は人々の動きが活発で気になっていたからだ。

「グンゾウさん、すごいっすね、これ、テンションあがるわー」

 シムラが目をキラキラさせて通りを見ている。

 天望楼を北側に行った大通りでは両側に屋台や露店が建ち並び、武器、防具から日用品、雑貨、衣類、食料品、檻に入った動物まで様々なものが売っていた。本当に多くのものが売っていて、見るだけで楽しい気持ちになる。売り子の声も大きく、朝とは思えない活気で(にぎ)わっている。

 ――ここが市場かな?

 売り物には値札らしきものが付いていて、4Cとか3Sとか書いてある。4Cと書かれていたのは美味しそうな肉の串焼きだ。3Sと書かれていたのはそれなりに立派な両刃の短剣(ダガー)だった。

 ――このCってのがカパーで、Sってのがシルバーじゃないのかな? 1シルバーが何カパーなのかが気になるところだな。

「キシシ、グンゾウ、腹減った……キシ」

 ハイドに言われて気が付いたが、グンゾウもかなりお腹が空いていた。昨夜から全員何も食べていなかったので、この市場の匂いは刺激的だ。肉の焼ける野生の匂いや、パンの焼けた香ばしい匂いが鼻の粘膜を刺激して、伝わった電気信号が脳みそにビンビンと響いている。一方、胃袋はすっかり空っぽで、何か食べ物を入れて欲しいという信号を発している。

「確かに……お腹空いたな。何か()れてから神殿に行こうか?」

「賛成! 賛成っす!」「キシシ、同意」

 シムラとハイドもすぐに同意した。

「じゃあ、何()おっか?」

 グンゾウは笑顔で質問した。

 

 

 相談の結果、肉串とクッペ(バゲットの一種)で作ったサンドイッチ、1人(ひとり)につきしめて8カパーの朝食にしようと決まった。

 ――肉とパンの焼ける匂いはこの空腹には暴力的だよなぁ。

 しかし、購入しようとした段階で問題が発生した。

「そんな大きいお金じゃ、お釣りがまだないよ。」

 4カパーの肉串を1シルバーで払おうとしたグンゾウ達に串肉ドーリーという屋台の店主が言った言葉だ。店主の説明では1シルバーは100カパーなので、96カパー×3人分もお釣りが必要になってしまうとのこと。とりあえずグンゾウが全てを立て替えようとしたが88カパーもお釣りはないとのことだった。ついでに「義勇兵はそんなんばっかりだな」と意味不明なことを呟いていた。

 店主は親切にも1カパーの現物を見せてくれて、両替所の「ヨロズ預かり商会」について教えてくれた。1カパーは見習い章に似ているが、それより一回り小さい銅貨だった。また、ヨロズ預かり商会は天望楼の広場に出てから南に通り3本入ったところにあるとのことだった。

「キシ……、プレイヤーに不親切だな……修正パッチが必要だ」

 ハイドが少し苛立った風に知らない言葉を呟いた。

「まじかぁ……」

 シムラは相当ショックを受けているようだった。グンゾウ達は最高潮に高まった食欲をしばらく抑えなければいけなくなってしまった。

「グンゾウさん、無理っす。俺には無理っす……」

 市場を天望楼まで引き返す道のり、シムラはぶつぶつと同じことを繰り返し言っていた。

 そこに救いの女神様……と神様の6人組が現れた。

 グンゾウの上着の裾が引っ張られる。

 ――ん?

 振り返るとカズヒコ小隊(パーティ)のチョコがそこにいた。大きい目だ。

「ども」

 チョコがちょっとぶっきらぼうにぺこっと頭を下げる。ボブカットが頭の動きに合わせて揺れた。

「こちらこそ」

 グンゾウも頭を下げる。頭を上げるとチョコの背後からカズヒコが手を振りながら追いかけてきた。

「グンゾウさん。シムラ君とハイド君も」

 グンゾウ達を広場で見かけたチョコがグンゾウ達を追いかけて捕まえてくれたようだ。

 カズヒコ達は先に市場で情報収集をしていたらしく、ちょうどヨロズ預かり商会に行ってから市場に戻っているところだった。しかも、カパーへの両替が必須と感じた気の利くカズヒコはグンゾウ達の分まで小隊(パーティ)1人1シルバーずつ余分にカパーへ両替してくれていた。

「おおぉぉぉ! これで串肉が食えるやん!!」

 シムラは本当に涙を流して喜んでいた。

「ありがとう、カズヒコ君。助かったよ」

 グンゾウがお礼を言うと、カズヒコは「いえいえ」と謙遜した後、キョロキョロと周りを見ながら「リョータは?」と尋ねてきた。

「リョータは男を置いてきぼりにして、女の子2人と楽しくデート中」

 グンゾウは感情を込めずにさらりと答えた。

 カズヒコの目が少しだけキラリと光った……気がした。

 ――やはり、カズヒコには女たらし要素を感じるぜぇ。

 市場で歩き食べをしながら、そこまでの情報交換をした。カズヒコ達は次に義勇兵の溜まり場になっているという「シェリーの酒場」に行ってみるとのこと。

 シェリーの酒場の後も、カズヒコ達は市場を中心に情報を集めるとのことだったので、グンゾウ、シムラ、ハイドの3人分3シルバーだけ300カパーに両替してもらい。残りはカズヒコ達がリョータ達に会った時に渡してもらうことにした。

「じゃあ、我々はルミアリス神殿に行くので」

 グンゾウ達3人は手を振り、カズヒコ達と別れて市場を北の方に抜けて行った。

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