GREATFUL DEAD ~感謝する死者~   作:ででん

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第2話

時間は夜の10時を過ぎた頃

 

 

 

昼間の夏の暑さから解放された町を、オレは宛もなくさまよっていた

 

 

 

まぁ宛はあるといえばある、だが自分から取っ付くほどのもんでもない、実際あれの後の気分はいつも最悪だ

 

 

 

 

ただそれ以外にやることもないからしょうがねぇのさと、こうやって裏路地を歩いてる

 

 

 

 

 

…いや、誤魔化すのは辞めよう

 

 

 

 

 

この世界に生き返ってからというもの、オレはほぼ毎日欠かさずに、そうやって言い訳しながら町をふらついて、事が起こるのを待っていた

 

 

 

 

 

あの時に戻ったように、短い間だが生に陶酔できるのはこれしかなかったんだ

 

 

 

 

 

もちろんそれが偽物なのはわかっていたさ

 

 

 

 

 

それでも―――それでもオレは、まるで後遺症を省みずに薬を使い続けるヤク中のように、昨日も、一昨日も、そして今日もこうして待って―――

 

「ねぇ君!こんなところにいると危ないよ?」

 

 

「そうそう、俺たちみたいなのに絡まれちゃうからさぁ!」

 

 

 

裏路地の細い曲がり角を曲がったところで、舐めきったような声に呼び止められる

 

 

 

…ようやく来た

 

 

 

乾いた心が一滴の水を求めるようにか弱いその手を必死に伸ばしているのを感じる

 

 

 

瞳孔が開ききり、死んだように止まっていた心臓が動き出す

 

 

 

まだ、まだだ

 

まだ我慢しろ

 

奴等が“覚悟”を見せてからだ

 

 

「あれ?聞こえてる?ねぇ」

 

 

いまオレはジャンキーみてぇなひっでぇ面をしてるんだろうなぁ

 

きっとこいつらにそれを見られたら逃げられちまう、見えねぇように俯かないと

 

 

「もしもーし?き・こ・え・て・ま・す・か?」

 

 

はやくしてくれ、涎がたれちまいそうだ

 

 

「…オイ、こいつんところ囲め」

 

 

もう準備はできてんだ

 

おまえたちもそうだろ?

 

とっくのとうにすましてきたんだろ?

 

 

「オイコラ、テメェ」

 

 

Presto(早く)

 

 

「シカトしてんじゃ」

 

PRESTO!(早く!)

 

「ねぇぞ!」

 

 

 

メシリとオレの顔面に拳が突き刺さる

 

無防備に受けたせいで勢いを殺せず、振り抜かれた拳の威力そのままに、体は壁に叩きつけられた

 

鼻血と口内の出血で血が体内へと入ってくる

 

まるで命の水のように、血液は舌先から胃を通って体全体の乾きを癒していく

 

 

今度はこっちの番だ

 

 

「これで終わりじゃねーぞコラ、早く立てよクソガ――」

「オラァ!」

 

 

無防備に殴られた時とはうって変わって俊敏に立ち上がり、やられたように顔面を殴り付ける

 

 

 

「コノヤロウ…テメェブッ殺してやる!」

 

 

 

殴り返された相手は逆上し、叫びながら掴み掛かってくる

 

 

只見ているだけだった取り囲んでいる奴等もそれを合図に、プロシュートに襲いかかった

 

 

 

それをみてプロシュートは更に口角をつり上げて笑うだけだった

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

奴は殴りかかってきた、そしてブッ殺すと叫んだ

 

 

それで十分だ、“覚悟“の確認には十分だ

 

 

オレも、オマエらも、ただ燻ってブッ殺すブッ殺すと叫んでいるだけのチンピラじゃねぇよなぁ

 

 

 

「なんだよこいつ!バケモンだ!」

 

 

「アガァ!」

 

 

「くそ!人数はこっちのが上なんだ!」

 

 

 

捕まれようが、蹴られようが、殴られようが、あらゆる痛みを体の内側から噴火のように溢れる熱が中和してくれる

 

 

 

あの時に戻りたいという羨望、この世界に対するありとあらゆる負の感情、そのどちらもが噴火の動力源となっているかのように、心のなかから燃えて灰となり消えていく

 

 

 

「やめてくれ…助けてくれ…」

 

 

 

―――あぁ、あと少し…もう少しで何もかもを

 

 

 

 

うずくまる血まみれの男にゆっくりと近付き、体を羽交い締めにして馬乗りになる

 

 

「ひぃ…あ、あああ」

 

 

ゆっくりと、拳を振り上げる

 

 

あらゆる五感が研ぎ澄まされていく

 

 

自らの荒い呼吸に回りに転がる男たちの息使いやうめき声

 

 

血と汗の匂い

 

 

握りしめた拳の感触

 

 

口内の血液の味

 

 

そして―――

 

 

目の前の男の助けを乞うことさえ“諦めた”無気力な瞳

 

 

 

その瞳と、目があった

 

 

 

 

 

 

――――あぁ、またこの、これか…

 

 

 

一瞬にして体の熱が引いていくのを感じる

 

 

 

僅かに残っていたあの感情たちが心に広がっていく

 

 

 

振り上げた拳を力なくだらんと下ろして立ち上がり、怯えるだけの連中にうんざりした気分で言い放つ

 

 

 

「失せろ、オレの前から」

 

 

 

 

「ブッ殺すぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――あ?オレ今なんて…

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

襲ってきた男たちはお互いを庇い合いながら固まってどこかへと逃げていった

 

 

何度も何度もこちらを振り返りながら

 

 

その目に覚悟なんてものは最初からありはしなかった

 

 

結局残ったのは前と変わらない死んだような心と、とてつもない自己嫌悪だけだった

 

 

 

「ブッ殺すぞ、か…」

 

 

 

あの時出た言葉が信じられなかった

 

 

あの言葉をいったのは本当にオレだったのか?

 

 

所詮オレも奴らと変わらなかったのか?

 

 

 

「そんなこと…」

 

 

 

「そんなこと、あってたまるかァッ!!!!」

 

 

 

「クソ!クソ!クソ!クソ!」

 

 

 

「クソッタレがあああァァァァ!」

 

 

 

獣のように叫びながら、思い切り壁を殴り付ける

 

 

拳が裂けて骨が剥き出しになるまで、それを続けた

 

 

 

 

 

「ハァハァハァ…ハ、ハハハ…」

 

 

 

 

 

 

まるでオレはジャンキーだ、こうやって苦しんでもきっと明日には“薬”を探して町をふらついちまうんだ

 

 

 

そのせいで今、どれだけ残酷な結末が己に降りかかっていたとしても

 

 

 

 

 

「こんなだから、失っちまうんだ」

 

 

 

 

 

スタンド能力(グレイトフルデット)を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタンド能力とは精神の具現化である

 

 

 

その能力やパワーはスタンドを持っている人間の精神力に比例し、精神の成長に合わせてスタンドが次の段階へと進化して新しい能力を得ることさえある

 

 

 

だがもしも何かの原因でスタンド使いの精神の強靭さや、黄金のような輝きが失われてしまったなら?

 

 

 

転生してから一年、この一年間でプロシュートの精神はスタンドを失ってしまうほどに摩耗しきっていた

 

 

 

 

 




兄貴のかっこいいところみたい人はちょっと待っててね

PRESTOはイタリア語で早くって意味だよ
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